認知症かもしれない...。思い切って病院やクリニックを受診すると、頭部のMRIやCT検査を実施されることが多いです。
しかし、MRIやCTでは異常なしと言われるケースも珍しくありません。MRIやCTで異常なければ認知症の心配はないのでしょうか。
本記事は、認知症の人がMRIやCTで異常なしと言われる可能性があるのかを知るヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/9/28
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認知症のMRIやCTで異常なしはある!
認知症を疑って頭のMRIやCTを撮像しても、はっきりとした異常所見が無いケースは珍しくありません。むしろ、MRIやCTで認知症の原因が分かることの方が少ないです。
もちろん、MRIやCTが完全に正常と言うわけではなく、軽度の脳萎縮など年齢相応の画像所見があることは多いです。
しかし、軽度の脳萎縮は正常の人でも認められるため、それだけで認知症と診断されるわけではありません。
<参考>
【医師が解説】認知症の画像所見とは?|遺言能力鑑定
【医師が解説】認知症の検査とは?種類、価格、評価法|遺言能力鑑定
アルツハイマー型認知症には3段階ある
アルツハイマー型認知症とは
認知症を引き起こす病気はたくさんありますが、その中で最も多いのはアルツハイマー型認知症です。
「認知症=アルツハイマー」というイメージがあるほどアルツハイマー型認知症は有名ですが、あくまでも認知症の1つです。
アルツハイマー型認知症は、脳細胞にアミロイドβという物質がたまることで発症します。
① 発症前アルツハイマー型認知症
この時期には、認知症の症状は何もありません。しかし、脳細胞にはアミロイドβという物質がたまり始め、少しずつ脳細胞が障害されていきます。
② 軽度認知障害(MCI)
軽度認知障害(MCI)とは、認知機能低下の一種で、認知症の前段階に位置するとされています。
しかし、物の置き忘れやしまい忘れなどの認知障害はあるものの、日常生活への支障がなく社会生活や仕事はできます。
③ アルツハイマー病
軽度認知障害(MCI)の症状が悪化すると、アルツハイマー型認知症を発症します。
脳細胞にアミロイドβがたまり始めてから認知症を発症するまでの期間は約20~30年と言われています。
認知症で認められやすいMRIやCTの異常所見
認知症でのMRIの異常所見
MRIでは、脳萎縮などの形態異常を検出できます。認知症では、海馬を含む側頭葉内側の脳萎縮と、脳萎縮を反映した側脳室の拡大が特徴的です。
一方、後頭葉と小脳には脳萎縮がないことが多いです。MRI検査では、血管性認知症の原因となる陳旧性脳梗塞なども検出できます。以下のMRI検査では、側脳室の拡大を認めます。
認知症でのCTの異常所見
認知症では、形態学的変化が現れやすいです。最もよく認められる画像所見は、前頭葉、側頭葉、頭頂葉の脳萎縮です。
脳萎縮を反映して、脳室やシルビウス裂の拡大が特徴的です。以下のCT検査では、両側のシルビウス裂が拡大しています(赤矢印)。
<参考>
【医師が解説】認知症の画像所見とは?|遺言能力鑑定
MRIやCTで異常のある認知症
認知症の原因として多いアルツハイマー型認知症の初期には、MRIやCTで特徴的な異常所見を認めません。一方、以下の傷病に関してはMRIやCTで異常所見があります。
- 血管性認知症
- 特発性正常圧水頭症
- 慢性硬膜下血腫
- 脳腫瘍
上記の疾患では、できるだけ早い段階で画像検査で診断して、アルツハイマー型認知症などの疾患とは異なる治療方針を決定する必要があります。
認知症で遺言能力が争いになると?
