交通事故で発生する外傷のひとつに線維筋痛症があります。線維筋痛症は重い後遺症を残しやすい傷病ですが、自賠責保険では後遺障害に認定されることがほとんどありません。
本記事は、線維筋痛症の後遺症が等級認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日:2023/3/5
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線維筋痛症とは
線維筋痛症は、長期間にわたった下記のようなさまざまな症状に苛まれる傷病です。
- 身体のいろいろなところに痛みが出現する
- 強いこわばり
- 激しい疲労感
- 頭痛
- 不眠やうつ気分
線維筋痛症の原因はよくわかっていません。線維筋痛症に特異的な検査は存在せず、画像検査や血液生化学検査をおこなっても異常所見はありません。
最近では、線維筋痛症は痛みを脳に伝える神経に問題があるという説があります。痛みの原因が無いのに、痛みを伝える神経が興奮してしまい、それを抑える機能が低下している状態です。CRPSによく似た病態と言えます。
<参考>
【医師が解説】CRPSの後遺症が等級認定されるポイント|交通事故
線維筋痛症の有病率は約1.7%と言われています(厚生労働省研究班の2003年の全国調査)。しかし、各種検査で異常が無いことから、線維筋痛症と診断されないケースが多いです。
命にかかわる傷病ではないものの、対症療法しかないため日常生活への影響が大きいです。痛みや激しい疲労感のため、社会生活をおくることが困難になりがちです。
交通事故での線維筋痛症の受傷機序
線維筋痛症は交通事故を契機として発症することもあります。しかし、線維筋痛症そのものの原因が不明であるため、交通事故がどのような影響を与えて線維筋痛症が発症するのかは分かっていません。
線維筋痛症の診断
線維筋痛症には、画像検査や血液生化学検査で特徴的な異常所見がありません。このため、米国リウマチ学会の線維筋痛症予備診断基準(2010)を用いて診断されるケースが多いです。
<参考>
線維筋痛症 Minds版やさしい解説
線維筋痛症に対する治療
線維筋痛症は原因が分かっていないので、痛みのコントロールを中心とした対処療法しか無いのが現状です。
神経障害性疼痛に有効なプレガバリンや、抗うつ薬のデュロキセチン、弱オピオイド系製剤のトラマドールやブプレノルフィン、そして作用機序は不明なもののノイロトロピン(ワクシニアウィルス接種家兎炎症皮膚抽出液)などが使用されます。
自賠責では線維筋痛症は非該当になる
線維筋痛症は、未だに病態や原因が明らかではありません。このため、自賠責保険が交通事故との因果関係を認めることはなく、傷病名が線維筋痛症の事案は後遺障害に認定されません。弊社の数千事案の経験でも線維筋痛症での認定事例はゼロです。
実際には重い症状に苦しむ交通事故被害者が存在しますが、残念ながら線維筋痛症は自賠責保険では救済されない傷病なのです。
【弁護士必見】等級認定のポイント
弊社の経験では、線維筋痛症の後遺症が等級認定されるためには、ふたつの経路が存在します。
1つ目は、訴訟提起する方法です。しかし訴訟においても「交通事故との因果関係」が争われるため、線維筋痛症の後遺障害が認定されるケースはほとんどありません。
2つ目は、線維筋痛症での等級認定ではなく、頚椎捻挫や腰椎捻挫での後遺障害等級認定を目指す方法です。この方法では等級認定される可能性がありますが、14級9号などの低い等級しか認定されないことが問題点です。
まとめ
線維筋痛症は、自賠責保険では後遺障害が認定されません。このため線維筋痛症では慎重な対応が望まれます。
線維筋痛症での後遺障害等級認定を目指して異議申立てしても徒労に終わります。現実的な対応を検討するべきでしょう。
線維筋痛症でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
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