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【医師が解説】交通事故の顔の傷跡と後遺障害|外貌醜状

交通事故で顔に傷跡が残ってしまうと大変です。顔の傷跡は、男女や年齢を問わず大きな悩み事でしょう。

 

形成外科や皮膚科で治療しても、なお残ってしまった顔の傷跡は、外貌醜状として後遺障害の対象になります。

 

本記事は、交通事故で受傷した顔の傷跡が、後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日: 2024/9/16

 

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Table of Contents

交通事故で負った顔の傷跡(外貌醜状)とは

外貌醜状(醜状障害)の定義

自賠責保険が後遺障害として補償の対象にしている醜状障害とは、以下のいずれかの状態です。
 

  • 交通事故による直接的な傷跡、皮膚瘢痕、色素沈着
  • 交通事故に伴う手術で残った傷跡
  • 交通事故による熱傷で残った皮膚瘢痕、色素沈着
  • 交通事故で耳や鼻、まぶたの一部が欠損して外貌を損なうもの
  • 骨欠損や骨陥没に伴う皮膚陥凹
  • 顔面神経麻痺に伴う口の歪み

 

 

顔の傷跡(外貌醜状)の範囲

外貌醜状(顔の傷跡)の範囲は、顔面部、頭部、頚部(首)です。シャツの上から出ている部分という理解でよいでしょう。

 

手足や胴体に残った傷跡も醜状障害に認定される可能性はありますが、外貌醜状と比較して広範囲の傷跡しか後遺障害に認定されません。

 

 

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交通事故で負った顔の傷跡(外貌醜状)の治療法

外貌醜状の保存療法

瘢痕やケロイドの治療では、リザベンなどの抗アレルギー剤を服用したり、抗炎症作用のある軟膏やクリームなどを塗布します。

 

抗アレルギー剤や外用剤で効果が無い症例では、レーザーや放射線の照射療法を施行するケースもあります。

 

顔面神経麻痺では、抗ウィルス剤の服用に加えてリハビリテーションが行われます。

 

 

外貌醜状の手術療法

骨・軟骨の欠損による外貌醜状では、自家骨軟骨を利用した形成手術の適応となるケースがあります。

 

 

外貌醜状は全治何ヶ月?

 

瘢痕やケロイドに対する治療期間は、一般的に長期化します。抗アレルギー剤を6ヵ月間服用することを考えると、1年以上の治療期間が必要なケースも少なくありません。

 

手術療法を施行した症例では、術後6ヵ月では不充分であり、術後1年程度の経過観察が必要です。

 

 

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交通事故の顔の傷跡で後遺障害に認定されると損害賠償金を請求できる

 

交通事故の顔の傷跡で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。

 

 

後遺障害慰謝料とは

交通事故で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。

 

 

後遺障害等級

後遺障害慰謝料

1級

2800万円

2級

2370万円

3級

1990万円

4級

1670万円

5級

1400万円

6級

1180万円

7級

1000万円

8級

830万円

9級

690万円

10級

550万円

11級

420万円

12級

290万円

13級

180万円

14級

110万円

 

 

後遺障害逸失利益とは

後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。

 

後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。

 

 

後遺障害逸失利益の計算式

後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。

 

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

 

 

交通事故で負った顔の傷跡(外貌醜状)の後遺障害

 

等級

認定基準

7級12号

外貌に著しい醜状を残すもの

9級16号

外貌に相当程度の醜状を残すもの

12級14号

外貌に醜状を残すもの

 

 

7級12号(外貌の著しい醜状)

  • 頭部: 手のひら大以上の瘢痕または頭蓋骨の手のひら大以上の欠損
  • 顔面部:鶏卵大面以上の瘢痕または10円銅貨大以上の組織陥凹
  • 頚部:手のひら大以上の瘢痕

 

 

9級16号(外貌の相当程度の醜状)

  • 顔面部:5cm以上の線状痕

 

 

12級14号(外貌の単なる醜状)

  • 頭部: 鶏卵大面以上の瘢痕、または頭蓋骨の鶏卵大面以上の欠損
  • 顔面部:10円銅貨大以上の瘢痕、または3cm以上の線状痕
  • 頚部:鶏卵大面以上の瘢痕

 

 

外貌醜状(耳介、鼻の欠損、顔面神経麻痺)の後遺障害

 

等級

認定基準

7級12号

・耳介の1/2以上を欠損したもの

・鼻の大部分を欠損したもの

12級14号

・耳介の一部を欠損したもの

・鼻の一部を欠損したもの

12級14号

顔面神経麻痺による口唇周囲のゆがみ

 

 

7級12号(耳介、鼻の欠損)

 

耳介の1/2以上、鼻の大部分以上を欠損した場合には「外貌の著しい醜状」として7級12号に相当します

 

 

12級14号(耳介、鼻の欠損)

 

耳介や鼻の一部を欠損した場合には「外貌の単なる醜状」として12級14号に相当します

 

