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2024.3.27

遺言能力鑑定

【医師が解説】認知症の人が書いた遺言書は有効か?

親が認知症になってしまうと、相続時に親族間の争いが発生する可能性があります。超高齢化社会の到来で、認知症は他人事ではなくなりました。親が認知症になってしまい困っている人も多いことでしょう。

 

認知症の人が書いた遺言書は有効か? 親の認知症がどの程度までなら遺言書は有効か? 悩みは尽きないですね。

 

本記事は、どの程度の認知症の人が書いた遺言書なら有効なのかを知るヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/3/27

 

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認知症は記憶力や判断力が低下する病気

 

認知症は、加齢や脳血管障害などが原因となって、脳の細胞が損傷してしまい記憶力や判断力(認知機能)が低下する病気です。

 

高齢者ほど認知症を患いやすいので、高齢化社会が進展している日本では認知症患者さんの数が増加しています。

 

認知症の症状が進行すると記憶力や判断力が低下するため、日常生活に悪影響を及ぼします。

 

 

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認知症の主な原因

さまざまな原因で認知症が発症しますが、特に多いのはアルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症の3つです。

 

 

アルツハイマー型認知症

 

認知症を発症する人の中で最も数が多いのは、アルツハイマー型認知症です。認知症=アルツハイマー病というイメージがあるほど、メジャーなタイプの認知症です。

 

アルツハイマー型認知症では、脳細胞にアミロイドβという物質がたまることで発症します。

 

 

血管性認知症

 

認知症の中でアルツハイマー型認知症に次いで多いのは、血管性認知症です。脳梗塞や脳出血などの脳卒中は、半身麻痺を伴うだけではなく、血管性認知症も合併しやすいです。

 

 

レビー小体型認知症

 

アルツハイマー型認知症や血管性認知症ほど多くありませんが、レビー小体型認知症は特徴的な認知症です。レビー小体型認知症は、脳細胞にレビー小体という物質がたまって発症します。

 

レビー小体型認知症は、認知症の症状だけではなく、歩き方がぎこちなくなって転倒しやすいのが特徴です。

 

 

認知症になりやすいのはどんな人?

認知症は加齢によって発症しやすくなりますが、生活習慣病が発症の要因となります。具体的には、高脂血症、糖尿病、高血圧の人は認知症を発症しやすいです。

 

肥満の人は、高脂血症、糖尿病、高血圧になりやすく、これらの傷病を合併した状態をメタボリックシンドローム(メタボ)と呼びます。メタボな人は、認知症を発症するリスクが3倍以上になります。

 

 

<参考>
【地主と家主】認知症はどんな病気?|遺言能力鑑定

 

 

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認知症は物忘れではない!

認知症といえば物忘れをイメージしがちですが、実際には大きく異なります。通常の物忘れとは次元の異なる記憶障害を呈するのが認知症です。

 

例えば、朝食で食べたメニューを忘れるのは物忘れですが、朝食を食べたという事実そのものを忘れるのが認知症なのです。

 

 

認知症の人が書いた遺言書は有効なのか?

遺言能力が無ければ遺言書は無効

認知症の人が書いた遺言書は、自動的に無効になるわけではありません。遺言書の有効性は、遺言書を書いた人の意思能力や遺言能力で判断されます。

 

意思能力とは、権利、義務、結果を総合的に判断して、有効に実行できる能力です。例えば、生命保険の各種プランを適切に判断する能力です。

 

一方、遺言書を書くには、普段の生活で使っている意思能力よりも、更に高いレベルの能力が必要です。遺言書を書くことができるレベルの能力を遺言能力と言います。

 

実務上は、認知症の人が書いた遺言書が有効か否かは、その人の遺言能力の有無で判断されます。

 

 

認知症の人が書いた遺言書の有効性を判断するのは裁判官

認知症になった人が書いた遺言書は有効なのかを争う訴訟では、裁判官は遺言書が書かれた時点の状況を精査して、被相続人(遺言者)に遺言能力があったのかを判断します。

 

 

遺言能力の判断基準とは

認知症を発症した人に遺言能力があるのかの判断基準として、「総合的に見て、遺言の時点で遺言事項を判断する能力があったか否かによって判断すべき(東京地判平成16年7月7日)」という判例があります。

 

具体的には、以下の点を総合的に考慮して、遺言書を書いた人に遺言能力が有ったのかを判断しています。

 

  • 精神医学的な評価
  • 遺言内容
  • 遺言書を書いた人と相続人との人間関係
  • 遺言と同じ内容を記した別資料

 

