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【医師が解説】デグロービング損傷の後遺症と後遺障害認定ポイント|医療鑑定

交通事故で発生する重度外傷のひとつにデグロービング損傷があります。デグロービング損傷は、手や足がタイヤなどに巻き込まれて、手袋を脱ぐように皮膚が全周性に剥がれる外傷です。

 

デグロービング損傷は重い後遺症を残しやすい外傷ですが、意外にも適正な後遺障害等級が認定されないケースがあります。本記事は、デグロービング損傷の後遺症が等級認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日: 2024/9/8

 

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デグロービング損傷(デコルマン損傷)とは

 

デグロービング損傷は、回転しているタイヤに手足などの四肢が巻き込まれて、手袋を脱ぐように皮膚が全周性に剥がれてしまう外傷です。

 

皮膚が剥脱するだけではなく、その下にある皮下組織、神経・血管、腱、筋肉まで損傷が及ぶことがあります。

 

軟部組織に広範なダメージが加わるため、患肢の機能を温存することが困難な症例が多いです。

 

 

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交通事故でのデグロービング損傷の受傷機序

 

交通事故では、歩行中、自転車乗車中、そしてバイク乗車中に、大型自動車に巻き込まれて受傷するケースが多いです。

 

回転しているタイヤに手足などの手足が巻き込まれることが原因なので、自動車乗車中にデグロービング損傷を受傷することはありません。

 

 

デグロービング損傷の症状

 

デグロービング損傷では、手足の受傷部位から末梢の軟部組織が剥脱します。このため、受傷部位から末梢の皮膚を含めた軟部組織が壊死に陥ります。

 

また、腱、筋肉、骨、関節などが露出することも多いため、感染を併発する症例もあります。

 

 

デグロービング損傷の診断

 

一般的にデグロービング損傷の診断は容易ですが、皮膚の剥脱が全周の半分程度の症例では、デグロービング損傷であると気が付かないケースも散見します。

 

受傷部分を詳細に観察して、神経・血管、腱、筋肉にまで損傷が及んでいないのかを確認する必要があります。

 

 

デグロービング損傷に対する治療

 

デグロービング損傷では、皮膚が剥脱する際に栄養血管がちぎれてしまいます。このため、そのまま皮膚を戻して縫合しても生着する可能性は低いです。

 

剥脱された皮膚の代わりに、皮弁による皮膚や軟部組織の段階的な再建手術が必要となります。

 

手術の難易度は高く、マイクロサージャリーの技術を持つ手外科医や形成外科医が治療を担当するケースが多いです。

 

受傷部の損傷が激しかったり、感染を併発して制御できなくなった症例では、切断術が考慮されるケースもあります。

 

 

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デグロービング損傷で考えられる後遺症

 

手や足のデグロービング損傷では、醜状障害、指(足指)の機能障害や神経障害だけでなく、手関節や足関節の機能障害に該当する可能性があります。

 

また、広範囲のデグロービング損傷では、CRPSを合併することもあります。CRPSを併発すると、四肢の機能障害や神経障害の併合よりも上位等級となる可能性があります。

 

 

上肢・下肢の醜状障害

四肢の露出面とは上肢が肩関節以遠、下肢が股関節以遠となり、手背と足背も含まれます。労災保険と交通事故自賠責保険では露出部の定義が異なるため注意が必要です。

 

 

12級相当

四肢に手のひら大の3倍以上の瘢痕

  • 露出面に複数の病巣が残存する場合には合算可能ですが、少なくとも1つ手のひら大以上の病巣が残存している必要があります。

 

14級5/6号(上下肢露出面の醜状)

四肢に手のひら大以上の瘢痕または線状痕

 

 

その他非露出部の醜状障害

非露出部とは胸腹部、背臀部を指しますが、これらの部位の醜状については系列が存在しないため、別表第二備考6を適用します。

 

 

12級相当

胸腹部または背臀部の全面積の1/2以上に瘢痕を残すもの

  • 皮膚移植で腹部や臀部から皮膚を採取した場合には該当する可能性があります。

 

14級相当

胸腹部または背臀部の全面積の1/4以上に瘢痕を残すもの

  • 皮膚移植で腹部や臀部から皮膚を採取した場合には該当する可能性があります。

 

 

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手指の機能障害

7級7号

1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの
 

8級4号

1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの
 

9級13号

1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
 

10級7号

1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの
 

12級10号

1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
 

13級6号

1手のこ指の用を廃したもの

 

 

手指の神経障害

12級13号

局部に頑固な神経症状を残すもの

 

14級9号

局部に神経症状を残すもの

 

 

手関節の機能障害

8級6号

1上肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

 

10級10号

1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

 

12級6号

1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

 

 

足指の機能障害

7級11号

両足の足指の全部の用を廃したもの

 

9級15号

1足の足指の全部の用を廃したもの

 

11級9号

1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの

 

12級12号

1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの

 

13級10号

第2の足指の用を廃したもの
第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの
第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
 

14級8号

1足の第3の足指以下の1または2の足指の用を廃したもの

 

 

足指の神経障害

12級13号

局部に頑固な神経症状を残すもの

 

14級9号

局部に神経症状を残すもの

 

 

