「公正証書は無効にできない」と言われることがありますが、実際には条件を満たせば無効にできる可能性もあります。
しかしそのハードルは高く、「公正証書 無効 難しい」と検索されるように、多くの方がその難しさに直面しています。
特に公正証書遺言の場合、公証人による厳格な手続きや証人制度の存在が信頼性を高めており、無効を主張するには相応の証拠と手順が必要です。
本記事では、公正証書を無効にするための条件や事例、なぜ無効化が難しいのかという理由、そして実際に無効を主張する際の具体的な対処法まで詳しく解説します。
ご自身の状況に照らし合わせて、適切な対応を検討する手助けとなれば幸いです。
最終更新日: 2025/4/12
Table of Contents
公正証書遺言を無効にするのが難しい理由
公証人による厳格な手続き
公正証書遺言は、公証人が法律で定められた方式に従って作成します。具体的には、以下の手順です。
- 証人2人以上の立会いのもと
- 遺言者が遺言内容を公証人に口頭で伝えて(口授)
- 公証人がこれを筆記して
- 内容を遺言者と証人に読み聞かせて
- 全員が署名・押印する
このような厳格な手続きが踏まれるため、形式的な不備を理由にして、公正証書遺言を無効にすることは困難です。
二段階の推定の適用
公正証書遺言には、真正な公文書としての推定効と、適法に成立した遺言であることの推定効という二段階の推定が働きます。
これらの推定を覆すためには、遺言者の遺言能力が欠如していたことや、手続きに重大な瑕疵があったことを具体的かつ明確に証明する必要があります。
この高い証明責任が、公正証書遺言の無効を主張する際の大きな障壁となります。
証人制度の厳密性
公正証書遺言の作成には、証人2人以上の立会いが義務付けられています。証人には、未成年者や推定相続人、その配偶者など、法律で定められた欠格事由が存在して、適格な証人が選ばれます。
この厳密な証人制度により、遺言の信頼性が高まり、無効を主張する際のハードルが上がります。
口授要件の厳格化
遺言者が遺言内容を公証人に口頭で伝える「口授」は、公正証書遺言の重要な要件です。
遺言者が自らの意思で内容を伝えたことが求められ、代理人による伝達や単なる文書の確認では要件を満たしません。
この要件の厳格さが、無効を主張する際のハードルとなります。
裁判所の慎重な判断
公正証書遺言は、公証人という公的な立場の専門家が関与しているため、裁判所もその有効性を重視します。
無効を主張する側には、高度な立証責任が課され、裁判所は提出された証拠を厳格に審査します。この慎重な判断姿勢が、無効判定の難しさを増しています。
時間が経つほど証拠が散逸する
公正証書遺言の作成から時間が経過すると、関係者の記憶が薄れたり、証拠となる文書が失われたりする可能性があります。
特に、遺言者の遺言能力を争う場合、当時の医療記録や証人の証言が重要となりますが、時間の経過とともに資料の収集が困難になります。
時間の経過による証拠散逸のリスクが、公正証書遺言の無効を主張する際の大きな障壁となります。
公正証書が無効になる条件とは?
