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【医師が解説】顎骨折の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故

交通事故で発生する顔面の外傷のひとつに顎骨折があります。顎骨折には上顎骨骨折と下顎骨骨折があり、後遺症を残しやすい外傷です。

 

本記事は、顎骨折の後遺症が、後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/4/19

 

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顎骨折とは

 

顎骨折は、上顎骨骨折と下顎骨骨折に分けられます。顎骨折の大半は外傷によるもので、交通事故、けんか、スポーツ、作業事故などが原因です。

 

 

Cheekbone fracture

 

 

顎骨折の症状

上顎骨骨折の症状

上顎骨骨折の症状には下記の症状があります。
 

  • 開口障害(口が開きにくい)
  • 骨折部の痛み
  • 顔面の変形
  • 頬部の知覚障害(頬部、鼻の側面、上口唇、歯肉のしびれ)
  • 歯牙欠損の合併
  • 眼球運動障害による複視(ものが二重に見える)

 

これらの症状のうち、弊社がこれまで取り扱った事案では、圧倒的に頬部の知覚障害(しびれ)に関する相談が多いです。

 

 

下顎骨骨折の症状

下顎骨骨折の症状には下記の症状があります。
 

  • 開口障害(口が開きにくい)
  • 顎を動かしたときの痛み
  • 骨折部の痛み
  • 顔面の変形
  • 顎の知覚障害(顎のしびれ)
  • 歯牙欠損の合併

 

 

顎骨折の診断

顎骨折

顎骨折を始めとする顔面骨は形態が複雑です。このためレントゲン検査ではなくCT検査が第一選択になります。

 

上顎骨骨折では眼球運動障害による複視を併発する可能性があるため、視力や眼球運動検査が必要なケースもあります。

 

 

<参考>
【日経メディカル】顔面骨折の後遺症は眼科、耳鼻科、皮膚科も関与
【医師が解説】複視の後遺障害が等級認定されるポイント|交通事故
【医師が解説】眼窩底骨折の後遺症が等級認定されるヒント|交通事故

 

 

mandible fracture

 

 

眼窩下神経損傷(三叉神経第二枝損傷)

上顎骨骨折には、頬骨骨折と同様に眼窩下神経損傷(三叉神経第二枝損傷)を高率に併発します。このため頬部の知覚障害(頬部、鼻の側面、上口唇、歯肉のしびれ)を訴える交通事故被害者が多いです。

 

自賠責保険で後遺障害12級13号に認定されるためには、神経伝導速度検査で有意所見を認めることが必須です。このため弊社への問い合わせで最も多いのは、眼窩下神経に対する神経伝導速度検査に関してです。

 

しかし、眼窩下神経損傷(三叉神経第二枝損傷)に関しては、解剖学的な制約から神経伝導速度検査を実施することは不可能です。

 

また、眼窩下神経の損傷を、画像所見として直接捉えることはできません。

 

 

<参考>
【医師が解説】頬骨骨折が後遺症認定されるヒント|交通事故

 

 

infraorbital nerve

 

 

オトガイ神経損傷(三叉神経第三枝損傷)

下顎骨骨折には、オトガイ神経損傷(三叉神経第三枝損傷)を併発する可能性があります。オトガイ神経損傷では顎の一部の知覚障害が出現します。

 

オトガイ神経損傷は、眼窩下神経損傷ほど知覚障害の範囲が広くないので気付かれないケースも少なくありません。

 

 

顎骨折に対する治療

 

顎骨折の転位が小さく、開口障害や複視がない場合には保存療法を選択することもあります。一方、骨折部の転位大きければ、プレートやスクリューを用いた手術療法が選択されるケースが多いです。

 

 

inquiry

 

Traffic accident patient

 

 

顎骨折で考えられる後遺障害

神経障害

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

 

眼窩下神経損傷による頬部の知覚障害(頬部、鼻の側面、上口唇、歯肉のしびれ)が認定される可能性があります。

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

 

12級13号と同じく、眼窩下神経損傷による頬部の知覚障害(頬部、鼻の側面、上口唇、歯肉のしびれ)が認定される可能性があります。

 

 

歯牙欠損に関連すると考えられる後遺障害として、歯牙障害、言語機能障害、咀嚼障害、開口障害などが挙げられます。

 

 

