認知症は高齢者の5人に1人が発症する一般的な病気で、誰でも発症の可能性があります。最近、物忘れが気になっている方は心配になりますね。
認知症の診断には専門医による各種のテストが必要ですが、簡易的なチェックであれば自分でできるものもあります。
本記事は、認知症の各種テストと自己チェック法を知るヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/6/29
Table of Contents
認知症のテストには何がありますか?
認知症テストの基礎知識
認知症の診断は、身体検査、神経心理学検査、画像検査などで行います。いくつかの検査を組み合わせて、総合的に診断します。
<参考>
【医師が解説】認知症の検査とは?種類、価格、評価法|遺言能力鑑定
認知症テストの目的と利点
1つ目の目的は、早期に対策するためです。早期治療によって認知症の進行を遅らせて、生活の質を保つことができる利点があります。また、早期発見によって治療方針を考える時間も増えます。
2つ目の目的は、他の疾患を見つけるためです。慢性硬膜下血腫など、認知症と似た症状を引き起こす疾患を特定することで、適切な治療や手術を行い、命を救うことも可能です。
認知症テストの種類
自己評価型テスト
物忘れが気になり始めて「認知症かも?」と思った時、いきなり医療機関を受診するのはハードルが高いですね。
このような時には、まず自分でできる簡易テストをやってみることをお勧めします。東京都福祉局の「自分でできる認知症の気づきチェックリスト」は無料で実施できます。
このチェックリストは簡便ですぐに実施可能です。認知症かもしれないと心配な方は、今すぐやってみましょう。
専門医によるテスト
認知症専門医が行うテストとして、身体検査と神経心理学検査があります。以下に弊社の生前遺言能力鑑定で行うルーチンメニューをご紹介いたします。
身体検査
パーキンソン症状の評価(筋固縮などを実際に触知して診察する)
神経心理学的検査
- 長谷川式認知症スケール(HDS-R)
- MMSE(ミニメンタルステート検査)
- M.I.N.I(精神疾患簡易構造化面接法) → 精神疾患の除外
<参考>
画像検査でのテスト
認知症では、脳の病変の有無や形態異常を調べるために、以下のような画像検査が行われます。
- CT検査
- MRI検査(VSRAD)
- SPECT検査
- PET検査
認知症テストの結果の意味と対処法
認知症テスト結果の分析
認知症で行われる各画像検査は、以下の評価を目的として行われます。
- 脳の形態: CT、MRI(VSRAD)
- 脳の血流: SPECT、MRI、PET
- 脳の代謝: PET
CT検査
認知症では、前頭葉、側頭葉、頭頂葉の脳萎縮がよく見られます。脳萎縮に伴い、脳室やシルビウス裂の拡大が特徴的です。以下のCT検査では、両側のシルビウス裂の拡大(赤矢印)が確認できます。
MRI検査
MRI検査は、認知症の側頭葉内側の脳萎縮や側脳室の拡大を検出できます。血管性認知症の陳旧性脳梗塞も検出可能です。以下のMRIでは、側脳室の拡大が確認されます。
早期アルツハイマー型痴呆診断支援システム(VSRAD)
早期アルツハイマー型痴呆診断支援システム(VSRAD)は、MRI画像で脳の萎縮度を客観的に評価する検査です。海馬傍回、海馬、扁桃などの記憶に関わる部位の萎縮度を評価して認知症の可能性を数値化します。
<参考>
ブイエスラド | 製品情報 | エーザイ
SPECT検査
SPECT検査は、脳の血流を計測して脳機能を評価する検査です。微量の放射性同位元素を静脈内注射し、その放射線を計測します。初期の認知症では側頭葉と頭頂葉の集積が低下し、進行すると前頭葉の血流も低下します。
PET検査
PETはSPECTと似た脳機能評価検査ですが、脳血流だけでなく糖代謝やアミロイド蓄積も評価できます。初期の認知症では、糖代謝の低下により側頭葉と頭頂葉の集積が低下することが多いです。
結果に基づいた対策の立て方
