交通事故コラム詳細

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2022.11.3

労災事故

【医師が解説】労災事故の後遺障害認定確率を上げるポイント|腰痛

労働災害事故(労災事故)でケガを負うと後遺症を残すことがあります。後遺障害に認定されると、労災保険から給付を受けることができます。

 

労災事故は、交通事故と比較して後遺障害に認定されやすいと言われています。しかし、労働基準監督署に申請すれば、自動的に後遺障害が認定されるわけではありません。

 

労働災害の外傷にはたくさんの種類があるため、それぞれの傷病で知っておくべきポイントがあります。

 

本記事は、労災事故の後遺障害が認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/4/19

 

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労災事故の後遺症と後遺障害には違いがある

後遺症とは、治療したのに残った症状

後遺症とは、ケガの治療したにもかかわらず残ってしまった痛み、関節の動きの悪さなどの症状です。

 

顔面や手足に残ったキズや、手足の切断や耳たぶの欠損した場合も後遺症になります。

 

 

後遺障害とは、認定を受けた後遺症

後遺障害とは、後遺症の中でも法律(※)によって定められた障害です。つまり、労災事故の後遺障害とは、後遺障害等級の認定を受けた後遺症を指します。

 

(※)労働者災害補償保険法

 

 

労災申請の流れ

 

労災保険で後遺障害が認定されるためには、労働者が労働基準監督署に申請する必要があります。後遺障害が認定されるまでの流れは下記のごとくです。

 

  1. 労働者が、労働基準監督署に申請する
  2. 労働基準監督署が調査を開始する
  3. 必要に応じて、労災医員が本人に聴き取りを行う
  4. 後遺障害等級が決定

 

 

LBP

 

 

後遺障害に対する補償

労災保険からの補償(給付)

後遺症が後遺障害等級に認定されると、労災保険から後遺障害についての補償(給付)を受けることができます。

 

労災保険の障害補償給付には、下記のものがあります。

 

 

後遺障害等級の1~7級

 

  • 障害補償等年金
  • 障害特別年金
  • 障害特別支給金

 

 

後遺障害等級の8~14級

 

  • 障害補償等一時金
  • 障害特別一時金
  • 障害特別支給金

 

 

慰謝料と逸失利益は労災保険から補償されない

労災保険からは、前述の障害補償給付を受けることができます。しかし、傷害慰謝料、後遺傷害慰謝料、逸失利益に関しては、労災保険からは補償されません。

 

これらの慰謝料は、会社などの使用者に対して請求を行う必要があります。請求を行う際には、会社に対して使用者としての責任を立証する必要があります。

 

 

後遺障害等級と認定基準

 

後遺障害では、数字が小さいほど重度の障害です。最も重症度の高い遷延性意識障害の1級から、むちうち等の14級まで、14段階の等級に分けられています。

 

後遺障害等級の認定基準は下記の表にまとめています。認定基準にあてはまる症状が他覚的に証明されると、その等級の後遺障害が認定されます。

 

 

