「うちは関係ない」と思っていたのに、いざ相続の場面になると家族や親族の関係がこじれてしまう…。そんな“相続争い”は、誰の身にも起こりうる現実です。
特に、認知症の親が残した遺言書や、生前贈与の不公平感、不動産の分け方などは、感情と権利がぶつかり合う火種になりがちです。
本記事では、相続トラブルの典型的なパターンやその原因を具体的に紹介して、争いを未然に防ぐための対策や、いざというときの法的手段について分かりやすく解説しています。
また、遺言能力鑑定など、実務的な対応策にも触れています。相続を「争続」にしないために、今知っておきたい知識を整理していきましょう。
最終更新日: 2025/8/7
相続争いの実態
相続争いは5000万円以下が多い
相続争いは、資産家だけの問題と思われがちですが、実際には遺産額5000万円以下の家庭で多発しています。
家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割事件のうち、約75〜80%が相続財産5,000万円以下の事案です。
特に、1000万円以下が約3割、1000万円超5000万円以下が4割を占めており、ごく一般的な家庭でも相続争いが起こりやすい現実があります。
相続争いを起こす原因は?
相続争いの主な原因は、遺産の分け方に対する不満や不公平感、遺言書の有無や内容の不透明さ、相続人同士の人間関係の悪化などです。
特に、遺産の大半が不動産で分割しづらい場合や、兄弟姉妹間の関係が希薄な場合、感情的な対立が激化しやすくなります。
さらに、生前贈与や介護への貢献度など、個々の事情が絡むことでトラブルが複雑化することも多いです。
相続トラブルでよくある7つのパターン
認知症の親が遺言書を作成した
認知症の親が作成した遺言書であっても、遺言作成時に遺言能力(意思能力)が認められれば有効とされますが、重度の認知症であれば無効とされる可能性があります。
遺言作成時の認知症の程度では、医師の診断記録、長谷川式認知症スケールの点数などが争点となり、相続人間で激しいトラブルに発展するケースが珍しくありません。
不平等な相続割合の遺言書
遺言書に著しく不平等な相続割合が記載されていると、相続人間で不満が生じやすく、遺留分侵害額請求や遺産分割協議が行われることになります。
遺言書の内容が優先されますが、法律で最低限の取り分(遺留分)が保障されているため、泣き寝入りする必要はありません。
親を介護した人がいる
親の介護を長期間担った相続人がいると、「寄与分」を巡って他の相続人との間でトラブルが発生しやすいです。
介護の貢献度が法定相続分に十分反映されていないと感じると、感情的な対立が深まることもあります。
偏った生前贈与
特定の相続人だけが生前贈与を受けていたら、他の相続人から不公平感が生まれて、遺産分割時にトラブルとなりやすいです。
生前贈与の有無や金額が明確でないと、さらに複雑な争いに発展します。
不動産が遺産の大半を占める
遺産の多くが不動産の場合、現物分割や共有が難しく、分割方法や評価額を巡って相続人間で揉めやすいです。
不動産の共有は将来的なトラブルの火種となるため、注意が必要です。
内縁の配偶者
内縁の配偶者には法定相続権が認められないため、遺言書がない場合や相続人との関係が悪いと、財産を受け取れないリスクがあります。
特別縁故者としての分与や遺言書の作成が重要な対策となります。
遺産の使い込み
被相続人の生前や死後に、特定の相続人が遺産を使い込むケースも少なくありません。
発覚した場合、不当利得返還請求や損害賠償請求などの法的手段で争われることになります。
相続争いの対処法
相続人同士での話し合い
相続トラブルが発生した際、まずは相続人同士で冷静に話し合いを行うことが重要です。
遺産分割協議を通じて、各相続人の希望や事情を共有して、公平な分割方法を模索します。
感情的な対立を避けるため、第三者である専門家や弁護士に同席してもらうことも有効です。話し合いで合意に至れば、円満な解決が可能となります。
遺言無効確認請求調停
話し合いで解決できない場合、家庭裁判所で遺言無効確認請求調停を申し立てることができます。
