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【医師が解説】バレリュー症候群の後遺障害認定ポイント|交通事故

バレリュー症候群は、むちうち(頚椎捻挫)に自律神経失調症状が合併した状態と考えられています。

 

むちうちは首の痛みがメインですが、それ以外にも頭痛、めまい、耳鳴り、眼精疲労、全身倦怠、動悸などの症状が出ることがあります。

 

本記事は、むちうちの亜型であるバレリュー症候群が後遺障害に認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/4/18

 

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バレリュー症候群とは

バレリュー症候群の病態

むちうち(頚椎捻挫)を受傷すると、首の痛み以外にも、頭痛、めまい、耳鳴り、眼精疲労、全身倦怠、動悸などの自律神経失調症状が出ることがあります。

 

フランス人医師のBarréとLiéouが、首の外傷後に自律神経の働きがおかしくなって、これらの自律神経失調症状をきたすと報告しました。

 

それ以来、むちうちに自律神経失調症状が合併した病態は、Barré-Liéou syndrome(バレリュー症候群)と呼ばれています。

 

 

<参考>
【医師が解説】頚椎捻挫が後遺症認定されるポイント|交通事故
【医師が解説】むちうち「めまい」の後遺障害認定ポイント|交通事故

 

 

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バレリュー症候群の原因

むちうちでは、頚部への外傷の影響で交感神経性の椎骨神経叢が刺激されることがあります。

 

交感神経が刺激されると、内耳動脈が収縮して前庭迷路の血流低下を来して、耳鳴りやめまいを発症すると言われています。

 

 

バレリュー症候群とストレス

バレリュー症候群は自律神経失調症状をきたしますが、その原因のひとつとして、ストレス、寝不足、疲労などが挙げられます。

 

ストレスと自律神経失調症状は密接に繋がっていると思って差し支えありません。

 

 

バレリュー症候群の症状

バレリュー症候群では、首の痛み、手の痛みやしびれ、頭痛に加えて、以下のような自律神経失調症状をきたす可能性があります。

 

  • めまい
  • 耳鳴り
  • 目のかすみ
  • 眼精疲労
  • 不眠
  • 全身倦怠
  • 易疲労感
  • 微熱感
  • 動悸

 

 

<参考>
【日経メディカル】あなどれない「むち打ち」の後遺症、首にとどまらない驚きの症状とは

 

 

 

nikkei medical

 

 

バレリュー症候群でめまいや耳鳴りが発症する?

バレリュー症候群前述の代表的な症状はめまいと耳鳴りです。前述の原因以外にも、めまいや耳鳴りは、ストレス、寝不足、疲労などでも発症すると言われています。

 

めまいや耳鳴りの原因となる三半規管は、ストレスに弱いです。交通事故によるストレスや、首の痛みなどによるストレスに対して、過敏に反応してめまいを発症するケースもあります。

 

 

バレリュー症候群の治療

バレリュー症候群の治療はむちうちに準ずる

 

バレリュー症候群は、むちうちの亜型です。このため、治療もむちうちに準じます。

 

交通事故直後(医学的には急性期といいます)には、安静と消炎鎮痛剤(内服、外用)の処方が一般的です。

 

頚部保護のため、頚椎装具(ソフトカラー)を処方することもあります。交通事故から1〜2週間経過すると、物理療法(温熱、低周波など)、牽引、セラピストによるリハビリテーションなどが行われます。

 

 

星状神経ブロック

 

バレリュー症候群の治療では、星状神経ブロックが有効とされています。首の骨の前にある星状神経ブロックに、麻酔薬を注射したり、レーザー治療を行うことで、交感神経の働きを正常に戻します。

 

 

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バレリュー症候群は自然治癒する?

バレリュー症候群は、むちうちに自律神経失調症を合併した病態です。このため、一定割合で自然治癒する可能性もあると考えられています。

 

 

バレリュー症候群で後遺障害に認定されると損害賠償金を請求できる

 

バレリュー症候群で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。

 

 

後遺障害慰謝料とは

交通事故で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。

 

 

後遺障害等級

後遺障害慰謝料

1級

2800万円

2級

2370万円

3級

1990万円

4級

1670万円

5級

1400万円

6級

1180万円

7級

1000万円

8級

830万円

9級

690万円

10級

550万円

11級

420万円

12級

290万円

13級

180万円

14級

110万円

 

 

後遺障害逸失利益とは

後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。

 

後遺障害逸失利益は、交通事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。

 

 

後遺障害逸失利益の計算式

後遺障害逸失利益は、以下の計算式で算出されます。

 

基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対するライプニッツ係数

 

 

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バレリュー症候群で考えられる後遺障害

むちうち症状の後遺障害

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

 

局部とは、頚椎捻挫においては頚椎(首)をさします。神経症状とは、頚椎捻挫に由来する症状をさします。頚部痛に留まらず、肩こり、上肢のしびれや痛み、めまいや頭痛、嘔気なども含まれます。

 

14級9号との大きな違いは、「障害の存在が医学的に証明できるもの」という箇所です。12級13号認定のためには、まずレントゲンやMRIで客観的(他覚的)な異常所見があることが前提になります。

 

