交通事故コラム詳細

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2023.11.20

体幹 労災事故

【医師が解説】小腸切除の後遺症|交通事故の後遺障害

交通事故などによる腹部外傷では、小腸や腸間膜を損傷する頻度が高く、損傷した小腸を切除せざるを得ないケースも珍しくありません。

 

本記事は、小腸切除後にどのような後遺症が残るのかを説明しています。また、後遺障害に認定されるヒントも併せて理解できるように記載しています。

 

 

最終更新日: 2024/5/13

 

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小腸とは

 

小腸は、空腸(くうちょう)と回腸(かいちょう)の二つの部分から構成されており、約6メートルの長さがあります。胃や十二指腸で消化された食べ物を細かく分解して、栄養素を吸収する役割を担っています。

 

 

small intestine

 

 

交通事故で小腸損傷が発生する原因

 

交通事故で小腸や腸間膜を損傷する原因は、主に以下の3つのパターンに分かれます。

 

  • 自動車内(自動車運転中)では、ハンドルが胸腹部に当たって受傷
  • シートベルトがお腹を圧迫して受傷(シートベルト損傷)
  • バイクや歩行者では、自動車の車体が胸腹部に当たって受傷

 

 

いずれの場合も、腹部に強い衝撃が加わって受傷します。このため、小腸や腸間膜損傷以外にも、頭部外傷や脊椎・四肢の骨折を併発する事案が多いです。

 

小腸や腸間膜損傷では事故規模が大きいことが多いことから、救命が治療目的となることが多いです。また緊急手術が必要となる事案が多いのも特徴です。

 

 

<参考>
【医師が解説】シートベルト損傷の部位と症状|交通事故
【医師が解説】内臓破裂の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故

 

 

 

abdominal pain

 

 

小腸切除の後遺症

 

小腸切除手術後の後遺症には以下があります。小腸切除の後遺症のほとんどは、栄養や水分の消化吸収障害が原因となっています。

 

  • 栄養や水分の消化吸収障害
  • 下痢
  • 体重減少
  • 腹痛

 

 

栄養や水分の消化吸収障害

小腸が大量に切除されると、小腸の実効吸収面積が著しく減少します。このため、栄養や水分の消化吸収障害を併発します。

 

消化吸収障害では、全身の栄養状態が悪化して栄養失調をきたします。また、下痢、体重減少、全身倦怠感、腹部の膨満感、浮腫、貧血などの症状を引き起こします。

 

 

下痢

小腸切除後の下痢の原因として、以下のような要因が考えられます。

 

  • 水分の吸収不足: 水分の吸収が減少して便が過剰に水分を含むため
  • 腸の運動の亢進: 蠕動運動が亢進して、吸収される前に排出されます
  • 胃酸の過剰分泌: 胃酸の量が多くなって下痢を引き起こします
  • 腸内細菌の異常増殖: 腸内細菌の数が増えて下痢を引き起こします

 

 

体重減少

体に必要な栄養が十分に吸収されないために栄養障害が起こり、体重減少をきたします。

 

 

腹痛

栄養の分解や吸収力が低下して腸内細菌のバランスが崩れることが、腹痛の原因と考えられています。

 

 

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小腸の後遺障害

小腸を大量に切除したもの

9級11号
残存する空腸及び回腸の長さが100cm以下になったもの

 

11級10号
残存する空腸及び回腸の長さが100cmを超え300cm未満となったものであって、消化吸収障害が認められるもの

 

 

人工肛門を増設したもの

5級3号
小腸の内容が漏出することにより、ストマ周辺または皮膚瘻周辺に著しいびらんを生じ、パウチ等の装着ができないもの

 

7級5号
人工肛門を装着したもののうち、第5級に該当するもの以外のもの

 

 

小腸皮膚瘻を残すもの

5級3号
瘻孔から小腸の内容の全部または大部分が漏出するもののうち、皮膚瘻周辺に漏出による著しいびらんを生じ、パウチ等の装着ができないもの

 

7級5号
瘻孔から小腸の内容の全部または大部分が漏出するもの

 

7級5号
瘻孔から漏出する小腸の内容が100ml/日以上のもので、小腸内容が漏出することにより小腸皮膚瘻周辺に著しいびらんを生じ、パウチ等の装着ができないもの

 

9級11号
瘻孔から漏出する小腸の内容が100ml/日以上のもの

 

11級10号
瘻孔から少量ではあるが、明らかに小腸の内容が漏出する程度のもの

 

 

小腸の狭窄を残すもの

11級10号:小腸の狭窄を残すもの

 

