交通事故の後遺症に悩まされているにもかかわらず、「後遺障害非該当」という結果に戸惑っていませんか?
実は、自賠責保険による後遺障害等級の認定は、想像以上にハードルが高く、非該当になるケースも少なくありません。
しかし、非該当とされたからといって、そこで終わりではありません。非該当の理由を正しく理解して、必要な対応を取ることで、認定が覆る可能性もあるのです。
本記事では、後遺障害が非該当になる主な理由から、異議申し立ての方法、実際に認定が覆った事例までを詳しく解説しています。
弁護士の方や交通事故被害者の方に向けて、弊社が提供できるサポートも紹介します。まずは、認定率や非該当となる背景から見ていきましょう。
最終更新日: 2025/4/12
Table of Contents
後遺障害の認定率はどれぐらい?
後遺障害認定率はたった5%しかない
損害保険料率算出機構が、毎年発行している自動車保険の概要によると、後遺障害に認定される確率は約5%に過ぎません。
異議申し立てで後遺障害認定される確率は?
前述の自動車保険の概要によると、2020年度には全国で1万2307件の異議申し立てがありました。
しかし、異議申し立ての結果、後遺障害の等級が変更されたのは、わずか1911件の約15.5%しかありませんでした。
<参考>
【日経メディカル】後遺障害の異議申し立て、認定率はなぜ低い?
後遺障害が非該当になる5つの理由
自賠責保険で後遺障害に認定されない理由には、以下の5つが考えられます。
- 通院日数が少ない
- 通院期間が短い
- 画像所見が不十分
- 身体所見が画像所見と一致しない
- 後遺障害診断書の記載内容に問題がある
1. 通院日数が少ない
交通事故で多い、むちうち(頚椎捻挫)や腰椎捻挫では、後遺症の存在を客観的に証明できない事案がほとんどです。このため、通院日数などの客観的な「証拠」が重視されます。
つまり、通院日数が多いと「これだけ通院しているのだから後遺症が残っているのだろう」と自賠責保険は考えるのです。逆に通院日数が少ないと、困るほどの後遺症は残っていないと判断されます。
このため、自賠責保険で後遺障害に認定されるためには、適切な頻度で通院することが重要です。
<参考>
2. 通院期間が短い
通院日数が少ないと後遺障害が認定されないのと同じ理由で、受傷から症状固定までの通院期間が短いと、後遺障害に認定されないケースが多いです。
通院期間が短いと、自賠責保険から「困るほどの後遺症は残っていないのだろう」と判断されるためです。
このため、むちうちや腰椎捻挫で自賠責保険で後遺障害に認定されるためには、受傷から6ヵ月以上の通院期間が求められています。
<参考>
【日経メディカル】むち打ちの患者さんが長期に頻回通院する理由
3. 画像所見が不十分
自賠責保険では、診断書や画像所見だけで後遺障害が審査されます。このため、画像検査で所見が乏しいと、後遺障害に認定されにくいです。
特に、この傾向が強いのは、むちうちや腰椎捻挫のように画像検査だけでは症状の程度が分からない事案です。
しかし、骨折のようにはっきりとした事案であっても「痛み」や「可動域制限」を残しにくい画像所見であれば、後遺障害に認定されないケースが多いです。
<参考>
4. 身体所見が画像所見と一致しない
むちうち(頚椎捻挫)や腰椎捻挫でも、後遺障害12級13号が認定されるためには、身体所見と画像所見の完全一致が求められます。
また、むちうちや腰椎捻挫以外でも、脊髄損傷の不全麻痺例では身体所見と画像所見の完全一致がシビアに求められます。
<参考>
5. 後遺障害診断書の記載内容に問題がある
自賠責保険で後遺障害に認定されない大きな理由のひとつは、後遺障害診断書の記載内容に問題があるケースです。
自賠責保険の後遺障害認定基準を知っている医師はほとんど存在しません。また、医師は後遺障害診断書の記載方法を学ぶ機会もありません。
このため、後遺障害認定の視点では、不適切な内容の後遺障害診断書が珍しくないのが現実です。
この点について、私は強い問題意識を持っており、日経メディカルやケアネットなどの医師向けの各種メディアで啓蒙活動を実践しています。
<参考>
後遺障害が非該当になった事案の対処法【弁護士必見】
後遺障害が非該当になった理由を検討する
後遺障害が非該当になる理由として、前述の5つが挙げられます。このうち「通院日数が少ない」「通院期間が短い」に関しては、弁護士でも判断できます。
一方、「画像所見が不十分」「身体所見が画像所見と一致しない」「後遺障害診断書の記載内容に問題がある」に関しては、判断が難しいのではないでしょうか。
弊社では、等級スクリーニング®という自賠責認定基準に準拠した事案の分析サービスを提供しています。
