認知症は、中高年者の5人に1人が発症すると予測されているほど数の多い病気です。誰もが認知症を発症する可能性があると言えるでしょう。
認知症を診断するには各種テストが必要ですが、画像検査も補助的な役割を果たしています。
本記事は、認知症の画像検査や画像所見を知るヒントとなるように作成しています。
最終更新日: 2024/6/30
Table of Contents
認知症の診断はどうするの?
認知症は、身体検査、神経心理学検査、画像検査などで診断します。いずれも重要な検査ですが、画像検査は最も客観的な検査と言えるでしょう。
<参考>
【医師が解説】認知症の検査とは?種類、価格、評価法|遺言能力鑑定
認知症の画像検査とは
画像検査の種類
認知症では、脳の病変の有無や形態異常を調べるために、以下のような画像検査が行われます。
- CT検査
- MRI検査(VSRAD)
- SPECT検査
- PET検査
画像検査の目的
認知症で行われる各画像検査は、以下の評価を目的として行われます。
- 脳の形態: CT、MRI(VSRAD)
- 脳の血流: SPECT、MRI、PET
- 脳の代謝: PET
画像検査の認知症所見
CT検査
認知症では、形態学的変化が現れやすいです。最もよく認められる画像所見は、前頭葉、側頭葉、頭頂葉の脳萎縮です。
脳萎縮を反映して、脳室やシルビウス裂の拡大が特徴的です。以下のCT検査では、両側のシルビウス裂が拡大しています(赤矢印)。
MRI検査
MRI検査はCT検査ほど鋭敏ではないですが、脳萎縮などの形態異常を検出できます。認知症では、海馬を含む側頭葉内側の脳萎縮と、脳萎縮を反映した側脳室の拡大が特徴的です。
一方、後頭葉と小脳には脳萎縮がないことが多いです。MRI検査では、血管性認知症の原因となる陳旧性脳梗塞なども検出できます。以下のMRI検査では、側脳室の拡大を認めます。
早期アルツハイマー型痴呆診断支援システム(VSRAD)
早期アルツハイマー型痴呆診断支援システム(VSRAD、ブイエスラド)は、MRI画像を使って脳の萎縮度を客観的に評価する検査です。
海馬傍回(かいばぼうかい) 、海馬、扁桃などの記憶に関わる部位の萎縮度を評価して、認知症を発症している可能性を数値化します。
<参考>
ブイエスラド | 製品情報 | エーザイ
SPECT検査
SPECT検査とは、脳の血流を計測することで脳機能を評価するための検査です。具体的には、微量の放射性同位元素を静脈内注射して、放射性同位元素から放出される微量の放射線を計測します。
初期の認知症では、側頭葉と頭頂葉の集積が低下します。認知症が進行すると、前頭葉の血流低下が進むため、同部位の集積が低下します。
PET検査
PETはSPECTと似た検査で、脳機能を評価する検査です。SPECTは脳血流を測定できるのに対して、PETは脳血流だけではなく、糖代謝の測定や、アミロイド蓄積の有無も評価できます。
初期の認知症では、糖代謝の低下を反映して側頭葉と頭頂葉の集積が低下するケースが多いです。
認知症は画像所見だけでは診断できない!
画像検査の所見だけでは、認知症の有無を診断できません。画像検査の目的は、以下のような頭蓋内の器質的疾患を除外することです。
- 特発性正常圧水頭症
- 慢性硬膜下血腫
- 脳腫瘍
認知症の画像所見として、脳萎縮が有名ですが、実は年齢相応の脳萎縮の定義は存在しません。また、脳萎縮があるからと言って、認知症と診断できるわけでもありません。
画像検査は、あくまでも補助検査に過ぎません。認知症の診断には、身体検査や神経心理学的検査なども含めた総合的な診察が必要なのです。
<参考>
認知症を発症する疾患
認知症の原因として多いのは、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、そしてレビー小体型認知症です。
一方、アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症以外にも、認知症の症状をきたす疾患があります。以下に例を挙げます。
- 特発性正常圧水頭症
- 慢性硬膜下血腫
- 脳腫瘍
- 大脳皮質基底核変性症
- 進行性核上性麻痺
- クロイツフェルト・ヤコブ病
アルツハイマー型認知症、血管性認知症、レビー小体型認知症では、身体検査や神経心理学検査が重視されます。
しかし、上記の疾患では、画像検査で診断して、アルツハイマー型認知症などの疾患とは異なる治療方針を決定する必要があります。
認知症で遺言能力が争いになると?
相続争いは訴訟に発展しやすい
認知症になると遺言能力を喪失するケースが多いです。このため、相続時の親族間の争いは、訴訟に発展するケースも珍しくありません。
訴訟で遺言能力の有無を証明する資料
裁判所が遺言能力の有無を判定する場合、裁判官は以下の資料で遺言能力の有無を判断します。
- 診断書
- 遺言時の頃に親が記載した文書
- 遺言時の頃に撮影した親の動画
- 遺言時の頃の親に関する日記
- 遺言能力鑑定書
これらの資料の中でも、認知症専門医が作成する遺言能力鑑定書は信用力が高いため、裁判官の判断に大きな影響力を及ぼします。
<参考>
【医師が解説】相続で認知症の程度はどこまで有効?|遺言能力鑑定
【医師が解説】認知症の親の遺言書は有効か?|遺言能力鑑定
遺言能力鑑定は訴訟における有力な資料
遺言書を書いた人の遺言能力の有無を証明する有力な資料の1つに、遺言能力鑑定があります。
遺言能力鑑定は、脳神経内科や脳神経外科などの認知症専門医が、各種資料を精査して遺言書を書いた人の遺言能力の有無を鑑定します。
弊社では、脳神経内科や脳神経外科の認知症専門医が遺言能力鑑定を実施しており、常時10例近い事案が同時進行しています。
遺言能力鑑定は費用がかかりますが、訴訟の際の有力な資料となります。業界屈指の事案数に裏付けられた遺言能力鑑定の品質をご確認ください。
<参考>
まとめ
認知症を診断するには各種テストが必要ですが、画像検査も補助的な役割を果たしています。
認知症では、脳の病変の有無や形態異常を調べるために、以下のような画像検査が行われます。
- CT検査
- MRI検査
- SPECT検査
- PET検査
認知症の画像所見で特徴的なものはCT検査やMRI検査で認められる脳萎縮ですが、それ以外にもSPECT検査やPET検査で脳血流や脳代謝を評価することも可能です。
遺言能力の有無を客観的に主張するためには、遺言能力鑑定が有効な手段となり得ます。お困りの事案があれば、お問合せフォームからご連絡下さい。
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