交通事故コラム詳細

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2024.6.8

自賠責実務

【医師が解説】後遺障害等級は誰が決める?認定される方法|医療鑑定

交通事故の後遺障害等級は誰が決めるのでしょうか。被害者の治療をするのは医師なので、主治医が後遺障害等級を決めると思う人もいそうですね。

 

しかし実際には、後遺障害等級を決めるのは、自賠責損害調査事務所という損害保険料率算出機構の認定機関です。

 

本記事は、誰がどのようにして後遺障害等級を決めるのかを理解するヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/6/8

 

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後遺障害等級は誰が決めるのか?

初回審査(事前認定と被害者請求)は自賠責損害調査事務所

交通事故の後遺障害等級を決めるのは、自賠責損害調査事務所という損害保険料率算出機構に属する認定機関です。

 

自賠責損害調査事務所は各都道府県にあり、担当エリア内で発生した事案の審査をします。

 

12級以上では、顧問医師の意見も参考にして後遺障害等級を決めます。弊社には、自賠責損害調査事務所の元顧問医も在籍しています。

 

 

異議申し立ては自賠責審査会が審査する

自賠責損害調査事務所の認定結果に納得しない人は異議申し立てします。異議申し立てでは、自賠責審査会という認定機関が再審査を行います。

 

 

紛争処理機構が後遺障害等級を決めるケースも

異議申し立てを繰り返しても後遺障害等級の判断が変わらない時には、自賠責保険・共済紛争処理機構(紛争処理機構)に審査を求めることもできます。

 

紛争処理機構は、自賠責損害調査事務所や自賠責審査会とは別の公的機関です。各都道府県にある自賠責損害調査事務所と異なり、東京と大阪にしかありません。

 

そして、紛争処理機構での審査は1回しか認められていません。裁判以外では、紛争処理機構の審査結果が後遺障害等級の最終判断となります。

 

 

裁判所も後遺障害等級を決められる

異議申し立てや紛争処理機構への異議申し立てによっても、後遺障害等級結果が覆らなかったケースでは、裁判所に判断を仰ぐこともできます。

 

ただし、裁判官は医療や賠償実務のプロではありません。このため、基本的には自賠責損害調査事務所の判断を尊重します。

 

 

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後遺障害等級の決まり方

後遺障害認定の申請方法は2種類

自賠責保険への後遺障害認定の手続きには、事前認定と被害者請求があります。初回の申請だけではなく異議申し立てにおいても、2つの方法を選択できます。

 

 

事前認定

 

保険会社が後遺障害認定に必要な書類を収集して、加害者側の自賠責保険に申請してくれます。

 

申請に手間がかからないのはメリットですが、後遺障害に認定される可能性が低くなるデメリットがあります。

 

 

被害者請求

 

交通事故被害者(もしくは弁護士)が必要書類を集めて、加害者側の自賠責保険へ直接申請します。

 

弁護士は後遺障害認定基準を満たすべく戦略的に資料を収集するので、後遺障害認定率がアップします。

 

弊社と提携している交通事故弁護士に相談したい方は、こちらからお問い合わせください。2営業日以内に返信いたします。

 

尚、交通事故弁護士の紹介は、ボランティアで行っています。電話での問い合わせは、弊社業務の妨げになるため固くお断りしています。

 

 

後遺障害認定は書類審査

後遺障害認定は、顔のキズなどの醜状を除くと、書類審査と画像検査のみで決まります。自賠責保険に提出する診断書がいかに重要かが分かると思います。

 

 

<参考>

 

 

後遺障害の審査期間

後遺障害の審査結果が通知されるまでの期間は、約70%の事案が30日以内です。しかし、高次脳機能障害などの複雑な事案では、数ヵ月かかるケースもあります。

 

 

<参考>
損害保険料率算出機構「2021年度 自動車保険の概況」

 

 

 

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後遺障害認定に必要な4つの条件

症状と交通事故の因果関係

症状と交通事故の間に因果関係が無ければ、後遺障害に認定されません。考えてみれば当然のことですね。

 

しかし、「交通事故で症状が発生した」と言っても通用しません。実務上は、いつが初診日かで因果関係有無が判断されるので注意が必要です。

 

受傷後3日以内の受診が望ましい

症状と交通事故の因果関係を証明するには、医療機関を早期に受診することが重要です。遅くとも3日以内には受診することが望ましいでしょう。

 

