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【医師が解説】第12胸椎圧迫骨折の後遺症認定ポイント|交通事故

第12胸椎圧迫骨折は、圧迫骨折の中で最も多い骨折ひとつです。第12胸椎は、みぞおちの裏にある背骨です。

 

第12胸椎圧迫骨折は後遺症を残しやすいです。後遺症が残ると、後遺障害等級の6級、8級、11級、12級、14級に認定される可能性があります。

 

本記事は、第12胸椎圧迫骨折の後遺症が、自賠責保険で後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/3/17

 

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第12胸椎圧迫骨折とは

 

第12胸椎圧迫骨折とは、みぞおちの裏にある背骨の骨折です。第12胸椎は、第11胸椎や第1腰椎と並んで、圧迫骨折が好発する部位です。

 

 

Lumbar spine X-ray

 

 

第12胸椎圧迫骨折の後遺症

 

第12胸椎圧迫骨折によって、以下のような後遺症が残存する可能性があります。

 

  1. 腰痛
  2. 背部痛
  3. 背中が曲がる
  4. 歩容の悪化
  5. 遅発性の下肢神経障害
  6. 胸やけなどの消化器症状

 

これらの後遺症のうち、最も多いのは腰痛や背中が曲がることです。第12胸椎は、胸腰移行部という胸椎と腰椎の移行部に位置します。

 

胸腰移行部は、解剖学的に背骨への負担が集中しやすい部位です。このため、第12胸椎圧迫骨折を受傷すると、さまざまな後遺症を残します。

 

背骨の症状だけではなく、下肢のしびれや脱力感、胸やけなどの消化器症状が発生する可能性もあります。

 

 

LBP

 

 

第12胸椎圧迫骨折の治療

第12胸椎圧迫骨折の保存療法

下肢の運動障害や排尿しにくさなどの症状が無い限り、フレームコルセットやダーメンコルセットによる保存療法が第一選択になります。

 

 

第12胸椎圧迫骨折の手術療法

経皮的椎体形成術(BKP)

 

経皮的椎体形成術(Baloon Kypoplasty; BKP)は、圧迫骨折した椎体に、針を用いて骨セメントを充填する低侵襲な手術です。痛みを軽減できると同時に、背骨の安定化も得られます。

 

比較的低侵襲な手術であるにもかかわらず、迅速に効果を得られるため、特に高齢者の骨粗鬆症に起因した圧迫骨折では有用な治療です。

 

一方、若年者の交通事故による圧迫骨折では、経皮的椎体形成術の適応はありません。

 

 

脊椎固定術

 

金属製のスクリューや棒で背骨を直接固定する手術です。背中を切って骨折した部位を固定する方法と、脇腹を切って内臓を避けて骨折部分を固定する方法があります。

 

中~高齢者の圧迫骨折では、人工骨や患者さんの骨(骨移植)を骨折部や背骨の間に挿入して、金属製のスクリューや棒で固定するケースが多いです。

 

一方、若年者の圧迫骨折では、人工骨や患者さんの骨(骨移植)を使わずに、金属製のスクリューや棒だけで固定するケースもあります。

 

このような症例では、骨折部の骨癒合が得られた時点で、金属製のスクリューや棒を取り出す手術(抜釘術)を行うケースが多いです。

 

交通事故の後遺障害の観点では、金属製のスクリューや棒を取り出す手術(抜釘術)の後に症状固定すると、非該当になる可能性があるので注意が必要です。

 

 

<参考>
【日経メディカル】抜釘のタイミングで圧迫骨折の後遺障害の等級が変わる?

