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【医師が解説】頚椎捻挫の後遺症が等級認定されるポイント|交通事故

交通事故で発生する首の外傷のひとつに頚椎捻挫があります。いわゆる追突事故で生じることの多い「むちうち症」と呼ばれる疾患です。頚椎捻挫の症状は多彩で、なおかつ後遺症を残しやすい外傷です。

 

本記事は、頚椎捻挫の後遺症が等級認定されるヒントとなるように作成しています。また、初回申請で非該当と認定された患者さんが、異議申立てを行うことで等級認定されたケースについても説明しました。

 

頚椎捻挫(むちうち症)とは

 
正式な病名は外傷性頚部症候群です。交通事故の当日は痛みを感じず、翌日以降に痛みが強くなることもあります。

 

頚部のレントゲンやMRIで異常所見がないにも関わらず症状が持続することが特徴の一つです。症状の持続期間は、事故から数日で治癒することもあれば、1年以上持続することもあります。

 

症状の重症度も軽傷なものから、日常生活に支障をきたすような重篤なものまでさまざまです。
 

 

whiplashassociateddisorders

 

 

交通事故での頚椎捻挫の受傷機序

 
典型的には停車中に後方や側方から追突されることで生じます。事故の衝撃で頭蓋骨が前後・左右に大きく揺さぶられ、首が鞭(むち)をうつような動きをすることから、むちうち症と呼ばれます。

 

大きな事故であれば症状がでる可能性は高くなります。一方で車体が少しへこむ程度の小さな事故であっても、強い症状が持続するケースもあり、事故の規模と症状の重症度が必ずしも一致しないことが特徴とされています。

 

 

頚椎捻挫の症状

 
頚椎捻挫の症状は多彩です。頚部痛、肩こり、上肢のしびれや痛みは比較的よく観察される症状ですが、他にも、めまいや頭痛、嘔気、耳鳴、全身倦怠、動悸などの症状が出現することがあります。

 

診察した医師によって、「バレリュー症候群」、「自律神経失調症」といった診断がなされることもあります。上肢のしびれや痛み、脱力を生じる場合は、頚椎椎間板ヘルニアを合併している可能性も考えられます。

 

 

頚椎捻挫の診断

 
whiplash diagnose
 
まずレントゲン検査が行われますが、異常所見を認めないことも多いです。

 

痛みが長引く場合や神経症状(上肢の痛みやしびれ、麻痺)を伴う場合は、MRI検査が推奨されます。レントゲン検査やMRI検査を行って、骨折や脱臼を認めない場合に、頚椎捻挫と診断するのが一般的です。

 

頚椎のMRIで椎間板ヘルニア(矢印)を認めた場合は、頚椎捻挫というよりは頚椎椎間板ヘルニアという診断名が適切であると考えられます。

 

椎間板や神経はレントゲンにはうつらないため、頚椎MRIを評価することで、椎間板ヘルニアの有無、神経根や脊髄の圧迫の有無を評価することが可能になります。

 

 

頚椎捻挫に対する治療

頚椎捻挫の保存療法

頚椎捻挫は交通事故直後(医学的には急性期といいます)には、安静と消炎鎮痛剤(内服、外用)の処方が一般的です。

 

頚部保護のため、頚椎装具(ソフトカラー)を処方することもあります。交通事故から1〜2週間経過すると、物理療法(温熱、低周波など)、牽引、セラピストによるリハビリテーションなどが行われます。
 

 

neck collar

 

 

頚椎捻挫の手術療法

頚椎捻挫に対して手術が行われることは一般的にはまれです。ただし、頚椎椎間板ヘルニアや頚椎症、頚椎後縦靭帯骨化症に由来する症状(頚髄症、神経根症)がある場合は、頚椎の手術が行われることもあります。

 

具体的には上肢の強い痛みが持続するケース、上肢や下肢に麻痺(まひ)を生じているケースなどが該当します。神経根症の症状は、上肢の痛み、しびれが主体で、症状が重症化すると筋力低下を伴います。

 

頚髄症の症状は多彩ですが、両手の巧緻性障害(こうちせいしょうがい:細かい作業ができない)、四肢のしびれ、感覚異常が主体です。

 

症状が重症化してくると歩行障害(痙性や失調によるもの)や直腸膀胱障害(自力で尿が出せない、失禁するなど)を生じることもあります。

 

