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【医師が解説】開放骨折の後遺症と後遺障害認定ポイント|医療鑑定

交通事故で発生する四肢の重度外傷のひとつに開放骨折があります。開放骨折は通常の骨折と比べると激しい骨折が多いです。このため、開放骨折は後遺症を残しやすい外傷です。

 

本記事は、開放骨折の後遺症が等級認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/9/8

 

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開放骨折(複雑骨折)とは

 

開放骨折は「骨折に創(傷)を伴う場合」と定義され、骨折した骨が皮膚から飛び出し、外に露出した状態をいいます。

 

骨折部が皮膚の外に飛び出すと、雑菌による感染を引き起こす危険性が高まるため、できるだけ早く処置を行う必要があります。

 

一般的には感染などの合併症の発症リスクを抑えられるゴールデンタイムは受傷後6時間以内であると言われています。

 

それ以降は感染率が上がると言われていますが、もちろん6時間を過ぎた際もできるだけ早い処置が望まれます。

 

よく患者さんに「これは複雑骨折ですか?」と聞かれますが、複雑骨折=開放骨折です。

 

骨折線が複雑に入り組んで多数の骨片を有する粉砕骨折と混同しやすいので、最近はこの用語はあまり用いられていません。

 

 

tibial fracture

 

 

開放骨折の治療

 

開放骨折を起こすと、当然ながら痛みが強く、緊急で処置が必要となります。多くは手術室で緊急手術を行うこととなります。

 

手術では、まず徹底的に骨折部を洗浄し、雑菌による感染を起こさないようにします。また、手術後に感染を起こさないように、傷の大きさ・軟部の損傷の具合に応じて抗生剤の全身投与を行います。

 

開放骨折の場合は、通常の骨折よりも外力が大きくなっています。そのため、術後の出血量も通常より大きくなります。その場合は術後のコンパートメント症候群にも要注意です。

 

コンパートメント症候群とは、筋膜で覆われる区画(=コンパートメント)内部の圧が、浮腫や出血などのために亢進することによって起こる病態です。

 

圧が亢進すると、血行障害や神経障害をきたして筋肉の機能不全や筋壊死に至ります。場合によっては切断を余儀なくされることもあります。

 

 

開放骨折で生じる後遺症

 

開放骨折で最も多い後遺症の原因は、創部からの感染です。感染が長引くと骨の中に細菌が住み着いてしまい、骨髄炎という状態になります。

 

その他、骨折部周囲の血流が悪くなっているため遷延癒合(骨が癒合する時間が通常より長くなること)を起こしたり、上記のコンパートメント症候群を併発することがあります。

 

これらの合併症を起こしてしまうと、骨折の中でも死に至る可能性もあり、非常に危険な状態です。

 

 

開放骨折に対する一般的な治療法は?

受傷から病院に到着するまで

開放骨折を起こした場合、目で見て判断することができますので、診断は簡単です。病院受診までは簡易的で良いので添え木固定を行って下さい。

 

具体的には身近にある硬いもの(定規などのしっかりした物)を骨折部にあてがい、包帯やハンカチなどで支えてあげるとよいかもしれません。

 

病院では緊急処置・手術を行った後に、傷の感染が起きないように定期的にチェックをします。また、全身管理として抗生剤の投与も行います。

 

 

開放骨折に対する手術について

手術では徹底的に汚染された組織を取り除きます(=デブリドメント)。また、骨折した部位や汚染された軟部を落ち着かせるためにピンやプレート、髄内釘を挿入したり、創外固定をつけて軟部が落ち着いてから、二期的に骨をつなぐ手術を行うことがあります。

 

 

開放骨折は全治何ヶ月?

 

開放骨折では、感染(骨髄炎)併発の有無、軟部組織の状態、ズレ(転位)の程度、骨折形態が個々の症例で大きく異なります。このため、標準的な全治までの期間を示すことはできません。

 

仮に、感染(骨髄炎)を併発しなかった場合には、通常の骨折と同じか、やや長い治癒期間が想定されます。日常生活で制限が無くなるのは受傷してから3ヵ月、スポーツ復帰は半年から1年がひとつの目安でしょう。

 

一方、感染を併発した場合には、全治までの期間を予想することができません。何年かかっても感染を制御できないケースも珍しくないからです。

 

 

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開放骨折で想定される後遺障害

 

救急搬送に長期の入院、ご本人にとっては「大事故」としか言いようのない、交通事故による開放骨折。では、後遺症が起こった場合、自賠責ではどのような補償が受けられるでしょうか。

 