小腸の狭窄を残すものとは、下記の2つの条件を同時に満たすものを言います。

  • 1ヶ月に1回程度、腹痛、腹部膨満感、嘔気、嘔吐などの症状がみとめられ
  • 単純X線像において、ケルクリングひだ像(多数の輪状ひだ)が認められるもの

 

弊社の取り扱い事案の中でも、小腸の狭窄を残すものは争いになる事案が多いです。その理由は、単純X線像でのケルクリングひだ像を認めないケースが多いからです。

 

単純X線像でのケルクリングひだ像は常に認められるわけではありません。腹痛、腹部膨満感、嘔気、嘔吐などの症状が出現した際に撮影しなければ描出できないケースが多いのです。

 

 

Kerckring's fold

 

 

【弁護士必見】小腸切除の後遺障害認定ポイント

小腸損傷や腸間膜損傷は後遺障害に認定されにくい

小腸損傷や腸間膜損傷は、意外なほど後遺障害に認定されにくいです。必ずしも、外傷の重症度は後遺障害等級とリンクしないのです。

 

小腸損傷や腸間膜損傷では救命のために緊急手術を施行しているにもかかわらず、後遺障害が非該当になる事案が多い印象を抱いています。

 

四肢外傷や脳神経外傷と比較しても、同じ程度の高エネルギー外傷であれば、小腸損傷や腸間膜損傷の方が症状を残しにくい傾向にあります。

 

その理由のひとつは、胸腹部臓器は生命維持に必要な機能を担っているため、組織損傷があっても健常部分で代償されやすいからだと考えています。

 

一方、四肢や脳神経への外傷はリカバリーが利きにくく、後遺障害を残しやすいと言えます。交通事故後の急性期には胸腹部外傷の方が生命の危機に瀕しやすいです。

 

しかし、その時期を乗り切ると、意外なほど後遺障害を残さずに回復するケースが多いです。傷病名が派手な割には「治癒」していることが多く、後遺障害等級認定は難しいことが多いのです。

 

 

<参考>
【日経メディカル】胸腹部臓器損傷は緊急手術しても後遺障害認定されにくい

 

 

 

nikkei medical

 

 

事案数が少ないからこそ各科専門医の助言が必要

小腸損傷や腸間膜損傷などの内臓損傷は事案数が少ないため、豊富な取り扱い実績のある人やグループは極めて少ないのが現実です。そして経験値が低いため、後遺障害等級が認定されにくい状況が続いています。

 

一方、各科の専門医の意見が思わぬ突破口になる事案を散見します。例えば、こちらで紹介した事案のように、消化器外科医師でなければ気付かないことがきっかけとなって後遺障害が等級認定されることもあります。

 

弊社では、消化器外科、消化器内科の専門医と提携しており、交通事故領域ではマイナーな科であっても取り扱い実績が豊富です。

 

特に、小腸損傷や腸間膜損傷のようなマイナー領域の後遺障害が等級認定されるためには、多数の取り扱い実績と各科専門医との連携が重要と考えています。お困りの事案があればこちらからお問い合わせください。

 

 

inquiry

 

Traffic accident patient

 

 

小腸切除の後遺障害認定事例

小腸の障害で11級10号(小腸に狭窄を残すもの)が認定されました

  • 被害者:38歳
  • 事前認定:非該当
  • 異議申立て:11級10号(小腸に狭窄を残すもの)

自動車乗車中に正面衝突して腸管穿孔を受傷しました。緊急で小腸切除を施行されて一命を取りとめたものの、腹部膨満感や嘔気が残存しましました。ところが腹部の単純X線像ではケルクリング像を認めないため非該当となりました。

 

等級スクリーニングを実施したところ、術後早期の画像検査しか無いことが判明しました。症状のある時に再検査したところ、ケルクリング像をみとめて11級10号が認定されました。

 

 

Kerckring's fold

 

 

  • 被害者:45歳
  • 事前認定:13級11号
  • 異議申立て:11級10号(小腸を大量に切除したもの)

 

本事案では、残存した小腸の長さが180㎝であるものの切除100㎝であったため、消化吸収障害による13級11号との結果にとどまりました。

 

その理由は、一般的に小腸は約500~700cmであり、100cmしか切除されていないために、300㎝以上残存すると考えられたからです。

 

しかし小腸の長さには個人差があり、約300cmしかない人も存在します。消化器外科医による医師意見書を提出して、残存小腸が300㎝以下であることを主張したところ、11級10号が認定されました。

 

 

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