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【医師が解説】偽関節の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故

交通事故で腕や足を骨折すると、時として骨折した部分がくっつかない場合があります。このような骨が治らない状態を偽関節と呼びます。偽(ニセもの)関節と呼ばれるのは、もともと関節ではない部分が関節のようになってしまうからです。

 

偽関節は後遺症を残しやすい外傷です。本記事は、偽関節の後遺症が等級認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/4/19

 

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骨がくっつかない状態(遷延癒合と偽関節)

遷延癒合

骨折部くっつかない状況には、遷延癒合と偽関節があります。両者は受傷から経過した期間で区分されます。

 

遷延癒合とは、骨折の受傷時、もしくは手術をしてから3ヵ月経過しても、単純X線像(レントゲン検査)などで骨癒合していないものです。

 

骨折部の骨癒合は遅れていますが、治癒しようとする体の働きはまだ停止していない状況です。

 

 

偽関節

偽関節とは、骨折の受傷時、もしくは手術をしてから6ヵ月経過しても、単純X線像(レントゲン検査)などで骨癒合していないものです。

 

つまり、骨折してから3ヵ月経っても骨がくっついていなければ遷延癒合といい、6ヵ月経過しても骨癒合していないと偽関節と呼ばれるようになります。

 

骨折部の骨癒合が完全に停止している症例が多く、偽関節になった原因に応じた、何らかの対策を採る必要があります。

 

 

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交通事故で偽関節が発生する原因

 

骨折部が偽関節になってしまうのには、いくつか原因があります。代表的な原因は下記のごとくです。

 

  • 骨折部の感染
  • 骨折部の固定性不足
  • 骨欠損が大きい
  • 骨折部の粉砕程度がひどい
  • 骨折部の周りの軟部組織損傷がひどい
  • 骨癒合しにくい部位の骨折
  • 喫煙、アルコールの過剰摂取
  • 糖尿病などの内科的疾患のコントロール不良

 

 

偽関節になる症例では、いくつかの要因が重なっているケースが多いです。特に喫煙は骨癒合に極めて大きな悪影響を及ぼすので注意が必要です。

 

 

交通事故で偽関節が発生しやすい部位

 

  • 脛骨骨幹部の遠位1/3
  • 鎖骨遠位端骨折
  • 上腕骨近位端骨折
  • 舟状骨骨折
  • 胸腰移行部の椎体
  • 大腿骨頚部骨折

 

これらの多くに共通しているのは、骨の周りの軟部組織が乏しいため血行が悪かったり、解剖学的にストレスのかかりやすい部位です。

 

 

<参考>
【医師が解説】脛骨骨折の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故
【医師が解説】鎖骨骨折の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故
【医師が解説】上腕骨近位端骨折が後遺症認定されるコツ|交通事故
【医師が解説】舟状骨骨折の後遺症が等級認定されるヒント|交通事故
【医師が解説】圧迫骨折が後遺症認定されるポイント|交通事故
【医師が解説】大腿骨骨折が後遺症認定されるポイント|交通事故

 

 

偽関節の症状

 

骨がくっつかないと、当然のごとく骨折部の痛みが残ります。骨折したての頃(急性期)のような激しい痛みではありませんが、骨を動かす度に鈍い痛みが続きます。

 

手の舟状骨が偽関節になると、長い年月をかけて手関節の動きが悪くなっていき、最終的には手関節機能が廃絶する可能性があります。

 

一方、脛骨などの下肢の骨が偽関節になると、痛みのために体重を掛けることもままならなくなり、装具無しでは歩行できないケースも多いです。

 

 

偽関節の診断

 

単純X線像(レントゲン検査)が基本となります。診断だけではなく、治療経過も単純X線像で評価します。

 

一方、単純X線像は2Dなので、偽関節部の評価を充分にできない症例も多いです。受傷後3ヵ月や6ヵ月といった区切りの時期には、より正確に骨折部の状態を判断するためにCT検査を実施します。

 

CT検査は3D画像に再構成することも可能で、また任意の断面に骨折部を関節することもできます。偽関節の診断・治療には必須の検査と言えるでしょう。

 

 

偽関節に対する治療

偽関節の保存療法

  • 超音波骨折治療法
  • 電磁波電気治療法
  • PTH製剤(副甲状腺ホルモン製剤; テリパラチド)

 

注意点は、PTH製剤には偽関節に対する保険診療上の適応が無いことです。非常に効果のある薬剤だけに、表だって偽関節に使用できないのは残念です。

 

 

偽関節の手術療法

  • 偽関節部の切除+自家骨移植術
  • 内固定材料の入れ替え
  • 感染に対する手術

 

