マレットフィンガーとは、いわゆる「突き指」の一種です。突き指と言われると大したことのないケガに思えますが、マレットフィンガーは例外です。
マレットフィンガーを放置すると指を伸ばせなくなります。本記事は、マレットフィンガーの後遺障害を理解するヒントとなるように作成しています。
最終更新日:2023/11/6
Table of Contents
マレットフィンガーとは
マレットフィンガーとは、指の第1関節(DIP関節)が曲がったまま伸ばせなくなる状態を指します。マレット指、マレット変形、槌指とも呼ばれています。
マレットフィンガーには、伸筋腱の末節骨への停止部が剥離した腱性マレットフィンガーと、末節骨骨折で生じる骨性マレットフィンガーがあります。
腱性マレットフィンガーとは
腱性マレットフィンガーとは、指を伸ばす伸筋腱が切れたことによって引き起こされます。指の第1関節(DIP関節)が曲がったままになり伸展できなくなります。
この状態を放置すると、指の第2関節(PIP関節)が過度に伸びたままになるスワンネック変形を併発します。
骨性マレットフィンガーとは
骨性マレットフィンガーとは、末節骨(指の先端)が関節内で骨折することによって引き起こされます。この状態を放置すると、第1関節(DIP関節)が亜脱臼する可能性があります。
<参考>
【医師が解説】手、指の骨折が後遺障害認定されるポイント|交通事故
マレットフィンガーの症状
腱性マレットフィンガーの症状
腱性マレットフィンガーの症状は、指の第1関節(DIP関節)を自分で伸ばすことができませんが、痛みが軽度であるケースが多いです。
骨性マレットフィンガーの症状
骨性マレットフィンガーの症状は、指の第1関節(DIP関節)を自分で伸ばせないことは共通していますが、骨折があるため強い痛みと腫脹を伴います。
マレットフィンガーの診断
マレットフィンガーの身体所見
マレットフィンガーの診断は、指が第1関節(DIP関節)で曲がっており、自分で伸ばすことができないので、視診だけで可能です。
マレットフィンガーの画像所見
マレットフィンガーでは、腱性マレットフィンガーと骨性マレットフィンガーを鑑別するため、レントゲン検査が必要です。
レントゲン検査の側面像で末節骨骨折が無ければ、腱性マレットフィンガーと診断できます。
腱性マレットフィンガーの診断を確実にするのであれば、超音波検査で伸筋腱が切れた部位を確認します。
マレットフィンガーの治療
腱性マレットフィンガーの治療
腱性マレットフィンガーの治療は、装具(スプリント)を使用した保存療法が第一選択です。第1関節(DIP関節)を真っすぐに伸ばした状態で、装具(スプリント)で固定します。
ただし、腱が治癒するまでの約8週間の間、装具を24時間装着し続ける必要があります。一度でも装具を外して指を曲げてしまうと、腱が再断裂するので注意が必要です。
骨性マレットフィンガーの治療
骨性マレットフィンガーの治療は、手術が必要なケースが多いです。細い鋼線を皮膚の上から2~3本刺し込む石黒法という術式が一般的です。
マレットフィンガーの固定期間
腱性マレットフィンガーは2ヵ月(8週間)、骨性マレットフィンガーは1.5ヵ月(4~6週間)が目安になります。
マレットフィンガーは全治何ヵ月?
腱性マレットフィンガーは3ヵ月、骨性マレットフィンガーは2~3ヵ月が目安になります。
マレットフィンガーの後遺障害
腱性マレットフィンガー、骨性マレットフィンガーとも、軽度の第1関節(DIP関節)の伸展障害や、屈曲方向への可動域制限が残るケースが多いです。
骨性マレットフィンガーでは、第1関節(DIP関節)の痛みが残るケースもあります。
指の機能障害
12級10号:1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
示指、中指、環指にマレットフィンガーを受傷すると、12級10号に認定される可能性があります。
1手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したものとは、第1関節(DIP関節)を屈伸できないものを指します。
腱が切れたままの状態のために自動で伸展できないケースや、高度の関節可動域制限のために第1関節(DIP関節)がほとんど動かないものが該当します。
13級6号:1手のこ指の用を廃したもの
小指にマレットフィンガーを受傷すると、13級6号に認定される可能性があります。後遺障害の認定条件は、12級10号に準じます。
指の神経障害
12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの
骨性マレットフィンガーで骨折が比較的大きな骨片であった場合には、12級13号に認定される可能性があります。
12級13号に認定されるためには、第1関節(DIP関節)の関節面不整や外傷性変形性関節症の所見が必須です。
14級9号:局部に神経症状を残すもの
第1関節(DIP関節)の関節面不整や外傷性変形性関節症の所見が軽度のケースでは、12級13号ではなく14級9号に認定されます。
【弁護士必見】マレットフィンガーの後遺障害認定ポイント
マレットフィンガーでは、第1関節(DIP関節)の関節面不整や外傷性変形性関節症の所見を証明することが、後遺障害認定のポイントになります。
レントゲン検査では、正確な側面像の有無が鍵を握ります。この際のポイントは、患側だけではなく健側の側面像も撮影して左右比較することです。
また、CT検査で第1関節(DIP関節)の関節面不整や外傷性変形性関節症の所見を証明するのも有効でしょう。
画像所見が弱い事案では、治療経過も検討する必要があります。外固定期間が長くリハビリテーションが不十分なケースでは、第1関節(DIP関節)の高度の関節可動域制限を残す可能性があります。
このような事案では、手外科医師による医師意見書が有効であるケースが多いです。お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。
まとめ
マレットフィンガーとは、指の第1関節(DIP関節)が曲がったまま伸ばせなくなる状態を指します。マレット指、マレット変形、槌指とも呼ばれています。
マレットフィンガーには、伸筋腱の末節骨への停止部が剥離した腱性マレットフィンガーと、末節骨骨折で生じる骨性マレットフィンガーがあります。
腱性マレットフィンガー、骨性マレットフィンガーとも、軽度の第1関節(DIP関節)の伸展障害や、屈曲方向への可動域制限が残るケースが多いです。
また、骨性マレットフィンガーでは、第1関節(DIP関節)の痛みが残るケースもあります。
関連ページ