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【医師が解説】距骨骨折の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故

交通事故で多く発生する下肢の外傷として、足首の骨折があります。代表的な足首の骨折は足関節脱臼骨折ですが、ときどき距骨骨折もあります。

 

距骨骨折は歩行時の痛みなど、さまざまな後遺症を残しやすい外傷の一つです。本記事は、距骨骨折による後遺症が等級認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/4/19

 

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距骨骨折とは

 

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距骨骨折とは足首(足関節)の骨折であり、足根骨骨折のひとつでもあります。距骨骨折の発生頻度は低いです。私自身も25年の臨床経験の中で10症例程度しか経験したことがありません。

 

しかし、表面の約60%が軟骨で覆われているという解剖学的な特殊性のために骨壊死を生じやすく、大きな後遺症を残すことが多い骨折です。

 

距骨頚部骨折や距骨体部骨折では骨壊死を併発する危険性が高く、緊急手術の適応となることが多いです。

 

 

<参考>
【医師が解説】足首骨折(足関節脱臼骨折)の後遺症|交通事故
【医師が解説】骨折が治りにくい部位は?|交通事故の後遺障害

 

 

距骨骨折の受傷機序

 

交通事故では、バイクや自転車で転倒して足首を捻って距骨骨折を受傷することが多いです。

 

また、自動車運転中の衝突により、ペダルや床からの強い衝撃を受けるという機序で受傷するケースも散見されます。

 

 

距骨骨折の症状

 

受傷直後の代表的な症状としては、足首の痛み、腫れ、皮下出血などが挙げられます。痛くて足をつけない、足が腫れている、などの訴えで来院される患者さんがほとんどです。

 

 

距骨骨折の診断

 

単純X線像(レントゲン検査)は簡便な検査であり、骨折の初期診断や治療経過の判定に広く用いられています。

 

CT検査は骨折部を詳細に描出することに加え、3次元的な評価も可能です。特に距骨骨折では必須の検査と言えます。

 

治療戦略を立てるためにも、症状固定時に後遺障害を証明する所見を提示するためにも、有益な検査です。

 

 

距骨骨折の治療

保存療法

骨折部の転位(ズレ)がほとんど無い場合にはギプスや装具などの外固定を用いた保存治療が行われる可能性もありますが、僅かなずれ(転位)であっても手術療法が選択されるケースが多いです。

 

 

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手術療法

距骨頚部骨折では、骨壊死の併発を防ぐために緊急手術(チタン製のスクリューを挿入)が選択されるケースが多いです。

 

 

距骨骨折の後遺障害

 

距骨骨折では、骨壊死を併発するか否かが大きなポイントです。骨壊死を併発した場合には、機能障害(関節の可動域制限)と神経障害(痛み)を残す可能性があります。

 

 

機能障害

距骨骨折により変形が残存した場合や、骨折に対する保存療法によって長期の外固定を要した場合では、足関節の可動域制限が残存することがあります。

 

可動域制限の程度により、以下の通り後遺障害等級が認められる可能性があります。可動域制限の評価には、【背屈+底屈の合計他動可動域】の数値がもちいられることに注意しましょう。

 

 

8級7号:足関節が強直したもの

 

足関節の可動域が健側の10%程度以下に制限されたものです。距骨頚部骨折や距骨体部骨折で骨壊死を併発した症例では、高度の関節可動域制限が残る可能性があります。

 

 

10級11号:足関節の関節可動域が、健側の1/2以下に制限されたもの

 

骨壊死を併発しない距骨骨折であっても、可動域が健側の半分以下になるケースもあります。

 

 

12級7号:足関節の関節可動域が、健側の3/4以下に制限されたもの

 

足関節は荷重関節にもかかわらず、股関節や膝関節ほど関節の面積が大きくないので、外傷性変形性関節症が進行しやすいです。このため、ほとんどずれ(転位)の無い距骨骨折であっても可動域制限が残るケースもあります。

 

 

神経障害

距骨骨折の治療後に関節面の変形や段差が残存すると、痛みの原因となることがあります。

 

 

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

 

距骨骨折では、疼痛の原因を他覚的に示すことができる(画像所見において骨折部の変形や段差、関節の異常な摩耗が確認できる)場合に、12級13号に該当する可能性があります。

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

 

手術の有無や治療経過、通院頻度などの要素を総合的に判断した結果、疼痛の原因が医学的に説明可能な場合には14級9号に該当する可能性があります。

 

 

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【弁護士必見】距骨骨折の後遺障害認定ポイント

 

距骨骨折の後遺障害等級認定においては、画像所見が可動域制限や痛みの原因として医学的矛盾がない事を示す必要があります。

 

距骨骨折では、表面の約60%が軟骨で覆われているという解剖学的特徴のために、骨壊死を併発する可能性が低くありません。

 

骨壊死を併発すると、少しずつ変形性関節症の原因となって関節の形態が変化がします。単純X線像(レントゲン)とCT検査が後遺障害等級認定のキモとなります。

 

そして、単にこれらの検査を実施すれば良いというわけではありません。距骨骨折では長期間の免荷が必要なので、骨萎縮はほぼ必発です。

 

免荷期間やリハビリテーションの実施状況の影響が大きく、機能障害(関節の可動域制限)の程度もさまざまです。長期間の免荷によって、骨萎縮による痛みや足関節の可動域制限を残しやすいです。

 

つまり、画像所見だけでは片手落ちでなのです。治療経過、画像所見、リハビリテーションの実施状況等を総合的に判断して、後遺障害等級認定の突破口を開く必要があるでしょう。

 

 

 

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まとめ

 

距骨骨折では、表面の約60%が軟骨で覆われているという解剖学的特徴を理解する必要があります。距骨を栄養する血行が乏しいため、骨壊死を併発する可能性が低くありません。

 

そして、距骨骨折では長期間の免荷が必要です。免荷期間が長いので、骨萎縮による痛みや足関節の可動域制限を残しやすいです。

 

医証の記載内容や画像所見の評価をご希望の際には、こちらからお問い合わせください。

 

 

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