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【医師が解説】後縦靭帯骨化症(OPLL)と後遺症|交通事故

交通事故でむちうち(頚椎捻挫)になった。事故後に症状が長引くため、MRIをとったら後縦靭帯骨化症がみつかった……

 

このように、事故の前から後縦靭帯骨化症に気づかずに生活しておられた方が、交通事故をきっかけに首の痛みや手足のしびれが悪化するケースがあります。

 

本記事は、後縦靭帯骨化症に由来する後遺障害が等級認定されるポイントを分かりやすく解説します。

 

 

最終更新日:2024/1/22

 

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後縦靭帯骨化症とは

 

背骨の神経の通り道で、本来骨がない場所に骨ができる病気です。脊髄の前方には、後縦靭帯という靭帯があります。この靭帯が長い年月をかけて、骨に置換される病気が後縦靭帯骨化症です。

 

頚椎、胸椎、腰椎いずれの部位にも骨ができることがあります。日本人を含むアジア人に多い病気で、はっきりとした原因は特定されていません。

 

同一家系で発生する事例が多数あることから、遺伝が発症に関係していると考えられています。

 

後縦靭帯骨化症の方には、糖尿病や肥満を合併することが多いとされています。脊髄のすぐそばに硬い骨ができるため、脊髄が骨に圧迫されてさまざまな症状がでます。

 

手足のしびれや運動麻痺が多く見られる症状です。後縦靭帯骨化症は、国が指定する難病(特定疾患)にもリストアップされています。

 

 

交通事故の後遺症と後縦靭帯骨化症との関係

 

運転中や停車中に、車が追突することで、運転手もしくは同乗者に強い衝撃が加わります。首に衝撃が加わると、むち打ち症(頚椎捻挫)になります。若くて健康な人であれば、むち打ち症は、2〜3週間で自然に治ることが多いです。

 

首のむちうちだと思って整形外科に通院していたけれども、
 

  • 事故の後から手や足にしびれが出た
  • 首のMRIでは靭帯骨化症が脊髄を圧迫していた
  • 骨化症の手術を受けた患者さんが、事故で手足のしびれが悪化した

 
というケースもありえます。

 

 

後縦靭帯骨化症の症状

 

後縦靭帯骨化症は、長い年月(数年から数十年)をかけてつららが成長するように脊髄の周囲に骨が大きくなる病気です。骨がゆっくり大きくなるので、脊髄の圧迫があっても無症状で生活されている人がいます。

 

交通事故で首に衝撃が加わると、さまざまな症状がでます。頚椎の場合であれば手足のしびれや運動麻痺、歩行が難しくなる、手で細かい作業がしづらい(巧緻性障害)といった症状です。

 

交通事故の衝撃で脊髄損傷(頚髄損傷)になり、手足が完全に動かなくなる(四肢麻痺)こともあります。背中(胸椎)の骨化症だと、両手には症状がなく、両足が麻痺します(対麻痺)。

 

脊髄損傷になると神経機能の回復は困難で、重大な後遺症となることも多いです。以上で述べたような重篤な症状が幸いにでなかったとしても、首の痛み、肩甲骨や肩の痛みが長引くこともあります。

 

 

後縦靭帯骨化症の診断

 

骨が大きくなるとレントゲンで診断できることもありますが、CTで見つかることが多いです。もちろんMRIで診断されることも多いです。

 

CTをとると脊柱管(脊髄の通り道)内に骨がみつかるため、診断は容易です。一方でレントゲンしか撮影されていない場合、小さな骨化は見逃される可能性があります。

 

 

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後縦靭帯骨化症に対する治療

 

手足に麻痺がない場合は、通常の頚椎捻挫と同じような治療が行われます。事故直後は安静にすることが治療の基本になります。頚椎装具が処方されることも多いと思います。

 

痛みを和らげるために消炎鎮痛剤の湿布や塗り薬、内服薬が処方されることも多いです。理学療法士によるリハビリも効果的です。痛みが収まってきたら徐々に活動性を高めていきましょう。

 

骨が脊髄を圧迫して手足に神経麻痺の症状がでている場合は、手術が必要です。首に関していえば、首の前(のど)を切開する方法(頚椎前方除圧固定術)と首の後ろを切開する方法(頚椎後方除圧術)があります。

 

どちらも脊髄の圧迫を取り除く、あるいは軽減することを目的としています。頚椎前方法のメリットは、神経の周囲にできた骨を摘出することができることです。

 

一方で、骨化症が広範囲の場合は、頚椎後方法(椎弓形成術)が選択されます。頚椎後方法は、神経の周囲にできた骨はさわらずに神経の通り道を拡大して、脊髄を骨から遠ざけることで症状を改善する術式です。

 

 

