遺産相続をめぐるトラブルを防ぐため、多くの人が公正証書遺言を選ぶ理由は、その高い信頼性と法的効力にあります。
しかし、「公正証書遺言だから絶対に安心」と考えていませんか? 実は、公正証書遺言にも無効となるケースが存在し、条件次第ではその内容が覆される可能性があります。
本記事では、公正証書遺言の基本的な仕組みから、無効となる具体的な条件、さらに遺言の効力を争う方法まで詳しく解説します。
最終更新日: 2025/3/26
Table of Contents
公正証書遺言は絶対ではない!
公正証書遺言も無効になる可能性がある
公正証書遺言は高い信頼性を持ちますが、後述の条件下では無効とされる可能性があります。このため、公正証書遺言といえども、絶対ではありません。
遺留分を請求される可能性がある
公正証書遺言によって特定の相続人に多くの財産を遺贈した場合でも、他の相続人には法律で保障された最低限の取り分である「遺留分」が存在します。
遺留分を侵害された相続人は、遺留分侵害額請求を行うことができます。このため、公正証書遺言の内容が一部修正される可能性があります。
公正証書遺言が無効になる条件
公正証書遺言は、公証人が関与して作成されるため、一般的に高い信頼性と法的効力を持ちます。
しかし、特定の条件下では無効と判断されることがあります。以下に、公正証書遺言が無効となる主な条件を解説します。
遺言者に遺言能力が無い
遺言者が遺言を作成する際、遺言能力(意思能力)、すなわち自身の行為の結果を理解して判断する能力が必要です。
認知症などで遺言能力が欠如しているケースでは、遺言は無効とされる可能性があります。
公正証書遺言は公証人が関与するため、無効とされる確率は低いとされていますが、それでも無効と判断された事例も存在します。
遺言作成時に口授を欠いていた
公正証書遺言の作成には、遺言者が公証人に対して遺言の内容を口頭で伝える「口授」が必要です。この口授が行われていない場合、遺言は無効とされる可能性があります。
ただし、公証人が関与するため、口授が行われなかったと証明することは難しく、無効とされるケースは稀です。
遺言内容が公序良俗に反する
遺言の内容が社会的秩序や善良な風俗に反する場合、その遺言は無効とされます。例えば、特定の相続人を不当に差別する内容や、違法な目的を持つ遺言などが該当します。
公正証書遺言は公証人が内容を確認するため、このような無効理由は少ないとされていますが、可能性はゼロではありません。
錯誤・詐欺・強迫により作成
遺言者が誤解や詐欺、強迫などにより本意でない遺言を作成した場合、その遺言は無効とされる可能性があります。
例えば、遺言者が虚偽の情報を信じて遺言を作成した場合や、脅迫を受けて遺言を書かされた場合などが該当します。
公正証書遺言の場合でも、これらの要因が認められれば無効とされることがあります。
証人が不適格
公正証書遺言の作成には、2名以上の証人の立会いが必要です。しかし、法律で定められた不適格者が証人となった場合、遺言は無効とされる可能性があります。
具体的には、未成年者や推定相続人、受遺者、その配偶者や直系血族などが、証人の不適格者です。公証人が証人の適格性を確認するため、これらのケースは稀とされています。
公正証書遺言の効力を争う方法
遺産分割協議を行う
遺言書が存在しても、相続人全員の合意があれば、遺言内容と異なる遺産分割を行うことが可能です。
この場合、相続人全員で遺産分割協議を行い、合意内容を遺産分割協議書としてまとめます。
ただし、受遺者がいる場合や、相続人間で意見の相違がある場合は、この方法が難しいことがあります。
遺言無効確認調停を申し立てる
遺言の有効性に疑義があれば、家庭裁判所に遺言無効確認調停を申し立てることができます。
調停は、裁判所が間に入って当事者間の話し合いを促す手続きで、比較的柔軟かつ迅速に解決を図ることが可能です。
しかし、調停が不成立となった場合は、訴訟に移行することになります。
遺言無効確認訴訟を提起する
調停で解決しない場合や、直接的な法的判断を求める場合、遺言無効確認訴訟を家庭裁判所に提起します。
この訴訟では、遺言者の意思能力の有無、遺言作成時の状況、法的要件の遵守状況などが審理されます。
訴訟は時間と費用がかかる可能性があるため、弁護士などの専門家の助言を受けることが重要です。
遺言能力鑑定を検討する
遺言者が遺言書作成時に適切な判断能力(遺言能力)を有していたか疑問があるケースでは、認知症専門医による遺言能力鑑定を行うことが考えられます。
遺言能力とは、遺言内容を理解して、その結果を認識できる能力です。近年、遺言能力の有無を争点とする訴訟が増加しており、専門的な評価手法の確立が求められています。
遺言能力鑑定は、認知症専門医が遺言者の神経心理学的検査、診療録、画像検査などで遺言能力を評価して、遺言書の有効性を鑑定します。
<参考>
【遺言能力鑑定】意思能力の有無を専門医が証明|相続争い
公正証書遺言の効力でよくある質問
公正証書遺言に従わないとどうなる?
公正証書遺言は法的効力を持つため、基本的にはその内容に従って遺産分割を行う必要があります。
遺言に従わない場合、他の相続人や受遺者から法的措置を取られる可能性があります。
ただし、相続人全員の合意があれば、遺言内容と異なる遺産分割協議を行うことも可能です。
公正証書遺言は無視してもいいですか?
公正証書遺言を無視することは法的に認められていません。遺言の内容に納得がいかない場合は、遺言無効確認訴訟や遺留分侵害額請求などの法的手続きを検討する必要があります。
無視して独自に遺産分割を行うと、後に法的トラブルに発展する可能性があります。
遺言は絶対か相対か?
遺言は、遺言者の最終意思を示すものであり、法的効力を持ちます。しかし、相続人全員の合意があれば、遺言内容と異なる遺産分割を行うことも可能です。
また、遺言が法律の要件を満たしていない場合や、遺留分を侵害している場合は、その部分が無効とされることがあります。
遺言状は強制力がありますか?
遺言状は法的効力を持ち、相続人や受遺者はその内容に従う義務があります。
特に、公正証書遺言は公証人が関与して作成されるため、無効となる可能性が低く、強い強制力を持ちます。
まとめ
公正証書遺言は、公証人が作成する信頼性の高い遺言ですが、無効になるケースもあります。
例えば、遺言者が認知症で判断能力がないケースや、遺言の内容が法律や社会秩序に反するケースです。
また、遺言を作成するときに口頭で内容を伝える「口授」を欠いたケースも無効となります。
さらに、遺留分を侵害された相続人が異議を申し立てると、遺言内容が一部変更される可能性もあります。
遺言に従わないと法的措置を取られる場合があり、慎重に対応することが大切です。
遺言者が認知症を患ったために、遺言書の効力が争いになれば、認知症専門医による遺言能力鑑定が有用となる可能性があります。お困りの事案があれば、お問合せフォームから気軽にご連絡下さい。
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