交通事故後に頚椎手術が必要とされる病態として、元々神経の通り道(脊柱管)が狭い方が事故後に脊髄や神経根圧迫の症状が出現してしまうケースがあります。

 

脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)の原因として多いのは、発育性脊柱管狭窄と頚椎後縦靭帯骨化症によるものです。

 

日本人の頚椎脊柱管は欧米の方と比較すると、狭い傾向があり、無症状で生活されている方の中にも潜在的な脊柱管狭窄を有する人がいます。

 

また、後縦靭帯骨化症は、アジア人に多いとされており、脊柱管狭窄症の原因となりえます。

 

そのため、脊柱管狭窄がベースにある方が、交通事故の外傷により脊髄や神経根の症状が悪化してしまった場合は、脊髄や神経根の圧迫をとりのぞくための除圧術が行われることもあります。

 

 

頚椎捻挫で後遺症が認定されるまでに必要な手続き

 
頚椎捻挫については、出現する症状も多彩で、なおかつ症状の重症度や持続期間にもばらつきが多いことが特徴です。

 

症状が持続する期間は、かなりの個人差があるとされています。事故の規模が比較的小さいのに、症状が半年以上持続する患者さんもいます。

 

ただ、無期限に治療を継続することは難しく、「症状固定」をいつに設定するかが問題になります。症状固定とは、十分治療を行っても症状の改善の見込みがないと判断される時期のことです。

 

頚椎捻挫の症状固定時期は、患者さんの症状や医師の考え方にも左右されますが、短いと数週間、長いと数ヶ月から1年におよぶこともあります。

 

症状固定の時点で、なんらかの後遺症が存在する場合は、後遺障害診断書を作成します。

 

交通事故により生じた症状を治すために一定期間の通院を行い、症状固定の段階で生涯持続することが予想される後遺症の評価を行います。事故により発生した後遺症に対しては、障害等級に応じた補償を行うという考え方です。

 

後遺障害診断書は医師が作成する書類であり、整骨院では作成することはできません。後遺障害認定申請は、面倒な手続きに感じる患者さんも多いと思いますが、後遺障害認定のためには不可欠な手続きです。

 

なお、保険会社による治療費支給が打ち切りになったあとも、健康保険を利用して治療を継続することは可能です。

 

下記のすべての条件を満たした場合には、後遺障害等級が認定される可能性があります。等級認定された場合には、等級に応じた補償金を受け取ることができます。
 

  • 交通事故が原因となる肉体的・精神的な傷害であること
  • 将来においても、回復は見込めないと医師が判断した状態であること(症状固定)
  • 交通事故と本人の感じる後遺症状に因果関係が認められること
  • 本人の感じる後遺症状の原因が医学的に証明、説明できるものであること
  • 後遺症状の程度が自賠責法施行令の等級に該当すること

 
実際に何級の等級が認定されるかは、自賠責保険の判断になります。等級認定結果に不服などがあれば「異議申立て」をすることも可能です。

 

異議申立ては、患者さんが自力で行うのは難しいので、異議申立てのサポートをしている法律事務所への相談が推奨されます。

 

相談する法律事務所は、どこでも良いわけではありません。等級が認定される可能性を上げるためには、交通事故を専門に扱う医師と連携している経験豊富な法律事務所を選ぶべきでしょう。

 

ただし、実際にはどの法律事務所が経験豊富なのかを判断するのは難しいです。弊社では、提携している全国の経験豊富な法律事務所を無料で紹介するサービスを実施していますのでご利用ください。

 

 

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頚椎捻挫で考えられる後遺症には何があるの?

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

局部とは、頚椎捻挫においては頚椎(首)をさします。神経症状とは、頚椎捻挫に由来する症状をさします。頚部痛に留まらず、肩こり、上肢のしびれや痛み、めまいや頭痛、嘔気なども含まれます。

 

14級9号との大きな違いは、「障害の存在が医学的に証明できるもの」という箇所です。12級13号認定のためには、まずレントゲンやMRIで客観的(他覚的)な異常所見があることが前提になります。

 

異常所見には骨折や脱臼はもちろんですが、その他にも椎間板ヘルニアや骨棘(頚椎加齢の変化)、椎間板高の減少(加齢による変性で椎間板の厚みが減少する)も含まれます。

 

