公正証書遺言は、遺言の確実性を高める手段として広く利用されています。しかし、すべての公正証書遺言が無条件に有効ではありません。
法律上の要件を満たしていない場合や、不正な手段で作成された場合には無効となる可能性があります。
本記事では、公正証書遺言が無効になる代表的なケースを解説するとともに、無効を主張するための具体的な手続きについても説明しています。
最終更新日: 2025/4/5
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公正証書遺言が無効になる場合は6パターンある
遺言能力が無い
遺言者が遺言を作成する際に、意思能力や判断能力を欠いていると、遺言は無効とされます。
例えば、認知症が進行しており、財産の内容や遺言の意味を理解できない状態で作成された遺言が該当します。
遺言能力の有無は、遺言作成時の医療記録や専門医の鑑定などで判断されます。
遺言者の意図と遺言内容が違う(錯誤)
遺言者が遺言内容を誤解していたり、意図しない内容が記載されていると、錯誤により遺言が無効となる可能性があります。
例えば、財産の配分を誤って記載したり、特定の相続人を意図せず排除してしまった場合などが該当します。
このような場合、遺言者の真意と遺言内容の齟齬が証明されれば、遺言は無効とされる可能性があります。
証人が不適格
公正証書遺言の作成には、2人以上の証人が必要です。証人の適格性は、遺言の有効性を左右する重要な要素です。
証人が未成年者、推定相続人、受遺者、その配偶者など、法律で定められた不適格者である場合、遺言は無効となります。
口授を欠いていた
公正証書遺言を作成する際、遺言者が公証人に対して遺言内容を口頭で伝える「口授」が必要です。
もし、遺言者が書面を手渡すだけで口授を行わなかったら、形式的な要件を満たしていないため、遺言は無効と判断される可能性があります。
公序良俗に違反していた
遺言内容が社会的な倫理や道徳に反すると、公序良俗違反として無効とされます。
例えば、特定の相続人を不当に差別する内容や、違法行為を助長するような遺言が該当します。遺言は、法的な枠組み内で公正に作成される必要があります。
詐欺・強迫によって遺言書を作成した
遺言者が第三者からの詐欺や強迫によって遺言を作成したら、その遺言は無効となります。
例えば、相続人が遺言者を脅迫して自身に有利な内容の遺言を作成させた場合などが該当します。
遺言は、遺言者の自由な意思に基づいて作成されるべきものであり、その自由が侵害された場合、遺言の効力は否定されます。
公正証書遺言を知ろう
公正証書遺言の基本的な特徴と目的
公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるため、内容の真実性や正確性が保証されます。
これにより、契約や遺言の内容が明確になり、将来的な紛争を防ぐことができます。
また、公正証書は公的な証明力を持つため、裁判所においても有力な証拠として認められます。
公正証書遺言が作成される際の手続き
公正証書遺言を作成するには、事前に遺言内容を整理して、必要な書類を準備する必要があります。
その後、公証役場に連絡を取り、公証人との打ち合わせを経て、証人2名とともに公証役場で遺言書を作成します。
遺言者は、遺言内容を公証人に伝えて、公証人が作成した遺言書の内容を確認して、署名・捺印します。
公正証書の法的効力について
公正証書遺言は、公証人が作成するため、法的効力が非常に高いとされています。遺言内容の解釈をめぐる争いが起こりにくく、相続手続きをスムーズに進めることができます。
また、家庭裁判所での検認が不要なため、相続発生後の手続きを迅速に行うことができます。
公正証書遺言を無効にするための手続き
無効を主張するための手続き概要
公正証書遺言の無効を主張する際、まず相続人や受遺者全員で遺産分割協議を行うことが推奨されます。全員の合意が得られれば、遺言内容に関わらず遺産分割が可能です。
合意が難しい場合は、家庭裁判所に遺言無効確認調停を申し立て、それでも解決しなければ遺言無効確認訴訟を提起する流れとなります。
まずは相続人同士で話し合う
遺言内容に疑問があれば、最初のステップとして相続人同士で話し合い、遺産分割協議を行うことが重要です。
全員が、公正証書遺言の無効に同意すれば、遺言に基づかない遺産分割が可能となります。
しかし、一部の相続人が公正証書遺言の有効性を主張すると、協議は難航する可能性があります。
遺言無効確認調停
相続人間の話し合いで解決しないと、家庭裁判所に遺言無効確認調停を申し立てます。
調停では、裁判官と調停委員が中立的な立場で双方の主張を聞き、合意形成をサポートします。
調停が成立すれば、公正証書遺言の無効が認められ、遺産分割協議へと進むことができます。
遺言無効確認訴訟
遺言無効確認調停でも合意が得られないと、遺言無効確認訴訟を提起します。
訴訟では、公正証書遺言の無効性を法的に争い、裁判所の判決によって遺言の有効性が判断されます。
遺言能力鑑定という選択肢
遺言者が遺言書作成時に適切な判断能力(遺言能力)を有していたか疑問があるケースでは、認知症専門医による遺言能力鑑定を行うことが考えられます。
遺言能力とは、遺言内容を理解して、その結果を認識できる能力です。近年、遺言能力の有無を争点とする訴訟が増加しており、専門的な評価手法の確立が求められています。
遺言能力鑑定は、認知症専門医が遺言者の神経心理学的検査、診療録、画像検査などで遺言能力を評価して、遺言書の有効性を鑑定します。
<参考>
【遺言能力鑑定】意思能力の有無を専門医が証明|相続争い
公正証書遺言が無効になる場合でよくある質問
公正証書は絶対確実ですか?
公正証書は、公証人が関与して作成する公文書であり、高い証明力と執行力を持ちます。
しかし、作成過程で法律に適合しない手続きが行われた場合や、内容が当事者の真意を反映していない場合など、特定の条件下では無効と判断される可能性があります。
したがって、公正証書は非常に信頼性の高い文書ですが、絶対的なものではないことを理解しておくことが重要です。
公正証書は何年有効ですか?
公正証書そのものの有効期限は、基本的にその内容に依存します。例えば、遺言の場合は遺言者の死亡時に効力が生じます。
一方、公正証書の原本は、公証人法施行規則第27条により、公証役場で20年間保管されると定められています。
ただし、特別の事由がある場合は、その事由が存在する間、保管期間が延長されることもあります。
まとめ
公正証書遺言が無効になる場合は、主に以下の6つのパターンがあります。
- 遺言者が認知症などで判断能力を欠いていた
- 遺言の内容が本人の意図と異なる
- 証人が法律上の不適格者であった
- 遺言の口授が行われなかった
- 公序良俗に反する内容が含まれる
- 詐欺や強迫によって作成された
通常、公正証書遺言は強い法的効力を持ちますが、適切に作成されていないと無効になる可能性があるため、注意が必要です。
公正証書遺言に関する争いで、お困りの事案があれば、お問合せフォームから気軽にご連絡下さい。
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