 

1週間後の初診は因果関係無しとみなされる

受傷から1週間以上経ってからの初診では、後遺障害に認定される可能性が極めて低くなります。

 

弊社の経験でも、極めて特殊な事情のケースを除いて、後遺障害に認定されたものは存在しません。

 

 

整骨院(接骨院)は医療機関ではない

整骨院や接骨院は医療機関ではありません。受傷後3日以内に整骨院や接骨院に行っても、1週間以内に医療機関を受診しなければ後遺障害に認定されません。

 

 

症状の一貫性

受傷から症状固定までの間、同じ症状が続いていなければ、私病(交通事故とは関係の無い病気)と判断されます。

 

たとえば、初診時には首が痛かったが、2ヵ月してから腰が痛くなってきたケースでは、症状の一貫性がないため後遺障害に認定されません。

 

 

症状の常時性

常に痛みなどの症状が無ければ、自賠責保険では後遺障害と認定されません。

 

具体的には、雨が降った日だけ痛いなどの症状では、症状に常時性が無いため後遺障害に認定されません。

 

 

医学的に症状を証明できる

レントゲン検査やMRI検査などの画像検査で、痛みの原因となる所見が無いケースは、後遺障害に認定されにくいです。

 

また、神経学的テスト(スパークリングテストやジャクソンテスト)が陰性のケースでも、後遺障害に認定されにくいです。

 

 

<参考>

 

 

【頻出傷病リスト】交通事故コラムへのリンク集

 

交通事故ではさまざまな部位の外傷が発生する可能性があります。その中でも後遺障害認定の対象となる代表的な傷病を抽出して、弊社の各傷病コラム記事へのリンクを張っています。

 

弊社が取り組んできた数千例に及ぶ事案から選んでいるので、自賠責保険の実務で登場する傷病のほぼ全てを網羅しています。

 

 

傷病の総論

開放骨折
関節内骨折
偽関節、遷延癒合
骨挫傷
打撲
筋挫傷
CRPS

 

 

部位別の頻出傷病

頭部外傷

高次脳機能障害
高次脳機能障害の4大症状
遷延性意識障害
脳挫傷
脳出血
外傷性くも膜下出血
びまん性軸索損傷
急性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫
外傷性てんかん
MTBI
脳震盪
頭蓋骨骨折
脳梗塞
外傷性脳梗塞

 

 

神経心理学的検査

神経心理学的検査
高次脳機能障害の検査一覧と評価バッテリー
MMSE
長谷川式認知症スケール
MMSEと長谷川式認知症スケールの違い
WAISとWMS-R
レーブン色彩マトリックス検査RCPM
リバーミード行動記憶検査RBMT
SLTA標準失語症検査
TMT(trail making test)
BADS遂行機能障害症候群の行動評価
WCSTウィスコンシンカードソーティングテスト

 

 

顔面、眼、鼻、口の外傷

眼窩底骨折(眼窩吹き抜け骨折)
頬骨骨折
顎骨折
複視
外傷性散瞳
耳鳴り・難聴
めまい
鼻骨骨折
嗅覚障害
歯牙欠損
醜状
外貌醜状
顔面神経麻痺

 

 

頚椎の外傷

むちうち(頚椎捻挫)
むちうち(必要な検査)
むちうち(12級、14級)
むちうち(首の痛みだけで後遺障害に認定されるのか)
むちうち(MRI)
むちうち(めまい)
むちうち(症状の伝え方3つのポイント)
むちうち(嘘だとバレる?)
むちうち(症状が出るまでの期間)
むちうち(レントゲンでわかる?)
むちうち(軽くても病院受診するべき理由)
むちうち(治療)
むちうち(眠くなる)
バレリュー症候群
脊髄損傷
中心性脊髄損傷
非骨傷性頚髄損傷
頚椎症性脊髄症の交通事故による増悪
後縦靭帯骨化症
頚椎骨折
頚椎椎間板ヘルニア
脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)
脊髄空洞症

 

 

腰椎の外傷

腰椎捻挫
圧迫骨折
圧迫骨折(やってはいけないこと)
圧迫骨折(コルセットは寝るときに必要?)
圧迫骨折(痛みが取れない)
第12胸椎圧迫骨折
胸椎圧迫骨折 8級の画像
腰椎横突起骨折
腰椎椎間板ヘルニア