調停では、調停委員が中立的な立場で相続人の意見を聞き、合意点を探ります。
調停が成立すれば、その内容が法的効力を持ち、遺言の有効性についても合意が得られます。
遺言無効確認請求訴訟
調停でも解決できないと、遺言無効確認請求訴訟を地方裁判所に提起します。訴訟は、遺言が法律上無効であることを裁判所に認めてもらう手続きです。
主な争点は、遺言能力の有無や方式違反などで、証拠提出や証人尋問が行われます。判決で遺言が無効と認められれば、遺産分割は遺言書に従わず進められます。
遺言能力が争点なら遺言能力鑑定が有用
遺言書の有効性を巡り「遺言能力」が争点となる場合、認知症専門医による遺言能力鑑定が有力な証拠となります。
長谷川式認知スケールなどの認知機能検査や、遺言作成時の診断書・カルテなどをもとに、遺言者が遺言作成時に十分な判断能力を有していたかを専門的に評価します。
訴訟や調停において、遺言能力鑑定は裁判官の判断材料として重要視されることがあります。認知症専門医による遺言能力鑑定は、当方の主張を補強する強力な医証です。
弊社では、全国からたくさんの遺言能力鑑定依頼があります。遺言者の遺言能力有無で、お困りの事案があれば、お問合せフォームから気軽にご連絡下さい。
<参考>
【遺言能力鑑定】意思能力の有無を専門医が証明|相続争い
相続争いでよくある質問
相続で揉める家族の特徴は?
相続で揉めやすい家族にはいくつか共通点があります。主な特徴として、以下が挙げられます。
- 相続人同士の仲が悪い・疎遠である
- 特定の相続人だけが生前贈与を受けている
- 親の介護負担が平等でない
- 財産管理を一人の相続人が担っていた
- 遺言書の内容が不平等
- 家族構成が複雑(再婚や隠し子がいる等)
これらの要素が重なると感情的な対立が激化しやすく、話し合いが難航する傾向があります。
遺産相続で一番揉める金額はいくらですか?
遺産相続で最も揉めやすい金額帯は「5,000万円以下」です。裁判所の統計によると、遺産分割事件の約8割が5,000万円以下の遺産を巡るもので、特に1,000万円以下が約3割、1,000万円超~5,000万円以下が約4割を占めています。
多額の遺産だけでなく、一般家庭の相続でも争いが多発しているのが現状です。
相続争いを弁護士に依頼するといくらくらい費用がかかる?
相続争いを弁護士に依頼する場合、費用は事案の内容や依頼範囲によって異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。
- 相談料:30分あたり5,000円程度(初回無料の事務所もあり)
- 着手金:20万円~50万円程度
- 報酬金:得られた経済的利益の数%や固定額(例:1000万円の利益で約100万円前後)
- 日当:1日あたり5万円前後
具体的な金額は事案の複雑さや遺産額によって増減します。
遺産相続で2000万円を相続したら税金はいくらかかりますか?
遺産総額が2,000万円の場合、相続税は基本的にかかりません。
相続税には『基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)』があるため、例えば相続人が1人の場合、基礎控除額は3,600万円となり、遺産が2,000万円であれば原則として課税されません。
ただし、他の財産や生前贈与との合算で基礎控除を超える場合には課税対象となるため注意が必要です。
まとめ
相続争いは資産家だけの問題ではなく、実際には遺産が5,000万円以下の一般家庭で多く発生しています。
原因は遺産の分け方への不満や遺言の内容、不動産の分割困難、生前贈与の偏り、介護の負担差などが複雑に絡むためです。
中でも、認知症の親による遺言書や不平等な相続割合などが、争いを深めます。
対処には相続人同士の話し合いや調停・訴訟があり、遺言能力が争点の場合は認知症専門医による遺言能力鑑定が重要な証拠となります。
遺言の有効性で、お困りの事案があれば、お問合せフォームから気軽にご連絡下さい。
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