交通事故で後遺症が残ったにもかかわらず、自賠責保険で後遺障害が認定されない場合には、戦略的に異議申し立てする必要があります。
後遺障害の異議申し立て成功率は、たった15.5%に過ぎません。たくさんある地雷を全て回避しなければ、後遺障害に認定されることは無いからです。
更に医療的な判断を要するポイントが多いため、弁護士が自己流で異議申し立てしても、自賠責認定基準を全てクリアすることは容易ではありません。
後遺障害の異議申し立てでは、自賠責認定基準を熟知した医療側のサポートが不可欠と言えます。医療側のサポートとして、等級スクリーニング®をご利用いただけます。
新規法律事務所様は初回無料です。後遺障害に認定されなくてお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
自賠責保険に異議申し立てを行う
自賠責保険への異議申し立ては何度でもできます。このため、後遺障害に認定されない原因をあまり精査せず、異議申し立てを繰り返している事案を散見します。
しかし、自賠責認定基準に足りない項目を埋めずに異議申し立てしても、後遺障害は認定されないです。後遺障害に認定されるためには、戦略的に考える必要があります。
どこにも明記されていませんが、異議申し立てで後遺障害に認定されるためには、新たな医証が必須です。新たな医証とは以下のようなものを指します。
弁護士意見書や本人上申書などは新たな医証には該当しません。また、新たな医証であれば何でも良いというわけではありません。後遺障害が認定されない理由で説明したように、自賠責認定基準に足りない部分を埋める医証が必要なのです。
医師意見書や画像鑑定報告書を利用する
前述の等級スクリーニング®で事案の方針が立ったとしても、そこから先に進めないケースが多いです。その理由は、多くの事案で何等かの医証が不足しているケースが多いからです。
自賠責認定基準で必要とされる医証が不足する理由は、主治医の目的は治療だからです。このため、治療に直接必要ない検査を実施することはありません。
一方、自賠責保険で後遺障害に認定されるためには、事故と症状の因果関係や画像所見と症状が一致することを証明する必要があります。
そして、実臨床と自賠責認定基準の間にあるギャップを埋める役割をするのが、第三者の医師による医師意見書や画像鑑定報告書です。
第三者の医師が客観的な立場で作成する医師意見書や画像鑑定報告書は、後遺障害が認定されるために大きな効果を発揮するケースが多いです。
<参考>
- 【日経メディカル】意見書で交通事故の後遺症が決まるってホント?
- 交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
- 【日経メディカル】画像鑑定が一人歩き?!交通事故でトラブルが多発する3つの理由
- 【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
後遺障害の非該当が覆った事例
弊社ではこれまで数千例の事案に取り組んできました。整形外科や脳神経外科領域にとどまらず、ほとんど全科の事案の取り扱い経験があります。
代表的な事例を下記にまとめています。後遺障害が認定されずにお困りの方は、是非参照してください。
後遺障害12級6号|手首骨折(橈骨遠位端骨折)
事案サマリー
- 被害者:42歳
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)
歩行中に自動車に衝突されて橈骨遠位端骨折を受傷しました。初回申請で非該当でしたが、手首の痛みが強く日常生活への影響が大きいため、弊社に相談がありました。
弊社の取り組み
手首の痛みを精査する目的で、3テスラのMRIを再施行しました。MRIでは、TFCC損傷の所見がありました。
手の外科専門医(整形外科専門医)による意見書を作成しました。自賠責保険は手関節のTFCC損傷の存在をみとめ、12級13号を認定しました。
後遺障害12級13号|むちうち(頚椎捻挫、外傷性頚部症候群)
事案サマリー
- 被害者:46歳
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)
交通事故後に頚部痛と右頚部から母指にかけて放散する痛みが持続していました。痛みのため、1年以上通院、治療を余儀なくされましたが、症状は改善しませんでした。初回申請時には非該当と判定されました。
弊社の取り組み
診療録を詳細に確認すると、受傷直後から頚椎椎間板ヘルニアに特徴的な「スパーリング徴候陽性」と複数箇所に記載されていました。
