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【医師が解説】手や足のしびれは労災の後遺障害に認定されるのか

仕事中の事故が原因となって、手や足のしびれが後遺症として残ることがあります。仕事中に発症したのだから、手や足のしびれも後遺障害に認定されると思いがちです。

 

しかし、手や足のしびれは労災認定されにくいと言われています。労働基準監督署に申請すれば、自動的に後遺障害が認定されるわけではないのです。

 

本記事は、手や足のしびれが労災保険で後遺障害認定されるヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/4/19

 

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手や足のしびれは椎間板ヘルニアの症状

手や足のしびれは、手足に行く神経が首や腰で圧迫されて発症します。神経を圧迫する原因として、椎間板ヘルニアが最も有名です。

 

 

<参考>

 

 

elbow pain

 

 

手足のしびれの原因となる椎間板ヘルニアの検査所見

 

カルテや診断書に記載されることの多い検査所見について説明します。

 

 

スパーリングテスト

スパーリングテスト(Spurling test)とは、頚椎から手に向かって走行している神経の障害を調べる神経学的テストです。

 

患者さんの頭部を痛みやしびれのある側に傾けて、そのまま後ろに反らせます。この状態で頚部から上肢にかけて放散痛が発生すると陽性です。

 

<参考>
【医師が解説】スパーリングテストとジャクソンテストは後遺症の要

 

 

ジャクソンテスト

ジャクソンテスト(Jackson test)もスパーリングテストと同様に、頚椎から手に向かって走行している神経の障害を調べる神経学的検査です。

 

患者さんの頭部をそのまま後ろに反らせます。この状態で頚部から上肢にかけて放散痛が発生すると陽性です。スパーリングテストとの異なる点は、患側に頭部を傾けない点です。

 

<参考>
【医師が解説】スパーリングテストとジャクソンテストは後遺症の要

 

 

SLRテスト(ラセーグ徴候と同義)

ベッドの上に患者さんに仰向けで横になってもらい、膝を伸ばした状態で下肢を持ち上げる検査です。腰椎椎間板ヘルニアで腰神経の圧迫があると、下肢を持ち上げた際に強い下肢痛を生じ、陽性と判断されます。比較的客観性の高い検査です。

 

<参考>
【医師が解説】SLRとFNSテストはヘルニア後遺症認定のポイント

 

 

FNSテスト(大腿神経伸展テスト)

FNSテストとは、L2/3椎間板ヘルニアやL3/4椎間板ヘルニアで特異的に陽性になる検査になります。太ももの前面を走行するL3、L4神経根由来の大腿神経の障害を調べる神経学的テストです。

 

FNSテストでは、患者さんにうつ伏せになってもらい、膝を曲げていきます。太ももの前に痛みやしびれが発生すると陽性です。

 

<参考>
【医師が解説】SLRとFNSテストはヘルニア後遺症認定のポイント

 

 

徒手筋力テスト(MMT)

患者さんの筋力を0から5までの6段階で評価するものです。5が正常で、0は筋肉の収縮すら確認できないという評価になります。

 

頚椎椎間板ヘルニアや腰椎椎間板ヘルニアで腰神経が圧迫されると、神経を伝わって筋肉の収縮をおこすことができなくなります。その結果、筋肉が麻痺したり、筋萎縮(筋肉がやせて細くなる)を生じます。

 

また、知覚障害の範囲を調べることで、腰椎のどの神経が障害されているかを予測することが可能です。

 

例えばL5神経(Lは腰椎)であれば、下腿の外側から母趾にかけて、S1神経(Sは仙骨)であれば、足底といった感じです。

 

 

<参考>
【医師が解説】徒手筋力検査は後遺症12級認定のポイント

 

 

深部腱反射

ハンマーで患者さんの腱を叩く検査です。患者さんの意思に関係なく反応が現れる為、客観的な検査結果と解釈されます。

 

椎間板ヘルニアで圧迫される神経は、末梢神経に分類されます。末梢神経が圧迫されると、上肢や下肢の深部腱反射は低下します。

 

