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【医師が解説】コンパートメント症候群の5P症状と後遺症|交通事故

四肢の骨折や打撲などの外傷に合併する重大な合併症のひとつにコンパートメント症候群があります。コンパートメント症候群は重い後遺症を残しやすい合併症です。

 

本記事は、コンパートメント症候群の症状や後遺症について、一般の方でも分かりやすいように解説しています。

 

 

最終更新日:2024/4/19

 

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コンパートメント症候群をわかりやすく解説

 

コンパートメント症候群は、骨折や打撲などの外傷によって、骨や筋膜などで区切られた閉鎖空間(コンパートメント)内の圧力が高まってしまい、筋肉、神経、血管が圧迫されて大きなダメージを受ける病態です。

 

コンパートメント内の圧力が高くなると、コンパートメント内の組織への血流が遮断されてしまい、筋肉などが壊死してしまいます。

 

 

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コンパートメント症候群の症状

 

コンパートメント症候群は、怪我をした部位やその部位から末梢側にかけて、非常に強い痛み、しびれ、圧迫感をもたらします。

 

痛み、しびれ、圧迫感は、時間の経過とともにますます悪化していきます。原因となった骨折や打撲の程度と比べて、不釣り合いなぐらいまで症状が強くなることが特徴です。

 

さらに長時間に渡ってコンパートメント内への血流が途絶えると、皮膚の感覚が鈍くなり、麻痺、皮膚色調の悪化、脈拍を触れなくなるなどの症状が現れます。

 

筋肉が壊死すると、横紋筋融解症や高カリウム血症などを合併して、生命に危険を及ぼす場合もあります。

 

 

コンパートメント症候群の好発部位

 

コンパートメント症候群は、骨や筋膜などで区切られた閉鎖空間(コンパートメント)内の圧力が高まって発症します。このため、コンパートメント症候群の好発部位は下腿と前腕です。

 

 

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下腿中央直下のコンパートメント(ネッター 解剖学アトラスより転載)

 

 

 

コンパートメント症候群の診断基準

 

症状からコンパートメント症候群を疑わせる場合、医師は針を刺してコンパートメント内の圧力を測定します。

 

正常なコンパートメント内圧は8mmHg以下です。コンパートメント内圧が30mmHg以上になるとコンパートメント症候群と診断されます。

 

 

コンパートメント症候群の5P

 

コンパートメント症候群を疑う際には、以下の5つの症状が特徴的です。

 

  • pallor:蒼白
  • pain out of proportion:強い痛み
  • pulseless:脈拍消失
  • paresthesia:知覚鈍麻
  • paralysis:麻痺

 

 

これらの5つの症状の頭文字をとって、コンパートメント症候群の5Pと言われています。

 

しかし実臨床では、5Pの症状が揃った段階には既に虚血による壊死が進行しているため、適切な対処ができない可能性が高いです。

 

したがって5Pが出現する前の段階で、コンパートメント症候群を疑うことが非常に重要です。

 

 

 

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コンパートメント症候群の検査

コンパートメント内圧の測定

前述のように、コンパートメント内圧の測定が必須です。症状が増悪した際には、その都度コンパートメント内圧を測定する必要があります。

 

 

画像検査

コンパートメント症候群を発症した急性期には、特徴的な画像所見はありません。もちろん、骨折や筋挫傷の画像所見を認めるケースが多いですが、コンパートメント症候群に特徴的とは言えません。

 

 

血液生化学検査

コンパートメント症候群が進行すると、横紋筋融解症や高カリウム血症などの合併症が生じる可能性があります。

 

横紋筋融解症による腎機能障害や、高カリウム血症による電解質バランスを調べるために血液生化学検査が行われます。

 

 

コンパートメント症候群の治療

保存療法

コンパートメント症候群は、筋肉の壊死などを引き起こす可能性があるため、迅速な対応が必要です。

 

一般的に外傷ではRICE療法(安静、冷却、圧迫、挙上)が行われます。しかし、RICE療法のうち挙上関しては、血流が低下する可能性があるため推奨されていません。

 

一応、保存療法について記載しましたが、コンパートメント内圧が高まった場合には手術を躊躇してはいけません。

 

 

手術療法

コンパートメント内圧が40mmHg以上になると、内部の圧力を下げるために皮膚と筋膜を切開する手術(減張切開)が必要です。

 

コンパートメント症候群のために四肢の広範囲で筋肉組織が壊死すると、運動障害や知覚障害を併発します。

 

その再建のためには、難易度の高い大きな手術が必要となることもあります。コンパートメント症候群は、早期診断と適切な治療が不可欠なのです。

 

 

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コンパートメント症候群で考えられる後遺症

機能障害

8級7号:1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの

 

下腿にコンパートメント症候群を併発すると、足関節の自動運動が不可能になるケースが多いです。

 

<参考>
【医師が解説】腓骨神経麻痺の後遺障害認定ポイント|交通事故

 

 

 

9級15号:1足の足指の全部の用を廃したもの

 

下腿に発生したコンパートメント症候群のために、足部の小さな筋肉が壊死するケースも多いです。

 

<参考>
【医師が解説】足骨折やリスフラン靭帯損傷の後遺症|交通事故

 

 

醜状障害

12級相当

 

コンパートメント症候群では、減張切開が行われます。このため、12級や14級5号に認定される可能性が高いです。

 

上肢または下肢に手のひらの大きさの3倍程度以上の瘢痕を残しているものは、12級に認定される可能性があります。

 

 

14級5号

 

下肢の露出面に手のひらの大きさ瘢痕を残したものは、14級5号に認定される可能性があります。

 

<参考>
【医師が解説】外貌醜状や醜状障害の後遺障害認定ポイント|交通事故
【医師が解説】足(下肢)の傷跡の後遺障害|交通事故

 

 

【弁護士必見】コンパートメント症候群のポイント

後遺障害等級

コンパートメント症候群は、広範な障害を残しやすいです。例えば下腿に発生したコンパートメント症候群では、足関節機能障害と足趾機能障害を併発します。

 

このため、下腿に発生したコンパートメント症候群では、以下の後遺障害等級が認定されて、併合6級となる可能性があります(注)。

 

  • 8級7号:1下肢の3大関節中の1関節の用を廃したもの
  • 9級15号:1足の足指の全部の用を廃したもの
  • 12級相当:下肢の醜状障害

 

 

(注)足関節用廃と足趾用廃は同一系列として取り扱うので併合7級、これと醜状障害12級で併合6級となります。

 

 

医療過誤に該当する可能性がある

コンパートメント症候群は、適切な時期に減張切開することで回避できる可能性があります。

 

もちろん、不可抗力のケースも多いですが、医療機関側に一定程度の落ち度がある可能性もあります。

 

一般的にはコンパートメント症候群は重度の障害を残すため、慎重な対応が必要と思われます。

 

コンパートメント症候群でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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まとめ

 

コンパートメント症候群は、骨折や打撲などの外傷によって、骨や筋膜などで区切られた閉鎖空間(コンパートメント)内の圧力が高まってしまい、筋肉、神経、血管が圧迫されて大きなダメージを受ける病態です。

 

コンパートメント内の圧力が高くなると、コンパートメント内の組織への血流が遮断されてしまい、筋肉などが壊死してしまいます。

 

コンパートメント症候群は、広範な障害を残しやすいです。例えば下腿に発生したコンパートメント症候群では、足関節機能障害と足趾機能障害を併発します。

 

 

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