遺言書は、故人の意思を反映させる重要な法的文書ですが、その有効性が争われるケースも少なくありません。
「この遺言書は本当に有効なのか?」と疑問を抱くことは決して珍しくなく、実際に裁判で無効と判断される事例も存在します。
では、遺言書の有効性は誰が判断して、どのような基準で決められるのでしょうか?
本記事では、遺言書の有効・無効を判断する権限を持つ機関や、法律上の基準について詳しく解説しています。
遺言書に関するトラブルを未然に防ぐための知識として、ぜひ参考にしてください。
最終更新日: 2025/3/8
Table of Contents
遺言書の有効性は最終的に裁判官が判断する
結論から申し上げると、遺言書の有効性が争いになった際には、最終的に裁判所が判断します。
遺言書の形式的要件や遺言者の意思能力に疑義が生じたら、相続人や利害関係者は遺言無効確認訴訟を提起して、裁判官がその有効性を審理します。
裁判では、遺言者の精神状態や遺言内容の複雑性、作成時の状況などが総合的に検討されます。
例えば、遺言者が認知症であっても、遺言作成時に判断能力が認められれば、遺言は有効とされるケースがあります。
このように、遺言書の有効性は個別の事情を踏まえ、裁判所が最終的に判断することとなります。
遺言書の有効性の判断基準
自筆証書遺言の形式的要件をすべて満たしているか
自筆証書遺言が有効と認められるためには、民法第968条に定められた形式的要件を満たす必要があります。
具体的には、遺言者が全文、日付、氏名を自書し、押印することが求められます。これらの要件を欠いた場合、遺言書は無効と判断される可能性があります。
<参考>
法的に有効な遺言書の要件は?無効になるケースも解説|遺言能力鑑定
遺言能力(意思能力)はあるのか
遺言書作成時に、遺言者が遺言内容を理解して判断できる能力、すなわち遺言能力が必要です。認知症などで判断能力が低下していると、遺言能力が否定される可能性があります。
ただし、認知症であっても、遺言作成時に判断能力が保たれていれば、遺言は有効とされるケースがあります。
<参考>
相続で認知症の程度はどこまで有効?|遺言能力鑑定の有用性
内容は明瞭か
遺言書の内容が不明瞭で解釈が困難だと、その部分が無効とされる可能性があります。具体的な財産の分配方法や受遺者を明確に記載することが重要です。
偽造されていないか
遺言書が第三者によって偽造・変造されたら、当然ながら無効となります。そのため、遺言書の保管方法や作成時の証人の存在が重要です。
内容が公序良俗に違反していないか
遺言書の内容が公序良俗に反すると、その部分または全体が無効とされる可能性があります。例えば、法的に許されない条件を付すことなどが該当します。
錯誤、詐欺、強迫によって作成されていないか
遺言書が錯誤、詐欺、強迫など不正な手段によって作成されたら、その遺言は無効です。遺言者の真意に基づかない遺言は法的保護を受けません。
15歳以上の人が作成しているか
民法第961条により、遺言を作成できるのは満15歳以上の者と定められています。したがって、14歳以下の者が作成した遺言書は無効となります。
遺言書の有効性に疑いのある際の対処法
遺言人間でよく話し合う
まず、遺言書の内容や有効性に疑問があれば、関係者間で十分に話し合うことが重要です。
相続人同士で意見交換を行い、遺言書の内容や作成状況について理解を深めることで、誤解や不信感を解消して、円満な解決を図ることが期待できます。
遺言無効確認調停
話し合いで解決が難しいケースでは、家庭裁判所に遺言無効確認調停を申し立てることができます。訴訟よりも柔軟で迅速な解決が期待できます。
調停は、裁判所が関与する話し合いの場であり、中立的な立場の調停委員が双方の意見を調整して、合意形成をサポートします。
遺言無効確認訴訟
調停でも解決に至らないと、遺言無効確認訴訟の提起が検討されます。遺言無効確認訴訟は、遺言書の無効を確認するための裁判手続きであり、裁判所が遺言の有効性を法的に判断します。
遺言無効確認訴訟では、遺言者の遺言能力の有無や、遺言書の形式的要件の充足性などが審理されます。
遺言能力鑑定という選択肢
遺言者の意思能力に疑義があるケースでは、遺言能力鑑定を行うことも選択肢に入ります。
遺言能力鑑定は、遺言作成時の遺言者の精神状態や判断能力を認知症専門医が評価するもので、遺言の有効性を判断する重要な資料です。
遺言書作成時における遺言能力の有無が争点になっている事案では、当方の主張を補強する有力な証拠となる可能性があります。
<参考>
【遺言能力鑑定】意思能力の有無を専門医が証明|相続争い
遺言書が有効か無効かは誰が判断するかでよくある質問
遺言書を勝手に開封したら無効になる?
遺言書を家庭裁判所の検認手続き前に勝手に開封すると、5万円以下の過料が科される可能性があります。
しかし、これによって遺言書自体が無効になるわけではありません。検認前に開封してしまった場合でも、速やかに家庭裁判所に相談して、指示に従って手続きを進めることが重要です。
遺言に時効はある?
遺言の内容を実現するための請求権には、消滅時効が適用されます。例えば、受遺者が遺贈の履行を請求する権利は、一般的に15年の消滅時効期間が適用されます。
ただし、具体的な時効の起算点や期間は、遺言の内容や状況によって異なる場合があります。そのため、詳細な状況に応じて専門家に相談することが望ましいです。
まとめ
遺言書の有効性は、最終的に裁判官が判断します。遺言の形式や内容、遺言者の意思能力に問題があれば、相続人が訴訟を起こして、裁判で審理されます。
遺言が認められるには、法律で定められた要件を満たして、遺言者が十分な遺言能力を持っている必要があります。
偽造や詐欺、強迫による遺言は無効となります。遺言に疑問があるときは、家族で話し合い、必要なら調停や訴訟、専門家の鑑定を活用することが重要です。
遺言書作成時における遺言能力の有無で争いの事案では、認知症専門医による遺言能力鑑定が有用かもしれません。お困りの事案があれば、お問合せフォームから気軽にご連絡下さい。
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