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【医師が解説】深部腱反射は12級の後遺症認定のポイント|交通事故

深部腱反射は、頚椎捻挫(むちうち)や腰椎捻挫が、後遺障害に認定されるために重要な検査です。

 

頚椎捻挫と腰椎捻挫の後遺障害では12級13号が最も上位等級ですが、等級認定のハードルが高いことで有名です。そして12級13号が認定されためには、深部腱反射が最大のボトルネックと言われています。

 

本記事は、深部腱反射を理解することで、頚椎捻挫と腰椎捻挫が12級13号に等級認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/4/19

 

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深部腱反射とは

 

深部腱反射とは、ゴムハンマー等で腱を叩いた刺激に反応して起こる不随意かつ瞬間的な筋肉の収縮です。深部腱反射は刺激に対して反射弓を通じて起こる自動的な筋収縮なので、筋肉を動かそうとする自発的な意志は不要です。

 

深部腱反射の検査結果は、正常(+)、軽度亢進(2+)、亢進(3+)、低下(±),消失(-)などの記号で記載されます。

 

 

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深部腱反射の種類

 

深部腱反射には下記があります。
 

  • 上腕二頭筋腱反射(BTR)
  • 腕橈骨筋腱反射(BRR)
  • 上腕三頭筋腱反射(TTR)
  • 膝蓋腱反射(PTR)
  • アキレス腱反射(ATR)

 

 

上腕二頭筋腱反射(BTR)とは

 

肘の屈側にある上腕二頭筋腱を叩くと、肘関節が屈曲します。肘関節が屈曲する度合いを確認することで、上腕二頭筋腱反射が正常か否かを判断します。

 

 

上腕二頭筋腱反射のやり方

椅子に楽な姿勢で座り、腕を膝の上に軽く載せます。肘の屈側にある上腕二頭筋腱を検者(主に医師)が親指で軽く押さえて、検者の親指をゴムハンマーで叩くと、反射的に筋肉が収縮して肘が屈曲します。

 

 

上腕二頭筋腱反射はC5(もしくはC6)の指標

上腕二頭筋腱反射の反射弓は、髄節レベルでは主にC5です。したがって、C4/5後外側ヘルニア(C5神経根の障害)、およびC3/4の正中型ヘルニア(C5髄節の障害)などで上腕二頭筋腱反射が消失もしくは低下します。

 

神経根の障害と髄節の障害の高位が1椎体異なるのは、髄節レベルは約1椎体中枢側に存在することが理由です。

 

 

腕橈骨筋腱反射(BRR)とは

 

橈骨茎状突起を叩くと、肘関節が屈曲します。肘関節が屈曲する度合いを確認することで、腕橈骨筋腱反射が正常か否かを判断します。

 

 

腕橈骨筋腱反射のやり方

椅子に楽な姿勢で座り、腕を膝の上に軽く載せます。橈骨遠位の膨らみ(橈骨茎状突起)から5cmほど近位をゴムハンマーで叩くと、反射的に筋肉が収縮して肘が伸展します。

 

 

腕橈骨筋腱反射はC6(もしくはC5)の指標

腕橈骨筋腱反射の反射弓は、髄節レベルでは主にC6です。したがって、C5/6後外側ヘルニア(C6神経根の障害)、およびC4/5の正中型ヘルニア(C6髄節の障害)などで腕橈骨筋腱反射が消失もしくは低下します。

 

 

上腕三頭筋腱反射(TTR)とは

 

肘頭の5cmほど近位を叩くと、肘関節が伸展します。肘関節が伸展する度合いを確認することで、上腕三頭筋腱反射が正常か否かを判断します。

 

 

上腕三頭筋腱反射のやり方

椅子に楽な姿勢で座り、腕を膝の上に軽く載せます。肘鉄の膨らみ(尺骨肘頭)から5cmほど近位をゴムハンマーで叩くと、反射的に筋肉が収縮して肘が伸展します。

 

 

上腕三頭筋腱反射はC7の指標

上腕三頭筋腱反射の反射弓は、髄節レベルでは主にC7です。したがって、C6/7後外側ヘルニア(C7神経根の障害)、およびC5/6の正中型ヘルニア(C7髄節の障害)などで上腕三頭筋腱反射が消失もしくは低下します。

 

 

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膝蓋腱反射(PTR)とは

 

膝蓋腱を叩くと、膝関節が瞬間的に伸展します。膝関節が伸展する度合いを確認することで、膝蓋腱反射が正常か否かを判断します。

 

 

膝蓋腱反射のやり方

椅子に楽な姿勢で座り、足首をぶらぶらに垂らした状態で膝蓋腱の部分をゴムハンマーで叩くと、反射的に筋肉が収縮して膝が伸展します。

 

 

膝蓋腱反射はL4(もしくはL2.3)の指標

膝蓋腱反射の反射弓は、髄節,レベルでは主にL4です。したがって、L3/4後外側ヘルニア(L4神経根の障害)、およびT11/12の正中型ヘルニア(L4髄節の障害)などで膝蓋腱反射が消失もしくは低下します。

 

 

アキレス腱反射(ATR)とは

 

アキレス腱を叩くと、足関節が瞬間的に屈曲します。足関節が屈曲する度合いを確認することで、アキレス腱反射が正常か否かを判断します。

 

