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【医師が解説】神経心理学的検査は高次脳機能障害の等級認定ポイント

交通事故で発生する頭部外傷のひとつに高次脳機能障害があります。高次脳機能障害は重い後遺症を残しやすいです。

 

そして神経心理検査は、高次脳機能障害の等級認定に大きな影響を及ぼします。

 

本記事は、神経心理検査を知ることで、高次脳機能障害が後遺障害認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/4/19

 

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神経心理学的検査とは

 

課題に対する被験者の反応を得点化する心理検査のうち、高次脳機能障害や認知症の診断と評価に用いられるものを神経心理学的検査といいます。

 

神経心理学的検査を大別すると、以下の項目に分類されます。

 

  • 知能検査
  • 記憶検査
  • 言語機能検査
  • 注意力検査
  • 遂行(前頭葉)機能検査
  • その他

 

 

数ある神経心理学的検査の中から、診察や日常生活の観察によって、患者それぞれの機能障害に応じた検査を選択して、定量的評価や経過観察などの目的で検査を実施します。

 

 

WAIS

 

 

知能検査

 

一般に知識、見当識(時・場所・人の認識)、記憶、計算などの検査であり、脳機能を全般的に評価するものです。主な知能検査は下記のごとくです。

 

 

ミニメンタルステート検査 (MMSE)

10分程度のスクリーニングとして簡便に行うことのできるため、外来診察において実施されるケースが多いです。

 

<参考>
【医師が解説】MMSEの認知症でのカットオフ値は?|遺言能力鑑定
【医師が解説】MMSEと長谷川式認知症スケールの違い|遺言能力鑑定

 

 

長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)

MMSE(mini-mental state examination)と同様に、10分程度のスクリーニングとして簡便に行うことのできるため、外来診察において実施されるケースが多いです。

 

<参考>
【医師が解説】長谷川式認知症スケールの解釈|遺言能力鑑定
【医師が解説】MMSEと長谷川式認知症スケールの違い|遺言能力鑑定

 

 

ウェクスラー成人知能検査 (WAIS-Ⅳ)

WAIS-Ⅳは、世界で最も使用されている成人用(16〜89歳)の本格的な全般性脳機能検査です。所要時間が90分なので、入院中の患者さんに実施されるケースが多いです。

 

<参考>
【医師が解説】WAISとWMS-Rは高次脳機能障害の等級認定ポイント

 

 

レーヴン色彩マトリックス検査 (RCPM)

標準図案の欠如部に合うものを、6つの図案から1つだけ選ぶ検査です。所要時間は10分程度です。

 

<参考>
【医師が解説】レーブン色彩マトリックス検査RCPM|高次脳機能障害

 

 

幼児や児童用のWPPSIとWISC

また、幼児(2〜7歳)にはWPPSI、児童(6〜16歳)にはWISCと呼ばれる、年齢に応じてテストの内容を変更した検査を行います。

 

 

記憶検査

 

記憶の過程は、情報の脳への取り込み、把持、再生の3段階があります。また、言葉に直せる陳述記憶と、本人の習慣や技量などの手続記憶があります。

 

また、作業記憶という概念があり、日常生活のおける判断能力に非常に重要なものです。

 

さらに、時間的な貯蔵期間の長さで、即時記憶、短期記憶、近時記憶、長期記憶などに分類されます。

 

 

ウェクスラー記憶検査(WMS-R)

WMS-Rは国際的に最もよく使用されている総合的な記憶検査であり、日本でも標準化されています。所要時間は60分程度です。

 

<参考>
【医師が解説】WAISとWMS-Rは高次脳機能障害の等級認定ポイント

 

 

リバーミード行動記憶検査 (RBMT)

記憶のリハビリテーションのための診断・判定検査です。所要時間は30分程度です。

 

<参考>
【医師が解説】リバーミード行動記憶検査RBMT|高次脳機能障害

 

 

レイ複雑図形検査 (ROCFT)

視覚性の随時記憶(自然に記銘される記憶)の検査です。所要時間は10分程度です。

 

 

レイ聴覚性言語学習検査 (RAVLT)

言語性の記憶検査です。所要時間は15分程度です。

 

