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2025.1.18

遺言能力鑑定

認知症の遺言書は公正証書遺言でも無効にできる?|遺言能力鑑定

家族が残した公正証書遺言に疑問を感じたことはありませんか?特に、遺言者が認知症と診断されていたら、遺言書が本当に有効なのか、無効を主張できる余地があるのかを知りたい方も多いでしょう。

 

公正証書遺言は信頼性が高い形式とされていますが、認知症や意思能力の問題が絡むケースでは、法的に無効となる可能性があります。

 

本記事では、認知症の影響で公正証書遺言が無効になるケースや、その判断基準、さらには具体的な対処方法について詳しく解説します。

 

 

最終更新日: 2025/1/24

 

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認知症でも公正証書遺言の無効は難しいのか?

公正証書遺言とは

公正証書遺言は、遺言者が公証人と2名以上の証人の立会いのもと、遺言内容を口述して、公証人がそれを文書化することで作成されます。

 

公正証書遺言は、法律の専門家である公証人が関与して、原本が公証役場で保管されるため、形式的な不備や紛失、偽造のリスクが低く、信頼性が高いとされています。

 

 

公正証書遺言の無効が難しい理由

公正証書遺言が無効とされるのは稀です。その理由は、公証人が遺言者と直接面談し、遺言者の意思能力を確認するためです。

 

さらに、公正証書遺言は法律に基づいて厳密な形式で作成されるため、形式的な不備が生じることがほぼありません。

 

また、公証役場で保管されるため、第三者による不正な持ち出しや内容の書き換えのリスクもありません。

 

 

公正証書遺言が無効になる条件

公正証書遺言が無効とされる主な条件は以下のとおりです。

 

 

意思能力(遺言能力)の欠如

遺言者が遺言作成時に認知症などで判断能力を欠いていた場合、遺言は無効となります。

 

口授の欠如

遺言者が自らの意思を公証人に口述しなかった場合、形式的要件を満たさず無効となる可能性があります。

 

証人の不適格

遺言作成時に立ち会った証人が、未成年者や推定相続人などの法律で定められた欠格事由に該当する場合、遺言は無効となることがあります。

 

詐欺・強迫・錯誤

遺言が詐欺や強迫によって作成されたり、遺言者の真意と異なる内容であった場合、無効とされることがあります。

 

公序良俗違反

遺言内容が社会的秩序や善良な風俗に反する場合、無効となります。

 

 

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認知症の公正証書遺言が無効かは意思能力が判断基準

 

公正証書遺言の有効性は、遺言者の意思能力が判断基準となります。特に認知症の診断を受けていると、意思能力の評価には、以下の要素が考慮されます。

 

 

1. 長谷川式認知症スケール(HDS-R)

長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、認知機能を評価するためのスクリーニングテストで、30点満点中20点以下で認知症が疑われます。

 

しかし、スコアが低いからといって直ちに遺言能力が否定されるわけではなく、他の要素と総合的に判断されます。

 

<参考>
長谷川式認知症スケールの解釈|遺言能力鑑定

 

 

2. ミニメンタルステート検査(MMSE)

ミニメンタルステート検査(MMSE)も認知機能を評価する検査で、30点満点中23点以下で認知症の可能性が示唆されます。

 

ただし、HDS-R同様、スコアのみで遺言能力を断定することはできず、総合的な判断が必要です。

 

<参考>
MMSEの認知症でのカットオフ値は?|遺言能力鑑定

 

 

3. 遺言書の内容の複雑さ

遺言内容が単純であれば、遺言者がその意味を理解しやすく、意思能力が認められやすいとされています。

 

一方、内容が複雑で多岐にわたる場合、理解に高度な判断力が求められるため、意思能力の有無が慎重に判断されます。

 

 

4. 遺言書の内容に合理性があるか

遺言内容が遺言者の家族関係や財産状況と照らし合わせて合理的である場合、意思能力が認められやすくなります。

 

逆に、不自然な内容や偏った財産分配が記載されている場合、意思能力に疑問が生じる可能性があります。

 

 

 

これらの要素を総合的に考慮し、意思能力の有無が判断されます。意思能力(遺言能力)の判断基準について、詳細に知りたい方は、以下のコラム記事を参照してください。

 

 

<参考>
遺言能力の判断基準4つのポイント|認知症の遺言能力鑑定

 

 

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認知症の親が作成した公正証書遺言への対処法

相続人で話し合う

まず、相続人全員で遺言内容について話し合い、合意を目指します。全員が同意すれば、遺言と異なる遺産分割協議を行うことが可能です。ただし、一人でも反対者がいる場合、この方法は成立しません。

 

 

