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2024.3.27

遺言能力鑑定

認知症の人に遺言書を書かせるのは有効か?|遺言能力鑑定

親(被相続人)が認知症になると、相続時に親族間の争いが発生する可能性があります。超高齢化社会の到来で、認知症は他人事ではなくなりました。親が認知症になってしまい困っている人も多いことでしょう。

 

認知症の人が書いた遺言書は有効か? 親の認知症がどの程度までなら遺言書は有効か? 悩みは尽きないですね。

 

本記事は、どの程度の認知症の人が書いた遺言書なら有効なのかを知るヒントとなるように作成しています。

 

 

最終更新日:2024/9/28

 

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認知症は記憶力や判断力が低下する病気

 

認知症は、加齢や脳血管障害などが原因となって、脳の細胞が損傷してしまい記憶力や判断力(認知機能)が低下する病気です。

 

高齢者ほど認知症を患いやすいので、高齢化社会が進展している日本では認知症患者さんの数が増加しています。

 

認知症の症状が進行すると記憶力や判断力が低下するため、日常生活に悪影響を及ぼします。

 

 

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認知症の主な原因

さまざまな原因で認知症が発症しますが、特に多いのはアルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症の3つです。

 

 

アルツハイマー型認知症

 

認知症を発症する人の中で最も数が多いのは、アルツハイマー型認知症です。認知症=アルツハイマー病というイメージがあるほど、メジャーなタイプの認知症です。

 

アルツハイマー型認知症では、脳細胞にアミロイドβという物質がたまることで発症します。

 

 

血管性認知症

 

認知症の中でアルツハイマー型認知症に次いで多いのは、血管性認知症です。脳梗塞や脳出血などの脳卒中は、半身麻痺を伴うだけではなく、血管性認知症も合併しやすいです。

 

 

レビー小体型認知症

 

アルツハイマー型認知症や血管性認知症ほど多くありませんが、レビー小体型認知症は特徴的な認知症です。レビー小体型認知症は、脳細胞にレビー小体という物質がたまって発症します。

 

レビー小体型認知症は、認知症の症状だけではなく、歩き方がぎこちなくなって転倒しやすいのが特徴です。

 

 

認知症になりやすいのはどんな人?

認知症は加齢によって発症しやすくなりますが、生活習慣病が発症の要因となります。具体的には、高脂血症、糖尿病、高血圧の人は認知症を発症しやすいです。

 

肥満の人は、高脂血症、糖尿病、高血圧になりやすく、これらの傷病を合併した状態をメタボリックシンドローム(メタボ)と呼びます。メタボな人は、認知症を発症するリスクが3倍以上になります。

 

 

<参考>
【地主と家主】認知症はどんな病気?|遺言能力鑑定

 

 

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認知症は物忘れではない!

認知症といえば物忘れをイメージしがちですが、実際には大きく異なります。通常の物忘れとは次元の異なる記憶障害を呈するのが認知症です。

 

例えば、朝食で食べたメニューを忘れるのは物忘れですが、朝食を食べたという事実そのものを忘れるのが認知症なのです。

 

 

認知症の人が書いた遺言書は有効なのか?

遺言書があれば相続争いになりにくい

相続争いを避けるためには、遺言書の作成が重要です。認知症疑いの人が作成した遺言書でも、遺留分が侵害されない限り、相続人は法的に争う方法が限られます。このため遺言書があれば、相続争いになりにくいです。

 

 

遺言能力が無ければ遺言書は無効

認知症の人が書いた遺言書は、自動的に無効になるわけではありません。遺言書の有効性は、遺言書を書いた人の意思能力や遺言能力で判断されます。

 

意思能力とは、権利、義務、結果を総合的に判断して、有効に実行できる能力です。例えば、生命保険の各種プランを適切に判断する能力です。

 

一方、遺言書を書くには、普段の生活で使っている意思能力よりも、更に高いレベルの能力が必要です。遺言書を書くことができるレベルの能力を遺言能力と言います。

 

実務上は、認知症の人が書いた遺言書が有効か否かは、その人の遺言能力の有無で判断されます。

 

 

遺言書の有効性は遺言能力の程度で変わる

認知症になった人が書いた遺言書は有効なのかを争う訴訟では、裁判官は遺言書が書かれた時点の状況を精査して、被相続人(遺言者)にどの程度の遺言能力があったのかを判断します。

 

 

遺言能力の判断基準とは

認知症を発症した人に遺言能力があるのかの判断基準として、「総合的に見て、遺言の時点で遺言事項を判断する能力があったか否かによって判断すべき(東京地判平成16年7月7日)」という判例があります。

 

具体的には、以下の点を総合的に考慮して、遺言書を書いた人に遺言能力が有ったのかを判断しています。

 

  • 精神医学的な評価
  • 遺言内容
  • 遺言書を書いた人と相続人との人間関係
  • 遺言と同じ内容を記した別資料

 

 

精神医学的な評価(長谷川式認知症スケールなど)

 

遺言書を書いた人(被相続人)の年齢や健康状態は、遺言能力に大きな影響を及ぼしています。高齢であるほど、健康でないほど、遺言能力は低下します。

 

一方、単に高齢なだけで遺言能力が低下するわけではありませんが、癌などの大病を患っていれば体力を消耗してしまい遺言能力は低下します。

 

遺言書を書いた人の状態を医学的に判断するために、カルテ、画像検査、神経心理学的検査(長谷川式認知症スケールなど)の精査が必要です。

 

 

遺言内容は複雑か?