言語機能障害

言語機能障害の評価対象になる4種の語音は以下のごとくです。
 

  • 口唇音:ま行、ぱ行、ば行、わ行、ふ
  • 歯舌音:な行、た行、だ行、ら行、さ行、ざ行、しゅ、じゅ、し
  • 口蓋音:か行、が行、や行、ひ、にゅ、ぎゅ、ん
  • 咽頭音:は行

 

 

1級2号:咀嚼及び言語の機能を廃したもの

 

咀嚼の機能を廃したものとは、固形物を食べられず流動食以外は摂取できない状態です。一方、言語の機能を廃したものとは、語音4種のうち3種以上の発音ができない状態です。

 

 

3級2号:咀嚼又は言語の機能を廃したもの

 

固形物を食べられず流動食以外は摂取できない状態、もしくは語音4種のうち3種以上の発音ができない状態です。

 

 

4級2号:咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの

 

咀嚼の機能に著しい障害を残すものとは、お粥と同じくらいの物しか食られない状態です。一方、言語の機能に著しい障害を残すものとは、語音4種のうち2種以上の発音ができない状態、もしくは綴音(てつおん)機能の障害のために、言葉で意思疎通できない状態です。

 

 

6級2号:咀嚼又は言語の機能を著しい障害を残すもの

 

以下のいずれかの状態です。
 

  • お粥と同じくらいの物しか食られない
  • 語音4種のうち2種以上の発音ができない
  • 綴音(てつおん)機能の障害のために、言葉で意思疎通できない

 

 

9級6号:咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの

 

咀嚼の機能に障害を残すものとは、咀嚼できない固形物がある状態、もしくは十分に咀嚼できない物があって医学的に確認できるものを指します。

 

一方、言語の機能に障害を残すものとは、語音4種のうち1種以上の発音ができない状態です。

 

 

10級3号:咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの

 

以下のいずれかの状態です。
 

  • 咀嚼できない固形物がある
  • 十分に咀嚼できない物があって医学的に確認できる
  • 語音4種のうち1種以上の発音ができない

 

 

12級相当:開口障害等を原因として咀嚼に相当時間を要するもの

 

口を開けづらいため、咀嚼に時間がかかることを医学的に証明できる状態です。

 

 

咀嚼障害

咀嚼に関連する器官の障害により咀嚼機能が低下していることを指します。関連器官としては、舌や顎顔面周囲筋、歯牙、顎骨などがあります。

 

咀嚼とは、これらの器官が協調して行う動作ですが、これらの器官に一つでも障害が生じれば食物を意図通りに噛み砕けないため、咀嚼障害が生じる可能性があります。

 

歯牙障害が起因する咀嚼障害としては、歯牙の喪失に伴う上下顎の歯牙接触の喪失や接触部位の変化などが考えられます。

 

評価方法として、患者や家族の主観的評価による“そしゃく状況報告表”やピーナッツなど具体的な試料を用いる方法があります。

 

 

1級2号:咀嚼及び言語の機能を廃したもの

 

咀嚼の機能を廃したものとは、固形物を食べられず流動食以外は摂取できない状態です。一方、言語の機能を廃したものとは、語音4種のうち3種以上の発音ができない状態です。

 

 

3級2号:咀嚼又は言語の機能を廃したもの

 

固形物を食べられず流動食以外は摂取できない状態、もしくは語音4種のうち3種以上の発音ができない状態です。

 

 

4級2号:咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの

 

咀嚼の機能に著しい障害を残すものとは、お粥と同じくらいの物しか食られない状態です。一方、言語の機能に著しい障害を残すものとは、語音4種のうち2種以上の発音ができない状態、もしくは綴音(てつおん)機能の障害のために、言葉で意思疎通できない状態です。

 

 

6級2号:咀嚼又は言語の機能を著しい障害を残すもの

 

以下のいずれかの状態です。
 

  • お粥と同じくらいの物しか食られない
  • 語音4種のうち2種以上の発音ができない
  • 綴音(てつおん)機能の障害のために、言葉で意思疎通できない

 

 

9級6号:咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの

 

咀嚼の機能に障害を残すものとは、咀嚼できない固形物がある状態、もしくは十分に咀嚼できない物があって医学的に確認できるものを指します。

 

一方、言語の機能に障害を残すものとは、語音4種のうち1種以上の発音ができない状態です。

 

 

10級3号:咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの

 

