交通事故で発生する顔面の外傷のひとつに眼窩底骨折(眼窩吹き抜け骨折)があります。眼窩底骨折は後遺症を残しやすい外傷です。
本記事は、眼窩底骨折の後遺症が等級認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日:2023/11/17
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眼窩底骨折(眼窩吹き抜け骨折)とは
眼に強い直達外力が加わると眼窩底骨折を受傷します。一般的には他人から眼を殴られた時や野球のボールが当たったときに受傷しますが、交通事故では自転車やバイク事故などで眼を強く打った場合に骨折することが多いです。
眼窩底骨折の症状
眼窩底骨折の症状には下記の症状があります。
- 複視(ものが二重に見える)
- 眼球の陥没(眼の落ち窪み)
- 頬部から上口唇にかけての知覚障害(しびれ)
- 視力障害
これらの症状のうち、弊社がこれまで取り扱った事案では、圧倒的に複視と頬部の知覚障害(しびれ)に関する相談が多いです。
<参考>
【日経メディカル】顔面骨折の後遺症は眼科、耳鼻科、皮膚科も関与
【医師が解説】頬骨骨折が後遺症認定されるヒント|交通事故
眼窩底骨折の診断
骨折に関しては、単純X線像では分かりにくいので、CT検査で骨折型を診断します。
複視の程度や視力障害の有無を精査する必要もあります。眼科で眼球運動検査や視力検査を行います。
眼窩底骨折に対する治療
保存療法が選択されるケースが多いですが、下記の症状が残っている場合には手術療法が必要です。
- 複視(ものが二重に見える)
- 眼球の陥没(眼の落ち窪み)
手術では、骨折部を整復して固定します。しかし、眼窩底は骨の厚みが薄いため、骨折部が粉砕していて整復できないことも多いです。そのようなケースでは自家骨移植や人工材料で骨折部を修復します。
眼窩底骨折(眼窩吹き抜け骨折)で考えられる後遺症
眼球の運動障害
10級2号:正面を見た場合に複視の症状を残すもの
骨折の程度、およびヘスチャートで測定した複視の程度で認定されます。
13級2号:正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
10級2号と同じく、骨折の程度、およびヘスチャートで測定した複視の程度で認定されます。
<参考>
【医師が解説】複視の後遺障害が等級認定されるポイント|交通事故
神経障害
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
眼窩下神経損傷による頬部の知覚障害(頬部、鼻の側面、上口唇、歯肉のしびれ)が認定される可能性があります。尚、眼窩下神経の損傷を、画像所見として直接捉えることはできません。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
12級13号と同じく、眼窩下神経損傷による頬部の知覚障害(頬部、鼻の側面、上口唇、歯肉のしびれ)が認定される可能性があります。
【弁護士必見】眼窩底骨折の後遺障害認定ポイント
眼窩底骨折後の後遺障害で多いのは、眼球の運動障害(複視)と神経障害(頬部から上唇部のしびれ)です。
複視に関しては、ヘスチャートなどで比較的クリアカットに後遺障害が認定される傾向にあります。一方、頬部から上唇部のしびれは非該当になりやすいです。
非該当になりやすい理由として、眼窩下神経の損傷を画像所見として直接捉えることはできないことが影響しているのかもしれません。
このため、眼窩底骨折の後遺障害等級認定のポイントは、眼窩下神経損傷による頬部の知覚障害の存在を、客観的に証明できるか否かにかかっています。
一般的には非該当の事案が多い印象を受けます。そして客観的に証明できる度合いによって、12級13号から非該当まで後遺障害等級認定の幅が異なります。
弊社では、眼窩底骨折の眼窩下神経損傷(三叉神経第二枝損傷)事案をたくさん取り扱ってきましたが、未だに12級13号と14級9号に認定される事案の差が分かりません。
確実に12級13号が認定されるだろうと予測していたのに14級9号しか認定されなかった事案があるかと思えば、ほとんど転位が無いのに12級13号が等級認定されることもあります。
ただひとつ言えるのは、眼窩底骨折後の眼窩下神経損傷による頬部の知覚障害が非該当になった場合には、異議申立てが望ましいことでしょう。
ただし、単に弁護士意見書を添付して異議申立てするだけでは、等級認定される可能性は高くありません。眼窩底骨折では、耳鼻科専門医の協力が不可欠と考えています。
弊社では、眼窩底骨折後の眼窩下神経損傷による頬部の知覚障害事案の取り扱い実績が多数ございます。お困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
【12級13号】眼窩底骨折の後遺障害認定事例
事案サマリー
- 被害者:30歳
- 傷病名:眼窩底骨折
- 被害者請求:14級9号
- 異議申立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)
バイク乗車中に自動車と衝突して受傷しました。左頬部のしびれと知覚障害が残りましたが、被害者請求では14級9号に留まりました。
弊社の取り組み
改めて画像検査を精査したところ、CT検査で神経管周囲にfree airを認めました。大学病院の耳鼻科医師(助教)による画像鑑定報告書を添付して異議申し立てしたところ、12級13号が認定されました。
まとめ
眼窩底骨折は眼部への直達外力で受傷します。眼窩底骨折では高率に複視と、眼窩下神経損傷による頬部の知覚障害(頬部、鼻の側面、上口唇、歯肉のしびれ)が残存します。
頬部の知覚障害に関しては非該当の事案が多いですが、耳鼻科専門医の協力を得て異議申立てすると、後遺障害が等級認定される可能性があります。
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