等級 認定基準
第1級 1. 両眼が失明したもの
2. 咀嚼及び言語の機能を廃したもの
3. 両上肢をひじ関節以上で失つたもの
4. 両上肢の用を全廃したもの
5. 両下肢をひざ関節以上で失つたもの
6. 両下肢の用を全廃したもの
第2級 1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
2. 両眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
3. 両上肢を手関節以上で失つたもの
4. 両下肢を足関節以上で失つたもの
第3級 1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
2. 咀嚼又は言語の機能を廃したもの
3. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
4. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、終身労務に服することができないもの
5. 両手の手指の全部を失つたもの
第4級 1. 両眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
2. 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
3. 両耳の聴力を全く失つたもの
4. 一上肢をひじ関節以上で失つたもの
5. 一下肢をひざ関節以上で失つたもの
6. 両手の手指の全部の用を廃したもの
7. 両足をリスフラン関節以上で失つたもの
第5級 1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・一以下になつたもの
2. 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
3. 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、特に軽易な労務以外の労務に服することができないもの
4. 一上肢を手関節以上で失つたもの
5. 一下肢を足関節以上で失つたもの
6. 一上肢の用を全廃したもの
7. 一下肢の用を全廃したもの
8. 両足の足指の全部を失つたもの
第6級 1. 両眼の視力が〇・一以下になつたもの
2. 咀嚼又は言語の機能に著しい障害を残すもの
3. 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
4. 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
5. 脊柱に著しい変形又は運動障害を残すもの
6. 一上肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
7. 一下肢の三大関節中の二関節の用を廃したもの
8. 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指を失つたもの
第7級 1. 一眼が失明し、他眼の視力が〇・六以下になつたもの
2. 両耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
3. 一耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
4. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
5. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、軽易な労務以外の労務に服することができないもの
6. 一手のおや指を含み三の手指を失つたもの又はおや指以外の四の手指を失つたもの
7. 一手の五の手指又はおや指を含み四の手指の用を廃したもの
8. 一足をリスフラン関節以上で失つたもの
9. 一上肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
10. 一下肢に偽関節を残し、著しい運動障害を残すもの
11. 両足の足指の全部の用を廃したもの
12. 外貌に著しい醜状を残すもの
13. 両側の睾丸を失つたもの
第8級 1. 一眼が失明し、又は一眼の視力が〇・〇二以下になつたもの
2. 脊柱に運動障害を残すもの
3. 一手のおや指を含み二の手指を失つたもの又はおや指以外の三の手指を失つたもの
4. 一手のおや指を含み三の手指の用を廃したもの又はおや指以外の四の手指の用を廃したもの
5. 一下肢を五センチメートル以上短縮したもの
6. 一上肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
7. 一下肢の三大関節中の一関節の用を廃したもの
8. 一上肢に偽関節を残すもの
9. 一下肢に偽関節を残すもの
10. 一足の足指の全部を失つたもの
第9級 1. 両眼の視力が〇・六以下になつたもの
2. 一眼の視力が〇・〇六以下になつたもの
3. 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
4. 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
5. 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
6. 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
7. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
8. 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
9. 一耳の聴力を全く失つたもの
10. 神経系統の機能又は精神に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
11. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、服することができる労務が相当な程度に制限されるもの
12. 一手のおや指又はおや指以外の二の手指を失つたもの
13. 一手のおや指を含み二の手指の用を廃したもの又はおや指以外の三の手指の用を廃したもの
14. 一足の第一の足指を含み二以上の足指を失つたもの
15. 一足の足指の全部の用を廃したもの
16. 外貌に相当程度の醜状を残すもの
17. 生殖器に著しい障害を残すもの
第10級 1. 一眼の視力が〇・一以下になつたもの
2. 正面を見た場合に複視の症状を残すもの
3. 咀嚼又は言語の機能に障害を残すもの
4. 十四歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では普通の話声を解することが困難である程度になつたもの
6. 一耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になつたもの
7. 一手のおや指又はおや指以外の二の手指の用を廃したもの
8. 一下肢を三センチメートル以上短縮したもの
9. 一足の第一の足指又は他の四の足指を失つたもの
10. 一上肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
11. 一下肢の三大関節中の一関節の機能に著しい障害を残すもの
第11級 1. 両眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2. 両眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3. 一眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
4. 十歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
5. 両耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
6. 一耳の聴力が四十センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になつたもの
7. 脊柱に変形を残すもの
8. 一手のひとさし指、なか指又はくすり指を失つたもの
9. 一足の第一の足指を含み二以上の足指の用を廃したもの
10. 胸腹部臓器の機能に障害を残し、労務の遂行に相当な程度の支障があるもの
第12級 1. 一眼の眼球に著しい調節機能障害又は運動障害を残すもの
2. 一眼のまぶたに著しい運動障害を残すもの
3. 七歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
4. 一耳の耳殻の大部分を欠損したもの
5. 鎖骨、胸骨、ろく骨、けんこう骨又は骨盤骨に著しい変形を残すもの
6. 一上肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
7. 一下肢の三大関節中の一関節の機能に障害を残すもの
8. 長管骨に変形を残すもの
9. 一手のこ指を失つたもの
10. 一手のひとさし指、なか指又はくすり指の用を廃したもの
11. 一足の第二の足指を失つたもの、第二の足指を含み二の足指を失つたもの又は第三の足指以下の三の足指を失つたもの
12. 一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したもの
13. 局部に頑固な神経症状を残すもの
14. 外貌に醜状を残すもの
第13級 1. 一眼の視力が〇・六以下になつたもの
2. 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの
3. 一眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
4. 両眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
5. 五歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
6. 一手のこ指の用を廃したもの
7. 一手のおや指の指骨の一部を失つたもの
8. 一下肢を一センチメートル以上短縮したもの
9. 一足の第三の足指以下の一又は二の足指を失つたもの
10. 一足の第二の足指の用を廃したもの、第二の足指を含み二の足指の用を廃したもの又は第三の足指以下の三の足指の用を廃したもの
11. 胸腹部臓器の機能に障害を残すもの
第14級 1. 一眼のまぶたの一部に欠損を残し又はまつげはげを残すもの
2. 三歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
3. 一耳の聴力が一メートル以上の距離では小声を解することができない程度になつたもの
4. 上肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
5. 下肢の露出面にてのひらの大きさの醜いあとを残すもの
6. 一手のおや指以外の手指の指骨の一部を失つたもの
7. 一手のおや指以外の手指の遠位指節間関節を屈伸することができなくなつたもの
8. 一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したもの
9. 局部に神経症状を残すもの

