交通事故では嗅覚障害が残る可能性があります。嗅覚に異常が発生する原因には、脳の障害や鼻の外傷(鼻骨骨折)があります。
本記事は、交通事故が原因で発症した嗅覚障害が、自賠責保険の後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日:2023/3/5
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交通事故で発生する嗅覚障害(きゅうかく障害)とは
嗅覚とは、においを感じる感覚です。嗅覚障害は、原因となる部位によって3ヶ所に分けられます。このうち最も多いのは、脳の障害による中枢性嗅覚障害です。
気導性嗅覚障害
鼻から吸入した空気が、嗅神経が存在する嗅粘膜に到達しないために生じる嗅覚障害です。
一般的には慢性副鼻腔炎やポリープが原因となりますが、交通事故では鼻骨骨折による鼻中隔の変形による鼻づまり(鼻閉)が多いです。
嗅神経性嗅覚障害
嗅神経が傷害されて嗅覚の低下をきたした状態です。一般的には感冒後(風邪を引いた後)に発生するケースが多いですが、交通事故では顔面外傷によって嗅神経を損傷することがあります。
中枢性嗅覚障害
交通事故では、頭部外傷による脳挫傷や脳出血が原因となるケースが多いです。
交通事故による嗅覚障害の原因
嗅覚に異常が発生する原因には、脳の障害や鼻の外傷があります。
嗅覚障害をきたす脳の障害
嗅覚を支配しているのは、脳神経のうち最も頭側から分岐していること嗅神経です。頭蓋底骨折などで嗅神経損傷を併発する可能性があります。
<参考>
【医師が解説】頭蓋骨骨折の後遺症の後遺障害認定ポイント|交通事故
嗅覚障害をきたす鼻骨骨折
鼻骨骨折は、顔面骨折の中で最も頻度の高い骨折です。鼻骨は、鼻の上部分の1/3です。下部分の2/3は軟骨でできています。
鼻骨骨折では、左右の鼻を分けている鼻中隔という壁の骨折を合併することが多いです。鼻中隔の骨折では、鼻詰まり(鼻閉)などの症状が残る可能性が高まります。
鼻詰まり(鼻閉)がひどいと、実質的には嗅覚障害に類似した状態となります。
<参考>
【医師が解説】鼻骨骨折の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故
嗅覚障害の診断
嗅覚障害の程度は、T&Tオルファクトメーターで診断します。T&Tオルファクトメーターは、5種類の匂いが8段階のどの濃度まで分かるかを判定する検査キットです。
一方、嗅覚脱失のみであれば、アリナミンPテストで代用することも可能です。
嗅覚脱失・減退の後遺障害
嗅覚の脱失とは、嗅覚を完全に失ってしまったものです。一方、嗅覚の減退は、嗅覚が落ちてしまったものです。
嗅覚脱失や限定は、脳挫傷や高次脳機能障害に併発するケースが多いです。嗅覚障害の程度は、T&Tオルファクトメーターで診断します。
12級相当:嗅覚を脱失するもの
T&Tオルファクトメーターの検査結果が、5.6以上のものです。嗅覚脱失のみであれば、アリナミンPテストで代用することも可能です。
14級相当:嗅覚の減退するもの
T&Tオルファクトメーターの検査結果が、2.6以上5.5以下のものです。
【弁護士必見】嗅覚障害の後遺障害認定ポイント
嗅覚障害が後遺障害に認定される上で、最大の問題点は事故との因果関係でしょう。嗅覚は人間の五感の中では最も鈍い感覚です。
このため、嗅覚障害が存在しても、外傷後で他の症状が強い時にはすぐに気付かないケースがあります。
自賠責保険の実務では、受傷から時間が経過すればするほど、交通事故との因果関係が否定されやすいです。
このため、嗅覚障害に気付いたら、できるだけ早い段階で耳鼻咽喉科の専門医を受診する必要があります。
まとめ
交通事故で受傷した嗅覚障害の原因には、脳の障害や鼻の外傷(鼻骨骨折)があります。
嗅覚障害の程度は、T&Tオルファクトメーターで診断します。T&Tオルファクトメーターは、嗅覚脱失のみであれば、アリナミンPテストで代用することも可能です。
嗅覚脱失・減退の後遺障害には12級と14級があります。しかし実際には、嗅覚障害が存在しても、すぐに気付かないケースがあります。
受傷から時間が経過するほど交通事故との因果関係が否定されやすいため、嗅覚障害に気付いたらできるだけ早く耳鼻咽喉科を受診する必要があります。
交通事故に起因する嗅覚障害でお困りの場合はこちらからお問い合わせください。
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