 

<参考>
【医師が解説】深部腱反射は12級の後遺症認定のポイント|交通事故

 

 

contusion

 

 

手足のしびれで考えられる後遺障害等級と認定基準

12級13号:局部に頑固な神経症状を残すもの

局部とは手足を指します。神経症状は手足のしびれだけでなく、首や腰の痛み、手足の痛みも含みます。12級13号認定のためには、まずレントゲンやMRIで客観的(他覚的)な異常所見があることが必須条件になります。

 

将来においても、回復は見込めないと医師が判断した状態であること(症状固定)が前提になります。後遺障害診断書には、症状の常時性が必要で、天気が悪いときに痛いなどの症状では後遺障害に認定されません。

 

 

14級9号:局部に神経症状を残すもの

14級9号との大きな違いは、障害の存在を明確に証明できない点です。レントゲンやMRIで認められる異常所見の程度が12級13号ほど明らかではない事案が多いです。

 

 

後遺障害に認定されると損害賠償金を請求できる

 

労災保険で後遺障害に認定されると、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益を請求できます。

 

 

後遺障害慰謝料とは

労災事故で後遺障害が残ってしまった精神的苦痛に対する補償金です。後遺障害慰謝料は、下の表のように後遺障害等級によって異なります。

 

 

後遺障害等級

後遺障害慰謝料

1級

2800万円

2級

2370万円

3級

1990万円

4級

1670万円

5級

1400万円

6級

1180万円

7級

1000万円

8級

830万円

9級

690万円

10級

550万円

11級

420万円

12級

290万円

13級

180万円

14級

110万円

 

 

後遺障害逸失利益とは

後遺障害が残ると、労働能力が低下してしまいます。労働能力が低下したために失うであろう収入の不足分に対する補償金です。

 

後遺障害逸失利益は、労災事故被害者の年収、年齢をベースにして、後遺障害等級に応じた労働能力喪失率と労働能力喪失期間で決まります。

 

 

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手足のしびれが労災認定される3つの条件

手足のしびれが業務と因果関係がある

手足のしびれの発生が業務に起因する

 

労災保険の後遺障害は、労災事故や業務によって生じた後遺症が対象です。このため、業務と手足のしびれに因果関係が無ければ後遺障害に認定されません。

 

手足のしびれの発生が業務遂行中である

 

手足のしびれと業務の因果関係を証明するためは、症状の発生が業務遂行中である必要があります。業務時間外に発症しても、業務との因果関係を証明できません。

 

 

手足のしびれが一貫して続いている

労災事故に遭ってから症状固定までの間に、手足のしびれが続いていないケースでは、私病(労災事故とは関係の無い病気)と疑われる可能性があります。

 

また、雨が降った日だけ手足がしびれるなどの症状も、症状に一貫性が無いと判断されて後遺障害に認定されない可能性が高いです。

 

 

手足のしびれを医学的に証明できる

いくら労災事故直後から手足のしびれが一貫して続いていたとしても、レントゲン検査やMRI検査などの画像検査で、手足のしびれの原因となる所見が無いケースは、後遺障害に認定されにくいです。

 

一方、画像所見だけでは片手落ちです。手のしびれではスパーリングテストやジャクソンテスト、足のしびれではSLRテストやFNSテストなどの神経学的テストが陰性のケースでは、後遺障害に認定されにくいです。

 

 

<参考>
【医師が解説】腰痛や椎間板ヘルニアは労災認定されるのか|労災事故

 

 

 

nikkei medical

 

 

まとめ

 

手足のしびれは、労災事故の後遺障害に認定されにくいと言われています。労災認定されるためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。

 

  • 手足のしびれが業務と因果関係がある
  • 手足のしびれが一貫して続いている
  • 手足のしびれを医学的に証明できる

 

 

手足のしびれと業務との因果関係の証明には、画像所見が決め手になるケースもあります。

 

手足のしびれの労災認定でお困りの事案があれば、こちらからお問い合わせください。

 

 

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