眼科領域の外傷のひとつに外傷性散瞳があります。複視や視力障害と比較して事案数が少ないですが、ときどき相談されることがあります。
本記事は、外傷性散瞳の後遺症が後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日:2023/5/11
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外傷性散瞳とは
目を打った後に、瞳孔(黒目の部分)が広がったままになった状態です。
光に対する瞳孔の調整能力が消失または減弱しているため、まぶしくて生活しづらい後遺症を残します。
交通事故での外傷性散瞳の原因
目をぶつけることによって生じる外傷性散瞳の原因は以下の2つです。
- 眼球への鈍的外力による瞳孔括約筋損傷
- 視神経もしくは動眼神経損傷
外傷性散瞳の症状
瞳孔が収縮しないので、まぶしい状態が続きます。特に明るい所に行くと、まぶしさが悪化します。
外傷性散瞳で後遺障害に認定されると損害賠償金を請求できる
外傷性散瞳で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。
後遺障害慰謝料とは
交通事故で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。
後遺障害等級 | 後遺障害慰謝料 |
1級 | 2800万円 |
2級 | 2370万円 |
3級 | 1990万円 |
4級 | 1670万円 |
5級 | 1400万円 |
6級 | 1180万円 |
7級 | 1000万円 |
8級 | 830万円 |
9級 | 690万円 |
10級 | 550万円 |
11級 | 420万円 |
12級 | 290万円 |
13級 | 180万円 |
14級 | 110万円 |
後遺障害逸失利益とは
後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。
後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。
後遺障害逸失利益の計算式
後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。
基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数
外傷性散瞳の後遺障害
外傷性散瞳の後遺障害等級は、対光反射と羞明の程度で決まります。
11級相当
両眼について対光反射が著しく制限され、著明な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの
12級相当
- 1眼について対光反射が著しく制限され、著明な羞明を訴え労働に著しく支障をきたすもの
- 両眼の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの
14級
1眼の対光反射はあるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの
14級
1眼について対光反射は認められるが不十分であり、羞明を訴え労働に支障をきたすもの
【弁護士必見】外傷性散瞳の後遺障害認定ポイント
後遺障害認定の実務で問題になるのは、羞明の程度の基準が明示されていないことです。障害認定必携においても、外傷性散瞳の具体的基準は記載されていません。
医学的に散瞳の定義は瞳孔5.0㎜以上です。このため、明所で瞳孔が5.0㎜以上かつ左右差が0.5㎜以上あれば、健側と比べて散瞳していると言えます。
対光反射および羞明の基準を満たし、かつ眼部への鈍的外力もしくは視神経管周囲の骨折が存在すれば、事故との因果関係があるため後遺障害が認定される可能性はあります。
外傷性散瞳でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
まとめ
眼科領域の外傷のひとつである外傷性散瞳は、複視や視力障害と比較して事案数が少ないです。
しかし、光に対する瞳孔の調整能力が消失または減弱しているため、まぶしくて生活しづらい後遺症を残します。
後遺障害認定の実務で問題になるのは、羞明の程度の基準が明示されていないことです。
医学的に散瞳の定義は瞳孔5.0㎜以上です。このため、明所で瞳孔が5.0㎜以上かつ左右差が0.5㎜以上を散瞳の認定基準と考えてよいでしょう。
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