異常所見には骨折や脱臼はもちろんですが、その他にも椎間板ヘルニアや骨棘(頚椎加齢の変化)、椎間板高の減少(加齢による変性で椎間板の厚みが減少する)も含まれます。

 

神経や椎間板は、レントゲンには写らず、MRIを撮らないと評価ができないため、頚椎捻挫治療の過程で頚椎のレントゲンしか撮影されていない場合は、障害の存在を医学的に証明することが困難なケースが多いです。

 

また若い患者さんでは、加齢の変化が少ないため、MRIの異常所見が存在しないことも多く、その場合も、12級13号は非該当となります。

 

神経症状に関しても14級9号では、自覚症状(患者さんの訴え)としての痛みで良いのですが、12級13号では、より条件が厳しくなります。

 

自覚症状だけでは不十分で、客観的な症状が必要とされます。客観的な症状には、筋力低下、筋肉の萎縮(やせて細くなる)、深部腱反射の異常(医師が打腱器を使って行う検査)をさします。

 

しびれ(知覚障害)の範囲も、損傷された神経の分布に一致している必要があります。頚椎捻挫で行われる頻度は非常に低いですが、筋電図や神経伝導検査といった特殊な検査の異常値も客観的な所見に含まれます。

 

筋力低下は、医学的には徒手筋力テスト(MMT)で評価され、筋力が正常な5から完全運動麻痺の0までの6段階で記載されます。

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

 

局部とは、頚椎捻挫では頚椎(首)をさします。神経症状とは、頚椎捻挫に由来する症状をさします。頚部痛に留まらず、上肢のしびれや痛み、めまい、頭痛、嘔気なども含まれます。

 

将来においても、回復は見込めないと医師が判断した状態であること(症状固定)が前提になります。

 

症状の常時性(時々痛みがあるのではなく、常に痛みがある)が認定要件です。「天気が悪いときに痛い」といったように症状の消失する時間があると認定されません。

 

また、交通事故と本人の感じる後遺症に因果関係が認められることが条件となるため、あまりに車体の損傷が小さい軽微な交通事故は非該当とされることが多いです。

 

 

めまいの後遺障害

12級13号

 

通常の労務に服することはできるが、めまいの自覚症状があり、かつ、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められるもの

 

 

14級9号

 

めまいの自覚症状はあるが、眼振その他平衡機能検査の結果に異常所見が認められらないものの、めまいのあることが医学的にみて合理的に推測できるもの

 

 

<参考>
【医師が解説】むちうち「めまい」の後遺障害認定ポイント|交通事故

 

 

耳鳴りの後遺障害

12級相当

耳鳴に係る検査によって耳鳴が存在すると医学的に評価できるもの

ピッチマッチ検査およびラウドネスバランス検査によって、耳鳴りが存在すると医学的に評価できる場合に該当します。

 

一方、弊社の経験では、オージオグラムで難聴が証明されているだけで、耳鳴りで12級相当が認定された事案も存在します。

 

 

14級相当

難聴に伴い常時耳鳴のあることが合理的に説明できるもの

この場合の「難聴に伴い」とは、平均純音聴力レベルが後遺障害等級認定上の難聴の基準である40dB以上を指すものではありません。

 

耳鳴が存在するであろう周波数純音の聴力レベルが、他の周波数純音の聴力レベルと比較して低下しているものを指します。

 

 

<参考>
【医師が解説】耳鳴り・難聴の後遺障害認定ポイント|交通事故

 

 

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【弁護士必見】バレリュー症候群の後遺障害認定ポイント

むちうちでの後遺障害認定を目指す

バレリュー症候群は、むちうちの亜型です。このため、バレリュー症候群と言えども、むちうちの後遺障害認定を目指すことになります。

 

客観的な証明が難しいため、めまい、耳鳴り、眼精疲労、全身倦怠、動悸などの自律神経失調症状単独で、後遺障害に認定される可能性は低いと認識しましょう。

 

 

<参考>
【医師が解説】頚椎捻挫が後遺症認定されるポイント|交通事故

 

 

バレリュー症候群の耳鳴りは後遺障害認定の可能性がある

自律神経失調症状は後遺障害に認定される可能性が低いと申し上げました。しかし弊社の経験では、耳鳴りに関しては、後遺障害に認定される可能性はゼロではないと考えます。

 

ただし、この場合の耳鳴りは、バレリュー症候群による自律神経失調症というよりは頭部打撲に起因したものです。

 

 

<参考>
【医師が解説】耳鳴り・難聴の後遺障害認定ポイント|交通事故

 

 

 

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まとめ

 

バレリュー症候群は、むちうちに自律神経失調症状が合併した状態と考えられています。

 

バレリュー症候群では、めまい、耳鳴り、目のかすみ、眼精疲労、不眠、全身倦怠、易疲労感、微熱感、動悸のような自律神経失調症状を合併する可能性があります。

 

バレリュー症候群の治療は、むちうちの治療に準じますが、星状神経ブロックが効果あるケースも存在します。

 

バレリュー症候群は、むちうちの亜型なので、基本的にはむちうちでの後遺障害認定を目指すことになります。

 

バレリュー症候群の後遺障害認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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