 

精神医学的な評価

 

遺言書を書いた人の年齢や健康状態は、遺言能力に大きな影響を及ぼしています。高齢であるほど、健康でないほど、遺言能力は低下します。

 

一方、単に高齢なだけで遺言能力が低下するわけではありませんが、癌などの大病を患っていれば体力を消耗してしまい遺言能力は低下します。

 

 

遺言内容

 

遺言書に書かれている内容が難しすぎる場合には、本当にその人が遺言書を書いたのかが疑われます。

 

 

遺言書を書いた人と相続人との人間関係

 

例えば、遺言書を書いた人にとって、親族ではなく単なる知人に財産を贈与する遺言は、遺言能力が無いことを疑わせます。

 

客観的に見て、合理的ではない遺言内容は、遺言書を書いた人に遺言能力は無かったと判断されやすいです。

 

 

遺言と同じ内容が書かれている別資料

 

遺言書とは別に、同じ内容が書かれた資料が存在すれば、遺言能力が無かったと主張するのは難しくなります。

 

 

 

 

遺言書が有効となる認知症の程度

長谷川式認知症スケールで判断されるケースが多い

訴訟になると、認知症の人が書いた遺言書の有効性は、遺言能力の有無で判断されます。そして精神医学的な評価の判断基準の1つが、長谷川式認知症スケールという認知機能テストです。

 

長谷川式認知症スケールは、日本中の医療機関や介護施設で広く実施されている認知機能検査です。簡単に実施できるため、ほとんどの施設で導入されています。長谷川式認知症スケール以外にも、FASTやMMSEなどが認知症の重症度判定に用いられます。

 

 

<参考>
【医師が解説】長谷川式認知症スケールの解釈|遺言能力鑑定
【医師が解説】認知症ステージ分類のFASTとは|遺言能力鑑定
【医師が解説】MMSEの認知症でのカットオフ値は?|遺言能力鑑定
【医師が解説】MMSEと長谷川式認知症スケールの違い|遺言能力鑑定

 

 

遺言書の有効性判断は長谷川式認知症スケール10点

遺言書を書いた人の長谷川式認知症スケールが10点以下であれば、高度な認知症とみなされます。このため、長谷川式認知症スケールが10点以下の人が書いた遺言書は無効と判断されやすいです。

 

もちろん、遺言能力は、長谷川式認知症スケールなどの精神医学的な評価だけで判断されるわけではありません。訴訟での遺言能力の判断基準で説明したように、個々の事案毎にさまざまな角度から判断されます。

 

実臨床では、長谷川式認知症スケール15点でも認知症症状が強いケースも珍しくないため、11点以上なら遺言能力が認められるわけではないことに注意が必要です。

 

 

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認知症の人が書いた遺言書の有効性を証明する手段

遺言能力の有無を証明するための資料

遺言書を書いた人の遺言能力の有無は、遺言時の各種資料から裁判官が推認します。以下のような資料を収集しておくことが望ましいでしょう。
 

  • 診断書
  • 遺言時の頃に遺言者が記載した文書
  • 遺言時の頃に撮影した遺言者の動画
  • 遺言時の頃の遺言者に関する日記

 

これらの資料によって、遺言書を書いた人の遺言能力の有無を、客観的に証明できる可能性があります。

 

 

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遺言能力鑑定という選択肢

遺言書を書いた人の遺言能力の有無を証明する有力な資料の1つに、遺言能力鑑定があります。

 

遺言能力鑑定は、認知症専門医が各種資料を精査して、遺言書を書いた人の遺言能力の有無を鑑定します。

 

遺言能力鑑定は費用がかかりますが、訴訟の際の有力な資料となります。また、遺言書作成時に取得しておくと、遺言能力の証明になるでしょう。

 

 

<参考>
【弊社ホームページ】遺言能力鑑定 特設サイト

 

 

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遺言能力鑑定

遺言能力鑑定に必要な資料

遺言者の没後であっても、下記のような資料があれば遺言能力鑑定は対応可能です。

 

  • 診断書(介護保険の主治医意見書を含む)
  • 診療録(カルテ)
  • 介護保険の認定調査票
  • 画像検査
  • 各種の検査結果
  • 看護記録
  • 介護記録

 

 

すべて揃っていることが望ましいですが、足りない資料があっても遺言能力鑑定できる可能性はあります。

 

これらの資料の受け渡しは、オンラインストレージもしくは郵送となります。安全性や利便性からオンラインストレージの利用を推奨しています。

 