 

 

 

nikkei medical

 

 

第12胸椎圧迫骨折の後遺障害認定に必要な検査

レントゲン検査(単純X線像)

交通事故診療では、MRIが最も重要な画像検査とみなされがちです。しかし自賠責認定基準では、後遺障害等級の判定に用いられるのは、MRIではなく単純X線像です。

 

このため、第12胸椎圧迫骨折の後遺障害等級認定には適切に撮影されたレントゲン検査が必須です。この場合の「適切」とは、正確な側面像を指します。よく見かけるのはやや斜位になっているレントゲン検査です。

 

正確な側面像でなければ、椎体の圧壊度を計測できません。このため適切に撮影されたレントゲン検査が必須なのです。

 

 

CT検査

第12胸椎圧迫骨折では、正確に椎体の圧壊を計測できない事案が珍しくありません。その理由は、肩関節、肺、心臓、横隔膜のために、第12胸椎の椎体がはっきりと描出できないケースがあるからです。

 

レントゲン検査で評価しにくい部位ではCTが必要です。CTでは椎体を明確に描出することが可能なうえ、椎体の圧壊度を正確に計測することもできます。

 

 

MRI検査

第12胸椎圧迫骨折の診断でも、MRIの有用性は言うまでもありません。骨折線はT1強調画像では低信号領域(黒)として写ります。

 

新鮮骨折ではSTIRという撮像条件が重要で、椎体が高信号(白)になっていれば、T1強調画像と合わせて新鮮骨折と診断できます。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

第12胸椎圧迫骨折の後遺障害

 

第12胸椎圧迫骨折の後遺障害には、以下のような5つの障害があります。

 

  • 脊柱の変形障害(6級、8級、11級)
  • 脊柱の運動障害(6級、8級)
  • 脊柱の荷重機能障害(6級、8級)
  • 局部の神経障害(12級、14級)
  • 脊髄損傷の後遺障害

 

 

<参考>
【国土交通省】後遺障害等級表

 

 

脊柱の変形障害(6級、8級、11級)

 

脊柱の変形障害には、変形程度に応じて下記3つがあります。

 

 

後遺障害6級5号:脊柱に著しい変形を残すもの

 

2個以上の椎体の前方椎体高の高さの合計が、後方椎体の高さの合計よりも、1個の椎体分以上低くなっているものです。端的に言うと、椎体1個以上の椎体前方高の減少したものです。

 

この場合の1個の椎体分とは、骨折した椎体の後方椎体高の平均値です。

 

 

<参考>
【医師が解説】脊柱の変形障害、運動障害が認定されるコツ|交通事故

 

 

後遺障害8級2号:脊柱に中程度の変形を残すもの

 

1個以上の椎体の前方椎体高の高さの合計が、後方椎体の高さの合計よりも、1/2個の椎体分以上低くなっているものです。端的に言うと、椎体の1/2以上の椎体前方高の減少したものです。

 

 

<参考>
【医師が解説】胸椎圧迫骨折 8級の画像とは|交通事故の後遺障害

 

 

後遺障害11級7号:脊柱に変形を残すもの

 

下記3つのいずれかに該当すれば認定されます。

 

  • 脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがエックス線写真等により確認できるもの
  • 脊椎固定術が行われたもの
  • 3個以上の脊椎について、椎弓切除術などの椎弓形成術を受けたもの

 

 

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脊柱の運動障害(6級、8級)

後遺障害6級5号:脊柱に著しい運動障害を残すもの

 

脊柱に著しい運動障害を残すものとは、次のいずれかの原因で頚部および胸腰部が強直したものです。
 

  • 頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎圧迫骨折等が存しており、それがレントゲン等によって確認できるもの
  • 頚椎および胸腰椎のそれぞれに脊椎固定術が行われたもの
  • 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

 

 

<参考>
【医師が解説】脊柱の変形障害、運動障害が認定されるコツ|交通事故

 

 

後遺障害8級2号:脊柱に運動障害を残すもの

 

脊柱に運動障害を残すものとは、次のいずれかに該当する場合です。
 

  • 頚椎、腰椎それぞれに圧迫骨折等があることが画像上確認できるもの
  • 頚椎または胸腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
  • 頚椎または胸腰椎に脊椎固定術が行われたもの
  • 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの
  • 頭蓋や上位頚椎間に著しい異常可動性が発生したもの

