遺言書の内容に不満を持つ人は少なくありません。公平に遺産分割されていなかったとしても、そのまま諦めるしかないのでしょうか。
実は、遺言書の無効を主張できる可能性があります。遺言に関する問題は、感情的な側面も強く、家族間のトラブルに発展するケースも少なくありません。
本記事では、遺言書の無効を主張するための方法について詳しく解説しています。
最終更新日: 2024/11/5
Table of Contents
遺言に不満がある場合の基本的な対処法
まずは遺言書の内容を再確認
遺言書に不満がある場合、まずはその内容を再確認することが重要です。遺言書が有効に成立しているか、形式的な不備がないかを確認しましょう。
特に、自筆証書遺言の場合、全文・日付・氏名を自書して押印しているか、代筆されていないか、遺言者が遺言能力を有していたかなどを確認する必要があります。
専門家への相談が必要な理由
遺言書に不満がある場合、専門家への相談が必要です。弁護士などの専門家は、遺言書の有効性や遺留分侵害額請求の手続きについてアドバイスしてくれます。
専門家から適切な助言を受けることで、法的なトラブルを避け、適切な対処法が見つかる可能性が高いです。
遺言が無効になる条件
遺言能力の欠如
遺言能力とは、遺言の内容を理解して、その結果を認識できる能力です。遺言者が遺言を作成する際に、認知症などで遺言能力が欠如していると、遺言は無効になります。
証人欠格
遺言書の作成には証人が必要ですが、証人として認められない人が証人となると、遺言は無効となります。例えば、未成年者が証人になることは認められません。
方式違背
遺言書は、法律で定められた方式に従って作成されなければなりません。例えば、自筆証書遺言の場合、全文を自書し、日付と署名を記載し、押印する必要があります。これらの方式に違反していると遺言は無効になります。
錯誤、詐欺、強迫
遺言が錯誤、詐欺、または強迫によって作成された場合、その遺言は無効になります。
例えば、遺言者が誤った情報を信じて遺言を作成したり、詐欺や強迫によって遺言を強制された場合が該当します。
公序良俗違反
遺言の内容が公序良俗に反していると、遺言は無効になります。例えば、不倫相手に遺産を遺贈する内容の遺言は、公序良俗に反すると判断される可能性が高いです。
撤回の撤回
遺言者が一度撤回した遺言を再度撤回することはできません。撤回の撤回は無効とされ、最初の撤回が有効となります。
遺言無効を主張するための流れ
遺言無効を証明するための資料集め
遺言の無効を証明するためには、まず資料を集めることが重要です。具体的には、遺言者の筆跡や、遺言作成時の医師の診断書、関係者の証言や写真、ビデオなどが有効です。
特に、遺言者の遺言能力を巡る争いでは、医師の診断書やその時の様子を捉えた各種資料が、非常に重要です。
裁判以外の交渉手段を優先する
まずは裁判以外の方法で解決を試みるべきでしょう。例えば、家族や関係者と話し合い、合意を目指します。
家族会議を開くメリットとデメリット
家族会議を開くことで、老親の希望や想いを直接伝えることができ、家族全員で共有することができます。
家族会議によって、家族間のトラブルや遺産相続をめぐる紛争を未然に防ぐ効果が期待できます。
ただし、家族会議を開く際には、全員が対等な立場で意見を言い合える環境を整えることが重要です。
弁護士を依頼する際のポイント
弁護士に依頼する際には、事前に必要な資料や証拠を準備し、自分の不利になることも含めて正直に話すことが重要です。
また、費用がいくらかかるかを明確に確認し、見積もりをもらうことも大切です。弁護士との相談は、できる限り本人が行うようにし、早めに相談することが問題解決の鍵となります。
遺言に不満がある時の裁判の進め方
調停
遺言に不満がある場合、まず調停を試みることが一般的です。調停は、相続人同士が話し合いを通じて合意に達するための手続きです。
調停委員が中立的な立場で関与し、双方の意見を調整します。調停が成立すれば、裁判所の判決と同じ効力を持つ合意書が作成されます。
裁判
調停が不成立の場合、地方裁判所に訴訟を提起することができます。裁判では、遺言の有効性や内容について法的に争います。
裁判の結果に不満がある場合は、高等裁判所に上訴することも可能です。ただし、裁判は時間と費用がかかるため、慎重に検討する必要があります。
遺言無効確認請求訴訟のポイント
遺言の成立が争点のケース
遺言無効確認請求訴訟において、遺言の成立が争点となる場合、遺言書が法的に有効かどうかが問われます。
具体的には、遺言書が適切な形式で作成されているか、証人が適切であったかなどが検討されます。
遺言の内容が争点のケース
裁判では、遺言の内容が争点となる場合もあります。遺言者に十分な遺言能力があったのか、遺言の内容が公序良俗に反していないか、遺言者が錯誤や詐欺、強迫によって遺言を作成していないかなどです。
遺言の内容が争点になるケースで最も多いのは、遺言者に十分な遺言能力があったのかについてです。
過去の裁判例から、遺言能力の有無は、遺言時における遺言者の精神上の障害、遺言内容そのものの複雑性、遺言内容の不合理性、不自然性などの事情を総合的に考慮して判断されています。
認知症は相続争いの原因になりやすい
認知症になった人の遺言能力有無は判断が難しい
認知症の特徴は、日時・タイミングによって症状にムラがあることです。また、障害された脳の部位によって症状がまちまちです。
このため、認知症になった遺言者に、遺言能力があるのかを正確に判断するのは難しいケースが多いです。
遺言能力鑑定という選択肢
認知症では、障害された脳機能と障害された脳部位の整合性が問題になるケースが珍しくありません。
遺言能力の有無を主張するために、各種の神経心理学検査、画像検査、介護保険の認定調査票などの資料を詳細に検討する必要があります。
しかし現実的には、認知症専門医ではない弁護士や司法書士が、これらの資料を読み込んで正確に評価することは困難です。
この問題を解決するツールとして、遺言能力鑑定があります。遺言能力鑑定は、認知症専門医が各種資料を精査して、被相続人の遺言能力の有無を鑑定します。
遺言能力鑑定は費用がかかりますが、訴訟における有力な資料となります。また、遺言書作成時に取得しておくと、遺言能力の証明になるでしょう。
<参考>
まとめ
遺言に不満がある場合の対処法として、まず遺言書の内容を再確認することが重要です。自筆証書遺言の場合、全文・日付・氏名を自書し、押印しているか、遺言者が遺言能力を有していたかを確認します。
遺言が無効になる条件として、遺言能力の欠如、証人欠格、方式違背、錯誤・詐欺・強迫、公序良俗違反、撤回の撤回などがあります。
遺言無効を主張するためには、医師の診断書などの資料を集めることが重要です。裁判以外の交渉手段を優先し、家族会議を開くことも検討しましょう。
調停や裁判を通じて、遺言の有効性や内容を法的に争います。裁判では、遺言の形式や遺言者の遺言能力などが争点になります。
認知症の被相続人の遺言能力有無を主張する際には、遺言能力鑑定が有効な資料となり得ます。お困りの事案があれば、お問合せフォームからご連絡下さい。
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