 

 

後遺障害に認定されると損害賠償金を請求できる

 

後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。

 

 

後遺障害慰謝料とは

労災事故で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。

 

 

後遺障害等級

後遺障害慰謝料

1級

2800万円

2級

2370万円

3級

1990万円

4級

1670万円

5級

1400万円

6級

1180万円

7級

1000万円

8級

830万円

9級

690万円

10級

550万円

11級

420万円

12級

290万円

13級

180万円

14級

110万円

 

 

後遺障害逸失利益とは

後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。

 

後遺障害逸失利益は、労災事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。

 

 

労災事故の後遺障害に認定される3つの条件

ケガや症状が業務と因果関係がある

ケガや症状の発生が業務に起因する

 

労災保険の後遺障害は、労災事故や業務によって生じた後遺症が対象です。このため、業務と症状に因果関係が無ければ後遺障害に認定されません。

 

ケガや症状の発生が業務遂行中である

 

症状と業務の因果関係を証明するためは、ケガや症状の発生が業務遂行中である必要があります。業務時間外に発症しても、業務との因果関係を証明できません。

 

 

症状が一貫して続いている

労災事故に遭ってから症状固定までの間に、同じ症状が続いていないケースでは、私病(労災事故とは関係の無い病気)と疑われる可能性があります。

 

たとえば、受傷してから1ヵ月ほどしてから肩の痛みが出現したケースでは、症状の一貫性が無いと判断されます。

 

また、雨が降った日だけ痛いなどの症状も、症状に一貫性が無いと判断されて後遺障害に認定されない可能性が高いです。

 

 

症状を医学的に証明できる

いくら労災事故直後から痛みなどの症状が一貫して続いていたとしても、レントゲン検査やMRI検査などの画像検査で、痛みの原因となる所見が無いケースは、後遺障害に認定されにくいです。

 

一方、画像所見だけでは片手落ちです。痛みの存在が客観的に分かる神経学的テスト(スパークリングテストやジャクソンテスト)が陰性のケースでは、後遺障害に認定されにくいです。この点は、交通事故と同じ考え方です。

 

 

<参考>

 

 

 

kneepain

 

 

【頻出傷病リスト】弊社コラムへのリンク集

 

労災事故ではさまざまな部位の外傷が発生する可能性があります。そして、後遺障害の認定基準は、労災保険と自賠責保険はほぼ一致しています。

 

後遺障害認定の対象となる代表的な傷病を抽出して、弊社の各傷病コラム記事へのリンクを張りました。実務で登場する傷病のほぼ全てを網羅しているので、参考にしていただければ幸いです。

 

 

傷病の総論

開放骨折
関節内骨折
偽関節、遷延癒合
骨挫傷
打撲
CRPS

 

 