<参考>
【医師が解説】足指骨折の後遺症が認定されるヒント|交通事故

 

 

足関節の機能障害

8級7号

1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

 

10級11号

1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

 

12級7号

1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

 

 

 

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CRPSによる後遺障害

不幸にも重度のCRPSを併発した場合、後遺症の等級認定は、症状、労働能力喪失の程度、他覚所見の有無などを総合的に勘案して決定されます。後遺障害等級としては、7級~14級が認められる可能性があります。

 

 

7級4号

神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの

 

9級10号

神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの

 

12級13号

局部に頑固な神経症状を残すもの

 

14級9号

局部に神経症状を残すもの

 

 

上肢の欠損障害

デグロービング損傷で受傷した範囲が広い場合や、感染を併発して制御できなくなった場合には、四肢の切断術が施行される可能性があります。

 

 

4級4号

1上肢を肘関節以上で失ったもの

  • 上腕(肩関節と肘関節との間)において切断したもの
  • 肘関節において、上腕骨と橈骨・尺骨を離断したもの

 

5級4号

1上肢を手関節以上で失ったもの

  • 前腕(肘関節と手関節との間)で切断したもの
  • 手関節の橈骨・尺骨と手根骨とを離断したもの

 

 

下肢の欠損障害

デグロービング損傷で受傷した範囲が広い場合や、感染を併発して制御できなくなった場合には、四肢の切断術が施行される可能性があります。

 

 

4級5号

1下肢を膝関節以上で失ったもの

  • 大腿(股関節と膝関節との間)において切断したもの
  • 膝関節において、大腿骨と脛骨を離断したもの

 

5級5号

1下肢を足関節以上で失ったもの

  • 下腿(膝関節と足関節との間)で切断したもの
  • 足関節の脛骨・腓骨と距骨とを離断したもの

 

7級8号

1足をリスフラン関節以上で失ったもの

  • 足根骨(踵骨、距骨、舟状骨、立方骨、3個の楔状骨)において切断したもの
  • 中足骨と足根骨との間(リスフラン関節)で離断したもの

 

 

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【弁護士必見】デグロービング損傷の後遺障害認定ポイント

 

デグロービング損傷の後遺障害は難しいです。その原因は、デグロービング損傷と言っても軽重に幅があり、また個々の事案によって発生し得る後遺症が多岐に渡るからです。

 

デグロービング損傷では、手術療法が成功して皮膚などの軟部組織が生着した場合でも、腱が癒着して手指や足指の機能が廃絶するケースもあります。

 

また治療の過程で、隣接する大関節(手関節や足関節)の関節拘縮が発生しやすく、後遺障害等級は上位になる傾向にあります。

 

しかし、自賠責保険では隣接する大関節の関節拘縮については、事故との因果関係を否定するケースを散見します。

 

更に、デグロービング損傷にCRPSを併発すると後遺障害は重くなりますが、CRPSが自賠責保険で認定されるハードルは極めて高いと言わざるを得ません。

 

 

<参考>
【医師が解説】CRPSの後遺症が等級認定されるポイント|交通事故

 

 

デグロービング損傷は手足の皮膚に限局した外傷というよりも、前腕や下腿まで含めた四肢全体に影響を及ぼす外傷と考えるべきでしょう。

 

自賠責保険は、あくまでも提出された後遺障害診断書なに記載された内容でしか後遺障害を判断しません。しかし、実際には後遺障害診断書から漏れている症状や所見のある事案を散見します。

 

主治医は治療のプロですが、自賠責保険の後遺障害診断のプロではありません。主治医任せでは、自賠責保険の後遺障害に該当するすべての後遺症を拾い上げているとは限らないのです。

 

 

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デグロービング損傷の後遺障害認定で弊社ができること

弁護士の方へ

弊社では、交通事故や労災事故によるデグロービング損傷後遺症が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。

 

 

等級スクリーニング

 

現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。

 

等級スクリーニングは、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。

 

等級スクリーニングの有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニングを承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。

 

 

<参考>
【等級スクリーニング】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定

 

 

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医師意見書

 
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。

 

医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。

 

医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。

 

弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。

 

 

<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

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画像鑑定報告書

 

交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。

 

画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。

 

画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。

 

弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。

 

 

<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て

 

 

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デグロービング損傷の後遺症でお悩みの被害者の方へ

弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。

 

また、弊社では交通事故や労災事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。

 

もし、後遺障害で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。

 

尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。

 

 

Traffic accident patient

 

 

まとめ

 

デグロービング損傷は、交通事故で発生する四肢の重度外傷のひとつです。デグロービング損傷は、手や足がタイヤなどに巻き込まれて、手袋を脱ぐように皮膚が全周性に剥がれます。

 

デグロービング損傷は重い後遺症を残しやすい外傷です、醜状障害、指(足指)の機能障害、手関節や足関節の機能障害などを残す可能性があります。

 

また、重度のデグロービング損傷では、CRPSを合併することもあります。このため、デグロービング損傷で発生する後遺障害は多岐に渡る傾向にあります。

 

このような事案では、弊社の等級スクリーニングが有効であるケースがあります。デグロービング損傷でお困りの際にはこちらからお問い合わせください。

 

 

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