開放骨折では通常の骨折と違い、骨折した骨が飛び出た状態ですので、通常よりも治療の時間がかかるため、合併症率が高くなります。

 

骨が一部無くなっている可能性もあり、その分癒合が遅くなるため偽関節の危険性が高くなります。

 

術後管理としても、コンパートメント症候群や創外固定を挿入した部位周辺の感染、ピンが抜けるなど、通常の骨折では起こらないようなことが起こるため、術後管理はより難しくなります。

 

そのため、開放骨折では以下のように欠損障害、変形障害、短縮障害、機能障害、醜状障害、局部の神経系統の障害等が残存する可能性があります。

 

 

欠損障害

手指

 

  • 3級5号:両手の手指の全部を失ったもの
  • 6級7号:1手の5の手指または母指を含み4の手指を失ったもの
  • 7級6号:1手の母指を含み3の手指または母指以外の4の手指を失ったもの
  • 8級3号:1手の母指を含み2の手指または母指以外の3の手指を失ったもの
  • 9級8号:1手の母指または母指以外の2の手指を失ったもの
  • 11級6号:1手の示指、中指または環指を失ったもの
  • 12級8号:1手の小指を失ったもの
  • 13級5号:1手の母指の指骨の一部を失ったもの
  • 14級6号:1手の母指以外の手指の指骨のいち部を失ったもの

 

手指を失ったものは中手骨または基節骨で切断したものを、母指については指節間関節(=IP関節)、それ以外の指については近位指節間関節(=PIP関節)において、基節骨と中節骨が離断したものをいいます。

 

指骨の一部を失ったものは一部を失っていることがレントゲンで確認できるものを意味します。

 

 

足指

 

  • 5級6号:両足の足指の全部を失ったもの
  • 8級10号:1足の足指の全部を失ったもの
  • 9級10号:1足の第1の足指を含み、2以上の足指を失ったもの
  • 10級8号:1足の第1の足指または他の4の足指を失ったもの
  • 12級10号:1足の第2の足指を失ったもの、第2の足指を含み2の足指を失ったものまたは第3の足指以下の3の足指を失ったもの
  • 13級9号:1足の第3の足指以下の1または2の足指を失ったもの

 

足指の開放骨折は比較的多く経験します。ここにおける欠損障害とは中足趾節関節(=MP関節)から失ったものをいいます。

 

 

変形障害

上肢

 

  • 7級9号:1上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
    上腕骨骨幹部や前腕骨幹部に癒合不全を残した場合、日常生活への支障が大きく出ます。そのため、補装具が必要なことがあります。それが常に硬性であれば7級9号、そうでなければ8級8号となります。
  •  

  • 8級8号:1上肢に偽関節を残すもの
    上記以外で、上腕骨・前腕に偽関節を残すものとなります。
  •  

  • 12級8号:長管骨に変形を残すもの
    外見から想定できる程度(15度以上屈曲して不正癒合したもの)の変形はあまり経験しません。また、上腕骨が50度以上回旋変形癒合することも、ほとんど存在しません。

 

 

下肢

 

  • 7級10号:1下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
    上肢と同様で、大腿骨や脛骨、腓骨に癒合不全を残すものであり、常に硬性補装具が必要であるものは時々散見されます。プレート固定や髄内釘固定を行った後に偽関節となり、補装具なしに全荷重歩行するとスクリューが折れる可能性があるからです。
  •  

  • 8級9号:1下肢に偽関節を残すもの
    上記の7級10号以外の偽関節症例となります。
  •  

  • 12級8号:長管骨に変形を残すもの
    開放骨折のため、骨欠損が生じて大腿骨・脛骨の直径が2/3以下に減少したものは比較的よく見られます。下腿の変形障害で認定されるのは、このケースが多いかと考えられます。

 

 

短縮障害

下肢

 

  • 8級5号:1下肢を5センチメートル以上短縮したもの
  • 10級7号:1下肢を3センチメートル以上短縮したもの
  • 13級8号:1下肢を1センチメートル以上短縮したもの
    下肢の長さを測定する際は、上前腸骨棘と下腿内果下端の長さを健側と比較することによって行います。

 

 

機能障害

大関節(上肢:肩、肘、手、下肢:股、膝、足)について

 

  • 10級9号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの
    関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているものです。
    肩関節・股関節の開放骨折はほとんどありませんが、上肢では肘や手、下肢では膝や足関節の開放骨折は時々ありますので、関節機能障害を残すことがあります。
  •  

  • 12級6号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの、関節の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されているものです。

 

 

小関節(手指)について

 

