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【医師が解説】圧迫骨折の痛みが取れないのは後遺障害?|交通事故

圧迫骨折は痛みを残しやすい外傷です。圧迫骨折で痛みが取れない時には、原因を考える必要があります。

 

本記事は、圧迫骨折の痛みが取れない時の対処法と、交通事故で受傷した圧迫骨折が後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/4/18

 

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圧迫骨折とは

 

圧迫骨折とは、背骨の椎体が潰れる骨折です。下の画像のように背骨が台形に潰れるケースが多いです。

 

骨粗鬆症がベースにある高齢者で好発しますが、若年者であっても交通事故や高所からの転落で受傷する可能性があります。

 

 

<参考>
【医師が解説】圧迫骨折が後遺障害認定されるポイント|交通事故

 

 

Lumbar spine X-ray

 

 

圧迫骨折で残る可能性のある後遺症

 

圧迫骨折によって、どのような症状が発生するのでしょうか。圧迫骨折による症状は以下のように多岐に渡ります。

 

  1. 腰痛
  2. 背部痛
  3. 背中が曲がる
  4. 歩き方が悪くなる
  5. 身体が固くなる
  6. 胸やけなどの消化器症状

 

 

腰痛

これらの症状のうち、最も多いのは腰痛です。人間は二本足歩行の生き物なので、もともと腰にかかる負担が大きいです。

 

このため、腰痛は国民病と言われるほど頻度が高いですが、胸腰椎圧迫骨折を受傷すると腰痛の発症率がさらに増加します。

 

 

背部痛

腰痛と並んで多いのが背部痛です。圧迫骨折を受傷しやすいのは胸腰移行部という胸椎と腰椎の境目です。

 

具体的には、みぞおちの高さの背中が胸腰移行部です。この部分が骨折するので、腰痛だけではなく背部痛も発症しやすいです。

 

 

背中が曲がる

胸腰椎圧迫骨折で特徴的な後遺症は「背中が曲がること」です。高齢者は腰の曲がっている人が多いですが、その原因は胸腰椎圧迫骨折です。

 

 

歩き方が悪くなる

背中が曲がると前かがみになるため、歩き方が悪くなります。

 

 

身体が固くなる

胸腰椎圧迫骨折の治療には保存治療と手術治療があります。そして、どちらの治療法を選択しても、身体が固くなりがちです。

 

保存治療では、脇の下から骨盤までを覆う大きなコルセットを3ヵ月程度装着します。これだけ長期間にわたってコルセットを装着すると、背骨の動きが悪くなります。

 

手術治療では、インストゥルメンテーションというネジのような金属で、背骨を直接固定するケースが多いです。

 

インストゥルメンテーション手術では、最低でも3椎体ほど固定するので、それだけ背骨の可動性が低下します。

 

 

instrumentation

 

 

胸やけなどの消化器症状

胸腰椎圧迫骨折で背中が曲がると、お腹の中(腹腔内)の容積が小さくなります。

 

その結果、胃が圧迫されてしまい、胸やけの原因となる逆流性食道炎を併発しやすくなります。

 

 

圧迫骨折の痛みが取れない原因

圧迫骨折後の癒合不全

骨粗鬆症がベースにある人が圧迫骨折を受傷すると、折れた部分がうまく骨癒合しないことがあります。この状態を癒合不全と言います。

 

背骨が骨癒合しないと、姿勢を変える度に骨折部で骨が動いて痛みの原因となります。

 

 

廃用性の筋力低下

治療のため、もしくは痛みを予防するために、コルセットを長く着けていると腰の筋力が低下します。

 

腰の筋力が低下すると腰痛の原因となります。治療が終了したにもかかわらず、予防的にコルセットを装着していると、逆に腰痛の原因となるので注意しましょう。

 

 

背中の曲がりが強くなった(後弯増強)

圧迫骨折を受傷すると背中の曲がりが強くなります。背中が丸くなると、それだけ腰骨の他の部分や腰まわりの筋肉に負担がかかります。

 

このため、圧迫骨折で背中の曲がりが強くなるほど、腰痛が悪化する原因となります。

 

 

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痛みが取れない圧迫骨折の対処法

横を向いて寝る

上を向いて寝ていると、圧迫骨折で曲がった背中に更なる負担がかかります。このため、横向きになって寝ることが勧められます。

 

 

中腰で重い物を持たない

中腰になって重い物を持つと、腰痛の原因となる可能性があります。また、新しい圧迫骨折を引き起こすきっかけにもなるので、中腰で重い物を持つのは控えましょう。

 

 

