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【医師が解説】長谷川式認知症スケールの解釈|遺言能力鑑定

長谷川式認知症スケール(HDS-R)とは、認知症の程度を評価するためのスクリーニングテストの1つです。遺言能力の有無を判断する際に、認知症の評価は欠かせません。

 

本記事は、認知症の評価で重要な役割を果たす長谷川式認知症スケールを理解するヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/4/19

 

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長谷川式認知症スケールとは

長谷川式認知症スケールの概要

長谷川式認知症スケールとは、認知症の早期発見や進行度合いの評価するためのスクリーニングテストの1つです。長谷川式認知症スケールは、1974年に日本の精神科医である長谷川和夫氏によって開発されました。

 

1991年には、改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)として現在の評価項目に改定されました。長谷川式認知症スケールの評価項目は、見当識や記憶など9つの評価項目です。

 

評価項目は、記憶、計算能力、言語理解、空間認知、判断力、思考力、認識力などです。30点満点中の何点かで、認知症の程度を5段階に分類します。20点以下では認知症疑いと判断されます。

 

 

他の認知症評価スケールとの比較

長谷川式認知症スケールは、他の認知症評価スケールと比較して、評価項目の範囲が広く、評価項目の多様性があるとされています。

 

 

HDS-R

 

 

長谷川式認知症スケールの特徴

 

  • 所要時間は約5〜10分
  • 主に記憶力に関する項目で構成されている
  • 30点満点中20点以下で認知症の疑いがある
  • 検査結果の妥当性が高い
  • 日用物品だけ簡単に実施できる

 

 

長谷川式認知症スケールの評価項目

 

HDS-R

 

 

年齢

【質問】お齢はいくつですか?
【評価】年齢を答えられたら正解(1点)

 

注意点

  • 2年までの誤差は正解とする
  • 生年月日を言えても、年齢を言えなければ不正解とする

 

 

日付の見当識

【質問】今日は何年ですか?
【評価】年を答えられたら正解(1点)
 
【質問】今日は何月ですか?
【評価】月を答えられたら正解(1点)
 
【質問】今日は何日ですか?
【評価】日にちを答えられたら正解(1点)
 
【質問】今日は何曜日ですか?
【評価】曜日を答えられたら正解(1点)

 

注意点

  • 質問は、どの順番でも良い
  • カレンダーの無い場所で質問する

 

 

場所の見当識

【質問】私たちがいるところはどこですか?
【評価】完全に正解(2点)、
    家ですか?病院ですか?施設ですか?などのヒントで正解(1点)
 

注意点

  • 正しい病院名を言えなくても場所さえ分かれば正解とする
  • ヒントは「デイサービスですか?」などに変更しても良い。

 

 

即時記憶

【質問】これから言う3つの言葉(桜、猫、電車など)を言ってみてください。あとでまた聞きますのでよく覚えておいてください。
【評価】「桜」と答えたら正解(1点)
    「猫」と答えたら正解(1点)
    「電車」と答えたら正解(1点)
 

注意点

  • 後で3つの言葉を必ず聞くことを伝える
  • 3つの言葉は無関係のものを使用する

 

 

計算

【質問1】100から7を順番に引いてください。
【質問2】(質問1を93と正解したら)それからまた7を引いてください。
【評価】93と答えたら正解(1点)
    86と答えたら正解(1点)
 

注意点

  • 最初の93で失敗したら、その時点で終了
  • 93から7を引くと、などのヒントは不可

 

 

逆唱

【質問】私がこれから言う数字を逆から言ってください(6-8-2、3-5-2-9)
【評価】2-8-6と答えたら正解(1点)
    9-2-5-3と答えたら正解(1点)
 

注意点

  • 数字はゆっくりと質問する
  • 最初の3桁で失敗したら、その時点で終了
  • 1-2-3を反対から言うとなどの練習をしても良い

 

 

遅延再生

【質問】先ほど覚えてもらった言葉をもう一度言ってみてください(問4の桜、猫、電車)
【評価】「桜」と答えたら正解(1点)
    「猫」と答えたら正解(1点)
    「電車」と答えたら正解(1点)
 

注意点

  • 植物、動物、乗り物などのヒントを与えても良い
  • すぐ全ての項目のヒントを与えない

 

 

