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【医師が解説】腓骨神経麻痺の後遺障害認定ポイント|交通事故

交通事故で発生する後遺症のひとつに腓骨神経麻痺があります。脛腓骨骨折、股関節脱臼骨折、外傷性腰椎椎間板ヘルニアなどで発症することがあり、腓骨神経麻痺は後遺症を残しやすいです。

 

腓骨神経麻痺の原因となる外傷は多岐に渡り、また客観的な検査所見を得ることが難しいこともあるため、整形外科医師との連携が必要な事案が多いです。

 

本記事は、腓骨神経麻痺の後遺症が等級認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/4/19

 

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腓骨神経麻痺とは

 

膝裏の外側を走る腓骨神経が圧迫されるなどして発生する神経障害です。足の甲から足指にかけてしびれが出現して、また足首が上に曲げられなくなり、足が垂れ下がった状態になります。

 

 

腓骨神経麻痺の症状

 

腓骨神経麻痺では下記の症状が発生します。
 

  • 下腿の外側から足の甲から足指にかけての知覚低下やしびれ
  • 足首と足指を背屈できない

 

 

足首と足指を背屈できない状態を下垂足(drop foot)と言います。下垂足を併発すると段差につまずきやすくなるため日常生活動作が低下します。

 

高度の下垂足が残った場合には、歩行時に足関節を90度に保つ装具を装着する必要があります。

 

 

腓骨神経麻痺の原因

 
tibial plateau fracture
 

腓骨頭(膝裏の外側)の圧迫

腓骨神経麻痺の原因として最も多いのは、腓骨頭を外部から持続的に圧迫されて発症するケースです。重度外傷のために長期間にわたって臥床が続いたり、ギプスやシーネ固定で腓骨頭が圧迫されて発症します。

 

腓骨頭の圧迫で腓骨神経麻痺が発症しやすい理由は、腓骨頭部では腓骨神経が皮膚の直下を走行するため、神経に対する圧迫がストレートに伝わりやすいからです。

 

 

脛腓骨骨折、脛骨高原骨折

腓骨神経は膝裏から腓骨頭の後ろを横切って足の方へ走行しています。腓骨頭の横を腓骨神経が走行しているので、この部分で骨折すると腓骨神経にも損傷が及びます。

 

 

股関節脱臼骨折(ダッシュボード外傷)

寛骨臼骨折の中でも股関節脱臼骨折(ダッシュボード外傷)では坐骨神経損傷を合併することがあります。坐骨神経は膝の上で腓骨神経と脛骨神経に分かれます。

 

このため、坐骨神経損傷の部分症状として、腓骨神経麻痺を発症するケースがあります。

 

 

外傷性腰椎椎間板ヘルニア

厳密には腰椎椎間板ヘルニアによって発生した下垂足は腓骨神経麻痺ではありません。しかし、表面上は同じ症状なので、ここでは外傷性腰椎椎間板ヘルニアも腓骨神経麻痺の原因に含めました。

 

下垂足をきたす原因としては、L4/5の腰椎椎間板ヘルニアによるL5神経根障害が最も多いです。

 

 

その他の原因

ガングリオンなどの腫瘤や腫瘍も腓骨神経麻痺の原因となります。しかし交通事故に起因する外傷ではないので、ここでは割愛させていただきます。

 

 

腓骨神経麻痺の診断

 

交通事故との因果関係の証明がキモとなるため、腓骨神経麻痺の診断は極めて重要です。

 

診断するためには、まず腓骨神経麻痺を発症した原因部位を特定することから始めます。交通事故では外傷部位が明白な場合が多いですが、下肢の多発外傷では傷害部位の特定が難しいケースもあります。

 

身体所見としては、下垂足と知覚障害の確認が重要です。ティネルサイン(Tinel sign)という神経の傷害部を叩くとそこから先に痛みやしびれが放散する身体所見の確認は必須です。

 

確定診断には、神経伝導検査や筋電図検査が必要です。単純X線像(レントゲン)検査、MRI検査、CT検査、超音波検査などは補助的な検査に留まります。

 

 

Nerve conduction velocity study

 

 

腓骨神経麻痺に対する治療

保存療法

腓骨頭への圧迫を除く、ビタミンB12製剤などの内服処方、低周波治療などがあります。3ヵ月程度保存療法を続けても回復しないものケースでは、手術が必要になることもあります。

 

 

手術療法

脛腓骨骨折、脛骨高原骨折、股関節脱臼骨折などの外傷では、原因傷病に対する手術が行われます。

 

腓骨神経そのものへの損傷があるケースでは、神経剥離や腱移行手術などの手術が行われるケースもあります。

 

 

腓骨神経麻痺で考えられる後遺症

足関節の機能障害

8級7号:下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの

 

足関節がまったく動かなくなる、もしくは関節可動域が健側の10%以下になるものです。

 

 

10級11号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に著しい障害を残すもの

 

関節の可動域が健側の可動域の1/2以下に制限されているものです。

 

 

12級7号:1下肢の3大関節中の1関節の機能に障害を残すもの

 
関節の可動域が健側の可動域の3/4以下に制限されているものです。

 

 

足指の機能障害

7級11号

両足の足指の全部の用を廃したもの

 

9級15号

1足の足指の全部の用を廃したもの

 

11級9号

1足の第1の足指を含み2以上の足指の用を廃したもの

 

12級12号

1足の第1の足指又は他の4の足指の用を廃したもの

 

13級10号

第2の足指の用を廃したもの
第2の足指を含み2の足指の用を廃したもの
第3の足指以下の3の足指の用を廃したもの
 

14級8号

1足の第3の足指以下の1または2の足指の用を廃したもの

 

 

神経障害

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

 

腓骨神経麻痺による症状を、画像検査や神経伝導速度検査で他覚的所見に証明できる事案が該当します。

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

 

神経伝導速度検査で腓骨神経麻痺の所見を認めないものの、治療経過から神経症状の存在が推認される事案が該当します。

 

 

【弁護士必見】等級認定のポイント

 

腓骨神経麻痺で最も問題になるのは、腓骨神経麻痺があるにもかかわらず、神経伝導検査で有意所見が出ないケースです。

 

神経麻痺が存在しているのに、神経伝導検査で検出されないとは、にわかに信じ難いかもしれません。しかし実臨床ではこのようなケースを散見します。

 

明らかな腓骨神経麻痺が存在するにもかかわらず、神経伝導検査で有意所見が無いため非該当になった事案の相談がありました。

 

不信に思って別の医療機関で神経伝導検査を再度施行したところ、有意所見を得た事案を経験したこともあります。

 

神経伝導検査で有意所見が出ない理由はいくつか考えられます。ご興味のある方は下記を参照してください。

 

 

<参考>
【医師が解説】神経伝導速度検査は万能ではない|交通事故

 

 

 

nikkei medical

 

 

まとめ

 
交通事故において、腓骨神経麻痺は、脛腓骨骨折、股関節脱臼骨折、外傷性腰椎椎間板ヘルニアなどで発症することがあります。

 

腓骨神経麻痺の原因となる外傷は多岐に渡り、また客観的な検査所見を得ることが難しいケースもあります。腓骨神経麻痺でお困りの事案があればこちらからお問い合わせください。

 

 

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