部位別の頻出傷病

頭部外傷

 

高次脳機能障害
遷延性意識障害
脳挫傷
脳出血
外傷性くも膜下出血
びまん性軸索損傷
急性硬膜下血腫
慢性硬膜下血腫
外傷性てんかん
MTBI

 

 

顔面、眼、鼻、口の外傷

 

眼窩底骨折(眼窩吹き抜け骨折)
頬骨骨折
複視
耳鳴り・難聴
めまい
歯牙欠損
外貌醜状

 

 

頚椎の外傷

 

むちうち(頚椎捻挫)
むちうち(必要な検査)
むちうち(12級、14級)
むちうち(MRI)
むちうちのめまい
脊髄損傷
中心性脊髄損傷
後縦靭帯骨化症
頚椎骨折
頚椎椎間板ヘルニア
脳脊髄液減少症(低髄液圧症候群)

 

 

腰椎の外傷

 

腰椎捻挫
圧迫骨折
腰椎横突起骨折
腰椎椎間板ヘルニア

 

 

肩関節の外傷

 

腱板断裂
SLAP損傷(関節唇損傷)
鎖骨骨折
肩鎖関節脱臼
上腕骨近位端骨折
肩甲骨骨折

 

 

上腕の外傷

 

橈骨神経麻痺

 

 

肘関節の外傷

 

肘頭骨折
肘関節骨折
肘関節脱臼
肘部管症候群

 

 

手の外傷

 

腕神経叢損傷
橈骨神経麻痺
尺骨神経麻痺
胸郭出口症候群
手根管症候群
橈骨遠位端骨折
尺骨骨折
TFCC損傷
手や指の骨折(指節骨骨折、中手骨骨折、手根骨骨折)
舟状骨骨折
伸筋腱断裂

 

 

体幹の外傷

 

肋骨骨折
胸骨骨折

 

 

骨盤・股関節の外傷

 

骨盤骨折
股関節脱臼骨折
大腿骨骨頭骨折、大腿骨頚部骨折、大腿骨転子部骨折、大腿骨転子下骨折

 

 

大腿部の外傷

 

大腿骨骨幹部骨折

 

 

膝関節の外傷

 

大腿骨顆上骨折、大腿骨顆部骨折
脛骨高原骨折
膝蓋骨骨折
半月板損傷
前十字靭帯損傷(ACL損傷)
後十字靭帯損傷(PCL損傷)
膝内側側副靭帯損傷(MCL損傷)

 

 

下腿の外傷

 

脛骨骨折
腓骨神経麻痺

 

 

足の外傷

 

脛骨遠位端骨折
足関節脱臼骨折
足関節靱帯損傷
距骨骨折
踵骨骨折
中足骨骨折
リスフラン関節脱臼骨折
足趾骨折(足指骨折)
足指の伸筋腱断裂

 

 

内臓の外傷

 

内臓破裂(内臓損傷)

 

 

精神疾患

デグロービング損傷
線維筋痛症
非器質性精神障害
PTSD

 

 

【弁護士必見】腰痛が労災の後遺障害に認定されるポイント

腰痛の労災認定基準(厚生労働省)

厚生労働省は、腰痛の労災認定において、認定要件を下記のように定めています。

 

 

災害性の原因による腰痛

 

負傷などによる腰痛で、次の①、②の要件のどちらも満たすもの

  1. 腰の負傷またはその負傷の原因となった急激な力の作用が、仕事中の突発的な出来事によって生じたと明らかに認められること
  2. 腰に作用した力が腰痛を発症させ、または腰痛の既往症、基礎疾患を著しく悪化させたと医学的に認められること

 

災害性の原因によらない腰痛

 

突発的な出来事が原因ではなく、重量物を取り扱う仕事など腰に角の負担のかかる仕事に従事する労働者に発症した腰痛で、作業の状態や作業期間などからみて、仕事が原因で発症したと認められるもの

 

 

LBP

 

 

災害性の原因による腰痛の具体例

「災害性の原因による腰痛」とは、腰に受けた外傷によって生じる腰痛のほか、外傷はないが、突発的で急激な強い力が原因となって筋肉等(筋、筋膜、靭帯など)が損傷して生じた腰痛です。

