遺産相続は家族の未来を左右する重要なイベントですが、誤解や不平等感が生じると深刻な争いに発展する可能性があります。
特に、遺産分割の不公平感、遺言書の有効性を巡る問題、不動産の評価方法などは、想像以上に家族関係に影響を及ぼします。
本記事では、遺産相続をめぐる争いを未然に防ぐための具体的な対策や、遺産相続の争いが発生した場合の解決策を詳しく解説しています。
最終更新日: 2025/1/9
Table of Contents
遺産相続争いの実態とは?
遺産相続争いの背景と原因
遺産相続争いは、家族間の信頼関係を損ない、深刻な対立を引き起こす可能性があります。その背景には、家族構成の変化や個人の権利意識の高まりが影響しています。
例えば、戦後の家督相続制度の廃止以降、長男が全財産を継ぐという慣習が薄れて、相続人全員が平等に権利を主張するようになりました。
また、個人主義の浸透により、各相続人が自身の利益を強く求める傾向が強まっています。
不動産など分割しにくい財産の存在も、争いの原因となります。これらの要因が複雑に絡み合い、遺産相続争いを引き起こしています。
遺産相続争いの8割は5000万円以下!
遺産相続争いは、必ずしも高額な遺産に限らず、遺産額が少ない場合にも頻繁に発生しています。
実際、遺産分割を巡る争いの約8割が、遺産額5000万円以下の家庭で起きています。
遺産が少ない家庭では相続対策が十分に行われておらず、遺産分割の際に不公平感や不満が生じやすいためと考えられます。
また、遺産額が少ないと自分の取り分に敏感になり、争いが激化する傾向もあります。遺産額の多少に関わらず、適切な相続対策が重要です。
遺産相続争いへの具体的対処法
よくある遺産相続争い6つのパターン
遺産相続における争いは、さまざまなパターンで発生しますが、主なものとして以下の6つが挙げられます。
- 遺言書の内容が不公平
- 遺言書の有効性
- 不動産の分割法や評価法の争い
- 親を介護した寄与分
- 不公平な生前贈与
- 遺産の使い込み
1. 遺言書の内容が不公平
遺言書に記載された遺産分割が、相続人間で不平等と感じられると、争いの原因となります。法定相続分や遺留分を無視した内容は、特に問題を引き起こしやすいです。
2. 遺言書の有効性
遺言書が法的要件を満たしていない、または偽造の疑いがあると、有効性を巡って相続人間で対立が生じます。
適切な形式で作成されていない遺言書は、無効と判断される可能性があります。
3. 不動産の分割法や評価法の争い
遺産に不動産が含まれていると、その評価額や分割方法を巡って意見が対立することがあります。
不動産は現物分割が難しく、評価額の算定も複雑なため、争いが生じやすいです。
3. 不動産の分割法や評価法の争い
遺産に不動産が含まれていると、その評価額や分割方法を巡って意見が対立することがあります。
不動産は現物分割が難しく、評価額の算定も複雑なため、争いが生じやすいです。
4. 親を介護した寄与分
被相続人の生前に特定の相続人が介護していると、その寄与分を主張して、他の相続人と意見が対立する可能性があります。
寄与分の評価は主観的要素が強く、合意形成が難しいケースが珍しくありません。
5. 不公平な生前贈与
被相続人が生前に特定の相続人に多額の贈与を行っていると、他の相続人が不公平と感じて争いに発展する可能性があります。
生前贈与の有無やその額は、遺産分割において重要な要素となります。
6. 遺産の使い込み
特定の相続人が被相続人の財産を無断で使用していたら、他の相続人と争いになる可能性が高いです。
使い込みの事実を証明することは難しく、深刻な対立を引き起こす要因となります。
認知症による遺産相続争いの対処法
遺言能力の判断基準とは?
