親の死後に発生する遺産相続は、本来であれば家族の絆を大切にしながら円満に進めたいものです。しかし現実には、「遺産相続で兄弟がもめる」ケースが後を絶ちません。
生前の親の介護の負担に差があったり、財産の内容や分け方に不満が出たりすることで、兄弟間に深い溝ができてしまうこともあります。さらに、遺言書の有効性や親の意思能力が争点になることも。
この記事では、兄弟間で相続トラブルが起きる原因や、実際のもめごとの事例、それに対する具体的な解決策まで詳しく解説しています。
遺産分割をめぐって兄弟と対立しないために、そして万が一もめてしまったときに、どう対処すべきかを分かりやすく説明しています。
最終更新日: 2025/8/12
Table of Contents
遺産相続で兄弟がもめる主な理由
財産の分配に対する不公平感
遺産相続で、もっとも一般的なトラブルが「不公平感」です。
法定相続分では平等であるべきところ、特定の兄弟だけが多く相続すると、「なぜあの兄弟だけ得をするのか」という感情が芽生えて、トラブルになります。
特に、親が遺言書で一部の兄弟のみに多く残していた場合、不満が顕在化しやすくなります。
親の介護負担の違い
長期間、介護を担ってきた兄弟が「もっと相続を受けるべき」と主張するケースも多発します。
また、他の兄弟が介護に協力せず感謝の言葉すらないと、不満が爆発することもあります。
介護の見返りが相続に反映されないと感じたとき、兄弟間の関係は急激に悪化しやすいです。
遺産が不動産に偏っている
現金や預貯金より、不動産(実家など)中心の遺産になると分割しづらく、誰が相続するかで争いが起こりがちです。
売却して現金分割するにも時間がかかるため、不満が募りやすく、感情的な対立に発展する傾向があります。共有名義の問題も揉める原因です。
生前贈与の不公平感
ある特定の兄弟にだけ生前贈与や援助(住宅購入資金・学費など)が行われていた場合、「あの人はもう十分もらっていたのに…」という不公平感が他の兄弟の間で生まれます。
生前贈与分が相続で考慮されないと、不平等な配分に感じられ、財産の取り分に対する対立が激化します。
親の認知症などによる意思能力の問題
親が認知症で判断力が低下している状態で遺言書が作成されたら、「本当に自分の意思だったのか?」という疑念が生じることがあります。
とくに一部の兄弟とだけ親しい関係だったりすると、他の兄弟が不公平だと感じて遺言の有効性そのものを争うケースが出てきます。
兄弟の配偶者が口出しする
兄弟間の話し合いに、それぞれの配偶者が意見を出し始めることで、冷静な協議が難しくなるケースがあります。
とくに配偶者が相続内容に強く関与してくると、その裏に経済的な利害があるとみなされ、当の兄弟間に亀裂が生まれて泥沼化する可能性が高まります。
遺産分割協議の進め方に対する不満
協議の場が不公正、進行が不透明だったりすると、不信感を抱くきっかけになります。
また、一部の兄弟がリーダーシップをとって進めすぎたり、取り決めを強引にすすめたりすると、他の兄弟が「無視された」と感じて、納得しないまま話が進んでしまいトラブルに発展します。
遺産相続で兄弟がもめた際の対処法
遺産分割協議
兄弟間でもっとも基本的な対処法は「遺産分割協議」です。相続人全員で話し合い、財産の分け方を決定します。
遺言書がない場合や一部にしか適用されない場合の基本的な手続きです。合意が必要なため感情的な衝突が起きやすく、冷静な進行が求められます。専門家の同席も有効です。
遺言無効確認請求調停
親の遺言が認知症などで無効ではないかと疑われる場合、まず家庭裁判所に「遺言無効確認の調停」を申立てることができます。
調停では第三者が仲裁として入り、当事者間の話し合いを促進します。裁判よりも費用がかからず迅速ですが、合意できなければ訴訟になります。
遺言無効確認請求訴訟
調停で解決できないと、遺言無効を主張する「遺言無効確認訴訟」を家庭裁判所に提起することになります。
認知症の進行状況や作成当時の意思能力を主張して、証拠(医療記録・証言など)をもとに争います。訴訟は公的に遺言の有効性を争う最終手段で、時間と費用もかかります。
争点が遺言能力なら遺言能力鑑定が有用
遺言書の有効性を争う際に「認知症で判断力が無かった」と主張するのであれば、医学的に当時の精神状態を検証する遺言能力鑑定が有効です。
認知症専門医が、カルテ、診療履歴、画像検査、介護保険調査票などをもとに、遺言作成時の遺言能力を鑑定します。裁判所が判断するための重要な証拠として扱われるケースもあります。
弊社では、全国からたくさんの遺言能力鑑定依頼があります。遺言者の遺言能力有無で、お困りの事案があれば、お問合せフォームから気軽にご連絡下さい。
<参考>
【遺言能力鑑定】意思能力の有無を専門医が証明|相続争い
遺産相続で兄弟がもめるでよくある質問
相続で揉める家族の特徴は?
相続で揉めやすい家族には共通点があります。たとえば、兄弟間のコミュニケーションが少なく、親の財産状況や意向について共有されていない家庭です。
また、親が「特定の子にだけ援助」していたり、介護の負担が一部の兄弟に偏っていると不平等感が生まれ、トラブルに発展しやすくなります。
遺産相続で一番揉める金額はいくらですか?
意外にも「遺産総額が5,000万円以下」で揉めるケースが多いとされています。特に相続税がかからない範囲内でも争いになることがあり、「少ないから大丈夫」とは限りません。
また、財産が現金でなく不動産中心になると、現実的な分割が難しく、対立が深刻になる傾向があります。
兄弟に遺産を渡さない方法はありますか?
法定相続人である限り兄弟にも相続権がありますが、遺言書でその取り分をゼロにすることは可能です。
一方、兄弟には「遺留分」がないため争いに発展しにくいですが、遺言の内容が不自然だと無効とされるリスクもあります。確実に伝えるためには公正証書遺言の活用が有効です。
実家の相続でやってはいけないことは?
実家の不動産を安易に「誰かひとりが住む」形で相続させると、後に不公平感が生じやすくなります。
また、名義変更を放置したり、遺産分割協議を曖昧にすると、後から法的なトラブルに発展する可能性があるため要注意です。感情論ではなく法的根拠に基づく協議が必要です。
まとめ
遺産相続では、兄弟間でもめごとが起きやすく、その多くは「不公平感」に起因します。
特定の兄弟が多く相続したり、生前贈与や介護の負担に差があると感情的な対立が生じやすくなります。
また、不動産中心の遺産も分割が難しく争いの原因になり、親の認知症による遺言の有効性や、兄弟の配偶者の介入なども火種となります。
対処法としては冷静な遺産分割協議が基本で、必要に応じて調停や訴訟、認知症専門医による遺言能力鑑定が有効です。
遺言の有効性で、お困りの事案があれば、お問合せフォームから気軽にご連絡下さい。
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