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2022.9.11

骨折・脱臼

【医師が解説】舟状骨骨折の後遺症が等級認定されるヒント|交通事故

交通事故で発生する手関節周囲の外傷のひとつに舟状骨骨折があります。舟状骨骨折は見逃されやすく、また後遺症を残しやすい外傷です。

 

本記事は、舟状骨骨折の後遺症が等級認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2023/12/8

 

 

舟状骨骨折とは

 

舟状骨は、手関節にある船のような形をした小さな骨です。親指の付け根にあり、8つの手根骨の中でも重要な骨の1つです。

 

舟状骨の特徴は診断の難しさです。通常の単純X線像(レントゲン)では骨折が分かりにくいため、見逃されやすいです。

 

しかも、舟状骨を栄養する血管が少ないため、しっかり治療しないと偽関節になりやすいです。

 

舟状骨が偽関節になると手関節の変形が出現して、長い年月をかけて少しずつ手関節機能が廃絶していきます。このため、舟状骨骨折ではしっかりと治療することが重要です。

 

 

<参考>
【医師が解説】骨折が治りにくい部位は?|交通事故の後遺障害

 

 

scaphoid fracture

 

 

交通事故での舟状骨骨折の受傷機序

 

交通事故では、歩行中の事故やバイク事故で転倒してしまい、手のひらをついた時に発生します。

 

 

舟状骨骨折の症状

 

手首の母指の付け根が腫れて痛みます。しかし、橈骨遠位端骨折などと比較して、腫れや痛みは比較的軽度であることが特徴です。このため、交通事故被害者自身が骨折であることに気が付かないケースも散見します。

 

1~2ヵ月すると当初の腫れや痛みはましになりますが、骨折部がつかずに偽関節になると手関節の変形が出現して、最終的には手関節機能が廃絶する可能性があります。

 

 

舟状骨骨折の診断

 

単純X線像(レントゲン)では、通常の手関節の撮影法ではなく、舟状骨用の特殊な撮影法です。

 

しかし、受傷してしばらくの間はレントゲンでは発見されにくいです。レントゲンで骨折が分からなくても、痛みが続く場合にはMRI検査やCT検査を実施する必要があります。

 

 

舟状骨骨折に対する治療

舟状骨骨折の保存療法

舟状骨は血行が悪く、周囲を関節面で囲まれているため、骨癒合しにくい代表的な骨折の1つです。骨折部のずれ(転位)がほとんど無い症例では、ギプス固定で治療できます。

 

ただし、舟状骨骨折は非常に骨癒合しにくいので、長期間にわたってギプス固定を継続する必要があります。

 

ギプスを除去してから手関節の可動域訓練を行いますが、長期間の外固定のために手関節の機能障害(可動域制限)を残しやすいです。

 

 

舟状骨骨折の手術療法

骨折部のずれ(転位)が大きい症例では、特殊なスクリューによる内固定手術が行われています。

 

仮に偽関節になると手関節の変形が出現して、長い年月をかけて少しずつ手関節機能が廃絶していきます。これを防ぐためには偽関節手術が必要ですが、技術的に難しいのが難点です。

 

 

舟状骨骨折で考えられる後遺障害

機能障害(関節の可動域制限)

8級6号:手関節が強直したもの

 

手関節の可動域が健側の10%程度以下に制限されたものです。舟状骨骨折が偽関節化したまま放置すると、高度の関節可動域制限が残る可能性があります。

 

 

10級10号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

 

手関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているものです。同じく、舟状骨骨折が偽関節化したまま放置すると、高度の関節可動域制限が残る可能性があります。

 

 

12級6号:1上肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

 

手関節の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されているものです。順調に骨癒合しても手関節の可動域制限を併発する可能性が高いです。

 

 

神経障害

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

 

舟状骨骨折が偽関節になると痛みが続くため、12級13号に認定される可能性が高いです。

 

偽関節以外でも手関節の痛みの原因を他覚的に示すことができる(画像所見において骨折部の変形や段差、関節の異常な摩耗が確認できる)場合には、12級13号に該当する可能性があります。

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

 

舟状骨骨折が骨癒合したものの、手術の有無や治療経過、通院頻度などの要素を総合的に判断した結果、痛みの原因が医学的に説明可能な場合には14級9号に該当する可能性があります。

 

 

wrist pain

 

 

【弁護士必見】舟状骨骨折の後遺障害認定ポイント

 

舟状骨骨折には、

  • 治療が難しい
  • 見逃されることが少なくない

 
という大きな特徴があります。これらの特徴は、舟状骨骨折の後遺障害が等級認定されにくい原因となります。

 

 

舟状骨骨折は手関節の可動域制限を残しやすい

舟状骨骨折の治療は難しく、保存療法でも手術療法でも手関節の可動域制限をきたしやすいです。しかし骨癒合した場合は可動域制限を証明できる客観的所見が無いため、機能障害が否定される事案が後を絶ちません。

 

このような事案では、診療録を取り寄せて診療経過やリハビリテーション記録を精査します。通常のプロトコールを逸脱している場合には、手外科専門医による医師意見書が有効となるケースもあります。

 

 

偽関節では事故との因果関係を問われる

弊社に相談依頼のあった舟状骨骨折の事案では、舟状骨骨折後の偽関節と交通事故との因果関係を問われているケースが最も多いです。

 

舟状骨骨折は橈骨遠位端骨折と比べて痛みや腫れが軽度です。このため、しばらく舟状骨骨折に気付かないケースを散見します。

 

舟状骨骨折が偽関節化してから発見されると、画像検査が実施されておらず、診療録に手関節痛の記載も無ければ、交通事故との因果関係を問われます。

 

特に多発外傷では、脳神経や腹部臓器といった生命にかかわる部位の治療が優先されます。比較的痛みが軽度である手関節痛は見逃されることも多いのです。

 

このような事案では、手外科専門医による医師意見書が必須と言えるでしょう。舟状骨骨折でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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まとめ

 

舟状骨骨折は骨癒合しにくく手関節の可動域制限を残しやすいです。しかも、レントゲンだけでは骨折が分かりにくいため、見逃されることが少なくありません。

 

舟状骨骨折は後遺症を残しやすい骨折であるにもかかわらず、後遺障害に等級認定されにくいと言えます。

 

 

 

nikkei medical

 

 

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