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後縦靭帯骨化症で考えられる後遺症

中枢神経障害

後縦靭帯骨化症で脊髄損傷を生じた場合は、1級1号、2級1号、3級3号、5級2号、7級4号、9級10号、12級13号の可能性があります。

 

<参考>
【医師が解説】脊髄損傷が後遺症認定されるポイント|交通事故

 

 

末梢神経障害

頚椎後縦靭帯骨化症の場合は、神経障害として12級13号、14級9号の可能性があります。

 

【医師が解説】頚椎捻挫(むちうち)の後遺症認定のヒント|交通事故

 

 

 

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【弁護士必見】後縦靭帯骨化症(OPLL)の後遺障害認定ポイント

既往症に後縦靭帯骨化症があると素因減額が問題

後縦靭帯骨化症が原因で後遺障害が認定された場合に問題となるのが、素因減額です。

 

素因減額とは、事故当時に被害者がすでに、損害が発生・拡大する要因(既往症や身体的特徴、心因的な要素)をもっており、実際にそれが原因で損害が発生・拡大したときに、一定の割合について賠償額を減額する仕組みです。

 

後縦靭帯骨化症は、交通事故にあう前から体内に存在したことが明らかです。交通事故にあう以前に存在した疾病が交通事故の損害を拡大したと判断されると、賠償金が減額されます。

 

後縦靭帯骨化症の素因減額割合を争う訴訟では、平成8年10月29日の最高裁判決が基準になるため、3~5割程度の素因減額が行われる事案が多いようです。

 

素因減額は、後縦靭帯骨化症以外にも、骨粗鬆症や椎間板ヘルニアに対して適応される可能性があります。

 

 

後縦靭帯骨化症では脊柱管内占拠率と自然経過が重要

素因減額は3~5割程度になることが多いですが、当然のごとく個々の事案で状況は異なります。具体的な素因減額の割合に影響を与えるのは靭帯骨化の脊柱管内占拠率です。

 

責任高位における靭帯骨化の脊柱管内占拠率を算出したうえで、各種のガイドラインで理論武装して素因減額の割合を主張することになります。

 

弊社では、後縦靭帯骨化症の素因減額が争点となる事案に多数取り組んできました。このため、後縦靭帯骨化症の素因減額への対処法はマニュアル化しています。

 

後縦靭帯骨化症の素因減額でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

後遺障害等級の認定事例

事例1:素因減額20%での和解成立

  • 被害者:70歳
  • 等級認定:2級1号
  • 加害者側保険会社が素因減額50%を主張
  • 素因減額20%で和解成立

 

コメント
歩行中に自動車にはねられた結果、ほぼ寝たきりの状態になりました。自賠責保険では2級1号の後遺障害等級認定されましたが、加害者側保険会社がOPLLの既往を指摘して素因減額50%を主張しました。

 

脊椎脊髄外科専門医が、靭帯骨化の脊柱管内占拠率、OPLLの自然経過、各種ガイドラインを引用して素因減額は16%である医師意見書を作成した結果、素因減額20%で和解成立しました。

 

 

事例2:12級13号に認定

  • 被害者:75歳
  • 初回申請:14級9号(局部に神経症状を残すもの)
  • 異議申し立て:12級13号(局部に頑固な神経症状を残すもの)

 

コメント
交通事故後に首の痛みと上肢のしびれを自覚されていました。初回申請時に後遺障害診断書を作成した医師がMRIを確認しましたが、後縦靭帯骨化症の存在を見落としていました。

 

幸い、この患者さんは受傷後しばらくの間大学病院に通院されており、後縦靭帯骨化症の存在、それに由来する上肢の筋力低下や反射の異常について診療録に記載が確認できました。

 

これらの所見に基づいて、医師意見書を作成して異議申立てを行ったところ12級13号が認定されました。

 

 

 

 

事例3:14級9号に認定

  • 被害者:62歳
  • 初回申請:非該当
  • 異議申し立て:14級9号(局部に神経症状を残すもの)

 

コメント
交通事故後に首の痛みを自覚されていました。受傷から6ヵ月通院されましたが、頑固な首の痛みと上肢のしびれは改善せず、後遺障害診断書が作成されましたが、非該当と判定されました。

 

画像検査を脊椎外科専門医が詳細に読影したところ、事故のレントゲンで後縦靭帯骨化症が存在することが明らかになりました。

 

これらの所見について、医師意見書を作成して異議申立てを行ったところ14級9号が認定されました。

 

 

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Traffic accident patient

 

 

まとめ

 

後縦靭帯骨化症に特徴的な症状や治療法についてまとめました。さらに後縦靭帯骨化症で認定可能性のある後遺障害等級についての説明を行い、素因減額についてもわかりやすく解説しました。

 

 

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