 

 

脊柱の荷重機能障害(6級、8級)

年間1000事案の取り扱いがある弊社においても、第12胸椎圧迫骨折で脊柱の荷重機能障害に認定された事案の経験はほとんど存在しません。

 

その理由は、ほとんどの事案は脊柱の変形障害で処理されるためと思われます。

 

実臨床で、脊柱の荷重機能障害に認定される可能性がありそうな事案は、圧迫骨折後の偽関節ではないでしょうか。

 

若年者では少ないですが、高齢者では圧迫骨折後に椎体の前方が偽関節になる症例は珍しくありません。

 

このような症例では頑固な腰背部痛が残るため、コルセットを常用せざるを得ない症例を散見します。

 

 

後遺障害6級5号:脊柱に著しい荷重機能障害を残すもの

 

頚部及び腰部の両方が、次のいずれかの理由で保持が困難であり、常に硬性補装具が必要なもの
 

  • 頚椎または腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
  • 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

 

 

後遺障害8級2号:脊柱に荷重機能障害を残すもの

 

頚部または腰部のいずれかが、次のいずれかの理由で保持が困難であり、常に硬性補装具が必要なもの
 

  • 頚椎または腰椎に脊椎圧迫骨折等を残しており、そのことがレントゲン撮影などによって確認できるもの
  • 項背腰部軟部組織に明らかな器質的変化が認められるもの

 

 

圧迫骨折後遺症による神経障害(12級、14級)

圧迫骨折の程度がごく軽度の場合には、脊柱の変形障害ではなく、神経障害(痛み)として後遺障害に認定される可能性もあります。

 

 

後遺障害12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

 

レントゲン検査やCT検査で、圧迫骨折の存在を確認できるものです。しかし、画像検査で圧迫骨折が確認できるのであれば、脊柱の変形障害(11級7号)を念頭に置いて、異議申し立てするべきでしょう。

 

 

後遺障害14級9号:局部に神経症状を残すもの

 

レントゲン検査やCT検査では圧迫骨折の存在を確認できないものの、MRI検査で骨折が疑われる事案では14級9号に認定される可能性があります。

 

MRI検査で骨折が疑われる場合には、骨挫傷と骨折の両方の可能性があります。治療経過で椎体に化骨形成を認めるケースは骨折なので、11級7号や12級13号を念頭において異議申し立てするべきでしょう。

 

 

<参考>
【医師が解説】骨挫傷の後遺症が後遺障害認定されるヒント|交通事故

 

 

脊髄損傷の後遺障害

脊椎圧迫骨折では、脊髄損傷を合併するケースがあります。脊髄損傷の後遺障害に関しては、以下のリンク先を参照してください。

 

 

<参考>
【医師が解説】脊髄損傷の後遺障害認定ポイント|交通事故

 

 

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Traffic accident patient

 

 

【弁護士必見】第12胸椎圧迫骨折の後遺障害認定ポイント

第12胸椎圧迫骨折は後遺症が残りやすい

第12胸椎圧迫骨折という傷病名が付いている段階で、何らかの後遺障害に認定される可能性が極めて高いです。

 

その理由は、第12胸椎圧迫骨折が胸腰移行部に位置するためです。胸椎は肋骨によってサポートされているため、圧迫骨折を受傷しても椎体が圧壊しにくいです。

 

一方、第12胸椎には小さな肋骨が存在するものの全周性に肋骨があるわけではないため、上位~中位胸椎と比べて圧迫骨折を受傷しやすいです。

 

そして、圧迫骨折を受傷すると、椎体の圧壊程度が大きくなる傾向にあります。このため、痛みや背骨の変形などさまざまな後遺症を残す可能性があります。

 

 

<参考>
【医師が解説】圧迫骨折が後遺症認定されるポイント|交通事故

 