長時間座らない

座っている姿勢は、背骨の間にある椎間板に、寝ている時の4倍の負担がかかると言われています。座っている姿勢は腰にかなりの負担をかけるのです。

 

このため、長時間(おおむね30分以上)座り続けることは避けましょう。

 

 

高齢者は歩行補助具(杖・シルバーカー)を検討する

高齢者は圧迫骨折によって背中が曲がるだけではなく、背筋などの腰回りの筋肉も衰えています。

 

前かがみの状態で歩いていると転倒しやすいです。これを補うために、歩行補助具(杖・シルバーカー)の使用を検討しましょう。

 

 

病院で詳しい検査をしてもらう

圧迫骨折後に痛みが続く原因のひとつに、椎体の癒合不全があります。癒合不全を放置すると、遅発性の脊髄損傷をきたすこともあります。

 

圧迫骨折後の癒合不全は、レントゲン検査だけでは分かりにくいケースも多いです。癒合不全の有無を診断するには、レントゲン検査の動態撮影、CT検査、MRI検査が必要です。

 

圧迫骨折後に痛みが続く場合には、必ず主治医に相談しましょう。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

痛みが取れない圧迫骨折で考えられる後遺障害

脊柱の変形障害(6級、8級、11級)

 

脊柱の変形障害には、変形程度に応じて下記3つがあります。

 

 

6級5号:脊柱に著しい変形を残すもの

 

2個以上の椎体の前方椎体高の高さの合計が、後方椎体の高さの合計よりも、1個の椎体分以上低くなっているものです。端的に言うと、椎体1個以上の椎体前方高の減少したものです。

 

この場合の1個の椎体分とは、骨折した椎体の後方椎体高の平均値です。

 

 

<参考>
【医師が解説】脊柱変形障害や運動障害が後遺障害認定されるポイント

 

 

8級2号:脊柱に中程度の変形を残すもの

 

1個以上の椎体の前方椎体高の高さの合計が、後方椎体の高さの合計よりも、1/2個の椎体分以上低くなっているものです。端的に言うと、椎体の1/2以上の椎体前方高の減少したものです。

 

 

11級7号:脊柱に変形を残すもの

 

下記3つのいずれかに該当すれば認定されます。

 

  • 椎体の変形が画像上確認できるもの
  • 脊椎固定術が行われたもの
  • 3個以上の脊椎について、椎弓切除術などの椎弓形成術を受けたもの

 

 

脊柱の運動障害(6級、8級)

6級5号:脊柱に著しい運動障害を残すもの

 

脊柱に著しい運動障害を残すものとは、次のいずれかの原因で頚部および胸腰部が強直したものです。
 

  • 頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており、それがレントゲン等によって確認できるもの
  • 頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
  • 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

 

 

<参考>
【医師が解説】脊柱変形障害や運動障害が後遺障害認定されるポイント

 

 

8級2号:脊柱に運動障害を残すもの

 

脊柱に運動障害を残すものとは、次のいずれかに該当する場合です。
 

  • 頚椎、腰椎それぞれに圧迫骨折等があることが画像上確認できるもの
  • 頚椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
  • 頚椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
  • 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
  • 頭蓋や上位頚椎間に著しい異常可動性が発生したもの

 

 

脊柱の荷重機能障害(6級、8級)

6級5号:脊柱に著しい荷重機能障害を残すもの

 

頚部及び腰部の両方が、次のいずれかの理由で保持が困難であり、常に硬性補装具が必要なもの
 

  • 頚椎または腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
  • 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

 

 

8級2号:脊柱に荷重機能障害を残すもの

 

頚部または腰部のいずれかが、次のいずれかの理由で保持が困難であり、常に硬性補装具が必要なもの
 

  • 頚椎または腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
  • 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

 

 

圧迫骨折による神経障害(12級、14級)

圧迫骨折の程度がごく軽度の場合には、脊柱の変形障害ではなく、神経障害(痛み)として後遺障害に認定される可能性もあります。

 

 

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

 

レントゲン検査やCT検査で、圧迫骨折の存在を確認できるものです。しかし、画像検査で圧迫骨折が確認できるのであれば、脊柱の変形障害(11級7号)を念頭に置いて、異議申し立てするべきでしょう。

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

 

レントゲン検査やCT検査では圧迫骨折の存在を確認できないものの、MRI検査で骨折が疑われる事案では14級9号に認定される可能性があります。

 

MRI検査で骨折が疑われる場合には、骨挫傷と骨折の両方の可能性があります。治療経過で椎体に化骨形成を認めるケースは骨折なので、11級7号や12級13号を念頭において異議申し立てするべきでしょう。

