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【医師が解説】尺骨神経麻痺が後遺症認定されるポイント|医療鑑定

交通事故で発生する後遺症のひとつに尺骨神経麻痺があります。骨折そのものに尺骨神経麻痺が合併する頻度は低いですが、上腕骨顆上骨折や有鉤骨骨折(有鉤骨鉤突起骨折)などに施行した手術療法に合併する可能性がある神経麻痺です。

 

尺骨神経麻痺では後遺症を残すことがあります。本記事は、尺骨神経麻痺の後遺症が等級認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日: 2024/5/11

 

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尺骨神経麻痺とは

 

尺骨神経は、手の指にある細かい作業をする筋肉を支配する神経です。このため、尺骨神経麻痺を発症すると手の指を使った細かい作業が困難となり、手指の巧緻運動障害が残ります。

 

尺骨神経が傷害されやすい部位は、

  1. 肘(肘部管)
  2. 手のひら(ギオン管)

の2か所です。尺骨神経の傷害部位によって、麻痺の程度が異なります。

 

 

elbow pain

 

 

尺骨神経麻痺の症状

肘で尺骨神経が傷害された場合

上腕骨顆上骨折で経皮的骨接合術を施行する際に、尺骨神経麻痺を合併する可能性があります。尺骨神経麻痺には下記に挙げる症状が残ります。

 

  • 前腕尺側~小指・環指尺側1/2の知覚低下やしびれ
  • 手の中の小さな筋肉が麻痺して細かい作業ができなくなる
  • 手指の鷲手変形

 

 

手のひらで尺骨神経が傷害された場合

有鉤骨骨折(有鉤骨鉤突起骨折)でスクリューを挿入する際に、ギオン菅部で尺骨神経麻痺を合併すると、ほとんどのケースで知覚障害のみを呈します。

 

  • 小指・環指尺側1/2の知覚低下やしびれ

 

 

尺骨神経麻痺の原因

肘(肘部管)での傷害

上腕骨顆上骨折

 

 

手のひら(ギオン管)での傷害

有鉤骨骨折(有鉤骨鉤突起骨折)

 

 

その他の原因

最も多いのは肘部管症候群です。ガングリオンなどの腫瘤や腫瘍も尺骨神経麻痺の原因となります。しかし交通事故に起因する外傷ではないので、ここでは割愛させていただきます。

 

 

forearm

 

 

尺骨神経麻痺の診断

身体所見

身体所見としては、巧緻機能障害と尺骨神経の支配領域に一致した知覚障害の確認が重要です。ティネルサイン(Tinel sign)という神経の傷害部を叩くとそこから先に痛みやしびれが放散する身体所見の確認は必須です。

 

手の甲の間にある筋肉の筋萎縮による母指球筋以外の筋萎縮と、鷲手変形があれば診断可能です。

 

尺骨神経麻痺ではフローマン(Froment)サインが有名です。母指と示指でつまんだ紙を引っ張る際に、母指の第1関節が曲がれば陽性となります。

 

 

画像検査

確定診断には、神経伝導検査や筋電図検査が必要です。単純X線像(レントゲン)検査、MRI検査、CT検査などは補助的な検査に留まります。

 

 

Nerve conduction velocity study

 

 

尺骨神経麻痺に対する治療

保存療法

明らかに手術後の合併症でない限りは、まずは保存療法が選択されます。ビタミンB12製剤などの内服処方などがあります。

 

3ヵ月程度保存療法を続けても回復しないものケースでは、手術が必要になることもあります。

 

 

手術療法

骨折や脱臼などの外傷では早期に手術が必要です。神経そのものの損傷があるものでは、神経剥離術や神経縫合術などの手術療法が行われます。
 

尺骨神経の回復が芳しくないケースでは、腱移行手術などの手術が行われるケースもあります。

 

 

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尺骨神経麻痺で考えられる後遺障害

 

肘関節周囲の尺骨神経麻痺では、主に手指の動きが悪くなります。代表的な症状は鷲手変形です。

 

 

指の機能障害

7級7号

1手の5の手指又はおや指を含み4の手指の用を廃したもの
 

8級4号

1手のおや指を含み3の手指の用を廃したもの又はおや指以外の4の手指の用を廃したもの
 

9級13号

1手のおや指を含み2の手指の用を廃したもの又はおや指以外の3の手指の用を廃したもの
 

10級7号

1手のおや指又はおや指以外の2の手指の用を廃したもの
 

12級10号

1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
 

13級6号

1手のこ指の用を廃したもの

 

 

指の神経障害

12級13号

局部に頑固な神経症状を残すもの

 

14級9号

局部に神経症状を残すもの

 

 

 

 

【弁護士必見】尺骨神経麻痺の後遺障害認定ポイント

 

尺骨神経麻痺で最も問題になるのは、手のひらのギオン管での尺骨神経障害です。尺骨神経麻痺があるにもかかわらず、神経伝導検査は実質的に実施不可能です。

 

このようなケースでは、SWテスト(Semmes-Weinstein テスト)を実施します。完全に客観的に検査とは言い難いですが、尺骨神経の手のひらレベルでの損傷では、SWテストに頼らざるを得ないのが現状です。

 

臨床医には、SWテスト(Semmes-Weinstein テスト)を実施するという発想がほとんどありません。

 

 

 

nikkei medical

 

 

【併合9級】尺骨神経麻痺の後遺障害認定事例

 

  • 被害者:32歳
  • 初回申請:非該当
  • 異議申立て:併合9級(機能障害10級6号+神経障害12級13号)

 

バイク事故で肘関節周囲に挫傷を負いました。骨折などの画像所見で分かる所見が無かったため、初回申請は非該当でした。

 

ところが、半年後に小指のしびれと手の使いにくさが出現しました。肘関節のレントゲン検査を施行したところ、内側に異所性骨化を認めました。

 

尺骨神経の神経伝導速度検査を実施すると、著明な尺骨神経の伝導遅延を認めました。

 

異所性骨化による尺骨神経麻痺(肘部管症候群)と診断して手術を施行したものの、肘関節の可動域制限と小指のしびれが残りました。

 

医師意見書を添付して異議申し立てしたところ、肘関節の機能障害10級6号および尺骨神経の神経障害12級13号の併合9級が認定されました。

 

 

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まとめ

 

交通事故で発生する後遺症のひとつに尺骨神経麻痺があります。骨折そのものに尺骨神経麻痺が合併する頻度は低いですが、上腕骨顆上骨折や有鉤骨骨折(有鉤骨鉤突起骨折)などに施行した手術療法に合併する可能性がある神経麻痺です。

 

尺骨神経麻痺の原因となる外傷はいくつかあり、また客観的な検査所見を得ることが難しいケースもあります。尺骨神経麻痺でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。

 

 

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