交通事故で発生する体幹の外傷のひとつに胸腰椎圧迫骨折があります。胸腰椎圧迫骨折は、コルセットで治療するケースが多いです。
胸腰椎圧迫骨折では、寝る時にまでコルセットを装着する必要があるのでしょうか?
本記事は、胸腰椎圧迫骨折を受傷した際に、コルセットの正しい使い方が分かるヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/5/11
Table of Contents
胸腰椎圧迫骨折とは
胸腰椎圧迫骨折とは、背骨の椎体が潰れる骨折です。下の画像のように背骨が台形に潰れるケースが多いです。
胸腰椎圧迫骨折の治療
胸腰椎圧迫骨折の保存療法
下肢麻痺や尿閉などの神経症状がない症例では、まず保存療法を行います。フレームコルセットやダーメンコルセットを作成して、約3ヵ月間常用します。
胸腰椎圧迫骨折の手術療法
経皮的椎体形成術
圧迫骨折した椎体に、針を用いて骨セメントを充填する低侵襲な手術です。痛みを軽減できると同時に、背骨の安定化も得られます。
脊椎固定術
金属製のスクリューや棒で背骨を直接固定する手術です。背中を切って骨折した部位を固定する方法と、脇腹を切って内臓を避けて骨折部分を固定する方法があります。
圧迫骨折の腰痛でコルセットは寝るときに必要?
寝るときはコルセットを外してもよい
私たち整形外科医が、患者さんだけではなく看護師などのコメディカルからも、最も良く訊かれる質問です。
結論から申し上げますと、胸腰椎圧迫骨折であっても寝るときはコルセットを外しても問題ありません。
ただし、フレームコルセットやダーメンコルセットのような大きなコルセットの着脱は大変です。
このため、寝るときはコルセットを外してもよいが、ストラップを緩めるだけに留めることを推奨しています。
寝るときにコルセットを外すと圧迫骨折が悪化する?
医学的には、寝るときにコルセットを外すと圧迫骨折が悪化するというエビデンスはありません。
<参考>
骨粗鬆症性椎体骨折診療マニュアル(日本整形外科学会骨粗鬆症委員会WG策定)
圧迫骨折でのコルセットの使い方
寝ているとき以外(離床時)はコルセットを装着する
コルセットは、寝ているとき以外(離床時)は装着することを推奨します。特に起き上がるときに痛みが悪化しがちなので、起き上がる前にストラップを締めましょう。
入浴時にはコルセットを外してもよいのか?
骨折部がある程度安定化すれば、入浴時にもコルセットを外せる可能性があります。しかし、前屈みになりすぎるのはよくありません。
尚、本コラムで述べたコルセットの要否や装着方法は、あくまでも一般論です。症例毎に状況は異なるので、必ず主治医の指示に従いましょう。
圧迫骨折で推奨される腰に負担の少ない寝方
骨粗鬆症がベースにある中高齢者では、仰向け(仰臥位)で寝ることを避ける必要があります。できるだけ横向き(側臥位)で寝るようにしましょう。
骨粗鬆症性椎体骨折でコルセットは効果無し?!
骨粗鬆症性椎体骨折診療マニュアル(日本整形外科学会骨粗鬆症委員会WG策定)のクリニカルクエスチョンでは、骨粗鬆症性椎体骨折の治療と外固定についての驚くべき回答が記載されています。
要約すると以下のとおりです。
- 骨粗鬆症性椎体骨折では外固定の種類と治療成績に有意差無し
- 骨粗鬆症性椎体骨折では外固定の有無と治療成績に有意差無し
- 骨粗鬆症性椎体骨折では受傷後の安静期間と治療成績に有意差無し
私は、2019年の日本整形外科学会学術総会において、鳥取大学の荻野浩医師の講演で初めて知りました。
整形外科医としては衝撃的な内容ですが、たくさんの論文をベースにしたクリニカルクエスチョンに対する回答なので信頼性は高いです。
胸腰椎圧迫骨折は全治何ヶ月?
椎体圧壊の程度、骨折型、治療法によって異なりますが、胸腰椎圧迫骨折ではおおむね3ヵ月で骨癒合するケースが多いです。
ただし、骨が十分な強度を獲得するには1年かかるため、重労働や激しいスポーツは1年ほど控えた方が無難です。
胸腰椎圧迫骨折で考えられる後遺障害
交通事故で受傷した胸腰椎圧迫骨折では、自賠責保険の後遺障害に認定される可能性があります。詳細については、以下のページを参照してください。
<参考>
【医師が解説】胸腰椎圧迫骨折が後遺症認定されるポイント|交通事故
まとめ
胸腰椎圧迫骨折であっても寝るときはコルセットを外しても問題ありません。一方、寝ているとき以外はコルセットの装着を推奨します。
骨折部がある程度安定化すれば、入浴時にコルセットを外せる可能性があります。しかし、前屈みになりすぎるのはよくありません。
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