遺言無効確認調停

話し合いで解決しない場合、家庭裁判所に「遺言無効確認調停」を申し立てます。調停は、遺言の有効性を巡る紛争を話し合いで解決する手続きです。

 

遺言無効確認調停は、訴訟の前段階として位置づけられ、ここで合意に至らなければ、次の訴訟手続きに進むことになります。

 

 

遺言無効確認訴訟

調停でも解決しない場合、家庭裁判所に「遺言無効確認訴訟」を提起します。訴訟では、遺言者が遺言作成時に遺言能力を欠いていたことを証明する必要があります。

 

裁判所は、医療記録や専門家の意見などを基に、遺言者が遺言作成時に遺言能力を欠いてかを、総合的に判断します。

 

 

遺言能力鑑定を活用する

認知症の影響で意思能力が疑われる場合、遺言能力鑑定を実施して、その結果をもとに意思能力の欠如を主張することが可能です。

 

遺言能力鑑定では、診療記録や画像診断結果、神経心理学的検査データ、介護保険の認定調査票などを、認知症の専門医が詳細に分析し、遺言者の意思能力を評価します。

 

作成された遺言能力鑑定書は、裁判所で証拠資料として活用され、遺言者が意思能力を有していたか否かを判断する際に重要な役割を果たします。

 

遺言能力鑑定には一定の費用が発生しますが、裁判手続きにおいて極めて価値の高い資料となるため、実施を検討する意義があります。

 

<参考>
【遺言能力鑑定】意思能力の有無を専門医が証明|相続争い

 

 

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認知症の親が公正証書遺言を作成する際のポイント

親が認知症なら診断書を取得する

遺言者が認知症と診断されている場合、遺言作成時の意思能力を証明するために、主治医から診断書を取得しておくことが推奨されます。

 

診断書は、後に遺言の有効性が争われた際に、遺言者の意思能力を裏付ける重要な証拠となります。

 

 

意思能力があるうちに遺言書を作成する

認知症の進行度合いによっては、意思能力が低下して、遺言の有効性が疑われる可能性があります。

 

そのため、意思能力が十分に保たれている段階で、早めに遺言書を作成することが重要です。

 

 

公正証書遺言を選択する

公正証書遺言は、公証人が作成するため、形式不備や偽造のリスクが低く、信頼性が高いです。相続人間の争いを避けるために、公正証書遺言の作成を検討しましょう。

 

<参考>
公正証書遺言は認知症でも無効は稀なのか?|遺言能力鑑定

 

 

生前遺言能力鑑定という選択肢

意思能力を証明する手段として、生前遺言能力鑑定が効果的です。この鑑定は、認知症に詳しい専門医が遺言者の意思能力を詳しく評価するものです。

 

生前に遺言能力鑑定を受けることで、遺言書の法的有効性を確保して、後々のトラブルや相続に関する争いを未然に防ぐことが可能となります。

 

<参考>
【生前遺言能力鑑定】認知症になる前に遺言するメリットとポイント

 

 

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認知症の親が作成した公正証書遺言でよくある質問

認知症とは何ですか?

認知症とは、脳の病気や障害などさまざまな原因により、認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態です。

 

具体的には、記憶力や判断力の低下、理解力の減退などが見られ、これらの症状が6ヵ月以上継続する場合に認知症と診断される可能性があります。

 

<参考>
【地主と家主】認知症はどんな病気?|遺言能力鑑定

 

 

意思能力と遺言能力の違いは?

意思能力とは、自分の行為の結果や法律的効果を理解し、適切に判断できる能力です。

 

遺言能力は、特に遺言を作成する際に、その内容や法的効果を理解し判断できる能力を意味します。

 

遺言能力は、一般的な意思能力の一部と考えられ、遺言の有効性を判断する際の重要な要素となります。

 

 

認知症の家族が書いた遺言書は無効ですか?

認知症であること自体は、遺言書の無効を直接意味しません。重要なのは、遺言作成時に遺言者が意思能力、すなわち遺言の内容やその法的効果を理解し判断できる能力を有していたかどうかです。

 

意思能力(遺言能力)が認められれば、認知症の診断があっても遺言書は有効とされます。

 

 

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まとめ

 

公正証書遺言は公証人が関わり、信頼性が高いですが、遺言者が認知症で意思能力に欠けていると、無効になる可能性もあります。

 

公正証書遺言が無効となる理由には、意思能力の欠如や証人の不適格、詐欺・強迫などがあります。

 

遺言が無効かどうかは、認知症の進行度合いや遺言内容の複雑さを含めた総合的な判断で決まります。

 

認知症の公正証書遺言に関する遺産相続争いで、お困りの事案があれば、遺言能力鑑定が有用になる可能性があります。お問合せフォームから気軽にご連絡下さい。

 

 

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