視覚記憶

【質問】これから5つの品物(時計、鍵、たばこ、ペン、硬貨など)を見せます。それを隠しますので何があったか言ってください
【評価】「時計」と答えたら正解(1点)
    「鍵」と答えたら正解(1点)
    「たばこ」と答えたら正解(1点)
    「ペン」と答えたら正解(1点)
    「硬貨」と答えたら正解(1点)
 

注意点

  • 5つの物品は無関係なものを準備する
  • 物品の名前を1つずつ言いながら目の前に置く
  • 5つ並べ終った際に1つずつ名前を理解しているか確認する
  • 最後の1つが出なくても、本人に思い出してもらうように少し待つ

 

 

語想起・流暢性

【質問】知っている野菜の名前をできるだけ多く言ってください
【評価】0〜5個以内しか答えられない(0点)
    6個を答えられた場合(1点)
    7個を答えられた場合(2点)
    8個を答えられた場合(3点)
    9個を答えられた場合(4点)
    10個を答えられた場合(5点)
 

注意点

  • 約10秒待っても返答がなければそこで打ち切る
  • 同じ野菜の名前が重複しても否定せずに記載して、後で重複した物を減点する

 

 

長谷川式認知症スケールのカットオフ値

 

  • 非認知症   :24.45±3.60点
  • 軽度認知症  :17.85±4.00点
  • 中等度認知症 :14.10±2.83点
  • やや高度認知症:9.23±4.46点
  • 高度認知症  :4.75±2.95点

 

出典:「図解理学療法検査・測定ガイド」

 

 

<参考>
【医師が解説】相続で認知症の程度はどこまで有効?|遺言能力鑑定

 

 

MMSEと長谷川式認知症スケールの違い

 

認知症の評価で世界的に有名なのは MMSE(Mini Mental State Examination)です。MMSEと長谷川式認知症スケールとの違いを知ることは重要です。

 

まず実施する前提の違いですが、MMSEを実施するには自力で字を書ける必要があります。一方、長谷川式認知症スケールは口頭だけで実施可能です。

 

MMSEは、言語機能や空間認知機能を必要とする項目があります。これらの認知機能の低下は、主に脳血管性認知症などで現れやすいです。

 

<参考>
【医師が解説】MMSEの認知症でのカットオフ値は?|遺言能力鑑定
【医師が解説】神経心理学的検査は高次脳機能障害の等級認定ポイント
 

 

一方、長谷川式認知症スケールは、記憶力を中心とした質問形式で構成されています。そのため、長谷川式認知症スケールの点数が低い場合は、アルツハイマー型認知症の可能性を疑います。

 

 

 

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【弁護士必見】長谷川式認知症スケールと遺言能力の関係

遺言能力が無いのは何点以下?

ここまで長谷川式認知症スケールを解説してきましたが、端的に言ってどの程度の点数であれば遺言能力が無いと言えるのかを知りたい弁護士が多いことでしょう。

 

遺言の内容によって異なりますが、概ね長谷川式認知症スケールが1桁であれば、遺言能力は無いと言って良いと思います。

 

一方、一応のカットオフ値である20点では、簡単な遺言なら実用に耐えうると判断できます。

 

このあたりの議論は、実際の事案資料を精査しないと評価できないというのが正直なところです。

 

 

学習効果で長谷川式認知症スケールの点数アップも

遺言能力の有無を争う訴訟では、短期間に何度も長谷川式認知症スケールを実施することによってアップした点数を根拠として、遺言能力が存在したと主張する事案を散見します。

 

しかし、何度も長谷川式認知症スケールの検査を実施していると、被検者は質問項目や答え方を覚えてしまいます。このため、数日単位などの短期間で実施した長谷川式認知症スケールの点数は信頼できません。

 

遺言能力の存在を否定する立場であれば、長谷川式認知症スケールの学習効果が影響していないかにも注意を払うべきでしょう。

 

 

高次脳機能障害でも学習効果が問題になるケースがある

前述の長谷川式認知症スケールの学習効果は、高次脳機能障害でも問題になるケースがあります。

 

高次脳機能障害は受傷時が最も高度で、経時的に軽快していきます。経過の途中で認知機能が悪化した場合には、外傷ではなく加齢性変化が疑われます。

 

一方、長谷川式認知症スケールを短期間に複数回実施すると、学習効果で点数がアップします。少し時間を置くと再び元の点数に戻るので、一見すると認知機能が悪化したように見えます。