 

  • 重量物の運搬作業中に転倒した場合
  • 重量物を2人で担いで運搬する際に、そのうち1人が滑って肩から荷をを外した場合のように、突然の出来事により急激な強い力が腰にかかって発生した腰痛
  • 持ち上げる重量物が予想に反して重かったり、逆に軽かったりする場合や、不適当な姿勢で重量物を持ち上げた場合のように突発的で急激な強い力が腰に異常に作用したことにより生じた腰痛

 

 

災害性の原因によらない腰痛の具体例

筋肉等の疲労を原因とした腰痛

 

次のような業務に、約3ヵ月以上従事したことによる筋肉等の疲労を原因とした腰痛は、労災補償の対象となります。

 

  • 20㎏以上の重量物または重量の異なる物品を、繰り返し中腰の姿勢で取り扱う業務(例:港湾荷役など)
  • 毎日、数時間程度、腰に負担のかかる極めて不自然な姿勢を保持して行う業務(例:配電工など)
  • 長時間座ったまま同一の姿勢で行う業務(例:長距離トラックの運転業務など)
  • 腰に著しく大きな振動を受ける作業を継続して行う業務(例:車両系建設用機械の運転業務など)

 

 

骨の変化を原因とした腰痛

 

以下のような業務に、約10年間以上にわたって従事し、骨の変化を原因とした腰痛を発症した場合、労災補償の対象となります。

 

  • 労働時間の約1/3以上に及び、30㎏以上の物品を取り扱う業務
  • 労働時間半分以上に及んで、約20㎏以上の物品を取り扱う業務

 

 

以上が、厚生労働省が具体的に挙げている腰痛の労災認定基準です。ひと言で腰痛と言っても、労災保険では詳細に後遺障害の認定基準が定められています。

 

 

整形外科医師から見た実臨床での問題点

整形外科外来の中でも、腰痛の患者さんは大きなウェイトを占めています。そして、仕事がきっかけに腰痛を発症したと訴える人が多いです。

 

整形外科医師は、交通事故や高所からの転落などによって受傷した脊椎圧迫骨折や外傷性腰椎椎間板ヘルニアの患者さんを日常的に診療しています。このような患者さんは、事故と傷害の因果関係が明らかです。

 

一方、厚生労働省が例示したような腰痛患者さんは、臨床医の立場では因果関係が不明瞭だと感じやすいです。何故なら、患者さんから伝えられた受傷機転の真偽を確認する術が無いからです。

 

また、厚生労働省による腰痛の労災認定基準を知っている整形外科医師は、ほとんど存在しないものと思われます。

 

このような理由で、患者さんから腰痛を労災申請すると言われると、本当に労災事故に起因する腰痛なのかと警戒する医師が多いのが実情です。

 

腰椎椎間板にHIZなどの所見があれば、主治医としても労災事故との因果関係を受け入れやすいです。しかし、多くの事案では、このような急性期所見を認めないのが実情です。

 

 

<参考>
【医師が解説】腰椎捻挫の後遺症では椎間板内の高信号領域(HIZ)に注目

 

 

腰痛の労災認定は、争いの起こりやすい傷病です。お困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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まとめ

 

労災事故で後遺障害に認定されると、労災保険から障害補償給付を受けることができます。しかし、傷害慰謝料、後遺傷害慰謝料、逸失利益に関しては、労災保険からは補償されません。

 

これらの慰謝料は、会社などの使用者に対して請求を行う必要があります。請求を行う際には、会社に対して使用者としての責任を立証する必要があります。

 

労災事故の後遺障害に認定されるためには、下記の3つの条件を満たす必要があります。

 

  • ケガや症状が業務と因果関係がある
  • 症状が一貫して続いている
  • 症状を医学的に証明できる

 

 

これらの3条件を同時に満たすとともに、労災事故で発生するさまざまな外傷に応じた後遺障害認定のポイントを知っておく必要があります。

 

労災事故で負った後遺症が、後遺障害に認定されて補償を得るためには、戦略的な対策が必要なのです。

 

 

 

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