 

 

<参考>
【医師が解説】骨挫傷の後遺症が後遺障害認定されるヒント|交通事故

 

 

脊髄損傷の後遺障害

脊椎圧迫骨折では、脊髄損傷を合併するケースがあります。脊髄損傷の後遺障害に関しては、下記を参照してください。

 

 

<参考>
【医師が解説】脊髄損傷の後遺障害認定ポイント|交通事故

 

 

 

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圧迫骨折の後遺障害認定で損害賠償金を請求できる

 

圧迫骨折で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。

 

 

後遺障害慰謝料とは

交通事故で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。

 

 

後遺障害等級

後遺障害慰謝料

1級

2800万円

2級

2370万円

3級

1990万円

4級

1670万円

5級

1400万円

6級

1180万円

7級

1000万円

8級

830万円

9級

690万円

10級

550万円

11級

420万円

12級

290万円

13級

180万円

14級

110万円

 

 

後遺障害逸失利益とは

後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。

 

後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。

 

 

後遺障害逸失利益の計算式

 

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

 

 

脊椎圧迫骨折の変形障害で労働能力喪失は認めない?

保険会社は、腰椎圧迫骨折(胸椎圧迫骨折)で変形障害が認定された事案に対して、認定等級に準じた労働能力喪失率を認めないという訴訟を全国で繰り広げています。

 

脊柱の変形障害は経年的に馴化するので、被害者の労働能力は喪失しないというロジックです。実際、労災医員の間でも、脊柱の変形障害の後遺障害等級が高過ぎるという意見が相次いでいます。

 

ただ、長期的予後を鑑みると、隣接椎間障害や脊柱アライメント不良による後遺症について留意する必要があります。

 

 

<参考>
【日経メディカル】圧迫骨折の「後遺障害」はあるのに「後遺症」はない?

 

 

nikkei medical

 

 

 

最近では、労働能力喪失率で保険会社から訴訟提起された事案に対する、被害者側弁護士からの反論意見書依頼が激増しています。

 

このため弊社では、ほぼパターン化できるほど豊富な数の、保険会社側意見書に対する反論意見書をストックしています。お困りの事案があればこちらからお問い合わせください。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

【8級2号】圧迫骨折の後遺障害認定事例

事案サマリー

  • 被害者:35歳
  • 初回申請:11級7号
  • 異議申立て:8級2号(脊柱に中程度の変形を残すもの)

 

自動車乗車中にトラックと正面衝突して受傷しました。初回申請では第12胸椎圧迫骨折(青矢印)に対して11級7号が認定されました。

 

 

弊社の取り組み

弊社にて画像所見を精査すると、受傷時のMRI検査で第3.4.5胸椎圧迫骨折(赤矢印)も併発していました。CT検査を追加実施して、圧迫骨折を受傷した全ての椎体高を計測しました。異議申し立てしたところ8級2号が認定されました。

 

 

thoracic compression fractures

 

 

【11級7号】圧迫骨折の後遺障害認定事例

事案サマリー

  • 被害者:60歳
  • 被害者申請:14級9号
  • 異議申立て:11級7号(脊柱に変形を残すもの)

 

バイク乗車中に自動車と衝突して受傷しました。第1腰椎脱臼骨折に対して、脊椎固定術(第12胸椎~第2腰椎)が施行されました。術後1年で脊椎インストゥルメンテーションの抜釘(異物除去術)を施行されました。

 

被害者請求では、椎体の明らかな変形を認められないことから脊柱の変形障害として評価を行うことは困難という理由で14級9号が認定されました。

 

 

L1 dislocation fracture

 

 

弊社の取り組み

弊社にて画像所見を精査すると、CT検査ではL1椎体前方に椎体皮質の不整像が残っており、T12/L1椎間板は外傷により変性して、椎間板高が減少しており局所後弯が残存していました。

 

医師意見書を添付して異議申し立てしたところ、脊柱に変形を残すものとして11級7号が認定されました。

 

 

L1 vertebral fracture

 

 

まとめ

 

圧迫骨折は痛みを残しやすい外傷です。圧迫骨折で痛みが取れない時には、以下のような原因が考えられます。

 

  • 圧迫骨折後の癒合不全
  • 廃用性の筋力低下
  • 背中の曲がりが強くなった(後弯増強)

 

圧迫骨折の痛みが取れない時には、横を向いて寝る、中腰で重い物を持たない、長時間座らない、高齢者は歩行補助具(杖・シルバーカー)を検討するなどの対処法を検討しましょう。

 

交通事故で受傷した胸腰椎圧迫骨折でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。

 

 

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