ご依頼いただいた際に、オンラインストレージの使用方法を簡単にご説明させていただきます。

 

 

遺言能力鑑定を作成する流れ

遺言能力鑑定をご依頼後の大まかな流れは、以下の通りです。尚、没後鑑定では事前審査(95,000円+税)が本鑑定(350,000円+税~)とは別途で必須です。

 

  1. 弊社による簡易な資料確認結果のご連絡、および事前審査に関する見積書の送付
  2. お見積りにご承諾いただいた段階で、正式に事前審査を開始
  3. 事前審査が完了後、ご請求書の送付
  4. ご入金確認後、事前審査結果のご提出(電子データ)

 

 

事前審査の結果を踏まえて遺言能力鑑定(本鑑定)に進む場合には、以下の流れになります。
 

  1. 弊社より見積書を送付
  2. お見積りをご承諾いただいた段階で、正式に遺言能力鑑定を開始
  3. 遺言能力鑑定案完成後、電子データにてご確認いただき、修正点があれば調整
  4. 遺言能力鑑定の最終稿が完成した段階で、ご請求書の送付
  5. ご入金確認後、レターパックにて医師の署名・捺印入り原本の発送

 

 

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遺言能力鑑定の作成にかかる期間

遺言能力鑑定を作成する期間は、お見積りをご了承いただいた時点から初稿提出まで約4週間です。

 

 

遺言能力鑑定の料金

生前鑑定

 

400,000円+税

 

 

没後鑑定

 

事前審査:95,000円+税
本鑑定 :350,000円+税

 

 

  • 没後鑑定では、事前審査が本鑑定とは別途で必須です。
  • 本鑑定に進まない場合にも、事前審査費用の返金は致しかねます。

 

 

 

 

遺言能力鑑定の実例

【脳神経内科】公正証書遺言作成時の遺言能力を鑑定

  • 80歳台前半
  • 男性

 

平成29年に公正証書遺言書を作成しました。しかし、当時すでに遺言者はアルツハイマー型認知症が進行しており、神経内科で治療中でした。

 

相続人Cは、公正証書遺言の有効性について提訴して一審勝訴、控訴審係属中に弊社に遺言能力鑑定依頼となりました。

 

脳神経内科医師が医証を精査したところ、頭部CTでは著明な脳萎縮を認め、脳血流シンチグラフィーでは左頭頂葉と両側後方帯状回に脳血流低下を認めました。

 

診療録や画像検査から、公正証書遺言の作成時に充分な遺言能力を有していたとは到底言えないことが判明しました。

 

公正証書遺言を作成した事実は、被相続人が遺言能力を有している証拠にはならないことの一例です。

 

 

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【消化器内科】癌末期の肝性昏睡患者の遺言能力を鑑定

  • 60歳台前半
  • 男性

 

平成27年に下行結腸癌、空腸浸潤に対して左半結腸切除術、空腸合併切除、リンパ節郭清を施行しました。多発性の肝転移を認めたため根治は困難とのことで在宅医療を行っていました。

 

しかし病状は少しずつ増悪して、食事摂取や体動が困難となり、平成28年に緩和治療目的で入院しました。多量の鎮痛剤で癌性疼痛のコントロールを行いましたが、徐々に全身状態は衰弱しました。

 

永眠される3日前に、疎遠だった兄弟に財産を贈与するという内容の自筆証書遺言が作成されました。遺言書の内容を不信に思った内縁の妻側の弁護士から、遺言能力鑑定の依頼を受けました。

 

消化器内科医師が診療録や画像検査を精査したところ、遺言書の作成時に充分な遺言能力を有していたとは到底言えないことが判明しました。

 

 

CT

 

 

 

まとめ

 

認知症の人が書いた遺言書の有効性は、遺言能力の有無が判断基準になります。裁判では、以下の点で遺言能力の有無を判断されます。

 

  • 精神医学的な評価
  • 遺言内容
  • 遺言書を書いた人と相続人との人間関係
  • 遺言と同じ内容を記した別資料

 

 

長谷川式認知症スケールは、精神医学的な評価の判断基準の1つです。長谷川式認知症スケールは認知機能検査の一種で、10点以下の方は高度な認知症とみなされます。

 

このため、認知症の人が書いた遺言書の有効性は、長谷川式認知症スケール10点が1つの目安となります。

 

遺言能力の有無を客観的に主張するためには、遺言能力鑑定が有効な手段となり得ます。お困りの事案があれば、お問合せフォームからご連絡下さい。

 

 

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