 

魚椎や扁平椎では8級以上は難しい

第12胸椎圧迫骨折は不安定な骨折なので椎体が潰れやすいです。このため、楔状骨折(椎体前方が潰れるタイプ)ではなく、全体が万遍無く潰れる魚椎や扁平椎を散見します。

 

後遺障害の対象となるのは、椎体前方が潰れるタイプの楔状骨折です。全体が万遍無く潰れる魚椎や扁平椎は、椎体前後の潰れ方に差が無いため、脊柱の後弯変形をきたしません。

 

骨折の重症度としては、魚椎や扁平椎も楔状骨折と同様です。しかし、魚椎や扁平椎では後遺障害8級以上に認定される可能性は低いのが現状です。

 

 

<参考>
【医師が解説】胸椎圧迫骨折 8級の画像とは|交通事故の後遺障害

 

 

脊柱の運動障害はハードルが高い

第12胸椎圧迫骨折では、理論上は胸腰椎部の可動域制限による運動障害も残存する可能性があります。しかし実務では、脊柱の運動障害に認定される可能性は極めて低いです。

 

脊柱の運動障害に認定されるためには、広範囲にわたる脊椎固定術が必要です。しかし、第12胸椎圧迫骨折などの外傷では、可能な限り脊椎の固定範囲を少なくします。このため、運動障害に認定されにくいのです。

 

尚、加齢による変性疾患に関しては、腰椎側方椎体間固定術(XLIF)や腰椎前外側椎体間固定術(OLIF)による広範囲の脊椎固定術が施行されます。

 

 

<参考>
【医師が解説】脊柱変形障害や運動障害が後遺障害認定されるポイント

 

 

第12胸椎圧迫骨折後の労働能力喪失率と労働能力喪失期間

第12胸椎圧迫骨折では最低でも後遺障害11級7号に認定されます。しかし、自賠責保険の実務で最も問題になるのは、労働能力喪失率と労働能力喪失期間です。

 

弊社に依頼される胸椎や腰椎圧迫骨折の事案の約半数は、労働能力喪失率と労働能力喪失期間が争いになっています。

 

第12胸椎圧迫骨折で8級や11級に認定された事案の訴訟でよく見かけるのは、保険会社による以下のような主張です。

 

 

  • 変形(背骨が曲がる)の程度が軽いので、痛みによる日常生活の支障は認めない
  • 脊柱の変形障害では、馴化によって労働能力喪失率が経年的に減少する

 

 

たしかに、後遺障害は症状固定時の後遺症に対する補償なので、若年者に関しては保険会社側の主張も一理あります。

 

このため、保険会社の主張に対して反論するには、背筋力が加齢と共に低下することを示した医学論文を用いてエビデンスを示す必要があります。

 

第12胸椎圧迫骨折後の労働能力喪失率や労働能力喪失期間でお困りの事案があればこちらのお問い合わせから気軽にご相談ください。

 

 

<参考>
【日経メディカル】圧迫骨折の「後遺障害」はあるのに「後遺症」はない?

 

 

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Traffic accident patient

 

 

第12胸椎圧迫骨折の後遺症のまとめ

 

第12胸椎圧迫骨折は、圧迫骨折の中で最も多い骨折ひとつです。第12胸椎は、みぞおちの裏にある背骨です。第12胸椎は、第11胸椎や第1腰椎と並んで、圧迫骨折が好発する部位です。

 

第12胸椎圧迫骨折の後遺症のうち、最も多いのは腰痛や背中が曲がることです。背骨の症状だけではなく、下肢のしびれや脱力感、胸やけなどの消化器症状が発生する可能性もあります。

 

第12胸椎圧迫骨折の後遺障害には、脊柱の変形障害、脊柱の運動障害、脊柱の荷重機能障害があります。ほとんどの事案は、脊柱の変形障害を目指すことになります。

 

 

 

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