認知症テストの結果、認知症と診断された場合には治療方針を立てる必要があります。認知症を発症する疾患はさまざまです。
認知症の原因として多いのは、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、そしてレビー小体型認知症です。これ以外にも、以下のような疾患があります。
- 特発性正常圧水頭症
- 慢性硬膜下血腫
- 脳腫瘍
- 大脳皮質基底核変性症
- 進行性核上性麻痺
- クロイツフェルト・ヤコブ病
それぞれの疾患に応じた治療方針を早期に決定する必要があります。
認知症予防のための生活習慣
認知症の予防対策として、以下の10か条が有名です。バランスのとれた食事、十分な睡眠、ストレスの管理が重要です。
- 脳血管を大切にする
- 食生活を整える
- 運動を心がける
- 飲酒・喫煙を控える
- 活動・思考を活発にする
- 生き生きとした生活を送る
- 良好な人間関係を保つ
- 自らの健康管理に努める
- 病気や障がいの予防と治療に努める
- 寝たきりにならないよう心がける
これらの10か条に加えて、聴力を保つ努力も必要です。聴力が落ちると周囲とのコミュニケーションを取りづらくなるため、認知症が進行してしまいます。聴力が落ちてきたと感じたら耳鼻科を受診しましょう。
<参考>
認知症にならないための10か条
専門家のアドバイスと支援
医師や専門家の相談
親が認知症かもしれないと感じたら、早めに医療機関などの専門家に相談しましょう。家族だけでも、まずは地域包括支援センターや自治体で情報収集を行い、どこに相談すればよいかを確認することも1つの方法です。
サポートグループへの参加
多くの自治体には、認知症サポートグループが存在します。地域包括支援センターや自治体で情報収集を行い、サポートグループへの参加を検討しましょう。
介護やリハビリテーションのサービス
自宅で受ける介護サービス
- 訪問介護
- 訪問看護
- 訪問入浴
通所して受ける介護サービス
- デイサービス(通所介護)
- デイケア(通所リハビリテーション)
- ショートステイ(短期入所生活介護)
- 認知症対応型通所介護(認知症デイサービス)
入所して受ける介護サービス
- 特別養護老人ホーム(特養)
- 介護老人保健施設(老健)
- 介護療養型医療施設
- 有料老人ホーム
- 認知症対応型共同生活介護(認知症グループホーム)
認知症のリハビリテーション
認知症の治療にリハビリテーションは欠かせません。認知症の進行を遅らせるには、自分できることを増やして心と体を刺激することが重要です。
リハビリテーションによって生活の質が向上するだけでなく、介護者の負担も軽減できる効果が期待できるので積極的に行いましょう。
認知症と診断されても相続対策が必要な時は?
もし、認知症と診断されると、十分な相続対策ができなくなるケースが多いです。安易に相続対策すると、相続争いが発生するかもしれません。
そのような時には、医学的に親の遺言能力が充分にあったのかを鑑定できる遺言能力鑑定が有用です。遺言能力鑑定については、以下のリンクを参考にしてください。
まとめ
認知症の診断は、身体検査、神経心理学検査、画像検査などを精査して行います。いくつかの検査を組み合わせて、総合的に診断します。
認知症テストの目的は、早期に認知症の対策をすることと、治療できる疾患を見つけ出して早期に治療を始めることです。
認知症予防のための生活習慣として、バランスのとれた食事、十分な睡眠、ストレスの管理が重要です。これらに加えて、聴力を保つ努力も必要です。
認知症かもしれないと思ったら、まずは家族だけでも地域包括支援センターや自治体で情報収集を行いましょう。
認知症が進行して相続争いになってしまったら、遺言能力の有無を客観的に主張するうえで、遺言能力鑑定が有効な手段となり得ます。お困りの事案があれば、お問合せフォームからご連絡下さい。
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