交通事故で発生する足の外傷のひとつに足指の骨折(足趾骨折)があります。一見すると、足指の骨折は争いになりにくい印象を受けます。
しかし自賠責認定基準の実務では、少々難しいポイントが山積しています。本記事は、足指の後遺症を理解するヒントとなるように作成しています。
最終更新日:2023/3/5
Table of Contents
足の指の骨には何があるの
足指は、たくさんの小さな骨から構成されています。足指の主な骨は下記のごとくです。
- 末節骨(第1~5末節骨)
- 中節骨(第2~5中節骨)
- 基節骨(第1~5基節骨)
一応、足の指の骨は上記のごとく14個ありますが、第5足趾では中節骨が欠損していたり、末節骨と中節骨がもともと癒合している人が少なくありません。
足指骨折(指節骨骨折)とは
足指の骨折は、交通事故で非常によく見かける外傷です。DIP関節、PIP関節、MTP関節などに及ぶ関節内骨折の事案では、痛みや可動域制限を残す可能性があります。
一方、指節骨の骨幹部で骨折する場合には、骨癒合しないケースも少なくありません。その理由は、靴を履くためにシーネ固定などの外固定を充分できないケースが多いことが理由です。
足指骨折(指節骨骨折)の診断
通常のケースでは、単純X線像(レントゲン検査)だけで骨折を診断できます。しかし、足指は中節骨が欠損していることも少なくないため、両側比較が重要です。
足指骨折の後遺障害
足趾の骨折は後遺障害等級は少々難しいと感じています。その理由は、同一後遺症に対して、複数の後遺障害等級が存在するからです。自賠責認定基準は下記のごとです。
足指の機能障害
7級11号
両足の足指の全部の用を廃したもの
9級15号
1足の足指の全部の用を廃したもの
11級9号
1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの
12級12号
1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの
13級10号
第2の足指の用を廃したもの
第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの
第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
14級8号
1足の第3の足指以下の1または2の足指の用を廃したもの
足指の神経障害
12級13号
局部に頑固な神経症状を残すもの
14級9号
局部に神経症状を残すもの
足指骨折の後遺障害の摩訶不思議
ここまで、足趾の後遺障害の要件をみてきました。それでは、1足の第2の足指を含めた3の足指の用を廃したものの等級はどうなるのでしょうか?
労災補償障害認定必携では「1足の第1の足指以外の4の足指の用を廃したもの」(12級12号)と「1足の第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの」(13号10号)との中間に位します。
この場合には、12級11号には達しないので、準用第13級とするとされています。経験的には、第1足趾は比較的外傷に強く、第5足趾は弱いものの、他の足趾の外傷抵抗性は強弱つけ難いです。
このため、いろいろな足趾用廃パターンが出てしまうのが悩ましいところです。
【弁護士必見】等級認定のポイント
足趾(足指)の可動域制限(機能障害)の原因として、足部への直接外傷だけではなく、脛骨骨折や足関節骨折も挙げられます。
脛骨骨折や足関節骨折で骨癒合を獲得したとしても、脛骨の表面を滑走する筋肉や腱とが骨と癒着してしまうためです。
このような事案では、足趾の可動域制限(機能障害)が残ります。特に足趾の可動域制限は、骨折部位から離れているため、後遺障害が等級認定されるケースが多いです。
異議申立てによって足趾(足指)の機能障害が後遺障害等級認定される可能性がありますが、整形外科専門医による医師意見書が必須と言えるでしょう。
お困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
まとめ
足指の骨折は、交通事故でよく受傷するケガの1つです。そして足指はもともとの骨が欠損している症例も多く、また外固定が難しいため骨癒合しないケースも少なくありません。
足指の骨折はいろいろな足趾用廃パターンが出てしまうので後遺障害等級が複雑です。整形外科専門医による正確な評価が望ましい外傷と言えます。
関連ページ