偽関節となった原因によって、上記のような手術が選択されます。

 

 

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偽関節で考えられる後遺症

上肢の変形障害

7級9号:偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

 

  • 上腕骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもの
  • 橈骨および尺骨の両方の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもの

 

著しい運動障害を残すものに該当するのは、硬性補装具を常時使用している状態です。

 

 

8級8号:偽関節を残すもの

 

  • 上腕骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
  • 橈骨および尺骨の両方の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
  • 橈骨または尺骨のいずれか一方の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもので、時々硬性補装具を必要とするもの

 

上記のいずれかの条件に該当すれば、8級8号になります。

 

 

12級8号:長管骨に変形を残すもの

 

7級9号や8級8号に該当しない事案でも、直径が2/3以下になっている等で変形が残っていると判断されれば、12級8号に認定される可能性があります。

 

 

下肢の変形障害

7級10号:偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの

 

  • 大腿骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもの
  • 脛骨及び腓骨の両方の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもの
  • 脛骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもの

 

著しい運動障害を残すものに該当するのは、硬性補装具を常時使用している状態です。

 

 

8級9号:偽関節を残すもの

 

  • 大腿骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
  • 脛骨及び腓骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの
  • 脛骨の骨幹部及び骨幹端部に癒合不全を残すもので、常に硬性補装具を必要としないもの

 

上記のいずれかの条件に該当すれば、8級8号になります。

 

 

12級8号:長管骨に変形を残すもの

 

7級10号や8級9号に該当しない事案でも、直径が2/3以下になっている等で変形が残っていると判断されれば、12級8号に認定される可能性があります。

 

 

神経障害

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

14級9号:局部に頑固な神経症状を残すもの

 

7級9号、8級8号、7級10号、8級9号などの変形障害に該当しないと判断された事案では、救済等級として12級13号や14級9号に認定される可能性があります。

 

 

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【弁護士必見】偽関節の後遺障害認定ポイント

 

偽関節の後遺障害で問題になるのは、下肢の大腿骨や脛骨でロッキングプレートで手術を受けている事案です。

 

これらの事案では、内固定材料の影響もあって偽関節の診断が難しいからです。このような場合にはCT検査が必須です。

 

主治医はCT検査を実施して骨折部の精査をおこないますが、特に骨折部の端の方で部分的に骨折部が架橋されている事案を散見します。

 

このような所見があると自賠責保険は偽関節と見做さず、12級8号、12級13号、14級9号とする傾向にあります。

 

しかし、実際にはロッキングプレートによって骨折部がもっているだけなので、数年して金属疲労をおこしてスクリューが折損する可能性が高いです。

 

そして、骨折部のマイクロモーションによる痛みのため、装具無しでは歩行困難です。このような事案では、異議申し立てして7級10号や8級9号認定を目指す必要があります。

 

しかし、自賠責保険を納得させる画像所見を抽出するのは比較的難しいです。また偽関節では臨床経過や身体所見も重要なので、画像鑑定だけでは充分とは言えない事案が多いです。

 

偽関節で変形障害が認定されずにお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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【12級8号】偽関節の後遺障害事例

事案サマリー

  • 被害者:50歳代 女性
  • 初回申請:非該当
  • 異議申立て:12級8号(長管骨に変形を残すもの)

 

原付乗車中に衝突されて転倒して下腿を強打して腓骨骨折を受傷しました。症状固定時に骨癒合していると診断されたため、自賠責保険では非該当となりました。

 

 

弊社の取り組み

下腿外側の痛みが続くため、弊社に相談がありました。改めてレントゲン検査を精査したところ、腓骨の遷延癒合もしくは偽関節の可能性を疑いました。

 

CT検査を再検したところ、腓骨の偽関節を認めました。画像鑑定報告書を添付して異議申し立てしたところ、変形障害として12級8号が認定されました。

 

 

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本事案のポイントは、レントゲン検査だけでは偽関節が分からなかった点です。臨床的には、腓骨骨幹部骨折は重大な後遺症を残しません。このため、整形外科医は腓骨骨幹部骨折を軽く見がちです。

 

しかし、自賠責保険では、腓骨骨幹部骨折の偽関節であっても12級8号に認定されます。このような実臨床と自賠責保険のギャップが大きい事案では、画像所見の精査が必要なケースを散見します。

 

 

 

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まとめ

 

偽関節の後遺障害で問題になるのは、下肢の大腿骨や脛骨でロッキングプレートで手術を受けている事案です。これらの事案では、内固定材料の影響もあって偽関節の診断が難しいです。

 

このような場合には、CT検査を精査したうえで、医師意見書や画像鑑定報告書で異議申し立てすると変形障害が認定される可能性があります。

 

 

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