交通事故で発生する外傷でもっとも多いのは頚椎捻挫(むちうち)です。頚椎捻挫は後遺症を残しやすい外傷です。
本記事は、頚椎捻挫の後遺症で等級認定されるために必要な検査を知るヒントとなるように作成しています。
最終更新日:2023/3/5
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頚椎捻挫(むちうち)で想定される後遺障害
頚椎捻挫は、交通事故の外傷で後遺症を残しやすい代表的な傷病です。医学的な正式名称は、外傷性頚部症候群(whiplash-associated disorders: WAD)といいます。
頚椎捻挫事案で、あらかじめ施行しておいた方が望ましい検査を考えてみましょう。
どのような検査が必要かを考えるためには、自賠責認定基準を紐解く必要があります。自賠責認定基準を満たすことを目的として、必要な検査を施行するという流れです。
頚椎捻挫では、12級13号と14級9号では等級認定戦略が異なります。以下でそれぞれの後遺障害等級について戦略を解説します。
【弁護士必見】頚椎捻挫(むちうち)で12級13号に認定されるために必要な検査
周知のように、12級13号は極めてハードルが高いです。神経学的所見と画像所見が完全に一致するのは必要最低条件です。
そして画像検査には、単純X線像だけではなく頚椎MRIも含まれます。単純X線像だけでは実質的に12級13号が認定されることはありません。
もちろん、頚椎MRIで椎間板ヘルニア等の有意な画像所見があるだけでは、12級13号に認定されることはありません。
しかしそれらの所見が無ければ12級13号が認定されません。したがって、頚椎捻挫で12級13号を目指すのであれば、頚椎MRIは必須です。
【弁護士必見】頚椎捻挫(むちうち)で14級9号に認定されるために必要な検査
一方、14級9号は、12級13号と根本的に自賠責認定基準が異なります。こちらも多くの基準をクリアする必要がありますが、画像検査に関しては単純X線像だけでも問題無いこともあります。
もちろん、頚椎MRIを施行する方が望ましいケースは多いです。
しかし若年者では、頚椎MRIを施行しても有意所見の無いケースがあります。このような事案では、頚椎MRIを撮像してしまうと、逆に14級9号認定のハードルを上げてしまう可能性まであります。
頚椎捻挫(むちうち)ではCTは必須ではない
救急搬送された事案では、全身CTを施行されるケースがあります。このため、初診時の頚椎CTが存在する事案を散見します。
結論から言うと、頚椎CTは必須ではありません。何故なら画像検査から得られる情報が、単純X線像とほぼ同一だからです。
ただし、下位頚椎は単純X線像では肩関節が邪魔になって描出されにくいため、頚椎CTに優位性があると言えます。
頚椎CTが有るに越したことはありませんが、必須の検査ではないという理解で良いと思います。
頚椎捻挫(むちうち)では神経伝導速度検査は不要
ここまで見てきたように、頚椎捻挫では単純X線像や頚椎MRIなどの画像検査が必須です。
一方、頚椎捻挫でも神経伝導速度検査の施行が望ましいという意見を散見します。実臨床では、頚椎捻挫で神経伝導速度検査を実施するケースは稀です。
臨床的な意義も無いので、頚椎捻挫では神経伝導速度検査は不要と考えて良いでしょう。
むしろ、神経伝導速度検査で異常が検出される可能性は低いため、等級認定に不利に働くケースが多いです。
まとめ
以上をまとめると下記のようになります。
- ① 頚椎捻挫では12級13号認定のためには頚椎MRIが必須
- ② 14級9号認定のためには頚椎の単純X線像だけでも可
②の14級9号認定の補足としては、頚椎の単純X線像で有意所見に乏しければ、頚椎MRIの施行を検討するという流れになります。
お困りの事案があればこちらからお問い合わせください。
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