MRIで、C5/6レベルに椎間板ヘルニア(矢印)を認め、患者さんの上肢痛(右母指にかけての放散痛)は椎間板ヘルニアが圧迫しているC6神経根の知覚領域と完全に一致していました。
脊椎脊髄外科指導医が診療録を確認して、初回申請時に見落とされていた身体所見を記載した医師意見書を作成しました。異議申立てを行ったところ12級13号が認定されました。
後遺障害12級13号|腰椎捻挫
事案サマリー
- 被害者:46歳
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)
交通事故後に腰痛と右下肢に放散する痛みが持続していました。痛みのため、半年以上通院を余儀なくされましたが、症状は改善しませんでした。初回申請時には非該当と判定されました。
弊社の取り組み
弊社に相談があり、診療録を詳細に確認すると、受傷直後から腰椎椎間板ヘルニアに特徴的な「ラセーグ徴候陽性」と複数箇所に記載されていました。
MRIで、L4/5レベルに椎間板ヘルニア(矢印)を認め、患者さんの右下肢痛は椎間板ヘルニアが圧迫しているL5神経根の知覚領域と一致していました。
脊椎外科専門医が診療録を確認したところ、初回申請時に見落とされていたため、これらの所見を丁寧に医師意見書に記載しました。
初回申請時には、腰椎MRI画像で確認できる椎間板ヘルニアの所見が軽視されていたため、読影所見の補足も行いました。異議申立てを行ったところ12級13号が認定されました。
後遺障害12級13号|膝の半月板損傷
事案サマリー(50代女性)
- 受傷機序:バイク走行中に対向車との接触し、転倒をこらえるため足を踏ん張った際に受傷
- 自覚症状:右膝内側の疼痛(立ちしゃがみ動作にて増強)
- 理学所見:McMurray test陽性、関節水腫あり、可動域制限なし
初回審査が非該当という結果であったところ、医師意見書を用いた異議申し立てにより12級13号を獲得した半月板損傷の事例を紹介します。
弊社の取り組み
画像所見および関節鏡所見
- 受傷直後のMRI所見では内側半月板中節〜後節に損傷を疑う信号変化あり
- 関節鏡手術所見で同部の損傷を認め、半月板切除術+半月板縫合術が施行された
- 術後MRI所見では内側半月板の形態変化(サイズの縮小)および信号変化あり
医師意見書の効果
上記の事案において、自賠責審査機構の見解は「画像所見上本件事故による骨折や脱臼等の明らかな外傷性の異常所見は認められず、他覚的に神経系統の障害が証明されるものとは捉えられない」というものでした。
医師意見書において以下の主張した結果、異議申し立てで12級13号の後遺障害が認定されました。
- 交通事故後より症状が出現したという診療録記載の引用
- 受傷直後および手術後の画像所見の提示
- 関節鏡手術所見を提示して事故との因果関係や症状を医学的に説明
主張内容および各種所見の医学的整合性が評価された結果であると考えられます。
後遺障害14級9号|むちうち(頚椎捻挫、外傷性頚部症候群)
事案サマリー
- 被害者:60歳
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:14級9号(局部に神経症状を残すもの)
交通事故後に頚部痛と両手のしびれを自覚されていました。受傷から半年間通院されましたが、頚部痛と両手のしびれは改善せず、後遺障害診断書が作成されましたが、非該当と判定されたため、弊社に相談がきました。
弊社の取り組み
MRIを脊椎脊髄外科専門医が読影したところ、頚椎後縦靭帯骨化症が存在していることが明らかになりました。診療録を確認すると、受傷当日から頚部痛と両手がしびれると記載されていました。
身体所見、画像所見および診療経過について、医師意見書を作成して異議申立てを行ったところ14級9号が認定されました。
後遺障害14級9号|腰椎捻挫
事案サマリー
- 被害者:39歳
- 初回申請:非該当
- 異議申立て:14級9号(局部に神経症状を残すもの)
交通事故後に腰痛を自覚されていました。受傷から8ヵ月通院されましたが、頑固な腰痛は改善せず、後遺障害診断書が作成されましたが、非該当と判定されたため、弊社に相談がきました。
弊社の取り組み
画像を脊椎外科専門医が詳細に読影したところ、事故の後から、L4/5椎間板高の減少(椎間板がすり減って、高さが低くなる現象)が進行していることが明らかになりました。
これらの所見について、医師意見書を作成して異議申立てを行ったところ14級9号が認定されました。
後遺障害認定非該当で弊社ができること
弁護士の方へ
弊社では、非該当になった事案が後遺障害に認定されるために、さまざまなサービスを提供しております。
等級スクリーニング®