 

遺言書に書かれている内容が難しすぎる場合には、本当にその人が遺言書を書いたのかが疑われます。

 

 

遺言書を書いた人(被相続人)と相続人との人間関係

 

例えば、遺言書を書いた人にとって、親族ではなく単なる知人に財産を贈与する遺言は、遺言能力が無いことを疑わせます。

 

客観的に見て、合理的ではない遺言内容は、遺言書を書いた人に遺言能力は無かったと判断されやすいです。

 

 

遺言と同じ内容が書かれている別資料

 

遺言書とは別に、同じ内容が書かれた資料が存在すれば、遺言能力が無かったと主張するのは難しくなります。

 

 

可能なかぎり公正証書遺言を作成する

遺言書の有効性を上げるためには、公証人に依頼して公正証書で作成することが推奨されます。

 

被相続人が認知症の場合、公証人は医師の診断書を要求しますが、判断能力が「保佐」までなら遺言能力があるとみなされ、公正証書遺言が作成されます。

 

公正証書遺言があれば、後になって被相続人の認知症を理由として、遺言の有効性が争われる可能性は大幅に減ります。

 

 

 

 

遺言書が有効となる認知症の程度

長谷川式認知症スケールで判断されるケースが多い

訴訟になると、認知症の人が書いた遺言書の有効性は、遺言能力の有無で判断されます。そして精神医学的な評価の判断基準の1つが、長谷川式認知症スケールという認知機能テストです。

 

長谷川式認知症スケールは、日本中の医療機関や介護施設で広く実施されている認知機能検査です。簡単に実施できるため、ほとんどの施設で導入されています。長谷川式認知症スケール以外にも、FASTやMMSEなどが認知症の重症度判定に用いられます。

 

 

<参考>
【医師が解説】長谷川式認知症スケールの解釈|遺言能力鑑定
【医師が解説】認知症ステージ分類のFASTとは|遺言能力鑑定
【医師が解説】MMSEの認知症でのカットオフ値は?|遺言能力鑑定
【医師が解説】MMSEと長谷川式認知症スケールの違い|遺言能力鑑定

 

 

遺言書の有効性判断は長谷川式認知症スケール10点

遺言書を書いた人の長谷川式認知症スケールが10点以下であれば、高度な認知症とみなされます。このため、長谷川式認知症スケールが10点以下の人が書いた遺言書は無効と判断されやすいです。

 

もちろん、遺言能力は、長谷川式認知症スケールなどの精神医学的な評価だけで判断されるわけではありません。訴訟での遺言能力の判断基準で説明したように、個々の事案毎にさまざまな角度から判断されます。

 

実臨床では、長谷川式認知症スケール15点でも認知症症状が強いケースも珍しくないため、11点以上なら遺言能力が認められるわけではないことに注意が必要です。

 

 

まだら認知症の人の遺言書は有効か?

まだら認知症とは、認知症の症状が一貫せず、時間帯によって認知能力が変わる状態を指します。まだら認知症では、物忘れが激しくても、特定の判断能力には問題がないこともあります。

 

例えば、家族の名前を思い出せないけれど専門書は理解できる、朝は身の回りのことができなかったのに夜には問題なくできるといった状況です。

 

このため、まだら認知症の人が遺言書を作成した場合、その有効性を判断するには、遺言時の判断能力、遺言書の内容の複雑さ、遺言書作成前後の状況、内容の合理性などを総合的に検討する必要があります。

 

まだら認知症の人が作成した遺言書は、争いの原因になりやすいです。弊社でも、まだら認知症関連の遺言能力鑑定依頼は非常に多いのが実情です。

 

 

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認知症の人が書いた遺言書の有効性を証明する手段

遺言能力の有無を証明するための資料

遺言書を書いた人の遺言能力の有無は、遺言時の各種資料から裁判官が推認します。以下のような資料を収集しておくことが望ましいでしょう。
 

  • 診断書
  • 遺言時の頃に遺言者が記載した文書
  • 遺言時の頃に撮影した遺言者の動画
  • 遺言時の頃の遺言者に関する日記

 

 

これらの資料によって、遺言書を書いた人の遺言能力の有無を、客観的に証明できる可能性があります。

 

 

遺言能力鑑定とは

遺言書を書いた人の遺言能力の有無を証明する有力な資料の1つに、遺言能力鑑定があります。

 

遺言能力鑑定は、認知症専門医が各種資料を精査して、遺言書を書いた人の遺言能力の有無を鑑定します。

 

遺言能力鑑定は費用がかかりますが、訴訟の際の有力な資料となります。また、遺言書作成時に取得しておくと、遺言能力の証明になるでしょう。

 

弊社では、脳神経内科や脳神経外科の認知症専門医が遺言能力鑑定を実施しており、常時10例近い事案が同時進行しています。

 

業界屈指の事案数に裏付けられた遺言能力鑑定の品質をご確認ください。

 

 

<参考>

 

 

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まとめ

 

認知症の人が書いた遺言書の有効性は、遺言能力の有無が判断基準になります。裁判では、以下の点で遺言能力の有無を判断されます。

 

  • 精神医学的な評価
  • 遺言内容
  • 遺言書を書いた人と相続人との人間関係
  • 遺言と同じ内容を記した別資料

 

 

長谷川式認知症スケールは、精神医学的な評価の判断基準の1つです。長谷川式認知症スケールは認知機能検査の一種で、10点以下の方は高度な認知症とみなされます。

 

このため、認知症の人が書いた遺言書の有効性は、長谷川式認知症スケール10点が1つの目安となります。

 

遺言能力の有無を客観的に主張するためには、遺言能力鑑定が有効な手段となり得ます。お困りの事案があれば、お問合せフォームからご連絡下さい。

 

 

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