神経や椎間板は、レントゲンには写らず、MRIを撮らないと評価ができないため、頚椎捻挫治療の過程で頚椎のレントゲンしか撮影されていない場合は、障害の存在を医学的に証明することが困難なケースが多いです。

 

また若い患者さんでは、加齢の変化が少ないため、MRIの異常所見が存在しないことも多く、その場合も、12級13号は非該当となります。

 

神経症状に関しても14級9号では、自覚症状(患者さんの訴え)としての痛みで良いのですが、12級13号では、より条件が厳しくなります。

 

自覚症状だけでは不十分で、客観的な症状が必要とされます。客観的な症状には、筋力低下、筋肉の萎縮(やせて細くなる)、深部腱反射の異常(医師が打腱器を使って行う検査)をさします。

 

しびれ(知覚障害)の範囲も、損傷された神経の分布に一致している必要があります。頚椎捻挫で行われる頻度は非常に低いですが、筋電図や神経伝導検査といった特殊な検査の異常値も客観的な所見に含まれます。

 

筋力低下は、医学的には徒手筋力テスト(MMT)で評価され、筋力が正常な5から完全運動麻痺の0までの6段階で記載されます。

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

局部とは、頚椎捻挫では頚椎(首)をさします。神経症状とは、頚椎捻挫に由来する症状をさします。頚部痛に留まらず、上肢のしびれや痛み、めまい、頭痛、嘔気なども含まれます。

 

将来においても、回復は見込めないと医師が判断した状態であること(症状固定)が前提になります。

 

症状の常時性(時々痛みがあるのではなく、常に痛みがある)が認定要件です。「天気が悪いときに痛い」といったように症状の消失する時間があると認定されません。

 

また、交通事故と本人の感じる後遺症に因果関係が認められることが条件となるため、あまりに車体の損傷が小さい軽微な交通事故は非該当とされることが多いです。

 

 

後遺症認定で必要な検査

 
頚椎捻挫では、後遺障害等級によって必要とされる検査に若干の違いがあります。

 

ここでは事前の後遺障害等級の見込みの判断が正確であるという前提で、各等級が認定されるために必要な検査を説明します。

 

 

12級13号では頚椎MRIが必須

単純X線像に加えて頚椎MRIが必須です。神経伝導速度検査(NCV; Nerve Conduction Velocity)は基本的に不要です。

 

もちろん、単に頚椎MRIを撮像しただけで等級認定されることはなく、椎間板ヘルニア等の有意な画像所見が必須です。

 

弊社で12級13号が認定された事案では、多くの例でT2強調画像において椎間板の高信号変化を認めました。

 

 

14級9号では単純X線像だけでも可

単純X線像だけでも可ですが、可能であれば頚椎MRIの施行が望ましいです。

 

 

12級13号、14級9号とも神経伝導速度検査は不要

等級認定されるためには、神経伝導速度検査が有用という意見を散見します。しかし、実臨床では頚椎捻挫に対して主治医が自発的に神経伝導速度検査を実施することはまずありません。

 

自賠責認定基準においても、頚椎捻挫では神経伝導速度検査は不要と考えて良いでしょう。

 

 

頚椎捻挫で非該当を回避する工夫-主治医選びの観点-

 
頚椎捻挫で非該当とならないための回避策を考えてみたいと思います。ご存じのように自賠責認定基準はブラックボックスですが、主治医の協力を得ることは等級認定のために欠かせない条件です。

 

もちろん協力的な主治医であれば万事OKというわけではありません。しかし非協力的な主治医では入口の段階でつまずいてしまいます。被害者の立場では主治医選びは重要なポイントとなるのです。

 

それでは協力的な医師はどこに居る可能性が高いのでしょうか。あくまで私見ですが、下記に該当する医師は協力的である可能性が高いです。

 

 

開業医

開業医が協力的な理由は、患者さんの通院が自院の利益につながるからです。一方、病院の勤務医にとっては外来業務の負担が増加するだけなので、頻回の通院は忌避される傾向にあります。

 

 

年齢が比較的若い医師(おおむね50歳代以下)

年齢が若いこともポイントのひとつです。最近ではずいぶん少なくなりましたが、一部の高齢医師は「診てやっている」意識の強い人が存在します。このような医師にあたると通院自体が大変です。

 

また高齢医師の中には自説にこだわりの強すぎる人を散見します。治療や後遺障害診断書の記載内容に対する偏った方針は、非該当の原因となりやすいです。

 