以下のいずれかの状態です。
 

  • 咀嚼できない固形物がある
  • 十分に咀嚼できない物があって医学的に確認できる
  • 語音4種のうち1種以上の発音ができない

 

 

12級相当:開口障害等を原因として咀嚼に相当時間を要するもの

 

口を開けづらいため、咀嚼に時間がかかることを医学的に証明できる状態です。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

開口障害

受傷者の意図通りに開口ができない、具体的には開口量や開口路に変化が生じることを指します。

 

直接的に開閉口動作に影響を与える器官は、顎関節や顎顔面に付着する筋肉、それらを支配する神経系となり、歯牙はそれに含まれません。

 

一方で、閉口動作における最終的な顎の位置を決定するのは上下顎歯牙の接触なので、受傷によってそれらが障害され閉口時の顎の位置が不安定になれば、顎関節症が発症して二次的に開口障害が生じる可能性があります。

 

しかし、こちらは理論上関連があったとしてもその診断が困難であり、受傷前の顎関節症状の有無や程度、その他の口腔内状況を示す資料から関連性を主張する形となります。

 

 

12級相当:開口障害等を原因として咀嚼に相当時間を要するもの

 

口を開けづらいため、咀嚼に時間がかかることを医学的に証明できる状態です。

 

 

<参考>
【日経メディカル】顔面骨折の後遺症は眼科、耳鼻科、皮膚科も関与
【医師が解説】頬骨骨折が後遺症認定されるヒント|交通事故

 

 

歯牙障害

歯科補てつを加えた本数によって以下のような後遺障害が認定されます。

 

  • 10級4号:14歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
  • 11級4号:10歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
  • 12級3号:7歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
  • 13級5号:5歯以上に対し歯科補てつを加えたもの
  • 14級2号:3歯以上に対し歯科補てつを加えたもの

 

 

<参考>
【歯科医師が解説】歯牙欠損が後遺障害認定されるヒント|交通事故

 

 

眼球の運動障害

10級2号:正面を見た場合に複視の症状を残すもの

 
骨折の程度、およびヘスチャートで測定した複視の程度で認定されます。

 

 

13級2号:正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの

 
10級2号と同じく、骨折の程度、およびヘスチャートで測定した複視の程度で認定されます。

 

 

<参考>
【日経メディカル】顔面骨折の後遺症は眼科、耳鼻科、皮膚科も関与
【医師が解説】複視の後遺障害が等級認定されるポイント|交通事故
【医師が解説】眼窩底骨折の後遺症が等級認定されるヒント|交通事故

 

 

 

nikkei medical

 

 

【弁護士必見】顎骨折の後遺障害認定ポイント

 

上顎骨骨折の後遺障害等級認定のポイントは、眼窩下神経損傷による頬部の知覚障害の存在を、客観的に証明できるか否かです。

 

一般的には非該当の事案が多い印象を受けます。そして客観的に証明できる度合いによって、12級13号から非該当まで後遺障害等級認定の幅が異なります。

 

弊社では、上顎骨骨折後の眼窩下神経損傷(三叉神経第二枝損傷)事案をたくさん取り扱ってきましたが、未だに12級13号と14級9号に認定される事案の差が分かりません。

 

確実に12級13号が認定されるだろうと予測していたのに14級9号しか認定されなかった事案があるかと思えば、ほとんど転位が無いのに12級13号が等級認定されることもあります。

 

ただひとつ言えるのは、上顎骨骨折後の眼窩下神経損傷による頬部の知覚障害が非該当になった場合には、異議申立てが望ましいことでしょう。

 

ただし、単に弁護士意見書を添付して異議申立てするだけでは、等級認定される可能性は高くありません。上顎骨骨折では、耳鼻科専門医の協力が不可欠と考えています。

 

弊社では、上顎骨骨折後の眼窩下神経損傷による頬部の知覚障害事案の取り扱い実績が多数ございます。お困りの事案があればこちらからお問い合わせください。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

まとめ

 

顎骨折は顔面への直達外力で受傷します。顎骨折の中でも上顎骨骨折では高率に眼窩下神経損傷による頬部の知覚障害(頬部、鼻の側面、上口唇、歯肉のしびれ)が残存します。

 

非該当の事案が多いですが、耳鼻科専門医の協力を得て異議申立てすると、後遺障害が認定される可能性があります。

 

 

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