整形外科専門医が解説:開放骨折の後遺症(交通事故)

投稿日:2022年4月24日 更新日:

開放骨折と後遺症

開放骨折とは

開放骨折は「骨折に創(傷)を伴う場合」と定義され、骨折した骨が皮膚から飛び出し、外に露出した状態をいいます。骨折部が皮膚の外に飛び出すと、雑菌による感染を引き起こす危険性が高まるため、できるだけ早く処置を行う必要があります。

 

一般的には感染などの合併症の発症リスクを抑えられるゴールデンタイムは受傷後6時間以内であると言われています。それ以降は感染率が上がると言われていますが、もちろん6時間を過ぎた際もできるだけ早い処置が望まれます。

 

よく患者さんに「これは複雑骨折ですか?」と聞かれますが、複雑骨折=開放骨折です。骨折線が複雑に入り組んで多数の骨片を有する粉砕骨折と混同しやすいので、最近はこの用語はあまり用いられていません。

 

tibial fracture

 

開放骨折の治療

開放骨折を起こすと、当然ながら痛みが強く、緊急で処置が必要となります。多くは手術室で緊急手術を行うこととなります。手術では、まず徹底的に骨折部を洗浄し、雑菌による感染を起こさないようにします。また、手術後に感染を起こさないように、傷の大きさ・軟部の損傷の具合に応じて抗生剤の全身投与を行います。

 

開放骨折の場合は、通常の骨折よりも外力が大きくなっています。そのため、術後の出血量も通常より大きくなります。その場合は術後のコンパートメント症候群にも要注意です。

 

コンパートメント症候群とは、筋膜で覆われる区画(=コンパートメント)内部の圧が、浮腫や出血などのために亢進することによって起こる病態です。圧が亢進すると、血行障害や神経障害をきたして筋肉の機能不全や筋壊死に至ります。場合によっては切断を余儀なくされることもあります。

 

開放骨折で生じる後遺症

開放骨折で最も多い後遺症の原因は、創部からの感染です。感染が長引くと骨の中に細菌が住み着いてしまい、骨髄炎という状態になります。

 

その他、骨折部周囲の血流が悪くなっているため遷延癒合(骨が癒合する時間が通常より長くなること)を起こしたり、上記のコンパートメント症候群を併発することがあります。これらの合併症を起こしてしまうと、骨折の中でも死に至る可能性もあり、非常に危険な状態です。

 

開放骨折に対する一般的な治療法は?

開放骨折してから病院に到着するまで

開放骨折を起こした場合、目で見て判断することができますので、診断は簡単です。病院受診までは簡易的で良いので添え木固定を行って下さい。具体的には身近にある硬いもの(定規などのしっかりした物)を骨折部にあてがい、包帯やハンカチなどで支えてあげるとよいかもしれません。

 

病院では緊急処置・手術を行った後に、傷の感染が起きないように定期的にチェックをします。また、全身管理として抗生剤の投与も行います。

 

開放骨折に対する手術について

手術では徹底的に汚染された組織を取り除きます(=デブリドメント)。また、骨折した部位や汚染された軟部を落ち着かせるためにピンやプレート、髄内釘を挿入したり、創外固定をつけて軟部が落ち着いてから、二期的に骨をつなぐ手術を行うことがあります。

 

開放骨折と後遺症に基づいた損害賠償

救急搬送に長期の入院、ご本人にとっては「大事故」としか言いようのない、交通事故による開放骨折。では、後遺症が起こった場合、自賠責ではどのような補償が受けられるでしょうか。

 

開放骨折では通常の骨折と違い、骨折した骨が飛び出た状態ですので、通常よりも治療の時間がかかるため、合併症率が高くなります。骨が一部無くなっている可能性もあり、その分癒合が遅くなるため偽関節の危険性が高くなります。

 

術後管理としても、コンパートメント症候群や創外固定を挿入した部位周辺の感染、ピンが抜けるなど、通常の骨折では起こらないようなことが起こるため、術後管理はより難しくなります。

 

そのため、開放骨折では以下のように欠損障害、変形障害、短縮障害、機能障害、醜状障害、局部の神経系統の障害等が残存する可能性があります。

 

欠損障害

手指

  • 3級5号:両手の手指の全部を失ったもの
  • 6級7号:1手の5の手指または母指を含み4の手指を失ったもの
  • 7級6号:1手の母指を含み3の手指または母指以外の4の手指を失ったもの
  • 8級3号:1手の母指を含み2の手指または母指以外の3の手指を失ったもの
  • 9級8号:1手の母指または母指以外の2の手指を失ったもの
  • 11級6号:1手の示指、中指または環指を失ったもの
  • 12級8号:1手の小指を失ったもの
  • 13級5号:1手の母指の指骨の一部を失ったもの
  • 14級6号:1手の母指以外の手指の指骨のいち部を失ったもの

手指を失ったものは中手骨または基節骨で切断したものを、母指については指節間関節(=IP関節)、それ以外の指については近位指節間関節(=PIP関節)において、基節骨と中節骨が離断したものをいいます。指骨の一部を失ったものは一部を失っていることがレントゲンで確認できるものを意味します。

 