 

物理療法が可能なクリニック

物理療法が可能なクリニックであることは、非常に重要なポイントです。最近では物理療法の保険点数が下がったため、都市部を中心に併設していないクリニックが増加しています。

 

週に何度も主治医と顔を合わすことに抵抗感のある人は多いと思われますが、物理療法があれば気軽に通院することが可能です。このため物理療法があることを確認しておくことは必須と考えるべきでしょう。

 

 

<参考>
日経メディカル|むち打ちの後遺障害が非該当になる理由

 

 

後遺症認定のポイント

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

14級9号と比較すると、はるかに認定基準は厳しくなります。痛みが持続しているだけでは不十分で、「障害の存在が医学的に証明できるもの」という条件が必要になります。

 

具体的には頚椎MRIで神経の圧迫があることです。弊社の経験では、多くの事案で新鮮外傷を疑う椎間板の高信号変化がありました。

 

さらにその圧迫されている神経と実際の症状(知覚障害の範囲、深部腱反射の異常、スパーリング徴候などの誘発テストが陽性など)の一致が必須条件です。

 

弁護士では、専門的な判断が難しいため、脊椎脊髄外科指導医/専門医や整形外科専門医の評価が必須となります。弊社では等級スクリーニングというサービスを提供しているのでご気軽にお問い合わせください。

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

14級9号は、救済等級としての位置づけでもあり、比較的広い範囲の患者さんが認定される可能性があります。

 

受傷から一定の期間(約半年が目安になります)通院していて、その間の通院回数が一定の基準を超えていれば認定の可能性が高まります。それ以外にも交通事故の規模や画像所見(頚椎のレントゲンやMRI)も参考にします。

 

一番重要なことは、受傷直後から後遺障害診断書作成にいたるまで、症状に一貫性があることと、持続性があることです。

 

異議申立てでは、症状の一貫性も含めた総合的な主張が必須です。弊社ではすべての対策を網羅した医師意見書サービスを提供しています。

 

 

<参考>
日経メディカル|意見書で交通事故の後遺症が決まるってホント?

 

 

年間1000事案におよぶ圧倒的な取り扱い事案数に裏打ちされた医師意見書サービスを是非お試しください。

 

 

 

nikkei medical

 

 

後遺障害等級の認定事例

12級13号に認定されました

  • 被害者:46歳
  • 初回申請:非該当
  • 異議申立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)

 

交通事故後に頚部痛と右頚部から母指にかけて放散する痛みが持続していました。痛みのため、1年以上通院、治療を余儀なくされましたが、症状は改善しませんでした。

 

初回申請時には非該当と判定されました。診療録を詳細に確認すると、受傷直後から頚椎椎間板ヘルニアに特徴的な「スパーリング徴候陽性」と複数箇所に記載されていました。

 

MRIで、C5/6レベルに椎間板ヘルニア(矢印)を認め、患者さんの上肢痛(右母指にかけての放散痛)は椎間板ヘルニアが圧迫しているC6神経根の知覚領域と完全に一致していました。

 

脊椎脊髄外科指導医が診療録を確認して、初回申請時に見落とされていた身体所見を記載した医師意見書を作成しました。異議申立てを行ったところ12級13号が認定されました。
 

 

CS-MRI C5-6

 

 

14級9号に認定されました

  • 被害者:60歳
  • 初回申請:非該当
  • 異議申立て:14級9号(局部に神経症状を残すもの)

 

交通事故後に頚部痛と両手のしびれを自覚されていました。受傷から半年間通院されましたが、頚部痛と両手のしびれは改善せず、後遺障害診断書が作成されましたが、非該当と判定されたため、弊社に相談がきました。

 

MRIを脊椎脊髄外科専門医が読影したところ、頚椎後縦靭帯骨化症が存在していることが明らかになりました。診療録を確認すると、受傷当日から頚部痛と両手がしびれると記載されていました。

 

身体所見、画像所見および診療経過について、医師意見書を作成して異議申立てを行ったところ14級9号が認定されました。

 

 

CS-MRI axial image

 

 

まとめ

 
頚椎捻挫に特徴的な症状や治療法についてまとめました。さらに14級9号や12級13号といった後遺障害についての説明を行い、異議申立てで認定されるための基準についてもわかりやすく解説しました。

 

 

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