 

言語機能検査

標準失語症検査 (SLTA)

失語症の代表的な検査です。所要時間は60分程度です。

 

<参考>
【医師が解説】SLTA標準失語症検査|高次脳機能障害

 

 

注意力検査

TMT (trail making test) 線引きテスト

注意力、ワーキングメモリー、空間的探索などを総合的に測定する検査です。所要時間は10分程度です。

 

<参考>
【医師が解説】TMT(trail making test)の検査法|高次脳機能障害

 

 

遂行(前頭葉)機能検査

遂行機能の行動評価法 (BADS)

日常生活での遂行機能(自分で目標を設定し、計画を立て、行動に移す能力)を評価する検査です。所要時間は40分程度です。

 

<参考>
【医師が解説】BADS遂行機能障害症候群の行動評価|高次脳機能障害

 

 

ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)

前頭葉の機能である抽象的な思考を評価する検査です。WCSTは、状況が変化した時に、どの程度柔軟に対処できるか(セットシフティング:set-shifting)の能力を評価できます。

 

<参考>
【医師が解説】WCSTウィスコンシンカードソーティングテスト|高次脳機能障害

 

 

高次脳機能障害の評価バッテリー

高次脳機能障害の神経心理学的検査

高次脳機能障害の神経心理学的検査には、全般的認知機能をみる検査と、記憶や前頭葉機能といった個別の認知機能を評価する検査に分けられます。

 

 

全般的認知機能を評価する検査

 

知能検査

 

記憶検査

 

 

個別の認知機能を評価する検査

 

言語機能検査

 

注意力検査

 

遂行(前頭葉)機能検査

 

 

高次脳機能障害の評価バッテリー

高次脳機能障害の評価では、一般的に以下のような神経心理学的検査の組み合わせ(評価バッテリー)が推奨されています。

 

 

全般的認知機能検査

ウェクスラー成人知能検査 (WAIS-Ⅳ)

 

記憶機能検査

ウェクスラー記憶検査(WMS-R)
リバーミード行動記憶検査 (RBMT)

 

注意機能検査

TMT (trail making test) 線引きテスト

 

遂行機能検査

遂行機能の行動評価法 (BADS)
ウィスコンシンカードソーティングテスト(WCST)

 

社会的行動検査

認知-行動障害尺度(TBI-31)

 

 

<参考>
【医師が解説】高次脳機能障害の検査一覧と評価バッテリー|交通事故

 

 

 

inquiry

 

Traffic accident patient

 

 

【弁護士必見】高次脳機能障害の認定ポイント

 

高次脳機能障害が後遺障害等級認定されるためには、第一段階として3要件を満たす必要があります。

 

<参考>
【医師が解説】高次脳機能障害の後遺症が認定されるコツ|交通事故

 

 

第一段階をクリアすると、高次脳機能障害が存在するとみなされます。第二段階では、高次脳機能障害が何級に該当するのかの判断です。自賠責保険では、以下の4能力で高次脳機能障害の等級評価を行います。

 

  1. 意思疎通能力(記名・記憶力、認知力、言語力等)
  2. 問題解決能力(理解力、判断力等)
  3. 作業負荷に対する持続力・持久力
  4. 社会行動能力(協調性等)

 

その判断材料が、

  • 神経系統の障害に関する医学的意見
  • 日常生活状況報告
  • 神経心理検査

です。

 

その中でも

  1. 意思疎通能力(記名・記憶力、認知力、言語力等)
  2. 問題解決能力(理解力、判断力等)

を評価するために、WAISとWMS-Rが重視されています。

 

 

<参考>
【医師が解説】WAISとWMS-Rは高次脳機能障害の等級認定ポイント
【医師が解説】高次脳機能障害の後遺症が認定されるコツ|交通事故
【日経メディカル】交通事故における曖昧な高次脳機能障害の定義
【日経メディカル】交通事故後の高次脳機能障害を見逃すな!把握しにくい2つの理由

 

 

 

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    ※ 本コラムは、脳神経外科専門医の高麗雅章医師が解説した内容を、弊社代表医師の濱口裕之が監修しました。

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