「契約」や「遺言書」といった法的な文書は、私たちの生活に大きな影響を与えるものです。しかし、それらが法的に無効とされる可能性があることをご存じでしょうか。
特に、遺言書や契約が無効と判断される背景には「意思能力」の有無が深く関わっています。意思能力とは、法的な行為や意思表示を行うために必要な判断力のことを指します。
意思能力が欠如していると、どれだけ形式的に整っていても、その行為自体が無効になる可能性があります。
本記事では、意思能力の概略と、その欠如がどのように契約や遺言書に影響を与えるのかを解説しています。意思能力がない親の遺言書を無効にする具体的な方法についてもご紹介しています。
最終更新日: 2024/12/30
Table of Contents
意思能力とは何か
意思能力の法的定義
意思能力とは、自身の行為の結果を理解して、適切に判断できる精神的な能力を指します。法律行為の当事者が意思表示をした時に意思能力を有しなかった場合、その法律行為は無効とされます。
意思能力の判断基準
意思能力の有無は、個々の行為者ごとに判断されます。一般的な目安として、小学校低学年程度の知能が挙げられますが、画一的な基準は存在しません。
裁判例では、法律行為の性質や行為者の認知機能の程度、行為の必要性や合理性などを総合的に考慮して判断されています。
<参考>
意思能力の判断基準とは?認知症になるとどうなる?|遺言能力鑑定
意思能力がないと意思表示や法律行為は無効になる
意思能力を欠く者が行った法律行為は、初めから無効とされます。これは、行為の結果を理解・判断する能力がない者が行った契約や遺言などが、法的効力を持たないことを意味します。この無効は、行為の時点に遡って適用されます。
意思能力がない親の遺言を無効にするポイント
介護保険の主治医意見書を入手する
主治医意見書は、要介護認定を受ける際に必要な書類で、主治医が被保険者の病歴や健康状態、認知症の有無などを詳しく記載します。
主治医意見書は、介護サービスの提供に欠かせないものであり、被保険者の意思能力を評価する客観的な指標にもなります。
介護保険の認定調査票を入手する
認定調査票は、要介護認定のために調査員が被保険者の生活状況や身体機能、認知機能を評価する書類です。
認定調査票も介護度の決定に重要で、主治医意見書と同様に、被保険者の意思能力を客観的に示す資料となります。
長谷川式認知症スケール(HDS-R)の結果を確認する
長谷川式認知症スケール(HDS-R)は、認知症の診断に用いられる簡易的な知能テストで、30点満点で評価されます。
一般的に、20点以下の場合に認知症の可能性が高いとされますが、遺言能力の有無を直接判断するものではなく、他の要素と総合的に考慮されます。
MMSEの結果を確認する
MMSE(Mini-Mental State Examination)は、認知機能を評価するための検査で、30点満点で評価されます。
点数が低いほど認知機能の低下が示唆されますが、遺言能力の判断には他の医学的・法的要素も考慮されます。
<参考>
MMSEの認知症でのカットオフ値は?|遺言能力鑑定
遺言書の内容が複雑かを確認する
遺言書の内容が複雑である場合、作成者の意思能力が問われる可能性があります。複雑な内容を理解して、適切に判断できる能力が欠如していると、遺言の有効性が疑われます。
遺言書の内容に合理性が無いことを主張する
遺言書の内容に合理性が欠けていると、遺言者の意思能力が疑われることがあります。例えば、家族構成や財産状況に照らして不自然な内容であれば、遺言能力の欠如を主張できる可能性があります。
遺言能力鑑定という選択肢
遺言能力鑑定では、診療録、画像検査、各種の神経心理学的検査、介護保険の認定調査票などを認知症専門医が精査して、遺言者の遺言能力を評価します。
認知症のため、意思能力に疑問がある場合、遺言能力鑑定を実施して、その結果を基に意思能力の欠如を主張することができます。
遺言能力鑑定の報告書は、裁判所での証拠として用いられ、意思能力の有無を判断する重要な材料となります。
遺言能力鑑定は費用がかかりますが、訴訟における有力な資料となります。
<参考>
【遺言能力鑑定】意思能力の有無を専門医が証明|相続争い
意思能力がないと無効でよくある質問
意思表示が無効とはどういう意味ですか?
意思表示が無効とは、行為者がその意思を適切に表明できなかった場合、その意思表示に基づく法律行為が初めから効力を持たないことを意味します。これは、意思能力の欠如や錯誤などの場合に適用されます。
意思能力を有しない者とは?
意思能力を有しない者とは、自身の行為の結果を理解・判断する能力が欠如している者を指します。具体的には、幼児や重度の認知症の人などが該当します。
認知症の人は意思能力が無くなって無効になる?
認知症の人でも、軽度であれば意思能力が認められる場合があります。しかし、認知症の進行により判断能力が低下すると、意思能力が欠如し、法律行為が無効とされる可能性があります。
意思無能力無効とはどういう意味ですか?
意思無能力無効とは、行為者が意思能力を欠いている場合、その者が行った法律行為が初めから無効であることを指します。意思無能力無効は、行為の結果を理解・判断する能力がない者の保護を目的としています。
まとめ
意思能力とは、自分の行動の結果を理解して判断する力です。法律行為をする際に意思能力がないと、その行為は無効です。意思能力があるかどうかは行為者ごとに判断され、小学生低学年程度の知能が目安です。
意思能力がない人の行為は、初めから無効とされます。特に認知症の人の遺言では、意思能力がない場合、その遺言は無効です。
主治医意見書や認定調査票、長谷川式認知症スケールやMMSEなどが意思能力を評価する資料となります。
認知症の意思能力に起因した遺言トラブルでお困りの事案があれば、遺言能力鑑定が有効になる可能性があります。お問合せフォームから気軽にご連絡下さい。
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