 

 

肩関節の外傷

腱板断裂
SLAP損傷(関節唇損傷)
鎖骨骨折
肩鎖関節脱臼
上腕骨近位端骨折
肩甲骨骨折

 

 

上腕の外傷

橈骨神経麻痺

 

 

肘関節の外傷

肘頭骨折
肘関節骨折
肘関節脱臼
肘部管症候群

 

 

手の外傷

腕神経叢損傷
橈骨神経麻痺
尺骨神経麻痺
胸郭出口症候群
手根管症候群
橈骨遠位端骨折
バートン骨折とショーファー骨折
尺骨骨折
TFCC損傷
手や指の骨折(指節骨骨折、中手骨骨折、手根骨骨折)
中手骨骨折
舟状骨骨折
stener lesion(ステナー損傷)
マレットフィンガー
伸筋腱断裂
指切断

 

 

体幹の外傷

肋骨骨折
胸骨骨折
肺挫傷

 

 

骨盤・股関節の外傷

骨盤骨折
恥骨骨折
仙骨骨折
股関節脱臼骨折
股関節骨折
大腿骨骨頭骨折、大腿骨頚部骨折、大腿骨転子部骨折、大腿骨転子下骨折
関節唇損傷(股関節)

 

 

大腿部の外傷

大腿骨骨幹部骨折

 

 

膝関節の外傷

大腿骨顆上骨折、大腿骨顆部骨折
脛骨高原骨折
膝蓋骨骨折
半月板損傷
前十字靭帯損傷(ACL損傷)
後十字靭帯損傷(PCL損傷)
膝内側側副靭帯損傷(MCL損傷)

 

 

下腿の外傷

脛骨骨折
腓骨骨折
腓骨神経麻痺
コンパートメント症候群

 

 

足の外傷

脛骨遠位端骨折
足関節脱臼骨折
足関節靱帯損傷
距骨骨折
踵骨骨折
中足骨骨折
リスフラン関節脱臼骨折
足趾骨折(足指骨折)
足指の伸筋腱断裂

 

 

内臓の外傷

内臓破裂(内臓損傷)
小腸切除

 

 

精神疾患

デグロービング損傷
線維筋痛症
非器質性精神障害
PTSD

 

 

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【弁護士必見】後遺障害認定審査への顧問医の関わり方

自賠責損害調査事務所の顧問医は大学や基幹病院の医師

後遺障害認定では、医学的な知識や見解が不可欠です。特に症状が存在することの客観的な証明が必要とされる後遺障害12級以上では、医師の見解は必須と言えます。

 

しかし、実際に後遺障害認定審査を行うのは自賠責損害調査事務所の職員です。彼らは医師ではないのに、どうやって後遺障害有無を判断するのでしょうか。

 

自賠責損害調査事務所は、そのエリアにある大学病院の教授・講師や、日赤などの院長・部長と顧問契約を結んでいるケースが多いです。

 

これらの医師は、定期的に自賠責損害調査事務所に赴き、交通事故被害者の画像検査などを読影してコメントします。

 

彼らは後遺障害認定基準に詳しいわけではなく、単純に画像検査の異常所見を読影するだけです。

 

顧問医のコメントを参考にして、自賠責損害調査事務所の職員が後遺障害認定審査を行います。

 

 

顧問医業務の実際

定期的に自賠責損害調査事務所を訪れた顧問医は、その場で大量の画像検査を読影します。

 

弊社には自賠責損害調査事務所の顧問医が在籍していますが、たくさんの事案の画像検査を読影するので、なかなか大変だそうです。

 

このように短時間で大量の画像検査を読影することは、期せずして恣意的な要素を排除しているとも言えます。

 

しかし、十分に時間をかけて読影するわけではないので、全例に対して完璧な読影は期待できません。

 

想定外の後遺障害等級にとどまっている事案では、顧問医の読影が十分ではない可能性にも留意するべきでしょう。

 

後遺障害非該当や、想定していた後遺障害等級が認定されずにお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

まとめ

 

後遺障害等級を決めるのは、初回審査(事前認定と被害者請求)は自賠責損害調査事務所です。異議申し立ては自賠責審査会が審査します。

 

一方、異議申し立てしても後遺障害に認定されないで案では、紛争処理機構や裁判所が後遺障害等級を決めるケースもあります。

 

 

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