現在の状況で、後遺障害に認定されるために足りない要素を、後遺障害認定基準および医学的観点から、レポート形式でご報告するサービスです。
等級スクリーニング®は、年間1000事案の圧倒的なデータ量をベースにしています。また、整形外科や脳神経外科以外のマイナー科も実施可能です。
等級スクリーニング®の有用性を実感いただくために、初回事務所様は、無料で等級スクリーニング®を承っております。こちらからお気軽にご相談下さい。
<参考>
【等級スクリーニング®】後遺障害認定と対策を精査|医療鑑定
医師意見書
医師意見書では、診療録、画像検査、各種検査、後遺障害診断書などの事故関連資料をベースにして、総合的に後遺障害の蓋然性を主張します。
医師意見書は、後遺障害認定基準に精通した各科の専門医が作成します。医学意見書を作成する前に検討項目を共有して、クライアントと医学意見書の内容を擦り合わせます。
医学意見書では、必要に応じて医学文献を添付して、論理構成を補強します。弊社では、2名以上の専門医によるダブルチェックを行うことで、医学意見書の質を担保しています。
弊社は1000例を優に超える医師意見書を作成しており、多数の後遺障害認定事例を獲得しています。是非、弊社が作成した医師意見書の品質をお確かめください。
<参考>
交通事故の医師意見書が後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
画像鑑定報告書
交通事故で残った後遺症が、後遺障害で非該当になったら異議申し立てせざるを得ません。その際に強い味方になるのが画像鑑定報告書です。
画像鑑定報告書では、レントゲン、CT、MRIなどの各種画像検査や資料を精査したうえで、後遺障害診断書に記載されている症状との関連性を報告します。
画像鑑定報告書は、画像所見の有無が後遺障害認定に直結する事案では、大きな効果を発揮します。
弊社では事案の分析から医師意見書の作成、画像鑑定にいたるまで、社内の管理医師が一貫して取り組むことで、クライアント利益の最大化を図っています。
<参考>
【画像鑑定】交通事故の後遺障害認定で効果的な理由|異議申し立て
後遺障害が非該当でお悩みの被害者の方へ
弊社サービスのご利用をご希望であれば、現在ご担当いただいている弁護士を通してご依頼いただけますと幸いです。
また、弊社では交通事故業務に精通している全国の弁護士を紹介することができます。
もし、後遺障害認定で弁護士紹介を希望される被害者の方がいらっしゃれば、こちらのリンク先からお問い合わせください。
尚、弁護士紹介サービスは、あくまでもボランティアで行っています。このため、電話での弊社への問い合わせは、固くお断りしております。
弊社は、電話代行サービスを利用しているため、お電話いただいても弁護士紹介サービスをご提供できません。ご理解いただけますよう宜しくお願い申し上げます。
後遺障害が非該当でよくある質問
後遺障害が非該当だと慰謝料を受け取れない?
後遺障害が非該当の場合、法律上「後遺障害慰謝料」は発生しないため、その分の補償が受け取れなくなります。つまり、「後遺障害による精神的苦痛に対する慰謝料」は、非該当では請求できません。
ただし、事故による入通院の期間や症状が一定程度あれば、「入通院慰謝料」などは別途請求可能な場合があります。
後遺障害が非該当でも示談金はもらえる?
後遺障害の等級が非該当と判断された場合でも、交通事故の被害者が受け取ることができる賠償金は存在します。
代表的なものに「治療費」「通院交通費」「入通院慰謝料」「休業損害」などがあります。これらは後遺障害の有無にかかわらず、実際に発生した損害として請求が可能です。
そのため、後遺障害に認定されなくても、示談交渉を通じて一定の金額を受け取ることができます。
ただし、「後遺障害慰謝料」や「逸失利益」が請求できない分、最終的な示談金の額は等級認定があったケースよりも低くなる傾向があります。
まとめ
後遺障害に認定されない理由には、以下の5つが考えられます。
- 通院日数が少ない
- 通院期間が短い
- 画像所見が不十分
- 身体所見が画像所見と一致しない
- 後遺障害診断書の記載内容に問題がある
後遺障害に認定されるためには、後遺障害が認定されない理由を検討する必要があります。そして、後遺障害に認定されない理由をクリアするためには、新たな医証が必要なケースが多いです。
新たな医証のひとつである医師意見書は、後遺障害認定に大きな効果を発揮するケースが多いです。お困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
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