 

経過の途中で悪化する認知機能は、高次脳機能障害ではなく加齢による認知機能の低下とみなされやすいので、訴訟の争点になる事案を散見します。

 

もちろん、真実は認知機能が本当に改善したのではなく、表面的に点数がアップしたに過ぎません。高次脳機能障害でも長谷川式認知症スケールの学習効果が問題になることがあるのです。

 

長谷川式認知症スケールが問題になっている遺言能力鑑定や高次脳機能障害でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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認知症有無を証明する遺言能力鑑定という選択肢

 

遺言時に、認知症のために意思能力(遺言能力)が無かったことを証明する資料を収集することで、公正証書遺言の無効を主張できます。

 

しかし、最も客観的と思われる精神医学的な評価に関しては、片手落ちと言わざるを得ません。弊社に相談された事案の中にも、公正証書遺言の客観性に疑問符の付くケースが多数存在します。

 

このような事案では、公正証書遺言作成時に意思能力が無かったことを、遺言能力鑑定で主張可能なケースも少なくありません。

 

 

<参考>
【弊社ホームページ】遺言能力鑑定 特設サイト

 

 

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遺言能力鑑定に必要な資料

遺言者の没後であっても、下記のような資料があれば遺言能力鑑定は対応可能です。

 

  • 診断書(介護保険の主治医意見書を含む)
  • 診療録(カルテ)
  • 介護保険の認定調査票
  • 画像検査
  • 各種の検査結果
  • 看護記録
  • 介護記録

 

 

すべて揃っていることが望ましいですが、足りない資料があっても遺言能力鑑定できる可能性はあります。

 

これらの資料の受け渡しは、オンラインストレージもしくは郵送となります。安全性や利便性からオンラインストレージの利用を推奨しています。

 

ご依頼いただいた際に、オンラインストレージの使用方法を簡単にご説明させていただきます。

 

お困りの事案があれば、お問合せフォームからご連絡下さい。

 

 

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遺言能力鑑定を作成する流れ

遺言能力鑑定をご依頼後の大まかな流れは、以下の通りです。尚、没後鑑定では事前審査(95,000円+税)が本鑑定(350,000円+税~)とは別途で必須です。

 

  1. 弊社による簡易な資料確認結果のご連絡、および事前審査に関する見積書の送付
  2. お見積りにご承諾いただいた段階で、正式に事前審査を開始
  3. 事前審査が完了後、ご請求書の送付
  4. ご入金確認後、事前審査結果のご提出(電子データ)

 

 

事前審査の結果を踏まえて遺言能力鑑定(本鑑定)に進む場合には、以下の流れになります。
 

  1. 弊社より見積書を送付
  2. お見積りをご承諾いただいた段階で、正式に遺言能力鑑定を開始
  3. 遺言能力鑑定案完成後、電子データにてご確認いただき、修正点があれば調整
  4. 遺言能力鑑定の最終稿が完成した段階で、ご請求書の送付
  5. ご入金確認後、レターパックにて医師の署名・捺印入り原本の発送

 

 

遺言能力鑑定の作成にかかる期間

遺言能力鑑定を作成する期間は、お見積りをご了承いただいた時点から初稿提出まで約4週間です。

 

 

遺言能力鑑定の料金

生前鑑定

 

400,000円+税

 

 

没後鑑定

 

事前審査:95,000円+税
本鑑定 :350,000円+税

 

 

  • 没後鑑定では、事前審査(95,000円+税)が本鑑定(350,000円+税~)とは別途で必須です。
  • 本鑑定に進まない場合にも、事前審査費用の返金は致しかねます。
  • 上記料金は目安となるものであり、資料の分量・難易度によって変動する場合があります。まずはお気軽にご相談ください。

 

 

 

 

まとめ

 

長谷川式認知症スケールとは、認知症の早期発見や進行度合いの評価するスクリーニングテストで、検査結果の妥当性が高いです。

 

長谷川式認知症スケールは、所要時間は約5〜10分、主に記憶力に関する項目で構成されている、日用物品だけ簡単に実施できるなどの優れた特徴があります。

 

30点満点中の何点かで、認知症の程度を5段階に分類します。20点以下では認知症疑いと判断されます。

 

 

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