 

12級14号(顔面神経麻痺)

顔面神経麻痺による口唇周囲のゆがみは、外貌の醜状として12級14号に相当します。顔面神経麻痺の評価のひとつに柳原法があります。

 

 

<参考>
【医師が解説】顔面神経麻痺は後遺障害認定される?|医療鑑定

 

 

醜状障害の後遺障害認定基準

醜状障害の判断要素

醜状障害は、以下の要素から決定されます。
 

  • 醜状の部位
  • 醜状の面積(長さ)
  • 醜状の種類

 

 

後遺障害の鶏卵大とは

醜状の面積の基準となっている鶏卵大の定義は曖昧です。鶏卵のLサイズは約6㎝×4cmです。

 

しかし、これまでの認定事例から判断すると、認定基準の運用は6㎝×4cmよりも若干小さいサイズと思われます。

 

 

眉毛や頭髪で隠れる部分は醜状障害にならない

外貌醜状は、他者に認識される(人目につく)程度以上であるものとされています。このため、眉毛や頭髪で隠れる部分は、醜状障害としては取り扱われません。

 

 

<参考>

 

 

 

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醜状障害では面接審査がある

 

自賠責保険では後遺障害認定は書類審査が原則ですが、醜状障害に関しては面接審査が実施されるケースもあります。面接審査の施行要否は、自賠責保険が判断します。

 

調査員が、実際に傷跡の長さを計測したり性状を確認します。調査員の主観による判断がなされる場合もあるため、事前に弁護士に相談することをお勧めします。

 

 

 

 

【弁護士必見】外貌醜状の後遺障害認定ポイント

形成外科や皮膚科での継続治療が望ましい

救急搬送された急性期病院では、メインの外傷に対して整形外科や脳神経外科で治療を受けます。

 

しかし、瘢痕やケロイドに関しては、整形外科や脳神経外科では治療されないケースが多いです。このため、受傷早期から形成外科や皮膚科も受診することが望ましいです。

 

受傷早期から形成外科や皮膚科を受診することは、治療および後遺障害認定の両方の観点で重要です。

 

整形外科や脳神経外科では、後遺障害診断書を作成する際に、大雑把な評価しかされない可能性があります。

 

このため、主治医に依頼して形成外科や皮膚科を紹介してもらい、定期的な治療を行うことが望ましいです。

 

 

創部の経時的な画像記録を残しておく

自賠責保険の実務では、初療を担当した急性期病院の医師と、後遺障害診断書を作成する医師が異なるケースが少なくありません。

 

紹介先の医師には、創が事故によって受傷したものか否かが分かりません。このため、後遺障害診断書への醜状記載を拒否されるケースを散見します。

 

このような事態を招かないように、受傷後早期から創部の画像記録を残しておくことが推奨されます。

 

 

分かりやすい図式資料の添付が重要

醜状障害における等級認定のポイントは、後遺障害診断書において醜状の大きさや程度を分かりやすく示すことです。

 

2016年に「交通事故受傷後の傷痕等に関する所見」という醜状障害に特化した書式が新設されています。

 

この書式には、体表図や頭頸部の模式図が含まれています。しかし、皮膚科や形成外科などの専門科以外の多くの医師は、この書式の存在を知りません。

 

この書式で提出することがベストですが、体表図や頭頸部の模式図で具体的な障害を図示することで代用可能です。実際の醜状を記録した画像も有効な資料となります。

 

 

醜状は労働能力喪失率が争点となるケースが多い

弊社に寄せられる相談で多いのは逸失利益の減額です。保険会社は、醜状障害を負っても身体能力は問題無いので労働能力は喪失しないと主張するケースが多いです。

 

職種に拠りますが、工場勤務などでは反論が難しいケースもあります。一方、営業職では労働能力喪失による逸失利益を主張することは可能です。

 

より現実的な解決法は、醜状に併発した痛みやしびれ(神経障害)の存在を主張することでしょう。実臨床では、瘢痕は痛みやしびれを伴うことが多いからです。

 

 

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【9級16号】外貌醜状の後遺障害認定事例

事案サマリー

  • 被害者:20代女性
  • 初回認定:12級14号

 

初回申請では、12級14号(外貌の単なる醜状)という判断でした。

 

 

弊社の取り組み

医師意見書にて複数の線条痕の合計長が5cm以上であることや、治療経過から将来的に著明な改善が期待できないことを主張したところ、9級16号が認定されました。

 

 

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まとめ

 

醜状障害の中でも、特に外貌醜状は審査側の主観が入りやいことが特徴です。このため、不充分な医証を提出してしまったため、非該当になる事案をしばしば経験します。

 

本来であれば後遺障害に該当するにも関わらず非該当になってしまうリスクを排除するためには、入念な資料収集が必要です。

 

醜状障害でお困りの場合はこちらからお問い合わせください。

 

 

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