足指

  • 5級6号:両足の足指の全部を失ったもの
  • 8級10号:1足の足指の全部を失ったもの
  • 9級10号:1足の第1の足指を含み、2以上の足指を失ったもの
  • 10級8号:1足の第1の足指または他の4の足指を失ったもの
  • 12級10号:1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったものまたは第3の足指以下の3の足指を失ったもの
  • 13級9号:1足の第3の足指以下の1または2の足指を失ったもの

足指の開放骨折は比較的多く経験します。ここにおける欠損障害とは中足趾節関節(=MP関節)から失ったものをいいます。

 

変形障害

上肢

  • 7級9号:1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
    上腕骨骨幹部や前腕骨幹部に癒合不全を残した場合、日常生活への支障が大きく出ます。そのため、補装具が必要なことがあります。それが常に硬性であれば7級9号、そうでなければ8級8号となります。
  • 8級8号:1上肢に偽関節を残すもの
    上記以外で、上腕骨・前腕に偽関節を残すものとなります。
  • 12級8号:長管骨に変形を残すもの
    外見から想定できる程度(15度以上屈曲して不正癒合したもの)の変形はあまり経験しません。また、上腕骨が50度以上回旋変形癒合することも、ほとんど存在しません。

 

下肢

  • 7級10号:1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
    上肢と同様で、大腿骨や脛骨、腓骨に癒合不全を残すものであり、常に硬性補装具が必要であるものは時々散見されます。プレート固定や髄内釘固定を行った後に偽関節となり、補装具なしに全荷重歩行するとスクリューが折れる可能性があるからです。
  • 8級9号:1下肢に偽関節を残すもの
    上記の7級10号以外の偽関節症例となります。
  • 12級8号:長管骨に変形を残すもの
    開放骨折のため、骨欠損が生じて大腿骨・脛骨の直径が2/3以下に減少したものは比較的よく見られます。下腿の変形障害で認定されるのは、このケースが多いかと考えられます。

 

短縮障害

下肢

  • 8級5号:1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
  • 10級7号:1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
  • 13級8号:1下肢を1センチメートル以上短縮したもの
    下肢の長さを測定する際は、上前腸骨棘と下腿内果下端の長さを健側と比較することによって行います。

 

機能障害

大関節(上肢:肩、肘、手、下肢:股、膝、足)について

  • 10級9号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
    関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているものです。
    肩関節・股関節の開放骨折はほとんどありませんが、上肢では肘や手、下肢では膝や足関節の開放骨折は時々ありますので、関節機能障害を残すことがあります。
  • 12級6号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの、関節の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されているものです。

 

小関節(手指)について

  • 4級6号:両手の手指の全部の用を廃したもの
  • 7級7号:1手の5の手指又は母指を含み4の手指の用を廃したもの
  • 8級4号:1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指の用を廃したもの
  • 9級9号:1手の手指を含み2の手指又は母指以外の3の手指の用を廃したもの
  • 10級6号:1手の母指又は母指以外の2の手指の用を廃したもの
  • 12級9号:1手の手指、中指又は監視の用を廃したもの
  • 13級4号:1手の小指の用を廃したもの
  • 14級7号:1手の母指以外の手指の遠位指節間関節(=DIP関節)を屈伸することができなくなったもの

 

小関節(足指)について

  • 7級11号:両足の足指の全部の用を廃したもの
  • 9級11号:1足の足指の全部の用を廃したもの
  • 11級8号:1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
  • 12級11号:1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
  • 13級10号:1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
  • 14級8号:1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの

 

醜状障害

詳細はこちらをご参照下さい。

 

局部の神経系統の障害

  • 12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
  • 14級9号:局部に神経症状を残すもの

開放骨折においては、局所の神経損傷を伴っていることが多く経験します。その際は、tinel徴候(損傷部位を軽く叩打すると、その遠位部にチクチクと響く症状)を確認します。また、電気生理学的検査(筋電図・神経伝導検査・誘発電位検査など)で神経損傷の存在を証明できるケースもあります。

 

開放骨折による後遺症において争いになりやすいポイント

開放骨折の治療の後に争いになりやすいのは、逆にその治療効果が上手くいったときに多く見られます。患者さんからすると、「こんなにひどい骨折で、緊急手術まで受けて、治療が長期化したのに非該当なの?」という気持ちは十分に理解できます。

 

適切な治療を早期に受けて、問題なく骨癒合が得られた場合は、自賠責保険は杓子定規的に非該当の判断を下します。このような事案では、意見書が効果的なケースを多々経験します。

 

弊社では自賠責認定基準に熟知している専門の医師が、客観的に医証を精査して判断を致します。後遺症の重さや治療による苦痛、その後の日常生活における精神的苦痛を正しく評価することが可能です。

 

まとめ

この記事では、開放骨折によって残存しうる後遺症について説明しました。欠損障害、変形障害、短縮障害、機能障害、醜状障害、局部の神経系統の障害などが後遺障害として評価されます。

 

そして、最も多いのは機能障害や局所の神経系統の障害です。骨癒合が良好に得られた場合には、いくら可動域制限や痺れが残存したとしても、非該当となるケースが多いようです。後遺障害認定が非該当、もしくは予想していた等級が認定されなかった事案があれば、弊社へご相談下さい。

 

-ブログ

Copyright© メディカルコンサルティング合同会社 , 2022 AllRights Reserved.