  • 4級6号:両手の手指の全部の用を廃したもの
  • 7級7号:1手の5の手指又は母指を含み4の手指の用を廃したもの
  • 8級4号:1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指の用を廃したもの
  • 9級9号:1手の手指を含み2の手指又は母指以外の3の手指の用を廃したもの
  • 10級6号:1手の母指又は母指以外の2の手指の用を廃したもの
  • 12級9号:1手の手指、中指又は監視の用を廃したもの
  • 13級4号:1手の小指の用を廃したもの
  • 14級7号:1手の母指以外の手指の遠位指節間関節(=DIP関節)を屈伸することができなくなったもの

 

 

小関節(足指)について

 

  • 7級11号:両足の足指の全部の用を廃したもの
  • 9級11号:1足の足指の全部の用を廃したもの
  • 11級8号:1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
  • 12級11号:1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
  • 13級10号:1足の第2の足指の用を廃したもの、第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの又は第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
  • 14級8号:1足の第3の足指以下の1又は2の足指の用を廃したもの

 

 

醜状障害

詳細については下記を参照して下さい。

 

<参考>
【医師が解説】外貌醜状が後遺障害に認定されるポイント|交通事故

 

 

局部の神経系統の障害

  • 12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
  • 14級9号:局部に神経症状を残すもの

 

開放骨折においては、局所の神経損傷を伴っていることが多く経験します。その際は、tinel徴候(損傷部位を軽く叩打すると、その遠位部にチクチクと響く症状)を確認します。

 

また、電気生理学的検査(筋電図・神経伝導検査・誘発電位検査など)で神経損傷の存在を証明できるケースもあります。

 

 

 

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【12級7号】開放骨折の後遺障害認定事例

事例サマリー

  • 被害者:35歳
  • 初回申請:14級9号
  • 異議申立て: 12級7号(1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの)

 

骨折部は下腿であり、見た目は派手な開放骨折です。足関節の可動域制限が認められましたが事前認定では14級9号でした。弊社からの意見書を添付して異議申し立てを行い、12級7号に認定された事例です。

 

 

弊社の取り組み

開放骨折では骨のみではなく、周囲の軟部組織の癒着を伴うため、関節周囲の可動域制限を高確率に併発します。

 

一方、自賠責保険は画像検査に着目して、骨癒合しているか否かを後遺障害認定の判断材料にする事案が多いです。

 

後遺障害に該当するかの判断は、画像所見だけでは不十分です。医師意見書において、開放骨折では軟部組織の損傷が通常の骨折よりも大きいことを主張することで、12級7号が認定されました。

 

 

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【弁護士必見】開放骨折の後遺障害認定ポイント

 

開放骨折の治療の後に争いになりやすいのは、逆にその治療効果が上手くいったときに多く見られます。

 

患者さんからすると、「こんなにひどい骨折で、緊急手術まで受けて、治療が長期化したのに非該当なの?」という気持ちは十分に理解できます。

 

適切な治療を早期に受けて、問題なく骨癒合が得られた場合は、自賠責保険は杓子定規的に非該当の判断を下します。このような事案では、意見書が効果的なケースを多々経験します。

 

弊社では自賠責認定基準に熟知している専門医が、客観的に医証を精査して判断を致します。後遺症の重さや治療による苦痛、その後の日常生活における精神的苦痛を正しく評価することが可能です。

 

 

<参考>
【日経メディカル】意見書で交通事故の後遺症が決まるってホント?

 

 

 

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開放骨折の後遺障害認定で弊社ができること

弁護士の方へ

弊社では、交通事故による開放骨折の後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。

 

 

等級スクリーニング

 

現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。

 

等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。

 

等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。

 

 

<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

 

 

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医師意見書

 
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。

 

医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。

 

医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。

 

弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。

 

 

<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

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画像鑑定報告書

 

交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。

 

画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。

 

画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。

 

弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。

 

 

<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

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交通事故による開放骨折の後遺症でお悩みの被害者の方へ

弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。

 

また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。

 

もし、後遺障害で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。

 

尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。

 

 

Traffic accident patient

 

 

まとめ

 

この記事では、開放骨折によって残存しうる後遺症について説明しました。欠損障害、変形障害、短縮障害、機能障害、醜状障害、局部の神経系統の障害などが後遺障害として評価されます。

 

そして、最も多いのは機能障害や局所の神経系統の障害です。骨癒合が良好に得られた場合には、いくら可動域制限や痺れが残存したとしても、非該当となるケースが多いようです。

 

後遺障害認定が非該当、もしくは予想していた等級が認定されずにお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。

 

 

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