最近の終活ブームで、遺言書を作成する人が増えています。しかし、十分な遺言能力が無ければ、せっかく作成した遺言書が無効になるばかりか、無用なトラブルを引き起こす原因となります。
本記事は、相続における遺言能力の意味や、遺言能力有無の判断基準を知るヒントとなるように作成しています。
最終更新日:2025/7/13
Table of Contents
遺言能力とは
遺言能力とは、自分が作成した遺言の内容を理解して、遺言が周囲の人にどのような影響を及ぼすのかを把握できる能力です。
遺言を作成する時点で、遺言能力が必要です。もし十分な遺言能力が無ければ、遺言は無効になります。
<参考>
【地主と家主】遺言や家族信託ができなくなる状態とは|遺言能力鑑定
遺言能力の判断基準は4つある
遺言作成には、遺言能力が必須です。それでは遺言能力の有無は、どのようにして判断されるのでしょうか。
遺言能力があるのかの判断基準には「総合的に見て、遺言の時点で遺言事項を判断する能力があったか否かによって判断すべき(東京地判平成16年7月7日)」という判例があります。
「総合的に見て」とは抽象的な表現ですが、具体的には以下の4つの判断基準で、遺言者の遺言能力有無を判断します。
- 精神医学的な評価
- 遺言内容
- 遺言者と相続人との人間関係
- 遺言と同じ内容の別資料
精神医学的な評価
遺言を作成する人の年齢や健康状態は、遺言能力に大きな影響を及ぼします。具体的には、高齢であるほど、健康でないほど、遺言能力は低下します。
もちろん高齢者だからと言って、必ずしも遺言能力が低下しているわけではありません。個人差が大きいので、年齢だけで遺言能力有無は判断できないのです。
一方、癌や肝硬変などを患ったり、大腿骨骨折などで寝たきりになると、体力を消耗してしまい遺言能力が低下します。
遺言内容
遺言の内容が難しすぎるケースでは、遺言者が本当に遺言を作成したのかが疑われます。
遺言者と相続人との人間関係
例えば、遺言者(遺言を作成する人)にとって、関係性が深くない知人に財産を贈与する遺言は、いかにも不自然ですね。
このようなケースでは、遺言者に遺言能力が無いかもしれません。客観的に見て不合理な遺言は、遺言者に遺言能力は無かったと判断されやすいです。
遺言と同じ内容の別資料
遺言以外にも、日記などで同じ内容が記載されていれば、遺言能力が充分だった可能性が高いと判断されます。
精神医学的な評価の実際
長谷川式認知症スケール
精神医学的な評価として、最も一般的なのは長谷川式認知症スケールという認知機能テストです。
長谷川式認知症スケールは、簡単に実施できるため、日本中の医療機関や介護施設で広く実施されています。
長谷川式認知症スケール以外では、FASTや MMSEなどの検査が、認知症の認知機能の判定に用いられています。
<参考>
【医師が解説】長谷川式認知症スケールの解釈|遺言能力鑑定
【医師が解説】認知症ステージ分類のFASTとは|遺言能力鑑定
【医師が解説】MMSEの認知症でのカットオフ値は?|遺言能力鑑定
【医師が解説】MMSEと長谷川式認知症スケールの違い|遺言能力鑑定
遺言能力の判断基準は長谷川式認知症スケール10点
長谷川式認知症スケールが10点以下では、高度な認知症とみなされます。このため、遺言者の長谷川式認知症スケールが10点以下だと、遺言が無効と判断されやすいです。
一方、遺言能力は、長谷川式認知症スケールなどの精神医学的な評価だけで判断されるわけではありません。
遺言内容、遺言者と相続人との人間関係、遺言と同じ内容の別資料などを総合的に見て判断されます。
遺言の有効性や無効を証明する手段
遺言能力を証明する資料を収集しよう
遺言能力の有無は、遺言時の各種資料から判断されます。以下の資料を収集することが望ましいでしょう。
- 診断書
- 遺言の頃に遺言者が記載した文書
- 遺言の頃に撮影した遺言者の動画
- 遺言の頃の遺言者に関する日記
これらの資料によって、遺言者の遺言能力の有無を、客観的に証明できる可能性があります。
遺言能力鑑定は訴訟の有力な武器
相続争いになると、裁判になるケースも珍しくありません。訴訟では遺言能力の客観的なエビデンス提示が必要になります。
遺言者の遺言能力の有無を証明する有力な資料の1つに、遺言能力鑑定があります。遺言能力鑑定は、認知症専門医が各種資料を精査して、遺言書を書いた人の遺言能力の有無を鑑定します。
遺言能力鑑定は費用がかかりますが、訴訟の際の有力な資料となります。また、生前の遺言作成時に取得しておくと、遺言能力が存在した証明になるでしょう。
弊社では、脳神経内科および脳神経外科の認知症専門医が、全国から依頼される遺言能力鑑定を担当しています。常時10例程度の事案を同時進行している圧倒的実績による品質を御確認ください。
<参考>
遺言能力の判断基準でよくある質問
遺言能力を診断してもらうには?
遺言能力の診断には、主治医による診断書や認知機能検査(長谷川式認知症スケールやMMSEなど)がよく用いられます。
特に遺言書作成時の判断能力が争点となる場合、医師の診断やカルテ、介護記録などの客観的資料が重要です。
遺言書作成時に医師の立会いや診断を受けておくと、後々のトラブル防止に役立ちます。また、生前遺言能力鑑定も有効でしょう。
<参考>
【生前遺言能力鑑定】認知症になる前に遺言するメリットとポイント
要介護3の人は遺言能力はありますか?
要介護3であっても、身体機能の低下のみであれば遺言能力は否定されません。重要なのは「遺言事項を理解し、自分の意思で判断できるか」という意思能力の有無です。
認知症であっても、遺言作成時に十分な判断能力があれば遺言は有効とされます。逆に、認知機能が著しく低下していれば、無効になる可能性があります。
遺言能力はいくつからですか?
遺言能力は民法で「満15歳以上」であれば認められています。年齢以外にも、遺言時に意思能力を有していることが必要です。
高齢や認知症であっても、遺言内容を理解し判断できる状態であれば遺言能力があるとされます。
成年被後見人の遺言能力は?
成年被後見人でも、事理弁識能力(物事を理解し判断する能力)が一時的に回復した場合には遺言書を作成できます。
その際は、医師1人以上の立会いが必要であり、その医師が遺言書に立会いの旨および遺言者に判断能力があったことを付記して、署名押印しなければなりません。
ただし、実際にはこの要件を満たすのは非常に難しく、慎重な対応が求められます。
まとめ
有効な遺言を作成するには、十分な遺言能力が必須です。遺言能力の判断基準は以下の4つです。
- 精神医学的な評価
- 遺言内容
- 遺言者と相続人との人間関係
- 遺言と同じ内容の別資料
精神医学的な評価の1つに、長谷川式認知症スケールという認知機能検査があります。10点以下の方は、高度な認知症とみなされます。
したがって長谷川式認知症スケールが10点以下のケースでは、遺言能力は無いと判断されやすいです。
遺言能力の有無を客観的に主張するためには、遺言能力鑑定が有効な手段となり得ます。お困りの事案があれば、お問合せフォームからご連絡下さい。
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