 

アキレス腱反射のやり方

椅子に楽な姿勢で座り、足首をぶらぶらに垂らした状態でアキレス腱の部分をゴムハンマーで叩くと、反射的に筋肉が収縮して足首が底屈します。

 

 

アキレス腱反射はS1の指標

アキレス腱反射の反射弓は、髄節レベルでは主にS1です。したがって、L5/S1後外側ヘルニア(S1神経根の障害)、およびT12/L1での正中型ヘルニア(S1髄節の障害)などでアキレス腱反射が消失もしくは低下します。

 

 

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【弁護士必見】神経障害の後遺障害認定ポイント

深部腱反射の問題点

自賠責実務において、深部腱反射が重要視されていることは周知の事実です。その理由は、深部腱反射は被害者の恣意性を排することができるからと言われています。たしかにそういう意味では、深部腱反射は客観性を担保できています。

 

 

しかし、深部腱反射が本当に客観的な検査なのかというと、残念ながら客観的検査とは言い難いのが実情です。次のような理由で実際には客観的ではありません。

 

  • 検者(医師)の主観に依存する
  • 深部腱反射の強さには大きな個人差がある

 

 

検者(医師)の主観に依存する

 

深部腱反射の強さには客観的な基準がありません。さすがに(-)は一致しますが、(±)(+)(2+)は検者によって感じ方がバラバラです。

 

同一の患者さんの四肢腱反射を10名の医師が診察すれば、10通りの判断が出てもおかしくありません。深部腱反射を定量化することは不可能なのです。

 

 

深部腱反射の強さには大きな個人差がある

 

深部腱反射の強さにはかなりの個人差があるため、正常=(+)ではありません。正常=(2+)や正常=(-)もあります。

 

つまり深部腱反射が亢進しているのか消失しているのかは、経時的に観察しなければ正確には判断できないです。

 

しかも、深部腱反射は初診時には診断の判断材料になりますが、それ以降のフォロー期間では臨床的な意味合いは少なくなるので、深部腱反射の推移を経時的に正確に診察するケースはほぼ皆無です。

 

このような臨床の実状を無視して深部腱反射の結果や推移に目くじらを立てるのは、臨床医の立場では滑稽と言わざるを得ません。

 

旧態依然な後遺障害認定基準をいつまでも温存するのではなく、医学的により正確な方向へ改善するべきなのではないかと感じています。

 

 

【むちうち、腰椎捻挫】12級13号認定は深部腱反射の消失/低下が必須

とにかく問題の多い自賠責認定基準ですが、深部腱反射の消失もしくは低下が認定基準に採用されている以上、これに対応せざるを得ません。

 

<参考>

 

 

12級13号が認定されない理由として、深部腱反射が正常である旨が記載されている場合には、もう一度「神経学的所見の推移について」を確認しましょう。

 

神経学的所見の推移についてと頚椎MRIの画像所見を対比して、障害高位と深部腱反射の所見が一致するかを確認します。例えば、上腕二頭筋腱筋反射はC5(もしくはC6)の指標です。

 

最も多いのは、椎間孔のヘルニアによってC5神経根が障害されるケースです。この場合はC4/5の後外側にヘルニアが無いかを確認します。

 

しかし、これは最も基本となる見方なので、自賠責保険が見誤っているケースはほとんど無いでしょう。

 

次に確認するべき点は、脊髄本体の障害(髄節の障害)です。C5髄節はC3/4にあるので、正中型ヘルニアによる脊髄圧迫が無いかを確認します。

 

ここでも、脊髄の圧迫所見が無いということであれば、上腕二頭筋腱筋反射のサブの責任高位であるC6に注目します。

 

C6神経根の障害ではC5/6後外側ヘルニア(椎間孔のヘルニア)の有無を、C6髄節の障害ではC4/5の正中型ヘルニアの有無を確認します。

 

このように、上腕二頭筋腱筋反射=C4/5後外側ヘルニア、という金太郎飴的な確認法だけでは不十分です。C3/4正中型ヘルニア、C4/5正中型ヘルニア、C5/6後外側ヘルニアも確認する必要があるのです。

 

 

【脊髄損傷】損傷高位は減弱/消失、損傷高位以下は亢進が必須

脊髄損傷であれば、損傷高位の腱反射は減弱または消失し、損傷高位以下の腱反射は亢進します。

 

例えば頚髄損傷であれば、下肢は損傷した頚部より下の部位なので、下肢の腱反射は亢進します。

 

仮に、頚髄損傷の病名があるにも関わらず腱反射が正常であった場合には、頚髄損傷を他覚的に証明できるものではないという判断を下されます。

 

<参考>
【医師が解説】脊髄損傷が後遺症認定されるポイント|交通事故

 

 

むちうち、腰椎捻挫、脊髄損傷などの深部腱反射評価でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

まとめ

 

頚椎捻挫や腰椎捻挫で12級13号が後遺障害等級認定されるためには、深部腱反射の消失もしくは低下が必須です。

 

深部腱反射に異常所見がある場合、責任部位として頻度的に高いのは神経根レベルでの障害です。

 

しかし、神経根レベルだけではなく、髄節レベルでの画像所見に異常が無いのかも確認する必要があります。

 

 

 

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