認知症になると遺言能力を喪失するケースが多いです。このため、相続時に親族間での争いに発展することもあります。
裁判所が遺言能力の有無を判定する場合、裁判官は以下の資料で遺言能力の有無を判断します。
- 診断書
- 遺言時の頃に親が記載した文書
- 遺言時の頃に撮影した親の動画
- 遺言時の頃の親に関する日記
- 遺言能力鑑定書
これらの資料の中でも、認知症専門医が作成する遺言能力鑑定書は信用力が高いため、裁判官の判断に大きな影響力を及ぼします。
<参考>
【医師が解説】相続で認知症の程度はどこまで有効?|遺言能力鑑定
【医師が解説】認知症の親の遺言書は有効か?|遺言能力鑑定
遺言能力鑑定
遺言能力鑑定に必要な資料
認知症になった親の没後であっても、以下のような資料があれば遺言能力鑑定は対応可能です。
- 診断書(介護保険の主治医意見書を含む)
- 診療録(カルテ)
- 介護保険の認定調査票
- 画像検査
- 各種の検査結果
- 看護記録
- 介護記録
すべて揃っていることが望ましいですが、足りない資料があっても遺言能力鑑定できる可能性はあります。
これらの資料の受け渡しは、オンラインストレージもしくは郵送となります。安全性や利便性からオンラインストレージの利用を推奨しています。
ご依頼いただいた際に、オンラインストレージの使用方法を簡単にご説明させていただきます。
遺言能力鑑定を作成する流れ
事前審査が必須
まず、事前審査(生前:36,000円+税、没後:95,000円+税)を実施した上で、本鑑定に進むか否かを検討していただきます。
- 弊社による簡易な資料確認結果のご連絡、および事前審査に関する見積書の送付
- お見積りにご承諾いただいた段階で、正式に事前審査を開始
- 事前審査が完了後、ご請求書の送付
- ご入金確認後、事前審査結果のご提出(電子データ)
事前審査を必須とする理由は、おおまかな遺言能力の有無を確認したうえで本鑑定に進む方が、クライアントの利益に適うからです。
本鑑定(遺言能力鑑定)
事前審査の結果を踏まえて遺言能力鑑定(本鑑定)に進む場合には、以下の流れになります。
- 弊社より見積書を送付
- お見積りをご承諾いただいた段階で、正式に遺言能力鑑定を開始
- 遺言能力鑑定案完成後、電子データにてご確認いただき、修正点があれば調整
- 遺言能力鑑定の最終稿が完成した段階で、ご請求書の送付
- ご入金確認後、レターパックにて医師の署名・捺印入り原本の発送
遺言能力鑑定の作成にかかる期間
遺言能力鑑定を作成する期間は、お見積りをご了承いただいた時点から初稿提出まで約4週間です。
遺言能力鑑定の料金
生前鑑定
事前審査:36,000円+税
本鑑定 :400,000円+税
没後鑑定
事前審査:95,000円+税
本鑑定 :350,000円+税
- 本鑑定とは別途で、事前審査(生前:36,000円+税、没後:95,000円+税)が必須です。
- 本鑑定に進まない場合にも、事前審査費用の返金は致しかねます。
遺言能力鑑定の実例
【脳神経内科】公正証書遺言作成時の遺言能力を鑑定
- 80歳台前半
- 男性
平成29年に公正証書遺言書を作成しました。しかし、当時すでに遺言者はアルツハイマー型認知症が進行しており、神経内科で治療中でした。
相続人Cは、公正証書遺言の有効性について提訴して一審勝訴、控訴審係属中に弊社に遺言能力鑑定依頼となりました。
脳神経内科医師が医証を精査したところ、頭部CTでは著明な脳萎縮を認め、脳血流シンチグラフィーでは左頭頂葉と両側後方帯状回に脳血流低下を認めました。
診療録や画像検査から、公正証書遺言の作成時に充分な遺言能力を有していたとは到底言えないことが判明しました。
公正証書遺言を作成した事実は、被相続人が遺言能力を有している証拠にはならないことの一例です。
【消化器内科】癌末期の肝性昏睡患者の遺言能力を鑑定
- 60歳台前半
- 男性
平成27年に下行結腸癌、空腸浸潤に対して左半結腸切除術、空腸合併切除、リンパ節郭清を施行しました。多発性の肝転移を認めたため根治は困難とのことで在宅医療を行っていました。
しかし病状は少しずつ増悪して、食事摂取や体動が困難となり、平成28年に緩和治療目的で入院しました。多量の鎮痛剤で癌性疼痛のコントロールを行いましたが、徐々に全身状態は衰弱しました。
永眠される3日前に、疎遠だった兄弟に財産を贈与するという内容の自筆証書遺言が作成されました。遺言書の内容を不信に思った内縁の妻側の弁護士から、遺言能力鑑定の依頼を受けました。
消化器内科医師が診療録や画像検査を精査したところ、遺言書の作成時に充分な遺言能力を有していたとは到底言えないことが判明しました。
まとめ
認知症のMRIやCTで異常なしと言われることは珍しくありません。むしろ、初期の認知症ではMRIやCTで認知症の原因が分かるケースは少ないです。
一方、以下の傷病に関してはMRIやCTで異常所見があります。できるだけ早い段階で診断して、治療方針を決定する必要があります。
- 血管性認知症
- 特発性正常圧水頭症
- 慢性硬膜下血腫
- 脳腫瘍
遺言能力の有無を客観的に主張するためには、遺言能力鑑定が有効な手段となり得ます。お困りの事案があれば、お問合せフォームからご連絡下さい。
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