交通事故や労災事故で発生する上肢の外傷のひとつに手指や手の切断があります。手指や手は非常に繊細な構造なので後遺症を残しやすい外傷です。
本記事は、手指や手の切断の後遺症が等級認定されるヒントとなるように作成しています。
最終更新日:2023/7/20
Table of Contents
指切断と手や指の骨との関係
手指の切断を理解するためには、手や手指の骨を知っておく必要があります。
手や手指は、たくさんの小さな骨から構成されています。手や手指の主な骨は下記のごとくです。
- 末節骨(第1~5末節骨)
- 中節骨(第2~5中節骨)
- 基節骨(第1~5基節骨)
- 中手骨(第1~5中手骨)
- 手根骨(豆状骨、三角骨、月状骨、舟状骨、大菱形骨、小菱形骨、有頭骨、有鈎骨)
Wikipediaの指骨から転載
指切断の治療
切断術(断端形成術)
患指の温存ができない場合には、指の切断術(断端形成術)を施行せざるを得ません。
損傷の酷い皮膚を切除して健常な皮膚を残します。次に、指の骨を皮膚よりも少し短く切除します。そして骨の断端を覆うようにして、健常な皮膚を縫い合わせます。
再接着術
患指の温存を目指す場合には、指の再接着術を行います。再接着術とは、切れてしまった指先の小さな血管同士をつなぐ手術です。
手の外科専門医が顕微鏡下で行うマイクロサージェリーで、極めて難易度の高い手術です。
再接着術が成功して切断指に血液が流れるようになれば、術後10日間ほどで循環が安定して生着します。
母指機能再建化手術
母指機能再建化手術(toe to finger)という足の指を用いて手の指を再建する手術があります。極めて高度の技術が必要な手術ですが、失われた母指の再建する治療として有名です。
指切断の手術費用
指切断術では、入院は不要なケースが多いです。健康保険が3割負担のケースでは、費用の概算は以下のようになります。
費用:3~4万円
上記の金額はあくまでも目安です。個々の症例によって金額が変わるのでご了承ください。
指切断は全治何ヶ月?
指切断術(断端形成術)を施行した場合には、創が治るのに10~14日かかる症例が多いです。受傷時の指の状態が悪ければ、創が開くこともあります。
切断部の痛みは、受傷してから1ヵ月も経過するとずいぶん楽になることが多いです。ただし、断端部のしびれや知覚鈍麻はもう少し続きます。
おおむね3ヵ月すると、制限なく日常生活を送ることが可能となるケースが多いです。
指切断の仕事復帰
受傷してから1ヵ月すると断端部の皮膚が成熟してくるため、指先を使う仕事であっても少しずつ復帰できます。
尚、上記はあくまでも目安です。個々の症例によって状況は全く異なるため、復職時期は主治医に相談しなければいけません。
指切断で考えられる後遺障害
3級5号
両手の手指の全部を失ったもの
6級8号
1手の5の手指又は母指を含み4の手指を失ったもの
7級6号
1手の母指を含み3の手指又は母指以外の4の手指を失ったもの
8級3号
1手の母指を含み2の手指又は母指以外の3の手指を失ったもの
9級12号
1手の母指又は母指以外の2の手指を失ったもの
11級8号
1手の示指、中指又は環指を失ったもの
12級9号
1手の小指を失ったもの
13級7号
1手の母指の指骨の一部を失ったもの
14級6号
1手の母指以外の手指の指骨の一部を失ったもの
【弁護士必見】指切断の後遺障害認定ポイント
母指機能再建化手術(toe to finger)という足の指を用いて手の指を再建する手術があります。極めて高度の技術が必要な手術ですが、失われた母指の再建する治療として有名です。
しかし、母指機能再建化手術を施行すると足の指を失ってしまいます。このケースでは、再建術後に残った母指の障害(短縮による欠損障害や関節可動域制限による機能障害)と、足指の欠損障害を併合して後遺障害が認定されます。
指切断の事案では、手外科医師による医師意見書が有効であるケースが多いです。お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
まとめ
手や手指の切断は、交通事故や労災事故で受傷する可能性のある外傷のひとつです。そして手や手指は非常に繊細な構造なので、後遺症を残しやすいです。
指切断の治療には、主に切断術(断端形成術)と再接着術があります。一方、母指機能再建化手術では、再建術後の母指の障害と足指の欠損障害を併合して後遺障害が認定されます。
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