認知症が進行すると、物忘れだけでなく「判断能力」にも影響が及ぶ可能性があります。
しかし、「判断能力が低下する」とは具体的にどういうことなのでしょうか。また、「意思能力」との違いは何なのでしょうか。
本記事では、認知症によってどのように判断能力が低下していくのか、その影響や具体的な症状を分かりやすく解説しています。
さらに、判断能力の評価方法についても触れています。家族の将来や相続に関わる大切な問題だからこそ、早めの理解と準備が必要です。
最終更新日: 2025/5/9
Table of Contents
認知症で判断能力は低下する?
認知症の5大症状
認知症の主な症状には、記憶障害、見当識障害、理解・判断能力の低下、実行機能障害、感情表現の変化があります。
これらは「中核症状」と呼ばれ、脳の神経細胞の損傷によって引き起こされます。これらの症状が進行すると、日常生活に支障を来すようになります。
判断能力の低下は5大症状の1つ
判断能力の低下は、認知症の中核症状の一つです。判断能力の低下により、日常生活での意思決定や行動に支障が生じます。
具体的には、考える速度の遅延、複数の情報の同時処理の困難、些細な変化への混乱、抽象的な概念と現実の結びつきの困難さなどが見られます。
認知症の判断能力とは?
認知症における判断能力とは、状況を理解して、適切な意思決定を行う能力です。判断能力が低下すると、金銭管理や契約、相続などの重要な判断が困難になります。
認知症で判断能力が低下するとどうなる?
金銭管理ができない
認知症が進行すると、金銭管理が難しくなります。具体的には、支払い忘れや同じ物の重複購入、詐欺被害のリスクが増加します。
身の回りの管理が難しくなる
認知症により、衣類の選択や整理整頓が困難になります。季節に合わない服装や、部屋の清掃が行き届かないことがあります。衛生面での問題や事故のリスクが高まります。
食事の準備が難しくなる
認知症が進行すると、食材の認識や調理手順の理解が難しくなります。食事の準備が困難になり、栄養バランスの偏りや食事の摂取量の減少が懸念されます。
外出時の危険性
認知症の方が外出すると、道に迷ったり、交通事故に遭うリスクが高まります。目的地を忘れたり、帰宅できなくなるケースが多いです。
家族や介護者は、GPS機能付きの見守りサービスの利用や、外出時の同行を検討する必要があります。
契約や相続の判断ができない
認知症が進行すると、契約内容の理解や意思決定が難しくなります。不利益な契約を結んでしまうリスクや、遺言書が無効になる可能性があります。
認知症の判断能力評価法
長谷川式スケール(HDS-R)
長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、日本で広く用いられる認知機能評価ツールです。簡便で短時間に実施可能なため、医療・介護現場で重宝されています。
記憶力や見当識など9項目を質問形式で評価して、30点満点中20点以下が認知症の疑いとされます。
MMSE(ミニメンタルステート検査)
MMSE(Mini-Mental State Examination)は、世界的に使用される認知機能スクリーニング検査です。詳細な評価が可能で、国際的な比較にも適しています。
時間・場所の見当識、記憶、注意、言語能力など11項目を評価して、30点満点中23点以下が認知症の可能性を示します。
介護保険の主治医意見書
主治医意見書は、介護保険の要介護認定申請時に必要な書類で、主治医が被保険者の病歴や生活機能の低下原因、今後の見通しなどを記載します。
認知症の有無や具体的な程度も評価されるため、介護サービスの適切な提供に役立ちます。
介護保険の認定調査票
認定調査票は、介護保険の要介護認定のために調査員が作成する書類で、全国共通の様式が使用されます。
身体機能や認知機能、行動障害などの項目があり、特記事項には詳細な状況が記載されています。
認知症による判断能力低下の相続への影響は?
意思能力が無いと遺言は無効になる
遺言書の有効性には、作成時に遺言者が「意思能力」を有していることが必要です。意思能力とは、自身の行為の結果を理解して、判断できる能力です。
認知症が進行して、意思能力が欠如していると判断されると、その遺言書は無効とされる可能性があります。
判断能力と意思能力の違い
判断能力は、日常生活における意思決定や行動の適切性ですが、意思能力は、特定の法律行為を理解して遂行する能力です。
認知症の進行によって判断能力が低下しても、意思能力が完全に失われていないケースもあります。法的手続きでは、意思能力の有無が重要視されます。
<参考>
意思能力の判断基準とは?認知症になるとどうなる?|遺言能力鑑定
意思能力の有無は相続争いの原因になりやすい
遺言書の作成時に意思能力があったかどうかは、相続人間での争いの原因となる可能性があります。
特に、遺言内容が一部の相続人に有利であると、他の相続人が遺言の無効を主張するケースがあります。そのため、遺言作成時の意思能力の証明が重要です。
相続争いでは遺言能力鑑定が有用
相続争いを防ぐためには、遺言作成時の意思能力(遺言能力)を医学的に評価する遺言能力鑑定が有用です。
認知症専門医による診断や鑑定書を遺言書と共に保管することで、後の争いを未然に防ぐことができます。
一方、すでに争いになっている事案では、各種の医証を精査して、遺言書作成時における意思能力の有無を鑑定します。
認知症専門医による遺言能力鑑定は、訴訟において当方の主張を補強する強力な医証です。
弊社では、全国からたくさんの遺言能力鑑定依頼があります。遺言者の遺言能力有無で、お困りの事案があれば、お問合せフォームから気軽にご連絡下さい。
<参考>
【遺言能力鑑定】意思能力の有無を専門医が証明|相続争い
認知症の判断能力でよくある質問
認知症になると判断能力が低下するのはなぜですか?
認知症は、脳の神経細胞が損傷して、情報処理や意思決定に関わる機能が低下することで、判断能力の低下が生じます。
具体的には、考えるスピードの低下、複数の情報を同時に処理できない、変化への対応が難しくなる、抽象的な概念の理解が困難になる、問題解決能力の低下などが見られます。
認知症かどうか判断する3つの質問は?
慶應義塾大学の研究チームは、アルツハイマー病の早期発見に有効な「3つの質問」を開発しました。
- 現在、困っていることはありますか?
- 最近3カ月以内で気になるニュースはありますか?
- 最近の楽しみはありますか?
これらの質問に対して、「困っていることはない」「気になるニュースはない」と答え、3つ目の質問に具体的な回答をすると、アルツハイマー病の可能性が高いとされています。
この方法は、日常会話の中で簡便に認知症の兆候を察知する手段として注目されています。
まとめ
認知症は、脳の神経細胞が損傷することで、記憶障害や判断能力の低下などの中核症状を引き起こして、日常生活に支障が出ます。
判断能力の低下は、金銭管理や契約、食事、外出などに影響します。特に相続では、遺言が無効になる可能性があるため注意が必要です。
認知症の評価には、長谷川式スケールやMMSE、介護保険関連の書類が使われます。早期発見には簡単な会話から兆候を見つける「3つの質問」も有効です。
遺言者の意思能力(遺言能力)の有無で、お困りの事案があれば、お問合せフォームから気軽にご連絡下さい。
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