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【医師が解説】慢性硬膜下血腫の後遺症ー交通事故ー

交通事故で発生する頭部外傷のひとつに慢性硬膜下血種があります。
慢性硬膜下血種は事故から数ヵ月後に発症することもあるため、事故との因果関係を問われやすい外傷です。
 
本記事は、交通事故に続発した慢性硬膜下血種の症状や後遺症を知るヒントとなるように作成しています。
 

慢性硬膜下血種-忘れた頃に起こる交通事故の後遺症-

car crush
 
頭部外傷の後、2週間から数ヶ月程度(1ヶ月後ごろが多い)かけて、脳の表面を覆う硬膜の下にゆっくりと血液がたまる病気です。
 
脳が萎縮し始める50歳以上の男性に多いとされています。脳萎縮のない若年者の場合は、脳と硬膜の隙間があまりないため血液がたまりにくく、慢性硬膜下血腫は発症しにくいです。
 

慢性硬膜下血腫の原因

頭部外傷後に脳の表面の静脈が切れて、少量の出血を生じます。その後血液を包む膜(被膜)が形成されます。被膜内の血腫は、髄液が混入したり、被膜に新しく形成された血管から出血したりして徐々に増加します。
 
頭部外傷としては、脳震盪を起こすような強いものから、少し皮下血腫(たんこぶ)ができただけの軽微なものまでさまざまです。交通事故にあったけれど軽く頭をぶつけただけだと思っていたら、数ヶ月後に慢性硬膜下血腫による症状が出て緊急手術を受けることになった、などというケースもあります。
 
交通事故で頭をぶつけた、もしくは頭部を大きく振られるような外力を受けた場合には、すぐに示談には応じない方がよいかもしれません。
2ヶ月程度は症状の経過に問題がないか様子をみるべきでしょう。
 
また、発症しやすい人は、アルコール多飲者、歩行障害のある方、脳萎縮のある高齢者、肝臓病や血液疾患に罹っている方、抗血小板剤や抗凝固剤などを服用して出血が止まりにくい状態にある方、血液透析中の方などです。
 

慢性硬膜下血腫の症状

 
chronicsubduralhematoma
 
血腫が少したまっただけでは無症状のことがほとんどです。血腫が大きくなって脳を圧迫するようになると症状が出現します。
 
頭痛や認知機能の低下(認知症)、性格や行動の変化などが比較的早く進行します。脳の圧迫が強くなると、手足の麻痺、けいれん、意識障害などを生じます。慢性硬膜下血腫が厄介なのは、ある程度血腫がたまっても全く症状がない点です。
 
しかし、一定の血腫量を超えると、急速に症状が出現します。命に関わることもあるのであなどれません。交通事故で頭をぶつけて、1~2ヶ月してから前述のような症状が出現した場合には、すぐに脳神経外科を受診してください。
 

慢性硬膜下血腫に対する治療

無症状であれば五苓散という漢方剤の内服で様子をみる場合が多いです。血腫が増大傾向である場合や、症状がある場合は手術によって血腫を除去します。
 
手術は局所麻酔で行われることがほとんどです。4,5cm程度頭部の皮膚を切って、頭蓋骨に1.5cmぐらいの穴を開けます(穿頭術)。硬膜を切ると被膜に包まれた血腫があり、被膜を破って血腫を生理食塩水で洗い流します。
 
血腫の中から外に血液を出すためのドレナージチューブというものを挿入して、皮膚を縫合して手術は終了します。通常、ドレナージチューブは翌日抜去します。症状は翌朝には改善していることが多く、脳神経外科の中でも患者さんに喜ばれる手術の一つです。
 
ただし、1割程度の患者さんはこの手術を受けても再発して、再手術が必要となることがあります。また、ごく稀ですが血腫が硬くなり(器質化)、穿頭術によるドレナージでは治療ができなくなります。その場合は全身麻酔で大きな開頭を行い、血腫を取り除く手術が必要となります。
 
<慢性硬膜下血腫の頭部CT所見>
chronicsubduralhematoma
 
<手術翌日の頭部CT所見>
cshafteroperation
 

慢性硬膜下血腫は後遺障害等級の対象になりにくい?

慢性硬膜下血腫は脳実質には損傷がありませんので、通常は後遺症が残ることはありません。前述の器質化慢性硬膜下血腫に移行したような場合には、12級が認定されるケースも可能性としてはあり得ます。
 
しかし実務上は、
1.事故との因果関係が不明瞭である
2.脳実質損傷ではない
ため、等級が認定される可能性が極めて低いと考えます。
 

まとめ

頭部外傷後しばらく経ってから発症する慢性硬膜下血腫について説明しました。高齢者は軽微な外傷でも生じうるため注意が必要です。しかし適切な治療を行えば、後遺症が残ることはほとんどありません。交通事故後に発症した場合は、後遺障害等級の対象となることは少ないです。
 

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※ 本コラムは、脳神経外科専門医の高麗雅章医師が解説した内容を、弊社代表医師の濱口裕之が監修しました。

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