認知症による遺産相続争いを防ぐためには、遺言者の「遺言能力」を正確に評価することが重要です。
遺言能力とは、遺言者が自身の財産状況や遺言の内容、その結果を理解し判断できる能力を指します。
認知症の方でも、この能力が認められれば遺言は有効とされます。遺言能力の有無は、以下の基準で判断されます
- 精神医学的な評価
- 遺言内容
- 遺言者と相続人との人間関係
- 遺言と同じ内容の別資料
これらの要素を総合的に考慮し、遺言能力の有無が判断されます。遺言能力の判断基準について、詳細に知りたい方は、以下のコラム記事を参照してください。
<参考>
遺言能力の判断基準4つのポイント|認知症の遺言能力鑑定
遺言能力鑑定を活用する
遺言能力鑑定では、診療録、画像検査、各種の神経心理学的検査、介護保険の認定調査票などを認知症専門医が精査して、遺言者の遺言能力を評価します。
認知症のため、意思能力に疑問がある場合、遺言能力鑑定を実施して、その結果を基に意思能力の欠如を主張することができます。
遺言能力鑑定の報告書は、裁判所での証拠として用いられ、意思能力の有無を判断する重要な材料となります。
遺言能力鑑定は費用がかかりますが、訴訟における有力な資料となります。
<参考>
【遺言能力鑑定】意思能力の有無を専門医が証明|相続争い
遺産相続争いを未然に防ぐ基本ステップ
早期の家族間コミュニケーションの重要性
家族間で早期に相続に関する話し合いを行うことは、誤解や不満を防ぐために重要です。家族会議を通じて、各自の意向や考えを共有して、相続に対する共通理解を深めましょう。
専門家に相談する
相続問題は複雑であり、専門家の助言が不可欠です。弁護士や税理士に相談することで、法的手続きや税務上の問題を適切に処理して、トラブルを未然に防ぐことができます。
遺言書の正しい作成方法
遺言書は法的要件を満たす必要があります。自筆証書遺言では、全文を自書して、日付と署名、押印が必要です。形式の不備は無効となる可能性があるため、注意が必要です。
公正証書遺言の活用
公正証書遺言は、公証人が作成するため、形式不備や偽造のリスクが低く、信頼性が高いです。相続人間の争いを避けるために、公正証書遺言の作成を検討しましょう。
<参考>
公正証書遺言は認知症でも無効は稀なのか?|遺言能力鑑定
生前遺言能力鑑定という選択肢
遺言能力を証明するためには、生前遺言能力鑑定が有効です。生前遺言能力鑑定は、認知症専門医によって行われ、遺言者の遺言能力を評価します。
生前遺言能力鑑定を実施することで、遺言書の効力を担保して、将来的な紛争を防ぐことができます。
<参考>
【生前遺言能力鑑定】認知症になる前に遺言するメリットとポイント
遺産相続争いでよくある質問
遺言書が見つからない時の対処法
遺言書が見つからない場合、まずは故人の自宅や重要書類の保管場所を徹底的に探しましょう。それでも見つからない場合、公証役場で公正証書遺言の有無を確認します。
公証役場に遺言書の記録がなく、自筆証書遺言も見つからない場合は、遺言書がない前提で遺産分割協議を行います。
ただし、後に遺言書が発見されるとトラブルになる可能性があるため、慎重に探すことが重要です。
遺産相続で揉めた時はどうすればいいですか?
相続人間で意見が対立した場合、まずは冷静に話し合いを試みましょう。それでも解決しない場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。
調停でも合意に至らない場合は、審判に移行して、裁判所が遺産分割の方法を決定します。また、弁護士に相談することで、法的な助言や手続きをサポートしてもらえます。
相続で揉める家族の特徴は?
相続で揉める家族には、日頃のコミュニケーション不足や故人の財産状況の不透明さ、生前に特定の相続人だけが多額の贈与を受けていたことによる不公平感などの特徴が見られます。
家族間の意思疎通が乏しいと、相続時に誤解や不信感が生じやすく、財産内容が明確でないと相続人間で疑念が生まれ争いの原因となります。
また、不平等な生前贈与が対立を引き起こすケースも少なくありません。こうしたトラブルを避けるためには、日頃から家族間の十分なコミュニケーションと財産状況の共有が不可欠です。
遺産争いはいくらの遺産から起こりますか?
遺産の額に関係なく、相続争いは発生する可能性があります。遺産が少額であっても、相続人間の感情的な対立や不公平感から争いが生じる可能性があります。
したがって、遺産の額にかかわらず、適切な遺言書の作成や相続人間の話し合いが重要です。
相続で揉める確率は?
厚生労働省の統計によれば、2023年の死亡者数は157万5936人に達しました。一方、司法統計によると、同年に遺産分割調停が申し立てられた件数は1万5750件でした。
これを基に計算すると、相続が発生したケースのうち遺産分割調停に至った割合はわずか約1%となります。
まとめ
遺産相続争いは、家族間の信頼を損ない深刻な対立を招く問題です。その背景には、家族構成の変化や個人主義の浸透、相続人の公平感への意識の高まりなどがあり、不動産や生前贈与など分割の難しい財産が争いを助長します。
また、遺産額が少ない場合でも争いは頻発しており、約8割が5000万円以下の家庭で発生しています。遺産相続争いの対策としては、家族間の早期の話し合い、公正証書遺言の活用、生前遺言能力鑑定の実施などが有効です。
遺産相続争いでお困りの事案があれば、遺言能力鑑定が有用になる可能性があります。お問合せフォームから気軽にご連絡下さい。
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