遺言能力が無い
遺言者が遺言作成時に認知症などで判断能力を欠いていると、遺言は無効とされます。遺言能力の有無は、医療記録、介護記録、専門医の鑑定などで判断されます。
証人が不適格
公正証書遺言の作成には2人以上の証人が必要ですが、証人が未成年者や推定相続人、その配偶者など、法律で定められた不適格者である場合、遺言は無効となります。
口授の不備
遺言者が公証人に対して遺言内容を口頭で伝える「口授」が行われなかった場合、形式的な要件を満たしていないため、遺言は無効と判断される可能性があります。
脅迫、詐欺、錯誤
遺言者が第三者からの詐欺や脅迫によって遺言を作成したり、重要な事実を誤認(錯誤)して遺言を作成したら、遺言は無効となる可能性があります。
公序良俗に反している
遺言内容が社会的な倫理や道徳に反すると、公序良俗違反として無効とされます。
例えば、特定の相続人を不当に差別する内容や、違法行為を助長するような遺言が該当します。
公正証書遺言を無効にするための対処法
相続人間で話し合う
まず、相続人同士で遺言内容について冷静に話し合い、合意を目指すことが重要です。
相続人全員が遺言の無効に同意すれば、法的手続きを経ずに解決できる場合があります。
ただし、全員の合意が必要であり、一人でも反対者がいる場合は次の段階に進む必要があります。
遺言無効確認調停
相続人間での話し合いがまとまらない場合、家庭裁判所に遺言無効確認調停を申し立てることができます。
この調停では、中立的な第三者である調停委員が間に入り、双方の主張を聞きながら合意形成を支援します。
調停は訴訟前の前置手続きとして位置付けられており、まず調停を行うことが求められます。
遺言無効確認訴訟
調停でも解決に至らない場合、地方裁判所に遺言無効確認訴訟を提起することが可能です。
この訴訟では、遺言の無効を主張する側が、遺言者の遺言能力の欠如や手続き上の瑕疵など、無効理由を証明する必要があります。
裁判所は、提出された証拠や証言を基に、公正証書遺言の有効性を判断します。
認知症による遺言能力欠如を主張するポイント
公正証書遺言の無効事由を確認
公正証書遺言が無効とされる主な事由には、遺言者の遺言能力の欠如、法律で定められた形式的要件の不備、公序良俗違反などがあります。
特に、認知症による遺言能力の欠如は、無効事由として重要視されています。
公正証書遺言の無効を証明する証拠の収集
遺言の無効を主張するには、遺言者の遺言能力が欠如していたことを示す証拠が必要です。
具体的には、医療記録、介護保険の認定調査票、介護記録などが有力な証拠となります。
医療記録の精査
遺言者の診療録やカルテを確認して、遺言作成時の認知機能の状態を把握します。特に、認知症の診断や治療歴、服薬状況などが重要な情報となります。
介護保険の認定調査票の精査
介護保険の要介護認定時に作成される調査票や主治医意見書を確認して、遺言作成時の生活状況や認知機能の評価を把握します。
介護保険の認定調査票の精査により、日常生活における認知症の影響度を客観的に示すことができます。
介護記録の精査
介護施設や訪問介護サービスの記録を確認して、遺言者の日常生活の状況や認知機能の変化を把握します。
特に、コミュニケーション能力や判断力に関する記録が重要で、遺言能力の有無を客観的に証明することが可能となります。
遺言能力鑑定を検討する
認知症専門医による遺言能力鑑定で、遺言作成時の認知機能の状態を評価してもらうことも有効です。
近年、遺言能力の有無を争点とする訴訟が増加しており、専門的な評価手法の確立が求められています。遺言能力とは、遺言内容を理解して、その結果を認識できる能力です。
遺言能力鑑定は、認知症専門医が遺言者の神経心理学的検査、診療録、画像検査などで遺言能力を評価して、遺言書の有効性を鑑定します。
<参考>
【遺言能力鑑定】意思能力の有無を専門医が証明|相続争い
公正証書遺言の無効は難しいでよくある質問
公正証書は絶対確実ですか?
公正証書遺言は、公証人が関与して、厳格な手続きのもと作成されるため、形式的な不備が生じることはほとんどありません。
しかし、遺言者の判断能力が欠如していた場合や、証人が法律上の要件を満たしていない場合など、特定の条件下では無効とされる可能性があります。
したがって、公正証書遺言が絶対に無効にならないわけではありません。
公正証書はどのくらい強いですか?
公正証書遺言は、公証人が関与して、厳格な手続きで作成されるため、他の遺言方式と比べて高い信頼性と証明力を持ちます。
原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんのリスクも低減されます。
しかし、遺言者の判断能力の欠如や証人の不適格など、特定の条件下では無効となる可能性があるため、作成時には注意が必要です。
まとめ
公正証書遺言は、公証人が関与して、厳しいルールに従って作られるため、形式のミスで無効になることはほとんどありません。
さらに、「本物で正しい」とみなされる特別なルールがあるため、無効にするには証拠をたくさん集めて、はっきり示さなければなりません。
証人も法律で決められた人でないといけないし、遺言の内容は本人が口で伝えなければならず、その確認もとても厳しく行われます。
また、時間が経つと記録や証言がなくなってしまうこともあり、ますます証明がむずかしくなります。
それでも、公正証書遺言を無効にすることは不可能ではありません。お困りの事案があれば、お問合せフォームから気軽にご連絡下さい。
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